スマートスピーカー戦国時代
話はちょっと飛ぶが、今いちばん熱いガジェットといえばスマートスピーカーである。iPhoneのSiriがそのままガジェットになったようなもので、話しかければAIが答えてくれる。ネットに繋がっているので天気をきけば調べて教えてくれるし、音楽配信サービスを契約していれば音楽もかけてくれる。
うちにあるのはGoogle Homeというやつのミニサイズ
いくつかの製品が出ているのだけど、今いちばんメジャーな2つが、Google HomeとAmazon Echo。それぞれ話しかけるためのフレーズが決まっていて、前者は「OK,Google」と呼ぶと話を聞いてくれる。そして後者は「Alexa」という女性の名前で呼ぶことになっている。Amazon Echoに入っているAIの名前なのだという。
Google Homeを「Alexa」と呼ぶ
……というのが前提の説明である。「Google Homeを他の女の名前で呼ぶ」というのがどういうことかお判りいただけただろう。
実際に呼んでみるとどうなるのか。映像で見ていただこう。
おわかりいただけただろうか。Google Homeを他の女の名前で呼ぶと、なじられ、平手打ちをされ、銃でメッタ撃ちにされる。人間だろうがAIだろうが、名前は絶対に呼び間違えちゃいけないのだ!
メガネも吹っ飛ぶ激昂ぶり
ちなみにあのビンタはかなり強烈で、撮影中にいちどメガネが吹っ飛んで壊れた。決定的瞬間は動画で残っているので見ていただこう。
暴力の跡
メガネは瞬間接着剤で直して、今も使っている。僕に直接会う機会のある人は、どうか僕が気に入らないことを言っても平手打ちは勘弁してほしい。いま、とてもメガネが吹っ飛びやすい状況にあるのだ。
メイキング
もちろん、なじられたり、平手打ちにされたり、銃でメッタ撃ちにされるのはGoogle Homeの標準機能ではない。僕が勝手に作った機能である。
以降はGoogle Homeの新機能、「他の女の名前で呼ぶと、なじりながら平手打ちをしたり銃でメッタ撃ちにする」の開発記だ。
まず、やることは大きく2つ。「Google Homeにモーターを動かす新しいコマンドを追加する」「モーターを使って平手打ちやメッタ撃ちをするマシンを作る」だ。
解説のために一行だけ専門用語を使わせてもらうと、IFTTTのGoogle Homeチャンネルでトリガーのフレーズを設定して、アクションでWebhookチャンネルからBeebotteのAPIを叩き、ESP8266でMQTTで受信してサーボモーターを動かす。
Google Homeにコマンドを追加する
IFTTTっていうウェブサービスがあって、これを使うとGoogle Homeに機能を追加することができる。
モーターを動かしたりするのはさすがに難しいけど、一問一答を増やすくらいだったら本当に簡単だ。
設定画面。ここでは「愛してるよAlexa」「おやすみAlexa」「おはようAlexa」のどれかを言うと「Alexaって誰?」と返すようにした
実機を持っていて試してみたい人は、「IFTTT Google Home」とかで検索してみよう。ちなみに返答にはかなり長いフレーズも入れられて、例えば最初の映像では「Alexaって誰よ? どこの女? 浮気してるんでしょう? 許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!」を登録してある。(まだこれでも限界ではない)
モーターを動かす
つぎに、これと連動してモーターが動くようにした。ちょっとテクニカルな話になるので手順は省略するけど、知りたい人は
このページを見るとほぼ全部わかる。(「アクションの場合」のところ。Maker Channelというのは古い名前なので、頭の中でWebhookに置き換えよう。)
「おはようAlexa」で、「Alexaって誰?」と言いながらモーターが回る。ちなみにモーターは、サーボモーターという、一定の角度で止められるものを使用
平手打ちをする
さあ小難しいところは終わった。あとは手やピストルをつけていくだけである。
手の材料を100均で物色したところ、常軌を逸したメガネがあったのでこれを素材にした。
「だーれだ?」されているように見えるメガネ
当サイトの工作記事で悪ふざけで作ったみたいなメガネだが、これが大量生産されて全国で流通しているのだ。ダイソーすごい。
切り離して塩ビパイプと組み合わせ、手に。手はプラスチック製なので弾力がなく、つまり叩かれると痛い
台と組み合わせる。パイプの、手とは反対側の端を引っ張って、てこの原理で手を振り上げる
こういうこと。自分の勢いで倒れてしまうほどのスイング力
いつも読んでいただいている方には毎度同じパターンで恐縮だが、てこを動かすのには重力を使った。5V程度の電圧とモーターで、人間にダメージを与えるほどの強い力を出すのは難しい。ギアを噛ませればパワーは出るが、動きが遅くなる。いっぽうで、重力ならおもりを重くするだけでいくらでもパワーが増やせる。しかも手軽で、無尽蔵に使えるフリーエネルギーだ。
電子工作で暴力をするには、重力。覚えておこう。
おもり(ペットボトル)を置く部分のアップ。Google Homeから信号がくると、このモーターが動いて、おもりを落とす。
ちなみに今回もっとも工夫したところは、てこの軸を斜めにしたところである。
先ほども貼った制作中の写真。2本のパイプをつなぐボルトが斜め!
こうすることによって、重力を使った縦方向の引っ張りを、斜め方向のスイングに変換することができるのだ。
もういっこのピストルの方だが、これもモーターで引き金を引っ張っている。
こちらで重要なのは、ピストルを買うときに引き金だけ引けばいいタイプのものを選ぶことだ。上の方についているレバーを引くやつを選ぶと、モーターが2つ必要になるので面倒だぞ。(誰に向けたアドバイスなのだろうこれは)
AIは感情を持つべきか
こんな凶暴な機能をテストしている途中で気づいたのだが、実は名前をまちがえられた時に訂正する機能は、Google Homeに最初からついていた。このあとに動画を貼るが、おっとりとした、落ち着いた対応である。
しかし他の女と間違えられたときにこの対応とは、現代のAIが感情を持っていない証でもあるだろう。
AIに感情を、そして激情を搭載すること。これは次なる飛躍への一歩なのか、それとも破滅への一歩なのか。このとき、まだ人類はその答えを知るよしもなかった…。
「お呼びですか?名前を間違えているようですね。私はGoogleアシスタントです。何でも聞いてみてください。」