やっぱりビールは鮮度が一番だと思う
カバー元の記事に「ただ、別に10年以上置いて味わうほどうまいものではない事は確かです」という一文がありましたが、僕もまったく同感。やりかた次第でもっと美味しく熟成させることはできるのかもしれませんが、それを自分で研究するくらいなら、新鮮なビールを飲む人生を歩んでいこうかな、と思いました。
しかしながら、今回の企画が、とても良い経験になったことは確かです。ありがとう、17年前のNude Beer!
デイリーポータルZには、僕の好きな名作がいくらでもあります。
あまりにもとっかかりがないので、サイト内検索機能を利用し「酒」に関する記事をかたっぱしから読み直していたところ、DEEokinawa tarouさんが2013年に書かれた「13年前のビールは古酒になっているか」という記事に行き当たりました。あったあった! おもしろかったな~、これ。
そして……そういえばあった! うちにも古いビールが!
※この記事はデイリーポータルZ開設17周年企画「名作カバーまつり」のうちの1本です。
元記事はこちら「13年前のビールは古酒になっているか」
昔すぎてはっきりとは覚えていないのですが、自分が20代の頃、ある友達が1本のビールを僕にくれました。
どうやらアメリカのビールらしく、セクシーなラベルと商品名がおもしろいので、「お前こういうの好きでしょ?」みたいに、ネタとして買ってきてくれたんだと思われます。
当時の僕は実家に住んでいて、これをすぐには飲まず、部屋の棚にディスプレイ感覚で飾っておいた。そうなってくると、「今夜飲むか」ってタイミングはなかなか訪れないもんです。やがてそのまま実家を出てしまった。
昨年のことだったでしょうか。久しぶりに実家に帰った僕は、部屋でこのビールを発見。いつのまにやらお酒にまつわる文章を書く仕事をするようになっていたこともあり、「いつか何かのネタになるぞ!」と持ち帰っておいたんですよね。
それが、冒頭の流れにつながったというわけです。
なんと17年前! 経たな~……。
ところで僕が今どこにいるかというと、こんなスタイリッシュ空間が自宅のはずはもちろんなく、
地元石神井公園にある、クラフトビールとコーヒーとサンドイッチが名物のカフェバー。
数年前にオープンしてからしばらくは、あまりのお洒落さに気が引けて入れないでいたんですが、ある日勇気を出して扉を開けてみたら、ものすごく素敵なお店だったんですね。
自宅でひとり賞味期限が17年前のビールを飲んで、どういうことになるのかが想像できない。そもそも飲んで大丈夫なものなのかもわからない。正直に言ってしまえば、おそろしい。そこで今回は、WELDERS DINER店主の岩下さんに無理を言い、この1本だけビールを持ち込ませてもらって、一緒に飲んでみてもらうことにしたというわけです。決して「道連れ」ではありません。ほら、専門家がいたほうが記事に説得力も出るでしょう?
瓶を手でおさえ、開けたとたんに勢いよく吹き出してきたりしないか警戒しつつ、おそるおそる栓抜きに力を入れてゆく。すると、シュポン! という音もなく、驚くほど静かに栓が抜けました。炭酸が抜けてしまっているのか?
色は褐色に近いですね。たぶんもとはこんな色じゃなく、いわゆる一般的な黄金色っぽいビールだったはず。
次に香りをかいでみる。すると、突如鼻腔を抜ける、ツーン! という刺激臭、というようなことはまったくなく、香りとしてはこれ、完全に「紹興酒」です。悪いにおいではない。
なんというかこれは……薄~い紹興酒ですね。
17年という時を経て、ビールは確実に別のお酒に変容している。炭酸も抜けきっている。とはいえ、ものすごく深い味わいになっているということではない。例えるなら、ロックで飲んでいて氷が溶けてしまった紹興酒。そのへんの酒屋さんで売っているいちばん安い紹興酒のほうが確実にうまい。
というわけで、お店に今ある樽の中から、京都醸造のクラフトビール「柔(Yawara)」を注文。新鮮なビールをあらためて飲んでみます。
するとこれが、アルコール度数が8.5もあるにも関わらず、華やかで爽やかな香りで、すいすいと飲めてしまう危険極まりない一杯。
さっき飲んだ古いビールのことがどんどん頭から離れていってしまううまさ。
そこで、
から、
もいきましょう。
フレッシュなパクチーの香りと、本格的なラー油の刺激が混ざり合い、さらにビールが止まらなくなる一品。
ちなみにこちらのWELDERS DINER、クラフトビールに限らず、ドリンクは幅広く揃っていますし、フードメニューも豊富。
なので、石神井へお越しの際はぜひ、お立ち寄りくださいね。
と、最後はなんだか好きなお店の紹介記事みたいになってしまいましたが、結論!
カバー元の記事に「ただ、別に10年以上置いて味わうほどうまいものではない事は確かです」という一文がありましたが、僕もまったく同感。やりかた次第でもっと美味しく熟成させることはできるのかもしれませんが、それを自分で研究するくらいなら、新鮮なビールを飲む人生を歩んでいこうかな、と思いました。
しかしながら、今回の企画が、とても良い経験になったことは確かです。ありがとう、17年前のNude Beer!
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