特集 2017年12月24日

日生のカキお好み焼きを食べてきた(デジタルリマスター版)

岡山にいってきました。カキお好み焼き食べに。
岡山にいってきました。カキお好み焼き食べに。
東京から遙か500キロの西方、岡山県備前市は日生(ひなせ)というカキの名産地に、「カキお好み焼き」という食べ物があるという。

このカキお好み焼きという料理、ホームページで確認する限り、名前そのままで、要するにカキを具に使ったお好み焼きなのだが、入っているカキの量が尋常ではないらしいのだ。

岡山県がどこにあるのかもよくわかっていなかったのだが、このホームページを読み進めていくうちに、僕はカキお好み焼き、略してカキオコに対して、恋に似た感情を持つようになった。

カキオコが食べられるのはカキの捕れる3月末頃まで。カキなのに冬季限定。

後悔なんてしたくない。僕は日生へ向かうべく、新幹線に乗り込んだ。

※2007年2月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

前の記事:家庭料理としての沖縄そばを学びそして作る

> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

カキオコ食べに日生へ向かう

カキオコを食べるために乗った新幹線のぞみ。しかもお好み焼き屋が混んでいるとイヤだからという理由で平日。

車中、今回の事の発端であるカキオコホームページを運営している、日生カキお好み焼き研究会の会長である江端さんに送っていただいた「カキお好み焼きマップ」を眺めながら、最高時速285キロで近づきつつあるカキオコに想いを馳せる。
熟読させていただきました。
熟読させていただきました。
岡山駅から在来線の赤穂線に乗り換えて、50分ほど東京方面に戻ったところにカキオコの日生駅がある。東京から片道5時間。若干遠いような気もするが、四国に車でいくよりは、よっぽど近い。
岡山、本当に来てしまいました。
岡山、本当に来てしまいました。
来ましたよ、日生。カキオコのために。
来ましたよ、日生。カキオコのために。
尚、今回の旅は、僕が食べるのに夢中になってしまい、きっと写真がろくに撮れないと思ったので、デイリーライターの工藤さんに同行していただいた。

駅を出たらすぐ海という環境

今日の目標は、カキオコ3軒のハシゴ取材。地図(もちろんカキオコマップ)を片手に、まったくの知らない町を歩きながら、第一の目的地である浜屋を探すのだが、この段階で、もう楽しい。

日生という町は、駅を出てすぐに穏やかな海が広がっており、そこから海岸線に沿ってのんびりとしたメインストリートが続くという、探検気分でウロウロするには最高のシチュエーションなのだ。

カキオコマップが教育テレビの「たんけんぼくのまち」にでてくるたんけん地図に見えてきた。
知らないことが~おいでおいでしってる~。
知らないことが~おいでおいでしってる~。
穏やかな海と、なだらかな山。
穏やかな海と、なだらかな山。
ちょっと釣りがしたいなあ。2週間くらい。
ちょっと釣りがしたいなあ。2週間くらい。

この町に、気楽に泊まりに来れる親戚か友人が欲しい。

カキの気配にいちいち喜ぶ

日生という町はカキの産地だけあって、歩いているとカキの気配を感じさせるものがそこら中にある。海を覗けば岸壁にびっしりとへばりつくカキの稚貝、町中を見渡せばカキの意匠にカキオコポスター。

ディズニーランドに入園した人が、隠れミッキーを見つけてキャーキャーいうように、僕は隠れカキを見つけてニヤニヤする。

オイスターランド、日生。
海を覗けば、
海を覗けば、
カキがびっしり。
カキがびっしり。
ふと下を見れば、桜に牡蠣。
ふと下を見れば、桜に牡蠣。
色あせたポスターさえもグッとくる。
色あせたポスターさえもグッとくる。
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カキオコ一軒目、浜屋

日生駅を出て右を向き、道なりにしばらく歩いていくと、表通りから路地へと別れるY字路がある。カキオコマップによると、ここで路地へ入ったところに、我々が目指す浜屋がある。
ここを右に入ります。サラダ館ってどこにでもあるなあ。
ここを右に入ります。サラダ館ってどこにでもあるなあ。


この浜屋というお好み焼き屋さんは、カキオコ研究会会長の江端さんからいただいたメールで、このように紹介されていた。
おねえさんが自分でカキをむくので新鮮なカキがたくさん入る。カキの入れ方は一つかみ単位で、お好み焼きの大きさも特大。とにかく豪快な「カキオコ」が売り。
カキの単位が一つかみ。かっこいい。その豪快なカキオコとやらが食べたくて、僕は日生まできたのだ。
※日生では、大人の女性は何歳でも「おねえさん」と呼ばないといけないそうです。

浜屋に到着

普通に観光で来ていたら絶対に入らないような路地を少し進んだところで、カキオコを示すピンクのノボリが見えてきた。
カキオコは、ピンクのノボリが目印です。
カキオコは、ピンクのノボリが目印です。
映画のセットみたいなお好み焼き屋。店の前に止まっている自転車が電動アシスト付きなのが現代風。
映画のセットみたいなお好み焼き屋。店の前に止まっている自転車が電動アシスト付きなのが現代風。
「浜屋」という屋号よりも際立つ「みっちゃん」の文字。
「浜屋」という屋号よりも際立つ「みっちゃん」の文字。
さあ、憧れのカキオコを食べよう。
さあ、憧れのカキオコを食べよう。

目の前に広がる昭和

入店して、店内の人口密度に驚いた。広角レンズというものを持ち合わせていなかったので、この写真だと全体が写っていないためよくわからないかと思うが、鉄板をぐるりとお客さんが取り囲み、その外側をさらに待っているお客さんが取り囲むという二重構造。

浜屋に着いたのが、ちょうど昼時だったこともあり、平日だというのにすごい混雑ぶりだ。
ニコニコと鉄板を囲む人達。
ニコニコと鉄板を囲む人達。
その外側には無表情で待っている人達。
その外側には無表情で待っている人達。
なんなのだろう、この室内に流れる昭和っぽい雰囲気は。しかも、三十路の私が知っている昭和よりも、さらにもう少し昔の昭和の空気が漂っている気がする。昨日いった平田食事センターともまた違う昭和だ。

とりあえず空いている外側の席に腰掛けてメニューを眺める。いろいろと魅力的なメニューがたくさんあるが、私が注文はもちろんカキオコだ。入り口横に「まよわずカキオコと注文して下さい」と書いてあるので、迷ってなんかいられない。
メニューはいろいろあるけれど、
メニューはいろいろあるけれど、
まよわずカキオコと注文して下さい。
まよわずカキオコと注文して下さい。

もの凄いお腹が減ってきた

椅子に座ってちょっと首を伸ばし、前で食べているお客さんの頭越しに、次々と焼かれていくお好み焼きを覗き込む。うまそう。室内はソースの焦げるいい匂いでいっぱい。お腹がグーグーなる。

日生のお好み焼きは、広島風とも大阪風とも違って、まず生地とキャベツを混ぜたものを鉄板に広げ、そこに具材を乗せていき、上から生地をかけて、さらにそれを二回ひっくり返すのが流儀らしい。上から押しつぶさずに、フカフカに焼き上げる。

カキオコに使うカキはもちろんたっぷり。みっちゃんがむんずと掴んだプリプリのカキが、生地の上にデーンと盛られる。このカキが見るからに新鮮なのだ。
むんずと掴んだカキを盛る。
むんずと掴んだカキを盛る。
うまそうなカキがたっぷり。
うまそうなカキがたっぷり。
具の上から生地をかけて、
具の上から生地をかけて、
ひっくり返すのが日生風お好み焼き。
ひっくり返すのが日生風お好み焼き。
前の席が空いたので、早速鉄板前に席を移る。鉄板の外側スペースは小皿一枚ぎりぎりおける位の狭さで、鉄板がとても近い。その鉄板の上で焼かれているあのカキオコが自分のものだと思うと、もう胃液が溢れてきてしょうがない。

憧れのカキオコを食べる

しばらくして、焼き上がったカキオコが目の前にやってきた。でかい。そして、どう見てもうまそうだ。

ちなみにこれだけのカキが入っているにもかかわらず、お値段はたったの800円と大変リーズナブル。交通費とかは置いておいて。
でかいんですよ。うまそうなんですよ。
でかいんですよ。うまそうなんですよ。
目の前のカキオコをニヤニヤしていたら、みっちゃんから、「マヨネーズと一味をかけてね!」とのアドバイスが。

お好み焼きにマヨネーズはよく聞く話だが、一味というのは初めて聞いた。いわれるがままにたっぷりかけてみるとする。
このちょっと焦げたカキがうまそう!
このちょっと焦げたカキがうまそう!
一味をかけるのが日生風らしい。
一味をかけるのが日生風らしい。
二つに切ったら、断面からカキが転がって出てきた。
二つに切ったら、断面からカキが転がって出てきた。

カキオコ、やはりうまい

カキのあるところを箸で大きくつまんでガブッといく。

あ、日生に来てよかった。

まず、もちろんカキがうまい。すごいプリプリしていてジューシー。そしてキャベツのみのシンプルな生地に、ネギ、天かす、鰹節、紅ショウガ、青海苔のアクセントが効いて、そこにたっぷりとかかった甘めのソースが絡みついてくる。まずい訳がない。

勧められたマヨネーズと一味については、マヨとキャベツの相性の良さはいわずもがな。そしてこの甘いソースに一味をピリッと効かすことで、この大きなお好み焼きを飽きることなく最後まで食べることができる。ウナギに山椒をかけるように、このお好み焼きに一味はアリだ。
あふぃい。
あふぃい。
メガネが微妙にずれるほどのうまさだ。
メガネが微妙にずれるほどのうまさだ。
玉置 うまいっすね、これ。
工藤 すごいね、これ東京で食べたら2,000円はするよ。
玉置 カキがプリプリ。もうノロとか気にしている場合じゃないですよ。最初から気にしていないけど。
工藤 うん、これは食べないと人生損だね。家の近所にこの店があったら通っちゃうなあ
玉置 僕、引っ越そうかなあ。日生に。いや、もうちょっと考えます。

ありがとう、みっちゃん

みっちゃんの話によると、この店は16年くらい前にオープンした店で、2,3年前から山陽テレビなどでカキオコが取り上げられるようになり、関西などから観光客が来るようになったとの事。今日も大阪や奈良などから来たお客さんでいっぱいだ。
「浜屋」という屋号よりも「みっちゃんの店」って書いてだって。ピース。
「浜屋」という屋号よりも「みっちゃんの店」って書いてだって。ピース。
鉄板に置いたまま食べるため、最後まで冷めることのないカキオコを平らげた。カキオコ、本当に期待以上の美味しさだった。

さあ、次の目的地は、「きまぐれ」だ。
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きまぐれ、お店が見つからない

カキオコ二軒目は、「きまぐれ」という店なのだが、カキオコマップに「路地の奥の奥にあります。まち探検気分で発見してみて!」と書かれているように、本当に場所がわからない。
地図を読んでもわかりません。
地図を読んでもわかりません。
猫用みたいな細い路地が入り組んでいる。
猫用みたいな細い路地が入り組んでいる。
見つからないったら見つからない。
見つからないったら見つからない。
どこだここは。
どこだここは。
カキオコマップにきまぐれの場所がわかりにくく載っているのはきっとわざとなんだと思う。いじわるではなくて、この町は道に迷うことすら楽しいからだ。オリエンテーション気分で店探し。さまよい歩いている間に、お腹も空いて一石二鳥だ。

きまぐれ、ようやく発見

きまぐれという店名だけあって、実はもう閉店しちゃったのかなと不安になった頃、ようやくそれらしいお店を発見した。
民家の壁に書かれた「お好み焼」の文字が読めるかな。
民家の壁に書かれた「お好み焼」の文字が読めるかな。
駐車禁止の看板と大差のないお好み焼きへの道しるべ。
駐車禁止の看板と大差のないお好み焼きへの道しるべ。
そして路地裏に、お店発見!
そして路地裏に、お店発見!
ようやく到着。わかんないって。
ようやく到着。わかんないって。
存在を知らなかったら絶対に発見されないような場所に店を構えるきまぐれやさん。いったいどんな店なのだろう。

きまぐれに入店

暖簾をくぐって入店すると、横に長いカウンターは地元っぽいお客さんで埋まっており、みんな昼間から楽しそうにビールとか飲んでいる。地元っぽいというか、明らかに地元の人しかいない感じ。店の奥で飲んでいたオッチャンに「よくこの店がわかったね」といわれた。もっともだ。

お好み焼きを焼いているおねえさんに取材の件を話すと、とりあえずカウンターが空くまで、店の奥で待っているようにと促された。オッチャンに。
「奥で待ってて」とお客のオッチャンに誘導される。
「奥で待ってて」とお客のオッチャンに誘導される。
ちなみにこの店、メニューはお好み焼き以外にも焼きうどんとかいろいろあるらしいのだが、黒板に書いてあるのは、カキオコのみ。
フェイスマーク風の文字がお茶目だ。
フェイスマーク風の文字がお茶目だ。
カキオコ以外のメニューは、きまぐれな感じらしい。

店の奥に入ってびっくりした

オッチャンにいわれるまま、店の奥へと続く扉を開けて、びっくりした。
唐突にカラオケスナック。
唐突にカラオケスナック。
唐突に目の前に繰り広げられるカラオケスナック。今の扉は赤羽あたりへと続くどこでもドアだったのだろうか。なぜお好み焼き屋の奥にカラオケセットと革のソファーが並んでいるのだ。

その異質な空間で、オバチャン、いや、おねえさん達はお好み焼きを食べ、じいちゃんはカラオケに夢中。

この店がカラオケスナック併設というのは、カキオコホームページを見ていたので知識としては知っていたが、実際に目の当たりにすると、ものすごい戸惑う。
お好み焼きを食べながら井戸端会議をするおねえさん。
お好み焼きを食べながら井戸端会議をするおねえさん。
歌うは「兄弟船」。漁師町だからね。
歌うは「兄弟船」。漁師町だからね。

どこなんだここは

部屋の奥に腰をかけ、「僕は日生になにをしにきた?」と自分に問う。気がつけばカラオケスナックにいるのはなぜだろう。「漁師はどんな歌が好きか!」のレポートをしに日生まで来た訳ではないはずだ。

少しうつろなまなざしで放心していたら、お客のオッチャンが落ち着けといわんばかりにお水をくれた。
放心中。
放心中。
ちょっと落ち着こう。

おねえさんに話を聞く

ここでゆっくりしていたら、ついうっかり一曲歌い始めてしまいそうな気がしてきたので(工藤さんが)、とりあえずお好み焼き屋スペースに戻り、おねえさんに話を伺うことにした。

「カラオケはドリンク付きで歌い放題500円!」

いや、カラオケはいいから。
大家族の台所っぽいオープンキッチン。
大家族の台所っぽいオープンキッチン。
焼きうどんもメニューにあるらしい。
焼きうどんもメニューにあるらしい。
おねえさんの話によると、この店は元々18年くらい前にオープンしたのだが、諸事情で7年前から休業していたとのこと。そして去年の10月に、元々の常連さん達の熱いリクエストに応える形で営業を再開したのだそうだ。

場所が場所だけに、平日の昼間に来るお客さんのほとんどは地元の常連さん。店内のいたるところで日生弁が飛び交っている。

お客が常連さんばかりとはいっても、一見さんである我々が居心地悪いということは全くなかった。おねえさんの言葉を借りれば、「日生の人は、地の人に優しくできるから、よその人にも優しくできる」のだ。

店員とお客が助け合うシステム

この店は基本的におねえさん一人で切り盛りしてるため、お客さんがたくさん来ると人手不足になる。そんな時は、鉄板から離れられないおねえさんの代わりに、常連さんが料理を運んだり、お皿を洗ったりということが、ナチュラルにおこなわれている。
料理を運ぶお客さん。
料理を運ぶお客さん。
お皿を洗うお客さん。
お皿を洗うお客さん。

セルフサービスは自分の分だけやるシステムだが、ここの場合は、気づいた人が人の分まで進んで働く互助会システム。

とはいっても、この「店の手伝いができる」というのも、ある意味地元の常連さんの特権な訳で、別に初めてきたお客さんが強要されるようなものではない。

最初、誰が店員で誰がお客さんだかよくわからなかった。

カキオコを焼いてもらう

しばらくしてカウンター席が空いたので、早速カキオコを一枚注文。次の予定がなければビールと焼きうどんとネギ焼き(お好み焼きのキャベツ抜き)も食べたかったけれどグッと我慢。どれもすごく美味しそうなのだ。
「うちは水も油もいいもの使っているよ!」との事です。
「うちは水も油もいいもの使っているよ!」との事です。
カキが次々乗せられていく。
カキが次々乗せられていく。
生地を全面埋め尽くすカキ。
生地を全面埋め尽くすカキ。
カキの多さにびっくりした。すげえ。カキだらけだ。

ソースは、たいめいソース

日生のお好み焼きは、「たいめいソース」という甘いソースを使うのがスタンダードなのだが、最近その工場が火事になってしまってソースが配給制になったらしい。配給制っていつの時代だ。
断面図。貴重なソースがたっぷりかかっています。
断面図。貴重なソースがたっぷりかかっています。
断面、カキだらけ。うはははは。
ネギをたっぷり乗せて完成。
ネギをたっぷり乗せて完成。
美味しすぎて笑える。
美味しすぎて笑える。
懐かしのレモンスカッシュも美味しい。
懐かしのレモンスカッシュも美味しい。
玉置 浜屋もうまかったけれど、これもうまいっすね。
工藤 すごいね、このカキの量。これ東京で食べたら絶対に2,000円はするよ。
玉置 そのたとえ話、好きですね。
工藤 いやあ、家の近所にこの店があったら通っちゃうなあ。
玉置 その褒め方も好きですね。

カキを食べに来てくれたんだから、カキを食べてもらう

カキオコが美味しすぎて、マヨネーズと一味をかけるの忘れた。

そんな美味しいカキオコを食べながら、つい「こんなにいっぱいカキ乗っけちゃ儲からないんじゃないんですか?」と野暮な質問をしたら、「遠くから来てくれる人は、カキを食べにくるんやから、ようけ入れてやらんと。」との返事が返ってきた。

おねえさんは、「一度来てくれた人が、友達連れてまた来てくれるのが一番嬉しいねえ」ともいっていた。こんなカキオコを出されたら、そりゃ友達を連れてまた来たくなるさ。東京からちょっと遠いけれど。ちょっと。
遠くから来た人には、ドリンク一杯サービス中だった。
遠くから来た人には、ドリンク一杯サービス中だった。
お店の名前はきまぐれだけれど、お客さんのことを考えるその姿勢には、一本芯が通っているように感じた。

さあ、次は安良田のカキオコだ。
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カキオコ三軒目 安良田(あらた)

ニコニコと笑いながらきまぐれを出て、フラフラと市場などを彷徨い歩く。ソコソコまたお腹も空いてきたところで、今日最後のカキオコとなる安良田へとやってきた。

江端さんからの情報によると、このお店が日生のお好み焼き屋で一番の老舗だそうだ。これまた楽しみだ。
おお、見た目からして老舗だ。
おお、見た目からして老舗だ。
あ、おねえさんが出迎えてくれている。
あ、おねえさんが出迎えてくれている。
と、思ったら人形だった。
と、思ったら人形だった。
人形が怖くて、ちょっと入店を躊躇した小心者の私。

おっぱい焼きってなんだろう

不思議な人形を横目に入店。もう午後3時を回っているのでお店もだいぶ空いているようだ。鉄板でお好み焼きを焼いているのは、人形じゃなくて人間だった。

カウンター席に腰掛け、メニューも見ずに今日3枚目のカキオコを注文をしたのだが、さっきから工藤さんの様子がおかしい。注文が終わっても、ジーっとメニューの張られた壁を凝視している。

目線の先を追っていくと、あ!おっぱい焼き!なんだかよくわからないけれど、それもください!
安良田のおねえさん。
安良田のおねえさん。
おっぱい焼き!
おっぱい焼き!
今日3軒目のお好み焼き屋だというのに、ついうかれて余計なものを注文してしまった。

まずはカキオコから

おっぱい焼きの前に、まずはカキオコを焼いてもらったのだが、この店の焼き方は今までの二軒とちょっと違った。まずカキを鉄板で軽く焦げ目がつくくらい焼いてから、お好み焼きの生地に乗せるのだ。

カキはもちろんたっぷりで新鮮。弾力があるから、焼くときに上からギュウギュウと押さえつけても潰れないし、焼いても縮まないのだ。
「やり方はいろいろだと思うけれど、この方が香ばしさが出ると思うの」と、おねえさん。
「やり方はいろいろだと思うけれど、この方が香ばしさが出ると思うの」と、おねえさん。

さあ、カキオコが焼き上がるまでの間に、謎のおっぱい焼きを焼いてもらおう。

おっぱい焼きとは

おねえさんは「これがおっぱい焼き!」と宣言すると、カキとネギを2掴みづつ鉄板に乗っけて、リズムよくヘラで混ぜながら焼き、最後に醤油をちょろっと一回しした。もちろん服は着たままだ。
お好み焼きでもおっぱい焼きでも、日生では細くて青いネギが使われる。このネギがうまい。
お好み焼きでもおっぱい焼きでも、日生では細くて青いネギが使われる。このネギがうまい。
ソースの焦げる匂いもいいけれど、やっぱり醤油もいいなあ。
ソースの焦げる匂いもいいけれど、やっぱり醤油もいいなあ。
「カキは、海のミルクっていうでしょ。だから、おっぱい焼きっていう名前なの。」と、おねえさん。

なるほど。とんちが効いてらっしゃる。なんでも、日生がある備前市のお隣、赤穂市の名物、カキを使ったおっぱい鍋という料理にヒントを得たのだそうだ。

おっぱい鍋、それもすごい気になるけれど、まずはおっぱい焼き。
おっぱい焼き。味付けは醤油のみ。シンプル。
おっぱい焼き。味付けは醤油のみ。シンプル。

カキとネギを焼いて醤油をかけただけのシンプルな料理なので、カキオコよりもカキのうまさがダイレクトに感じられて、これまた堪らない味だ。カキはもちろん、カキのエキスが染みたネギもまたうまい。お好み焼きのソースにちょっと飽きてきた舌に、醤油の味が嬉しい。

もちろんカキオコも美味しい

おっぱい焼きも美味しいが、もちろんカキオコだって美味しい。先にカキが焼いているため、先の2軒とは口に入れたときの食感が確かに違う。僕はどっちも好きだ。

本日3枚目となるカキオコだが、美味しく残さずいただいた。
ああ、カキがごろごろしている。
ああ、カキがごろごろしている。
カキに香ばしさがプラスされている。うまい。
カキに香ばしさがプラスされている。うまい。
美味しすぎて、工藤さんの写真を撮るの忘れました。
美味しすぎて、工藤さんの写真を撮るの忘れました。
玉置 この味は東京で食べたら、いくら位ですか?
工藤 うん、おっぱい焼きもカキオコも2,000円はするよ。
玉置 なんでも2,000円ですね。
じゃあ、この店が近くにあったらどうします?

工藤 そりゃもう、毎日のように通うね。
玉置 ですよね。

日生にカキオコが生まれた理由

カキオコを食べながら、このカキオコという食べ物が、どういう経緯でこの日生に生まれたのかを安良田のおねえさんに伺った。
おねえさん、語る。
おねえさん、語る。
なんでも、この店をおねえさんのおかあさんがオープンしたのが昭和37年で、その頃はまだ店をやるにも食材が豊富になかったため、キャベツやネギ以外の具はお客さんが自分で持ってくるというスタイルだったそうだ。

鶏を飼っている人は卵を、農家の人は野菜を、そして漁師は魚介類を持ってきた。なかでも日生は牡蠣の養殖が盛んだったため、牡蠣を持ってくる人が多く、その牡蠣を入れたお好み焼きが美味しいと評判になったため、お好み焼きに牡蠣を入れるという文化が、ここ日生に生まれたのだ。

ちなみに、店の入り口にある人形は、単なる看板代わりの店の目印で、深い意味はないらしい。工藤さんが「まさに看板娘ですね!」といっていたことを記しておこう。

ついでに、浜屋の「まよわずカキオコと注文して下さい」という札は、ここのおねえさんが書いたものだそうだ。
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ごちそうさまでした。
どの店も、本当に美味しかったです。

日生、いって後悔なし

カキオコ、食べてみたら、やっぱりその名の通り、牡蠣を使ったお好み焼きでした。そのままです。でもいってよかった。

作り方自体はそれほど難しいものではないので、牡蠣さえ買ってくれば東京でも似たようなものが作れるのでしょうが、やっぱりこの味にはならないのだと思います。

日生という町に足を運んで、店の雰囲気を楽しみながら、日生弁を喋る元気なおねえさん達に焼いてもらってこそのカキオコ。今回は駆け足での取材だったので、今度は民宿とか泊まって、のんびりと日生の町とカキオコを楽しみたいです。

それにしてもカキオコを食べ過ぎました。帰りの新幹線、自分の指がまだソース臭かったです。
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