広告企画♪ 2018年8月16日

最強のパワースポットでわらじカツ丼を食べる~投稿頼りの旅in埼玉~

これが名物わらじカツ!
これが名物わらじカツ!
みなさんからの投稿だけを頼りに旅に出る企画、それが投稿頼りの旅。

今回の旅は真夏の埼玉県。最強パワースポット、屋上遊園地、せんべい、うどん、地下神殿などなど。

行きたいところはたくさんあるけど今年の埼玉はなにしろ暑い!みどころ満載の旅は熱中症とのたたかいでもありました。



※これまでいろいろな場所で取材をした記事を読めば誰もが知ったかぶりできるはず。「知ったかぶり47」は、デイリーポータルZと地元のしごとに詳しいイーアイデムとのコラボ企画です。

※姉妹企画「地元の人頼りの旅」もよろしく。
行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:最先端の地「トドヶ崎」で最先端の養命酒を発表する

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

たくさんの投稿をありがとうございました

埼玉のおすすめを教えてください!そんな呼びかけに今回もたくさんの投稿が集まりました。

みなさん、ありがとうございます。すべて読ませてもらいました。なんというかみなさんの愛がすごかったです、埼玉に対するほとばしる愛が。時間と、あとで説明しますが今回は記録的な猛暑もありまして、残念ながら全部をまわるわけにはいかなかったのですが、順番に報告させてください。

関東最強のパワースポット三峯神社

・行きにくいですが秩父にある三峯神社はおすすめです。途中通る二瀬ダムもまた楽しいです。
・秩父の三峯神社。なんというか、埼玉のチベットです。
関東最強のパワースポットと言われる三峯神社。僕は厄年すらお祓い一つせずにクリアしてきたほどの無神論者なのだけれど、最強とか言われるとがぜん行ってみたくなる。埼玉のチベットとはどういうことか。
気軽に来てみたらなるほどチベット感ありました。
来てみたらなるほどすごい場所でした。
向かう先は公共機関で行こうとすると最寄りの駅(秩父駅)から急行バスで1時間以上、車でも最寄りのインターからたっぷり2時間かかるという。この日の埼玉の気温は37度前後。これはパワースポットにたどり着くまでにすでにパワーを使い果たす可能性がある。

神社に向かう途中、ダムの上を走る場所があった。投稿にもあった二瀬ダムである。
ダムの堤体の上を車が走ります。
ダムの堤体の上を車が走ります。
ダムなので片方はダム湖、片方は断崖です。
ダムなので片方はダム湖、片方は断崖です。
先日の萩原さんの記事でイギリスのCraig Gochダムという場所が同じように稜線を車で走ることができていたが、他にもダムの上を走るこういう道ってあるのだろうか。普通に走っていると気にならないのだけれど、いざここがダムの上と考えるとハンドルを持つ手に力が入る。
行く先々に看板が出ているので間違えることはないと思います。
行く先々に看板が出ているので間違えることはないと思います。
このあとも長くて細い山道をぐいぐいと登っていくのだけれど、それはぜひ行ってみて体験してもらいたい。すごいから。景色に見とれて山肌を転がり落ちないようにだけ注意してください。

長い道のりを経てやってきました三峯神社。
ひゃっほう。
ひゃっほう。
暑い日だったので軽装で来たのだけれど、現場についた瞬間に短パンなのが申し訳ない気分になった。
狛犬は守り神でもある狼。冗談は通じなさそうな顔をしている。
狛犬は守り神でもある狼。冗談は通じなさそうな顔をしている。
さすが標高が1000メートルを超えているというだけあって下界よりも涼しく、この時点で30度ほどだった。たぶん下界より5~6度は低いと思う。しかもただ涼しいだけではなく、なんというか空気にこれまでに感じたことのないような種類の張りがあるのだ。
静かです。
静かです。
静かなのである。たとえばクラス全員が制服でまじめにテスト受けている部屋にいきなり体操着で入ってしまったような感じ。平日とはいえ参拝者はたくさんいるのだけれど、誰にも浮かれた雰囲気が一切ない。

本殿までは大木に囲まれた道を歩いていく。
道の真ん中に生えている木にすら大きな力を感じる。
道の真ん中に生えている木にすら大きな力を感じる。
いくつかの木は神としてまつられていました。
いくつかの木は神としてまつられていました。
最強のパワースポットと聞いてきたから、というわけではないと思うのだけれど、確かに山全体からちょっとただならぬ気配は感じる。なにしろ参拝者を取り囲む樹齢数百年と思われる木々たちが、上の方からものすごいにらみを利かせてくるのだ。

中でもご神木とされている大木が本殿の脇に2本あってこれがまたすごい。
触ることができるらしいので。
触ることができるらしいので。
触らせていただきました。
触らせていただきました。
ご神木の表面はもう何十年も参拝者に触られ続けているからだろう、つるつるになって他よりも少しへこんでいた。そこから感じられる何千何万という「気」をもらいに来た人たちの思いが感じられる。ご神木を両手で触ると、安心感のある質量で僕の手を押し返してくる。

このあと本殿も参拝したが、写真を撮るのがはばかられたので想像にお任せします。一言でいうとすごかったです。

参拝を終えて山を下ると途中に休憩所がある。
ようやく人の領域に帰ってきた感じがしてほっとします。
ようやく人の領域に帰ってきた感じがしてほっとします。
これは食べないわけにはいかないだろう。
これは食べないわけにはいかないだろう。
休憩所は山のてっぺんにある海の家、といった雰囲気のとてもオープンなお店で、座敷もあるけれどおすすめは周囲の山を一望できるテラス席だと思う。食事を注文するとセルフサービスでいただくことができるシソジュースがうまい。
最高すぎる。
最高すぎる。
30度以上あるので涼しいとはいいがたいのだけれど、なにしろ空が近くて空気がうまい。どうだろう、みなさんの想像する埼玉のイメージを覆す光景ではないだろうか。少なくとも僕の埼玉感はしょっぱなでひっくり返りました。
で、わらじカツ丼ですが。
で、わらじカツ丼ですが。
これがまたおなかいっぱいの美味さなのでした。
これがまたおなかいっぱいの美味さなのでした。
山道の途中で会った人は中国からの観光客の方だった。道を聞かれたので「この上をまっすぐです!」と教えたのだけれど、すみませんまっすぐ行くとビジターセンターでしたね。
ビジターセンターでは展示してあるはく製を触ることができる。
ビジターセンターでは展示してあるはく製を触ることができる。
一つ目からいきなり埼玉のいちばん深いところを体験してしまったような気がするが、最初にここに来て埼玉のすごさを実感しておいたのはよかったとも思う。これは油断できないぞ、と心構えができた。

次は一転、庶民的な埼玉を紹介します。


次は小江戸川越を歩きます。

いったん広告です

旅は道連れ

・川越にある丸広百貨店は屋上遊園地がすてきです
・丸広百貨店にある今や絶滅寸前の「デパート屋上遊園地」は必見
丸広百貨店の遊園地をすすめられて川越駅にやってきた。三峯神社にくらべると感動の来やすさである。本当に同じ埼玉なのだろうか。
僕の想像していた埼玉はこちらです。
僕の想像していた埼玉のイメージがまさにこんな感じ。
川越駅前では時間ちょうどになるとからくり時計が動き出すのでちょっと気にしておいてほしい。
時間になると音楽とともに看板が反転します。
時間になると音楽とともに看板が反転します。
じゃじゃーん
じゃじゃーん
ばーん。
ばーん。
僕が喜んで写真を撮っていると、通行人の何人かはカメラの先を追ってこのからくり看板を見つけていた。誰かが撮ってるものって気になりますよね。

ところで丸広百貨店である。埼玉に住む友人に丸広という百貨店を知っているかと聞くと、もちろん知ってるよ!とのことだった。行くのか、行くとしたらいつ行くのか、と聞かれたので、これから行くところだと答えたところ

「じゃあ僕も行くので駅で待ち合わせしましょう」と。

というわけで急に仲間が増えた。
旅は道連れ、である。
旅は道連れ、である。
しかし平日ど真ん中のまっ昼間である。どういうことか。川越在住の友人、植草さんは言う。

植草さん「いやあ、たまたま家にいたんですよね、そうしたら安藤さんが埼玉来るっていうじゃないですか。これは、と思いまして、起きて出てきましたよ。」

親切すぎるだろう。それか暇すぎるのかどっちだ。埼玉の人ってみんなそうなんですか?

植草さん「埼玉の人って地元愛がすごいんで、来てくれるんなら案内しなきゃ、ってなるんです。ほら、生まれて育って、就職しても埼玉に住み続けてる人って多いですよね。東京にも出やすいし、なにより住みやすいですから。」

なるほど。好きな地元を人に薦めたくなる気持ちはわからなくもない。そして遊園地に行くなら一人より二人の方が楽しいのでたすかります!さらに植草さんは丸広のエキスパートであることも判明した。
中心街クレアモール。この商店街には植草さんが高校時代に通い詰めたゲーセンがあるらしいです。
中心街クレアモール。この商店街には植草さんが高校時代に通い詰めたゲーセンがあるらしいです。
植草さん「丸広には母が生前勤めていたので、僕はほとんどの売り場のおばちゃんと顔見知りだったりします。つい昨日も用もないのに屋上のペット売り場を覗きに行きました。」

丸広には取材許可取ったか、と聞かれたので取ってないと答えると、じゃあなにか言われたら僕がなんとかしますよ、とのこと。心強い。ほんと来てもらってよかった。

駅から歩いて5分ほどで丸広についた。
丸広。
丸広。
店内はこれぞ古くからある地方の百貨店、といったたたずまいで落ち着いて買い物ができる。渋いカラーリングのエスカレーターに乗り継ぎ、屋上をめざす。
「ここです。ここが丸広の屋上遊園地です。」
「ここです。ここが丸広の屋上遊園地です。」
以前蒲田の屋上遊園地に行ったことがあるが、あそこは確かリニューアルされてきれいになってしまったのだ。なってしまった、という言い方はよくないかもしれないが、こういう場所はそのままの良さ、というのもあるのだ。

そのてん丸広百貨店の屋上遊園地には「そのままの良さ」がまさにそのままの形で残されていた。けっして放置されているわけではなく、きれいにメンテされながらも落ち着きだけを醸造しているのだ。
屋上といえばこういうのですよね。
屋上といえばこういうのですよね。
わんぱくランドという名前も直球で胸に響く。
わんぱくランドという名前も直球で胸に響く。
キャラクターやカートもいいが、屋上遊園地といえばなんといっても観覧車だろう。それも大阪HEP FIVEみたいなやつじゃなく、このサイズのやつがいい。
思わず「そう!これ!」と言ってしまった。
思わず「そう!これ!」と言ってしまった。
子供のころ、名古屋のデパートの屋上遊園地にあこがれていた。しかしうちの親は今思えば厳しかったので、そこは行きたくてもけっして連れて行ってはもらえない場所だったのだ。

地元を離れてそんな思いも忘れ、自分で行こうと思えばいつでも行ける年になり、久しぶりに愛知に帰った時にふと思い出して行ってみたらもう遊園地はなくなっていた。
もちろん乗った。
もちろん乗った。
金網越しに川越の街を見下ろす。
金網越しに川越の街を見下ろす。
植草さん、もうすぐてっぺんですよ!
植草さん、もうすぐてっぺんですよ!
てっぺんからの眺め。ちょうどいい高さである。
てっぺんからの眺め。ちょうどいい高さである。
興奮した。

でかい観覧車は男二人で乗るには時間的に少し長すぎるだろう。このくらいがいいのだ。

そのまま植草さんに川越の街を少しだけ案内してもらった。

小江戸川越を歩く

本当にいい。この景色だけでも来た甲斐がありました。
本当にいい。この景色だけでも来た甲斐がありました。
なんでもない日でも浴衣で観光している人がいるのもいいところ。
なんでもない日でも浴衣で観光している人がいるのもいいところ。
植草さん、このあたりの名物っていったらなんなんですか?

植草さん「芋ですかね。」

芋?

植草さん「はい、芋。なぜか昔から芋をよく食べているような気がします。」

なるほど。どこにでもありそうだけれど、あえて名物にはしない食べ物である。
あと川越には顔ハメが多いらしい。しかしなぜ黒電話を。
あと川越には顔ハメが多いらしい。しかしなぜ黒電話を。
二人して口笛を吹きながら歩いていると、ほんのりといい香りが流れてきた。植草さん、これは鰹節ですね。

植草さん「そうそう、川越には鰹節とうなぎのお店も多いんです。」
ねこまんま?
ねこまんま?
はい!ねこまんま!
はい!ねこまんま!
なるほどー、ねこまんまですね。
なるほどー、ねこまんまですね。
川越の新しい名物「ねこまんま」は香ばしい鰹節の中に焼き立てのおにぎりが収まっていた。そのままかぶりつくと口から入った香りが鼻からふわっと抜ける。
うっまー。
うっまー。
植草さん「あ、プラッシーだ!安藤さんプラッシー知ってますか?」

たまたま通りかかった地元の雑貨屋のようなお店で植草さんが立ち止まった。知らないです、なんですかプラッシーって。
プラッシー?
プラッシー?
プラッシーを眺めていると、ドラマのようなタイミングでお店のおばちゃんが出てきてくれた。

「これはね、プラッシー。赤ん坊がおなか壊したときなんかにプラッシー薄めて飲ませたりしてたのよ。栄養あるみたいね。」

プラッシーはとくに川越限定というわけではなく全国で飲めるらしいのだけれど、レトロな感じが川越の雰囲気にぴったり溶け込んでいた。
確かに体によさそうなおいしさでした。
確かに体によさそうなおいしさでした。
植草さんは行く先々に知り合いがいて、地元出身の政治家先生と歩いているような気持ちになった。そしてこの川越、街全体が「小江戸」をテーマに作られたテーマパークみたいな仕上がりなのだ。植草さんもねこまんま屋さんもプラッシーのおばちゃんも、このテーマパークの従業員なんじゃないかと思えるくらい、見ていて気持ちがよかった。

次はうどん県埼玉のうどんです。


埼玉のうどんは「こし」が強い。

いったん広告です

肉汁うどんにうどん県の実力を見た

・うどんなら藤店うどんをぜひ
・藤店うどんはいつも並んでるけど回転早いし平日ならそんなに並ばないと思います
デイリーの過去記事を見ていても埼玉の記事に圧倒的にうどん記事が多いのはライターの大塚さんがこだわりを持って特集していたから、ということもあるが、それを読んで育ってきたわれわれ読者としては、埼玉といえばもはやうどん県なのだ。

そんなうどん県埼玉を代表するうどん屋としてすすめられたのがこちら「藤店うどん」。
平日の昼の時間帯を過ぎたころにも関わらず並んでいる人が。
平日の昼の時間帯を過ぎたころにも関わらず並んでいる人が。
店内は満席である。当たり前だけど全員うどんを食べている。
店内は満席である。当たり前だけど全員うどんを食べている。
肉汁うどんが基本、次にきのこ汁らしいです。
肉汁うどんが基本、次にきのこ汁らしいです。
出てきたうどんに顔がにやける。
こんなの美味いに決まっているだろう。
こんなの美味いに決まっているだろう。
うちにも製麺機があるのでごくたまにうどんを手打ちすることがあるのだけれど、僕はこしのある麺が好きなので自分で作るときにはめいっぱいこねる。そういう人には埼玉のうどんはもってこいだと思う。まさに顎が痛くなるくらいのこしの強さなのだ。
つやっつやです。
つやっつやです。
こうやって冷たいうどんを熱々のつけ汁につけて食べるタイプのうどんってよくあるものなのだろうか。すくなくとも僕は今まで食べたことがなかった。
あつあつの肉汁につけていただきます。
あつあつの肉汁につけていただきます。
初体験だけど食べる前からうまいとわかる。そして食べてみるとやっぱりうまい。肉がうまい、ネギがうまい、出汁がうまい、麺がうまい。合わさるともちろん全部うまい。特にやさしい甘みの出汁と一緒に食べるとろとろのネギがたまらなかった。

ラーメンだと毎日は食べないが(毎日食べてる人もいるけど)うどんならば毎日でもいけるな、と思いました。

灼熱の草加せんべい食べ歩き

・やっぱり草加せんべいです
・駅前でもらえるせんべいマップを手に、ぜひ草加を歩いてください!
名前だけは聞いたことあった草加せんべい。投稿だけを頼りに草加駅にやってきた。
駅前には地層みたいなモニュメントが水を吹いていました。
駅前には地層みたいなモニュメントが水を吹いていました。
草加駅を降りたらすぐにせんべい屋さんがあってしょうゆの香りがしているのかと思って来たらまったくそんなことはなく、東口には地層みたいなモニュメントが、西口にはパチンコ屋がそびえたっていて一瞬どうしたものかと思った。

投稿にもあるように、まずは西口を出てすぐある観光案内所でせんべいマップをもらうといいと思う。
せんべいマップを見るとせんべい屋さんがあるのは割と駅から離れた場所だということがわかる。
せんべいマップを見るとせんべい屋さんがあるのは割と駅から離れた場所だということがわかる。
せんべいを食べ歩くためにはせんべい屋さん密集地帯まで歩く必要があるのだが、今年の関東はなにしろ暑く、この日も埼玉では猛暑の記録が塗り替えられようとしていた。
日の当たる道に出るとほぼ毎日こんな感じ。
日の当たる道に出るとほぼ毎日こんな感じ。
駅から出た瞬間、熱波が頭を押さえ込んでくる。太陽光に重さがることを体感する瞬間である。あっちー。
沖縄31度、ドバイ38度、埼玉41度。みたいな情報にはもう飽きたからな。
沖縄31度、ドバイ38度、埼玉41度。みたいな情報にはもう飽きた。
それでもせんべいを楽しみに駅から20分ほど歩くと、目的の地帯へと突入する。道の両側に50メートル間隔くらいでせんべい屋さんが立ち並ぶせんべいストリート(とは呼ばれていないみたいですが)である。
ふらりと入っていいのかと迷うくらいの立派なお店構え。
ふらりと入っていいのかと迷うくらいの立派なお店構え。
せんべい屋さんはいかにも長いことやってます!という味の染みたお店ばかりで、一見さんが入っていいものなのかちょっと迷った。
だいたい1枚単位で買うことができるので手軽です。
だいたい1枚単位で買うことができるので手軽です。
しかしそんな心配はまったく不要で、草加のせんべいのお店は家とお店とを兼ねているところが多く、お店に入ると奥の方からステテコ姿のお父さんが出てきて「どうもようこそ」みたいな気軽さで対応してくれる。どのお店もだいたいせんべい1枚から買うことができるので食べ歩きにも最適である。
歩くとせんべい屋にあたる。
歩くとせんべい屋にあたる。
何件かのせんべい屋さんでは今でも軒先で職人さんがせんべいを手焼きしていた。
運がいいと焼き立てのせんべいが食べられます。
運がいいと焼き立てのせんべいが食べられます。
こちら焼き立てのほかほか。
こちら焼き立てのほかほか。
焼き立てのせんべいはパリッと香ばしくて、これを食べ歩いている瞬間だけ外の暑さを忘れる。

…なんてことはまったくなかった。外すごい暑い。汗でせんべいが湿ってしまうんではないかと心配になるほど、ひとかみごとに汗が噴き出す。
こちらのお店でも手焼き。脇にあるマシーンはなんだろう。
こちらのお店でも手焼き。脇にあるマシーンはなんだろう。
焼きの部分だけは職人さんが手で焼いて、焼かれたせんべいを隣のマシーンに放り込むと
焼きの部分だけは職人さんが手で焼いて、焼かれたせんべいを隣のマシーンに放り込むと
ローラーの間を通ってしょうゆを塗られたせんべいが
ローラーの間を通ってしょうゆを塗られたせんべいが
出てくる。
出てくる。
ここまで自動化されているのなら焼の部分も自動化できるのでは、と思ったが、せんべいは気温とか湿度とかの条件によって焼け方が違うのだとか。だから焼きの部分だけはできれば人の手でやりたいのだ(いまは工場で作っているお店の方が多いみたいですが)。

各お店で買ってきた焼き立てのせんべいを、たまたま見つけた日陰のある公園で食べる。空気がねっとりしていてすぐそこに見える車がかげろうで揺れていた。
うまい。
うまい。
せんべいうまい。しかし、暑い。この時点で僕はたぶん軽い熱中症だったんじゃないかと思う。

脚に力が入らずふらふらしたのでベンチに座ってせんべいを食べていると、次の瞬間体から一気に汗が滝のように流れて止まらなくなった。
遠のく意識。Tシャツの色が変わっているのは汗です。
遠のく意識。Tシャツの色が変わっているのは汗です。
これはまずい。せんべいの食べ歩きで倒れたとなるとこれは落語の世界である。「だって行く先々にせんべい屋がありやがるんだもの」。

かすむ目をこすりながらも振り向くと、そこには草加せんべい発祥の地の記念碑が建ってるじゃあねえか。
運命を感じました(左がせんべい、右が火箸らしいです)。
運命を感じました(左がせんべい、右が火箸らしいです)。
発祥の地でせんべいを食べながらしばらく休んでいると視線が定まってきた。あの状態、いま考えると体がエネルギーを失った、いわゆるハンガーノックだと思う。そういえば朝から水分しか取っていなかった。

せんべいは元がお米だし、しょうゆ味で塩分も摂取できるので補給食にもむいているのかもしれない。せんべいに歩かされ、結果的にせんべいに救われた草加取材だった。


次は珈琲屋OBの巨大パフェ。

いったん広告です

珈琲屋OB

・予習なしで珈琲屋OB行ってほしい
・珈琲屋OBは外せませんね。長居できます
何人かから熱烈におすすめされたのがこちら喫茶店「珈琲屋OB」。僕は愛知出身なので特殊な喫茶店にはそれなりに慣れているつもりである。埼玉のお手並み拝見といこうではないか。
珈琲屋OB八潮店。
珈琲屋OB八潮店。
ここまで大きな道路を歩いてやってきたのだけれど、途中にオートバックスがあって西松屋があって、初めて来たはずなのになぜか既視感があった。今回の埼玉取材は全体的にそうなんだけれど、どこへ行ってもどこかで見たことがありそうな景色なのだ。しかし安心しているとたまにぽっかりと開いた埼玉の深淵に落ちる。この珈琲屋OBがまさにそれだった。

ログハウス調の店内は冷房がキンキンに効いていて体が一気に軽くなる。この時間帯、席は自由ですと言われたので窓際に座ると、隣の席では中学生くらいの子供が母親に進路の相談をしていた。

ここまではいわば日常の延長であろう、しかし中学生の前に置かれた飲み物を見て、ここが埼玉の深い部分とつながっていることを確認した。

アイスコーヒーらしきものがジョッキで置かれているのだ。
それ、ジョッキだよね。
それ、ジョッキだよね。
なんだろうこの店は。普通に居心地のいい空間なのに、何かが決定的に違う。僕の中のセンサーが「気をつけろ」と警告してくる。

ジョッキコーヒーの次に現れた違いは水のピッチャーだった。

店員さんから「お水はセルフでお願いします!」と言われていたので、テーブルに置いてあったピッチャーを一度手にしたのだが、これが違った。
これ、水じゃない。
これ、水じゃない。
ガムシロだ。
ガムシロだ。
ピッチャーの中身はガムシロだった。ものすごい量である。この量のガムシロを一度に見る機会はおそらくこのお店か工場くらいなものだろう。
ブレンド300円、アイスコーヒー390円と安い。あの量が出てくる余地がどこにあるのか。
ブレンド300円、アイスコーヒー390円と安い。あの量が出てくる余地がどこにあるのか。
店員さんにおすすめを聞き、人気ナンバーワンだというパフェを頼んだ。ドリンク部分を選べるとのことだったので、甘くない飲み物はありますか、と聞くと、ないとのことだった。アイスココアが中でも甘くないというのでそれをお願いしてトイレに立った。パフェなので準備にしばらく時間がかかると思ったのだ。

トイレから戻るときに店員さんとすれ違ったら「パフェ、お席に置いておきましたから」という。

速すぎないだろうか。トイレの中だけ時間の進み方おかしいのか。で、席に戻るとこの状況である。
おれは夢を見ているのか。
責任者と話がしたい。
初めて見るタイプの食べ物がテーブルに置かれていた。
ツーショット写真撮るレベル。
思わずツーショット写真撮るレベル。
高さは50センチくらいあろうか。そしてその独自な造形はいままで見てきたパフェの概念を覆す。正直ヘボコンでもはじまるのかと思った。
大きさの比較にiPhoneを並べたがあまり意味があるとは思えなかった。
大きさの比較にiPhoneを並べたがあまり意味があるとは思えなかった。
これが珈琲屋OBのパフェなのである。写真を撮るため向きを変えようとしたら重くて持ち上がらなかった。

あの時店員さんが「セットの飲み物どうしますか」じゃなく「飲み物部分どうしますか」と言っていた意味もわかった。土台のデキャンタの部分はぜんぶアイスココアである。たぶん1リットルくらいあろう。
オラフみたいな部分からいただく。
オラフみたいな部分からいただく。
隣の中学生は特にこの事態に驚くでもなく、夏休み前の自分の成績について親に報告をしていた。思ったよりも5教科が取れていたこと、そして音楽と美術がよくなかったこと。

そんなことよりこれ見て!隣のパフェ見て!と思った。
ぎりぎりパフェを象徴していた上の部分を食べてしまうといよいよなんだかわからなくなる。
ぎりぎりパフェを象徴していた上の部分を食べてしまうといよいよなんだかわからなくなる。
この建物をパフェと言わしめていた上の部分を食べきってしまうと、残すは大量のアイスココアのみとなった。どうやって飲むのかと思うだろう。安心してください
裏にストローが隠れていますから。
裏にストローが隠れていますから。
しかも長い。
しかも長いやつが。
器は見ての通りワインのデキャンタである。ということは長いので背筋を伸ばさないとストローに口が届かない。
自然と飲む時いい姿勢になります。
自然と飲む時いい姿勢になります。
半分ほど飲んだら寒さで震えがきた。外は37度だが店内は冷え冷えなのだ。
たまらず上着を着た。
たまらず上着を着た。

パフェを食べたら季節が進んだ

僕は子供のころから食べ物を残してはいけないよと教育されて育ったため、どんな巨大なメニューでもがんばって食べ切ることにしている(もしくは持って帰ってあとで食べる)。それが今回は飲みきれなかったのだ。こんなこと、記憶の限り近年なかったことである。店員さんに謝って、最後300ミリリットルくらいを残させてもらった。

他のメニューも見てみたかったが、ひとりで来てしまったので複数個注文することは到底できそうもなかった。

お店から出ると来た時よりも周りの気温が少しだけ下がっていた。僕がパフェを食べている間に季節が進んだのかもしれない。
見上げた空が高かったです。
見上げた空が高かったです。


最後は地下神殿に潜ります。

いったん広告です

地下神殿に降りる

・首都圏外郭放水路の見学はお勧めですが要予約かも
首都圏外郭放水路については8年ほど前に大山さんが詳しく取材しているので、僕も知った気にはなっていた。そしてずっと行きたいとも思っていたのだ。おすすめしてもらったおかげで行くことができました。
この静かなグラウンドの地下にすごい施設が建てられています。
この静かなグラウンドの地下にすごい施設が建てられています。
首都圏外郭放水路は、川が多く土地が低い埼玉のこの辺りを洪水被害から守るために作られた。簡単に説明すると、大雨で水位を超えた5つの川からあふれた水をいったん地下に流して貯める、その貯めた水をポンプで近くにある大きな川(江戸川)へと流すのだ。
川につながるそれぞれの立坑から水が流れ込んできます。
川につながるそれぞれの立坑から水が流れ込んできます。
川から水が流れ込んでくるなら地下なんて危なくて見学できないだろう、そう思っていた。しかしこの施設、常に稼働しているわけではない。これまでも大雨などの影響で川の水位がある高さを超えたときにはじめてここに水を流してきたが、だいたい稼働回数は年間に7~8回くらいなんだとか。もちろんその前後は中には入れないが、それ以外の時期には見学が可能。
地下への入り口がこちら。
地下への入り口がこちら。
この日もばっちり40度近くありました。埼玉!
この日もばっちり40度近くありました。埼玉!
地下施設には100段以上ある階段で降りるというのでちょっと警戒していたのだけれど、地上が40度あろうと地下は途中から寒いくらいだった。そして降りるにつれ体を包む湿度というか水分がすごい。雰囲気で川底にいるのがわかる。
この広大な空間がすべてじんわり水に濡れているという恐ろしさ。
この広大な空間がすべてじんわり水に濡れているという恐ろしさ。
当たり前だけれど、稼働時にははるか頭上まで水が来るのだ。
当たり前だけれど、稼働時にははるか頭上まで水が来るのだ。
説明員の方に、実際にこの空間に立坑から水が入ってくる様子を体験できるARアプリを見せてもらった。
このアプリを通すと水が入ってくる様子が体感できます。
このアプリを通すと水が入ってくる様子が体感できます。
みるみるうちに背の高さまで水が来た。
みるみるうちに背の高さまで水が来た。
そして次の瞬間には水の底である。正直怖いけれど、これを見ることでこの施設の役割がよくわかった。
そして次の瞬間には水の底である。正直怖いけれど、これを見ることでこの施設の役割がよくわかった。
このアプリ、水の挙動が見えるように実際のタイムラインよりも速く作られているとのことだったが、この空間でこの映像を見せられるのはお化け屋敷以上にリアリティがあって怖かった。ちなみに地下空間に立ち並ぶ神殿みたいな柱は、水が入った時に地上が浮かばないように押さえているのだとか。

圧倒的な空間に災害レベルの水が入るということは、それくらいの力を生み出すということなのだ。改めてすごいもの作ったな、埼玉。

稼働すると貯水槽には泥がたまるため、定期的に重機も入れて泥を除去していると言っていた。どこから重機入るの?と思うだろう。
天井のここが開くんだってさ。
天井のここが開くんだってさ。
すべてにおいてスケールが大きすぎて、口をぽかんとあけながら見上げてしまった。

普段は一般公開していないという第一立坑も夏休みの期間中はのぞき込むことができるので行くなら今です。
順番にのぞき込みます。
順番にのぞき込みます。
深くてでかい、第一立坑。
深くてでかい、第一立坑。
これは貯水槽の中から見た同じ第一立坑。ここから今僕が立っている場所に向かって大量の水が流れ込んでくるのだ。
これは貯水槽の中から見た同じ第一立坑。ここから今僕が立っている場所に向かって大量の水が流れ込んでくるのだ。
見学後にはダムカードに似せた神殿カードがもらえます。
見学後にはダムカードに似せた神殿カードがもらえます。
カードをもって近くのお店に行くと割引もあるぞ。
カードをもって近くのお店に行くと割引もあるぞ。
以上、真夏の埼玉からお送りしました。リアルに2キロ痩せました)

埼玉、すごかったっす

みなさんに勧められるままに歩いた埼玉ですが、おかげですごい体験ができたと思います。自分ではいかない、食べないものを勧められるがままに見て、触れて、食べてみる。そうすると普通の町がいつもよりもキラキラして見えると思いますよ。

誰かのおすすめを素直に聞いて旅をする企画、ほんと面白いからやってみてください。個人的に珈琲屋OBはこのあとたくさんの人にすすめました。


埼玉出身の編集者小笠原さんとの対談はこちら。

▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ