特集 2018年6月27日

不器用だけど旧志免鉱業所竪坑櫓っぽいものを作れた

3Dプリンターがあれば不器用でも複雑なものをキレイに作れる。3Dプリンターを作った人たちに感謝。
3Dプリンターがあれば不器用でも複雑なものをキレイに作れる。3Dプリンターを作った人たちに感謝。
僕は工作が下手だ。今更書くまでのこともないが、これまでの工作記事を読み返すと本当にヒドイ。

そんな僕でも文明の利器を使えば複雑な造形物を正確に作れるのだ。

不器用が神の力を手に入れた、ここ1か月くらいの記録です。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:松本商店の美味しい干物レシピ(デジタルリマスター版)

> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

まず、過去の工作を見て欲しい

僕が過去にどういうものを作ったのか、どれくらいひどかったのかちょっと見ていただきたいと思います。
デイリーポータルZで初めて書いた記事『七輪の七輪グランプリ』。よく考えると意味が全然分からないし、七輪の下に車輪を付けただけの雑工作。そして、自分の若さに驚く。(今から12年前)
デイリーポータルZで初めて書いた記事『七輪の七輪グランプリ』。よく考えると意味が全然分からないし、七輪の下に車輪を付けただけの雑工作。そして、自分の若さに驚く。(今から12年前)
7年前の『ミニ四駆に翼をつければ飛ぶか?』の、絶対飛ばない感じの工作もヒドイ。よくこれで原稿料受け取ったな、君は。
7年前の『ミニ四駆はヘリコプターになれるか?』の、絶対飛ばない感じの工作もヒドイ。よくこれで原稿料受け取ったな、君は。
7年前の『ミニ四駆に翼をつければ飛ぶか?』の、絶対飛ばない感じの工作もヒドイ。よくこれで原稿料受け取ったな、君は。
上のミニ四駆記事から1か月後に書いたミニ四駆ヘリコプター。『ミニ四駆はヘリコプターになれるか?』。驚いた事にちょっと飛んだが、全体的な工作のクオリティーは低い
2011年、7年前に作った『ギターを弾きながギューンって滑るマシン』。君はよくこれで原稿料を(2回目)。
造形は諦めて色だけ塗った『肌色に塗ったモビルスーツの太ももがセクシーすぎてヤバイ件』。これが2年前。この頃になると、自分は工作が下手だと自覚して難しいことはしないようになりました。
造形は諦めて色だけ塗った『肌色に塗ったモビルスーツの太ももがセクシーすぎてヤバイ件』。これが2年前。この頃になると、自分は工作が下手だと自覚して難しいことはしないようになりました。
2017年、極力手を加えない方法を考えた『葉っぱで虫を作るとすごく楽しい』。12年前から比べると掛ける労力は少なく、それでいて良い感じに見えるテクニックを身に付けました。これが老獪でしょうか。
2017年、極力手を加えない方法を考えた『葉っぱで虫を作るとすごく楽しい』。12年前から比べると掛ける労力は少なく、それでいて良い感じに見えるテクニックを身に付けました。これが老獪でしょうか。
という感じでヒドイ工作記事連発してきた僕の前に救世主があらわれました。

3Dプリンターです。

すごく良い

3Dプリンターなんて珍しくもないという人もいっぱいいるんでしょうけど、僕は1か月ちょっと前(2018/05/21)に買いました。

前回の『十万石まんじゅうを3D化するまでのお話』の時点で3Dプリンターを買ってから10日くらいの話で、以降1か月間ずっとなにかを作っていました。

ドはまりです。
電子レンジと同じくらいの大きさですね。意外と場所を取りません。僕が買ったX-one2というモデルで5万円弱です。安いですね。完成品で、設置していきなり絶好調に動きます。最高かよ。
電子レンジと同じくらいの大きさですね。意外と場所を取りません。僕が買ったX-one2というモデルで5万円弱です。安いですね。完成品で、設置していきなり絶好調に動きます。最高かよ。
前回の記事を入稿後に十万石マトリョーシカを作りました。
同じデータでサイズを変えて作ったりもできます。
同じデータでサイズを変えて作ったりもできます。

で、複雑なものも作れるようになりました

と言う感じで3週間くらい色々作ってたら、旧志免鉱業所竪坑櫓(しめこうぎょうしょたてこうやぐら)を立体化することが出来ました。

知らない方のためにリンクを張ると、こういう建物です。かっこいい。
手先が不器用でも機械が作ってくれるので大丈夫です。
手先が不器用でも機械が作ってくれるので大丈夫です。
裏側。実物を見たことはないのですが、雰囲気は出てるような気がします。
裏側。実物を見たことはないのですが、雰囲気は出てるような気がします。
ペン立てです。箸入れにしてもいいかも知んない。
ペン立てです。箸入れにしてもいいかも知んない。
左の白いのは試作品です。細かい部分を見るとちょっと違います。
左の白いのは試作品です。細かい部分を見るとちょっと違います。
上の写真は『サポート』を取った状態の完成品で、実は完成前にひと手間あります。

3Dプリンターで作った直後は下の写真みたいにサポートがくっついています。
空中になる部分(天井とか窓の上の部分とか)をキレイに造形するには、溶けたフィラメントを支える『サポート』が要ります。これはまだサポートを外してない状態。窓やでっぱりの下にサポートが付いています。
空中になる部分(天井とか窓の上の部分とか)をキレイに造形するには、溶けたフィラメントを支える『サポート』が要ります。これはまだサポートを外してない状態。窓やでっぱりの下にサポートが付いています。
ニッパーなどで外していきます。
ニッパーなどで外していきます。
半分くらい外した状態。
半分くらい外した状態。
全部外した状態。これで完成品になります。がれきに埋もれたっぽくてかっこいいですね。
全部外した状態。これで完成品になります。がれきに埋もれたっぽくてかっこいいですね。
次のページにつづきます。
いったん広告です

どうやって作るのか?

どうやって3Dプリンターで物を作るのかと言うと、まずは3Dモデルのデータを作ります。

僕はFUSION360というソフトを使いました。結構な売り上げになるまで無料で使える3DCADソフトです。太っ腹ですね。

FUSION360はコチラ
こんな画面で立体を作っていきます。
こんな画面で立体を作っていきます。

めっちゃ簡単

3DCADというとなんか難しい気がしますが、FUSION360の使い方は非常に簡単です。

パソコンを使える人なら、半日である程度の使い方を習得できるでしょう。
まず平面に図形を描きます。線、四角、円、多角形などいろいろ描けます。
まず平面に図形を描きます。線、四角、円、多角形などいろいろ描けます。
図形を押し出すと立体になります。
図形を押し出すと立体になります。
とりあえず直方体が出来ました。
とりあえず直方体が出来ました。
直方体の面に円を描いて押し出して穴を開け、上に四角を描いて押し出してみた感じ。
直方体の面に円を描いて押し出して穴を開け、上に四角を描いて押し出してみた感じ。
こんな感じで、絵を描いて押し出したり、いくつかの操作をすると思った通りの立体が出来ます。最初は戸惑うけどすぐ慣れます。

慣れると消波ブロックなんかも作れるようになります。
末広がりの円筒を作って4つにコピーして、正四面体の頂点に配置すると消波ブロックになります。簡単。
末広がりの円筒を作って4つにコピーして、正四面体の頂点に配置すると消波ブロックになります。簡単。
作ったデータを3Dプリンターに送って出力すると実物が出来ます。

神み(かみみ)があります。

はい、こんな感じ。
頭の中の立体が実物になるって、なんかすごいです。
頭の中の立体が実物になるって、なんかすごいです。

GANZっぽい

送ったデータは3Dプリンターで積層されて立体になります。材料は樹脂が針金状になった『フィラメント』です。だいたい1kgで3,000円くらい。安いですね。

一層ずつ出来ていくさまがGANZの転送シーンみたいでグッと来ます。
フィラメントが積層されて形になっていきます。
フィラメントが積層されて形になっていきます。
15時間かけて完成しました。
15時間かけて完成しました。

小さいものは気軽に作れます

旧志免鉱業所竪坑櫓ペン立てみたいなものは時間が掛かるので気軽に作る気にならないのですが、小物なら割と気軽に作れます。

箸置きが欲しいなと思ったら作ればいい。
消波ブロック箸置き。積層型3Dプリンターで上手く作れるようにパーツを分割してあります。
消波ブロック箸置き。積層型3Dプリンターで上手く作れるようにパーツを分割してあります。
これで1個10分くらいでしょうか。急に消波ブロックメーカーの人を集めてホームパーティーをすることになっても安心ですね。
組み合わせて接着剤でとめれば箸置きになります。
組み合わせて接着剤でとめれば箸置きになります。
ほら、かわいいですね。小銭のにおいがします。
ほら、かわいいですね。小銭のにおいがします。

思いつくままに作り続けました

3Dプリンターが家に来てから楽しくて楽しくて、思いつくものを片っ端から作ってきました。

そもそもドローンのパーツを作りたくて始めたことなので、当然ドローン用のアタッチメントを作ってみたり。
トイドローンに4Kアクションカムを載せるためのアタッチメント。
トイドローンに4Kアクションカムを載せるためのアタッチメント。
こういうの作るのでも10個以上試作して大量のフィラメントをゴミにしてたりします。
死屍累々。でも、家ですぐ試作して実物合わせが出来るので開発速度は半端ないですね。
死屍累々。でも、家ですぐ試作して実物合わせが出来るので開発速度は半端ないですね。
プリントに時間が掛かるものは寝てる間にやります。物置部屋に設置したので音は気になりませんが、ワンルームだとうるさいかも知れません。
1日20時間程度働かされている3Dプリンターちゃん。ブラック職場でスマン。
1日20時間程度働かされている3Dプリンターちゃん。ブラック職場でスマン。

すべてがFUSION360に変換される

そんな生活をしていたら、すべてのものがFUSION360のコマンドに見えてきました。

四角を描いて、押し出して、面取り、フィレット(角を丸くする)、結合…。
頭の中でFUSION360のコマンドが実行されていく。
頭の中でFUSION360のコマンドが実行されていく。
ホームセンターで見かけた貯め枡(ためます)もデジタル化を経てプラスチックで造形されます。
なんでも3Dプリンターで作っちゃう病。
なんでも3Dプリンターで作っちゃう病。
U字溝は箸置きになります。
U字溝は箸置きになります。
貯め枡はクリップ入れにどうでしょうか。
貯め枡はクリップ入れにどうでしょうか。
これでプリント時間は大体5時間くらいです。
これでプリント時間は大体5時間くらいです。
もうちょいつづきます。次のページへ。
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で、手とか作った

慣れると複雑なものも作ってみたくなります。

なので、手を作ってみました。小学生のころにターミネーターを見て以来、こういうものが大好物です。
寸法とか形は勘で作りました。
寸法とか形は勘で作りました。
関節はそれなりに動きます。
関節はそれなりに動きます。

3Dプリンターはとても良いものです

ちょっと前のイメージだと、1台30万円くらいで、使うのも調整が結構大変って感じだったんですが技術は進歩してました(どこかの誰かが頑張ったんですね)。

5万円くらいで買えばすぐ動いて、3DCADも無料で超簡単。素人がいきなり立体を造形できます。
TELLOという名前のトイドローン用の充電ホルダーも作りました。iPhoneのACアダプターがピッタリ入ります。
TELLOという名前のトイドローン用の充電ホルダーも作りました。iPhoneのACアダプターがピッタリ入ります。
こんな風に使います。
こんな風に使います。
以前なら、こういうの欲しいなと思ったらネットショップや100円ショップを探したものですが、最近は思いついたら設計して3Dプリントしてしまいます。
猫のゲロを片付けるための小型ちり取りとヘラ。一体収納出来ます。
猫のゲロを片付けるための小型ちり取りとヘラ。一体収納出来ます。
大きさ的にはこんな感じ。ゲロはプランターに埋めてます。
大きさ的にはこんな感じ。ゲロはプランターに埋めてます。
思いついたらすぐ正確な造形物として作れてしまう。今更ですけど3Dプリンターってすごいです。生活が変わるし、考え方が大きく変わりました。

欲しい物が無かったら作っちゃえ、となります。みんなも3Dプリンターを買うといいと思います。
3Dプリンターがあれば、こういうのも好きなだけ作れます。団地貯金箱とかダムブックエンドとかマンホールマグネットとか作り放題!
3Dプリンターがあれば、こういうのも好きなだけ作れます。団地貯金箱とかダムブックエンドとかマンホールマグネットとか作り放題!

簡単すぎてビックリした

3DプリンターとかCADってもっと難しくて敷居が高いものだと思ってましたが、やってみると簡単で楽しいものでした。

使い始めて一日である程度使えるようになって、1週間くらいで思いついた立体を悩まずデザインして出力出来るようになりました。

なんでもやってみるの大事ですね。

これまで作ったデータは無償公開しています。コチラ

みなさんも色々作って楽しんだらいいんじゃないかと思います。とりあえずFUSION360は無料でインストール出来るので、試しにいじったみたらいいと思います(コラボ記事でもなんでもないですけど)。
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