どこでもうどんは作れる
海外でも日本の味を手軽に作れないかと思い、作ってみた。とても安価に手軽に作れた気がする。メキシコで体調を壊した時に、どれもこれも味が濃くて困っていたので、そんな時はこれだとわかった。後で気がついたけど、小さな醤油くらい持っていけばいいんだなと。
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日本の味というものがある。それはお寿司だったり、天ぷらだったり、お茶漬けだったりすると思う。日本に生まれたからだろう、このような料理をしばらく食べないと恋しく感じてしまう時がある。それは例えば、海外旅行に出かけた時など。
そこで、海外に売っているものだけで、日本の味を作ってみようと思う。いわゆる日本の食材を使わずに日本の味を作り出すのだ。海外にいながら日本の味を堪能する。それが今回の目標だ。
どこかに出かけるとその地域の食事を食べる。それは郷土料理だったり、B級グルメだったりすると思う。海外に行くとその味は、より日本の味とは離れることになる。出汁が効き、素材の味を活かした日本の味はもはやないのだ。
私はアラスカに2週間ほど行っていた。上記の料理はその時に食べたものだ。お金がなかったので、基本的にスーパーで食材を買って作っていたのだけれど、向こうで調味料なども買ったので、日本の味はなかった。
このような生活をしていると、だんだんと日本の味が懐かしくなってくる。海外の日本料理屋は高いので、私には行くことができない。そこで作ろうと思い立った。「うどん」だ。あっさりしたものを食べたくなったのだ。海外のスーパーにあるものだけで。
アラスカは寒い。とても寒い。温まる日本の料理を食べたいと思い「うどん」を選択した。私はうどんが好きなのだ。特に「資さんうどん」が好きだ。たぶん世界一美味しい料理が「資さんうどん」だと思う。
ただ残念なことに「資うどん」はアラスカにはない。もっと言えば、東京にもない。福岡の北九州辺りにしかない。非常に残念なことだ。私は北九州に行くと3食資さんうどんということもある。それほど好きだ。ただアラスカにはないのだ。
驚くことに、今回の記事に資さんうどんは全く関係ない。うどんを作るので好きなうどん屋さんを語ったのだ。今回はアラスカでうどんを作ること。最近は海外でもお米や醤油、味噌なども売っているけれど、それは使わない方向で頑張ろうと思う。
小麦粉は当たり前だけど、普通に売っている。「オールパーパス」と袋に書いてあるので、たぶんなんにでも適しているということだ。つまりうどんも作れるのだ。だって「オールパーパス」って書いてあるから。もうこれしかないのだ。あと安いから。
うどんの美味しさを決めるのは出汁だ。昆布らしいものはさすがに売っていなかったけれど、醤油も使わないので、「塩うどん」にしようと思っている。ということは、鶏だ。鶏で出汁を取るのだ。海外はだいたい安く鶏が売っている。
600円くらいで鶏が一羽買えてしまうので安い。そして、せっかくアラスカなので、アラスカっぽいものでも出汁を取りたい。そうなると鮭である。アラスカは鮭で有名なのだ。乾燥させた鮭なら素晴らしい出汁が取れるのではないだろうか。
鮭を干して乾燥させた「鮭とば」。アラスカでは「サーモンジャーキー」という。たぶん鮭とばと同じだと思う。当たり外れがあるようだけど、今回買ったものは、そのまま食べてもめちゃくちゃ美味しかった。日本の鮭とばとも少し違いソフトで、もうこのまま食べようかとすら思った。
うどん作りが始まる。いま壮大なクラシック音楽が私の脳内に流れている。曲名はわからない。クラシック音楽に詳しくないので。ただわかっているのは壮大ということだ。UDONを作る、それは壮大なことなのだ、きっと。
うどんの麺を作るのは難しいことはなく、小麦粉と塩と水で作ることができる。特殊なものがいらないので海外でも簡単だ。軽量カップとかはないので、見た目で作る。小麦粉を適量と、塩を感覚で入れ、水を勘で注ぐ。過去に例を見ないレシピだ。
15分ほど寝かせたら、4つに切り分けて平たくしていく。本当は麺棒があればいいのだけれど、そんなものはないので、フライパンで潰して、さらにペットボトルでゴロゴロして、さらに手で職人のように伸ばした。
なぜか小さなナイフとパン切りナイフしかなかったので非常に切りにくかった。しかし、これはそこにあるもので日本の味を作る挑戦だ。その昔、アラスカは多くの日本人が訪れていたので、空港にもうどん屋があった。アラスカの日本の味と言えば、うどんなのだ。へこたれてはダメだ。
その昔、日本人が多くアラスカを訪れていたのは、ニューヨークなどに行く際に、必ずアラスカを経由していたからだ。昔は燃料などがニューヨークまで持たないので、アラスカでトランジットが当たり前だった。残念ながら現在、定期便でのアラスカ直行便はない。
その当時は東京から7時間ほどでアラスカだったようだ。現在はシカゴなどでトランジットしてアラスカなので24時間ほどかかる。遠い。当時はアラスカの空港で多くの日本人がうどんを食べていたのだろう。そんなある意味、アメリカのうどん州でうどんを作っている。
出汁は二種類取った。二つのうどんを作るのだ。味付けは塩。塩は世界中で簡単に手に入るので素晴らしい。塩の量も自由である。計量するものがないので、全ては思うがまま。偶然性が作り出す食のハーモーニが海外で作るうどんにはあるのだ。
勢いで割愛したけれど、うどんはもちろん茹でている。とても太いのが特長だ。あのナイフでは切り難くて太くなるかギザギザに切れた。でも、うどんって太くてもいいじゃない。偶然性が生み出すハーモーニじゃない。それって素敵じゃん。
国にもよるけれど、アラスカはハンバーガーやステーキなど、脂っこいものが多い。そんな中でのあっさり塩味のうどんは、食べてみるとめちゃくちゃ美味しかった。キチンとチキンや鮭からダシも出ている。日本ですら麺からうどんを作ったことはなかったので、初うどんが今回である。
鶏塩うどんも、鮭塩うどんもどちらもあっさりだった。あっさり選手権があったら、あっさりトップを取るのではないだろうか、というくらいあっさりだった。ただそのあっさりに胃袋は沸き立っている。求めていたあっさりなのだ。
麺は太くて噛みごたえがあったけれど、悪くない。ほうとうに近いけれど、コシと言い切ればいいのだ。うどんだ。どちらにしろ、アラスカでは他で食べられない日本に近い味であることは間違いない。とにかく胃が喜んで消化しているのがわかった。
海外でも日本の味を手軽に作れないかと思い、作ってみた。とても安価に手軽に作れた気がする。メキシコで体調を壊した時に、どれもこれも味が濃くて困っていたので、そんな時はこれだとわかった。後で気がついたけど、小さな醤油くらい持っていけばいいんだなと。
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