特集 2012年1月25日

ミニ四駆はヘリコプターになれるか?

このあと僕は叫んだ。
このあと僕は叫んだ。
去年の暮れに「ミニ四駆に翼をつければ飛ぶか?」という記事を書いた。タイトル通りミニ四駆に翼を付けたら飛ぶだろうか?という内容だ。肉眼で見るとよくわからなかったのだが、動画をスロー再生したらちょっとだけ飛んでいた(厳密に言えば「跳ねてた」という表現になろうが)。

しかし、離陸してすぐ失速して落ちるのを飛ぶと言ってしまうのはいかがなものだろうという気がしたのも事実だ。なにやらモヤモヤしながらクリスマスと大晦日と正月を越した。

そこで、今回は飛行機ではなくヘリコプターを作ってみる事にした。飛行機も作れないのに、飛行機より後に実用化されたヘリに手を出すあたりどうかしている。

ミニ四駆を改造してヘリコプターを作るのだ。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:厚さ、というか高さ8cmのピザを作った

> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

改造という単語の62%はロマンだ

改造という言葉が好きだ。誰かの物だった何かを自分の色に染めるのが改造だ。人間をショッカー色に染めたのが仮面ライダーだし、男なら大体車やバイクやパソコンを改造するのが好きだ。

スポーツ選手は肉体改造が好きだし、女性だって毎朝顔面改造をしているはずだ。googleのみんなは世界を改造しようって思ってるらしいし、親は子供を改造しようとする。

改造という行為は利己的遺伝子由来の、本能的な実現欲求を満たしてくれる。そういった快感が伴う行為なのだ。改造は進化であり、ロマンである。
僕に買われてしまったがために、一度も普通のミニ四駆として走れない不憫な機体。
僕に買われてしまったがために、一度も普通のミニ四駆として走れない不憫な機体。

どうやって回転翼を付けるか?

ミニ四駆をヘリコプターとするにあたって考えなければならないのは、モーターの動力でどうやって回転翼(プロペラ)を回すかという事だ。

モーターの回転力はいくつかのギアを経てタイヤを回す動力になっている。これを途中でどうにかして回転翼を回すようにせねばならない。

という事で、まず下の写真のように、普通に水平に置いた車体の真上に伸びるシャフトでもって回転翼を回す構造を考えた。
最初はこうしようと思ったんだ。
最初はこうしようと思ったんだ。

ギアボックスを開けてみる

ミニ四駆の構造を知らない人の為に書いておくと、最近のミニ四駆、MTシャーシと呼ばれるタイプはモーターが車体の真ん中にある。いわゆるミッドシップだ。で、モーターの前後に出た紫色の歯車が青い歯車を回し、そこで回転が90度変換されてオレンジ色の歯車を回す。すると前後の車輪が回るのだ。
シンプルな構造ですごく良く出来た仕組みです。
シンプルな構造ですごく良く出来た仕組みです。
でだ。ここでさっきの写真。
こうしたい。
こうしたい。
写真みたいに回転翼のシャフトを上に出すためには、青い歯車の真上に紫色の歯車が当たるようにすればいいかなと思った。

こんな具合。
色々頑張ってる途中の写真。
色々頑張ってる途中の写真。

色々頑張ったが無理だった

結論を書いちゃうと、この構造は全くうまくいかなかった。真上に出したシャフトを上手く固定できないし、歯車同士がぶつかって上手く回らないのだ。

考えてみれば当たり前の事だが、大体にして僕は考える前に行動するタイプなのでこの手の失敗をよくする。

ギアボックスを工作素人の僕がいじるのは無理と判断して蓋を閉めて寝た。とりあえず寝て起きれば問題は解決するのが世のことわりだ。

車体を縦にすればいいのだ

しかして一晩寝たら名案を思いついた。やはり困った時は寝るに限る。

目的は回転翼を回す事で、でもギア部分は手を入れられない。だったら車輪の部分に回転翼を付けちゃえばいいじゃない。

こんな風に。
そもそも車って事は忘れていいんだった。
そもそも車って事は忘れていいんだった。
ミニ四駆を車として見ていたらから最初の様な失敗をしたのだ。ヘリコプターに改造しようなんてとんちきな事を考えているときに常識的な視点は必要ないのだった。

バンパーなど必要ない部分を切り取って、ヘリコプターっぽい足を付けみた。
おお、回転翼が付いてるのを想像したらかなりヘリっぽい。
おお、回転翼が付いてるのを想像したらかなりヘリっぽい。

まだまだ工作の試練は続くのだった

ようやく基本的な構造が決まった。スタートラインに立てたのだ。次のページでは引き続き改造を続けてミニ四駆ヘリを完成させます。
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タケコプターは飛べない

ところで、タケコプターが回転翼の浮力で飛んでいるのだとしたら実際は飛べないというのは有名な話だ。反重力とかそういう「すこし不思議な力」で飛んでいるのなら別だが、回転翼を一つだけ頭の上に付けても飛べない。

なぜか?
足を地面に固定しないと浮力を得られない。
足を地面に固定しないと浮力を得られない。
頭に固定されたタケコプターの回転翼が回り始めたら、人間は力を入れて踏ん張らないと逆の方向に回転してしまって酷い目に遭う。一生懸命に踏ん張ってタケコプターが十分に浮力を生んだら飛び上がれる。

しかしこれは地上にいる場合の話で、ひとたび宙に浮いた瞬間、
これでも元美術部部長。
これでも元美術部部長。
空中では踏ん張れないので人間も回ってしまうはずだ。で、人間を回転させる分回転翼のエネルギーが失われてしまうのでタケコプターの回転数が落ちて浮力を失って落ちてしまうだろう。
致死率高そうな状況です。
致死率高そうな状況です。
なお、竹とんぼが飛べるのは軸も一緒に回転しているからである。タケコプターを付けた人間も同じ回転数で回転翼と一緒に回れば飛べるかも知れない(目が回るが)。

ていうか、人間を浮かせるだけの浮力を得るためには相当な回転数が必要であり、その回転力を首で支えるのはかなり厳しいと思われ、気を抜いたら一瞬で首がねじ切れる可能性もある。タケコプターはなかなか恐ろしい道具なのかも知れない。
拷問の道具みたいです。
拷問の道具みたいです。

ヘリコプターの原理

なんでタケコプターの話を書いたかというと、これがヘリコプターにとって大事な話だからだ。

よくあるテールローターが付いたヘリコプターは、浮力はメインローターを回して得る。尻尾の先に付いているテールローターはメインローターの回転力を押さえ込むため、横向きに付いている。テールローターがなければ、さっき書いたタケコプターの様に回転してしまうのだ。

テールローターが壊れたヘリコプターが回転しながら落ちていくのをたまに映画や衝撃映像特番で見る事があるだろう。テールローターが無ければヘリコプターは飛べないのだ。
自衛隊の広報センターで撮ってきた戦闘ヘリ。
自衛隊の広報センターで撮ってきた戦闘ヘリ。
つまりヘリコプターは、いかに回転力を打ち消して浮力を得るかで飛ぶかどうかが決まるのだ。そうなるとこれから僕が作るミニ四駆ヘリコプターにもテールローターが必要な気がするかも知れない。

でも今回テールローターは使わない。回転力を打ち消す構造は他にもあるのだ。
資料写真が無いので、無謀にもうろ覚えでイラストを描いた。実際はこういうヘリです。
資料写真が無いので、無謀にもうろ覚えでイラストを描いた。実際はこういうヘリです

ヘリの種類は色々ある

よく自衛隊の輸送ヘリなんかで、メインローターが前後に2個付いているヘリコプターがあるだろう。あれ、実は前後のローターで回転方向が違う。お互いに逆回転させる事で回転力を打ち消して機体が回転しないようになっているのだ。

他にも回転力を打ち消す方法はいくつかあるのだが、ミニ四駆をベースにする場合はこのタンデムローター式が都合良さそうなので採用する事にした。

後輪の回転を逆にする

長々とヘリコプターの原理について書いてきたが、ようやく本題の改造に入る。タンデムローター式のヘリコプターをミニ四駆で作る場合、前輪と後輪の回転方向が同じというのは都合が悪い。これでは回転力を打ち消せない。どちらかの回転を逆にしなくてはならないのだ。

前のページでも書いたが、ミニ四駆はいくつかの歯車を使ってモーターの力を車輪に伝えている。なかでも重要なのが、ギアボックスに入っている青い歯車。

よく見ると前後で向きが逆になっている。
向きが逆ですね。
向きが逆ですね。
モーターの前後に付いた紫色の歯車は前後から見ると逆回転になっているため、青い歯車の向きを逆にしてオレンジの歯車を同じ回転にしようという工夫である。

という事は、後輪の回転を逆にしたければこの青い歯車を逆にしてしまえばいいのだ。簡単だ。

少しシャーシを削ったら割りと簡単に歯車を変えられた。
歯車の向きを揃えた。これで前後の車輪が逆に回るのだから当然ミニ四駆としては全く走れない。
歯車の向きを揃えた。これで前後の車輪が逆に回るのだから当然ミニ四駆としては全く走れない。
模型屋で買って来ました。
模型屋で買って来ました。

プロペラを付けたら完成

車輪の回転方向の改造もOK。あとは車輪のとこに回転翼を付ければヘリコプターになる。

模型屋さんで使えそうなのを買って来て、車輪に付けてみた。ただし、ここでもう一つ注意しなければならない事があるのだった。

前後の回転翼は逆回転をするのだから、当然羽根の向きも逆でないとならない。じゃないと浮力も逆になってしまう。
浮力が逆になるってことは、浮力じゃなくて機体を下に押す力になってしまって当然飛ばない。

それでは困るのでプロペラの羽根を根元から切って角度を変えてくっつけた。
なんか脆そうな物が出来てしまった。
なんか脆そうな物が出来てしまった。
数々の苦労を重ね、ようやく出来上がったミニ四駆ヘリコプターは次のページで発表します。
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どう見たって飛ぶでしょ、これは。
どう見たって飛ぶでしょ、これは。
想像以上の格好良さだ。無骨なデザインが逆に良い。回転翼が4枚も付いてて、これを回したならば発生する浮力は相当なもんだろう。ちゃんとプロペラは前後で逆に回るように出来ている。
これで飛ぶ事間違いなし!
がんばるぞー、おー。
がんばるぞー、おー。

特に意味もなく外にやってきました

はい、ではテスト飛行という事で外に出ました。寒いのであんまり外でやりたくないんだけど、延々籠もって工作して、撮影まで家の中じゃあまりに息苦しい。って事で、いつもの駐車場へ。

隅の方で白バイ隊がなにやら訓練してたけど気にせず撮影したい。修理用だがラジオペンチとか持って来てるので、出来れば職質はやめておいていただきたい。

まずエネループでテスト

いきなり強力なリチウムイオン電池を使って壊れるのも嫌なので、まずは2本で2.4Vのエネループで動かしてみる事にした。

まぁ、飛ばないだろうが動作確認は出来るだろう。
まずはテストです。
ちゃんと動きました。
ちゃんと動きました。
わかってはいたが、見事に飛ばなかった。しかし回転翼は安定して回っており、パワーさえ上げれば飛ぶ雰囲気は十分ある。

という事で秘密兵器その1を使おう。
銀色のが14500電池。今回使うのは青い方の10440電池。
銀色のが14500電池。今回使うのは青い方の10440電池。

10440電池

ミニ四駆飛行機の時は秘密兵器として1本で3.7Vあるリチウムイオン電池、14500電池を使った。したら、それまで常識的な走りを見せていたミニ四駆が突如暴れ馬または暴走したエヴァンゲリオンの如き猛烈さで暴れた。「勝ったな」とか「始まったな冬月」とか言う余裕は僕にはなかった。むしろ「無理だよこんなの」って思った。

さて、今回はそれとは別の10440電池というのを使う。どういう電池かというと、大きさは単4電池と同じで。それでいて電圧は14500電池と同じ3.7V。2本直列で7.4V。小さくて軽くてハイパワーの電池なのだ。

重量制限が厳しいヘリコプターに最適である。重さは、エネループ2本が53gなのに対して、10440電池は20gと半分以下だ。

エネループを入れた状態で機体の全重量は122g。これで33gも減量したら3割減だ。

ヤバイ、これは飛ぶ。
結構重いエネループ。
結構重いエネループ。
圧倒的な軽さ。
圧倒的な軽さ。
もちろんそのままミニ四駆の電池ボックスに入れても長さが足らないので、銅板で作ったスペーサーを噛ませる。これでミニ四駆で10440電池が使えるって寸法だ。
銅板のスペーサーを入れて準備完了。
銅板のスペーサーを入れて準備完了。
では飛んじゃうシーンをご覧いただこう。
ジワジワ動いた。ホバークラフト的?
飛び上がりはしなかった。
飛び上がりはしなかった。
ジワジワ動く様子を見ると、あとちょっと浮力があれば飛び上がる気がする。飛んでないように見えて実はあと一息なのだ。

そこで、秘密兵器その2の登場である。ミニ四駆の改造パーツ、ハイパーダッシュモーターPROだ。なお、再改造のために家に帰ったのでここから先はまた室内での撮影となります。外、寒いし。白バイいるし。
上級者向けのパーツだそうです。
上級者向けのパーツだそうです。
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モーターだけで441円

Amazonでミニ四駆を買うと500円くらいだが、ハイパーダッシュモーターPROは441円する。モーター1個で本体に迫る値段である。

パッケージには上級者向けと書かれているが、そもそもミニ四駆を車として走らせた事のない僕が上級者でない事は明白だ。僕が買ってごめんなさい。

さらに、「タミヤ公認競技会では使用できません」と書かれている。オリンピックの禁止薬物みたいな扱いだ。それほどまでに強力なモーターという事だろうか。しかし僕は今のところ公式競技に出る予定がないのでこの点に不安はない。そもそもミニ四駆に対して非公式な仕打ちばかりしている僕に公式競技に参加する資格などない。
吉野家の牛丼並盛りより価値が高いのだ。この小さなモーターが。
吉野家の牛丼並盛りより価値が高いのだ。この小さなモーターが。
早速組み込んでみよう。なお、モーターの説明を読むと別売りのピニオンギアで高度なセッティングが出来るそうだが、僕は上級者ではなくセッティングについてなにも知らないので、ミニ四駆にもともと付いていたピニオンギア(紫の歯車)を取り付けた。まぁ、回ればいいので問題ないだろう。

下手に僕のような素人がセッティングとやらに手を出してもろくな事にならないのは火を見るより明らかである。
僕に出来るチューンはここまでだ。これで飛ばなかったら後がない。
僕に出来るチューンはここまでだ。これで飛ばなかったら後がない。
では、僕の工作技術、ミニ四駆チューン技術の全てをたたき込んで完成したミニ四駆ヘリコプターが飛ぶ姿を、今度こそご覧ください。

先に書いちゃうけど、マジで飛んだんですよ。
予想外の展開でした。
やっちまった感。
やっちまった感。
浮いた。確かに浮いたのだが、浮いた瞬間バランスを崩して、というかそもそもバランスを取ってなかったのであっというまに墜落して回転翼の羽根が盛大に折れた。

ハイパーダッシュモーターPROの威力は想像を絶しすぎていた。さすが、禁じられたモーターである。タミヤはとんでもないパーツを開発してしまったものだ。
ホントにすごい力だった。モーターが変わるとここまで変わるのか。
ホントにすごい力だった。モーターが変わるとここまで変わるのか。
ミニ四駆の電源を入れて床に置く瞬間からすでに上向きの力を感じていた。あ、これ飛ぶわ、そう思いながら手を離したら手と反対側が急激に浮いて転倒した。

ヘリコプターは転倒すると大体羽根が折れて大変な事になる。その例に漏れず、僕のヘリコプターも羽根がもげた。もともと角度を変えるために根元から切って接着剤で止めた物なので脆かったのだ。
画面右から左に吹っ飛んでいく羽根。
画面右から左に吹っ飛んでいく羽根。

直して再チェレンジ

いつもの僕ならここで記事を終わらせてしまうが、今回はちょっと違う。なぜかっていうと締め切りまで余裕があるからだ。余裕を持って記事を書くというのは素晴らしい。何度でもやり直せる。

折れた羽根を瞬間接着剤でくっつけて直した。更に、ヘリコプターの足に糸を結んで床に固定した。大体3cmくらい浮き上がるとそこで止まる程度の長さだ。またスイッチを入れた瞬間クラッシュされたらたまらないのでリミッターを設けたわけだ。
暴走防止のリミッターを設置。
暴走防止のリミッターを設置。
数cm浮くとそこで止まる仕掛けです。
数cm浮くとそこで止まる仕掛けです。
これでいきなり吹っ飛んでクラッシュする心配は無さそうだ。では、再挑戦の動画をご覧ください。
う、浮いた!今度こそ浮いた!
左側がより浮いてるけど、右側もちゃんと空中に浮いてます!
左側がより浮いてるけど、右側もちゃんと空中に浮いてます!
リチウムイオン電池は瞬発力はあるけど持続力がないので数秒で着地してしまったが、しっかり空中に浮いた様子が動画から判ると思う。バランスの問題はあるが、ミニ四駆をベースにした機体を空中に浮かせる事は出来た。

僕の工作にしては珍しく成功と言っていいと思う。あなたの心には、なにが残りましたか?

たまには時間を掛けて工作するのもいいね

糸でつなぎ止めておかないと吹っ飛んでいって壊れてしまうという、思いの外やんちゃなヘリコプターが出来た。10440電池やハイパーダッシュモーターPROの力で見事に飛ばす事が出来て良かった。

思えば、クリスマスの頃から工作していたわけで、1ヶ月掛けてどうにかまとまった。たまにはこうして時間を掛けて記事を書くのもいいな、って思いました。
正月に実家に帰ったときに鴨川で撮ってきた写真その2。まるっ!
正月に実家に帰ったときに鴨川で撮ってきた写真その2。まるっ!
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