耐震補強へのめざめ
この数年、日本列島は各地で揺れまくりである。その影響か、耐震補強を施してある建物がよく目につくようになった。柱や筋交いを追加したり、鉄骨で覆ったりして、古い建物でも建て替えなくても地震に耐えられるようにしているのだろう。小中学校の窓枠の部分に太い斜めの柱が入っているのを見たことある人もいる思う。
先日、外側をものすごい無骨な鉄骨で補強してあるマンションを見つけた。まずは思わず声が出ちゃったその物件を見ていただきたい。
鉄仮面をかぶせられた国王の双子の弟、みたいな感じ
筆者は建築素人なので、業界的にはぜんぜんすごくなかったり、見当外れな感動をしているかも知れないけれど、詳しい方はご容赦ください。
もともとの建物は表面にレンガ調のタイルが貼られた、70年代くらいに建てられたと思われるマンション。1階が駐車場になっていて、2階以上が住居のタイプだ。
これまで見た景色の中でベストミスマッチ
視界に入ったとき、無意識に二度見して思わず「むおっ!」みたいな声が出た。時代を感じさせる艶のあるタイルとイマっぽいマットな鉄骨。その2つが白昼堂々こんなに大胆に密接している光景、これまで見たことがない。
かっこいい!とか言っていいのか分からないけれど、とにかくかっこいい!
なによりすごいのは足元だ。補強の鉄骨は、斜めにオーバーハングしたコンクリートの柱に支えられているのだ。そしてその根元は、マンションを支える柱をしっかり抱いて密着している。
建築素人から見ると超かっこいいけどちょっと不安
鉄骨はマンションの柱にしっかり固定されている
横にまわってみると、隣の面も柱で補強されていた。補強が入っているのはどちらも通路側で、ベランダ側は外から見えなかったけど、どうなんだろう。
横の面も補強が入っていた
私はこれで耐震補強に目覚めました
このマンションを見つけたことで耐震補強に一気に興味が湧いた。ほかにもすごい耐震補強の物件があるかも知れない。それを見たい。見たくてたまらない。
というわけで新年早々、車窓や検索やストリートビューですごい耐震補強の建物を探す日々が続いた。
丼ぶりと京風うどんと耐震補強と
用事があって出かけたある日、お昼を食べようと歩いていると、ビルの1階に入る丼のチェーン店が目に入った。いや、正直に言うと、店の看板より先にガラスの内側に目が行った。
感じる…感じるぞ…ものすごい柱の存在を…
急いで店の前に行ってみると、そこにはこれまで丼のチェーン店では見たことのない光景があった。
これ入れるスペースあるのかな
造船所の居抜きとかじゃないよね?
ここでお昼を食べたい!と思って店に駆け込んだ。席に座ってから改めて眺めてみると、1階だけどものすごい屋根裏感。でもサラリーマンとかが普通の顔して入店、みんな黙々と食べている。むしろ大きな地震が来ても閉じ込められることはない、と安心しているのだろうか。
サイバーパンク丼チェーン
ランチは美味しくいただきました
店から出たあと近くでも入口を補強してある物件を見つけた
カラフル&ライトアップ耐震補強
次のご紹介するのはネットで見つけた耐震補強物件。とある駅の改札を出てすぐ目の前に立つこのビル、ガラス張りであまり古そうには見えないけれど、下から上まで伸びる大きな筋交いが印象的だ。
最新のビルのデザインです、と言われたら僕だったら納得する
さて、ネットで見た情報によるとこの建物、夜になるとこの筋交いの部分がライトアップされるというのだ。耐震補強ってどちらかと言えば隠したい(建物が古いと言っているようなものだから)のではないかと思うんだけど、逆手に取って目立たせる。インパクトはあるかも知れない。
と言うわけで、仕事が終わってからわざわざ逆方向の電車に乗ってやってきた。
はい解散~
割と遅い時間だったのだけど、僕が行った日はなぜかライトアップしていなかった。僕を補強してほしいくらい膝から崩れ落ちそうになった。
気を取り直して、別の駅前にある建物を紹介しよう。いわゆる細長い雑居ビルが立ち並ぶ一角に、ちょっとカラフルなビルがある。
どうして色をつけたんだろう
グラデーションする耐震補強
まるでその部分にかかっている荷重を表しているかのようにグラデーションしている補強の鉄骨。なぜ色をつけたのか分からないけれど、少なくとも1人はわざわざ写真を撮りにやって来たのだから効果はあったと言えるだろう(テナントには入らなかったけど)。
ところで、よく見たら2軒隣のビルも耐震補強をしてあった。こちらは壁の内側に補強を入れるタイプである。しかしなぜか1ヶ所だけ赤と黒に塗装してある。
あそこが弱点だ!狙えー!
この界隈では耐震補強を塗装することがステータスなのだろうか。
団地は耐震補強を見よ
耐震補強の物件を探しても、民間のビルはまとまった情報がなく、なかなか見つからなかった。そこで、まとまった情報がありそうなものとして公共の建物を調べたところ、各地の団地がなかなかすごい耐震補強をやっていることを知った。
そこで、耐震補強を見るため、とある団地にやってきた。
これはすごい
初めて団地かっこいい、と実感した
巨大な棟が立ち並んでいて、空間としてものすごい迫力。当サイトのライター仲間に大山さんという団地鑑賞界の大家がいるにも関わらず、僕はここまで大規模な団地をまじまじと見たことがなかったので、圧倒されてずっとニヤニヤしていた。完全に変質者だ。
その中で今回見に来たのが、同じ形の団地が2つ至近距離で並んでいる棟。詳しいことはよく分からないけれど、ツインコリダーと言うんでしょうか。
これはもうオベリスクとかそういう類のものじゃないか
よく見ると中に柱や筋交いが…
そう、どうやらここ、接近して建っている2つの棟の間に柱を立て、梁や筋交いで繋いで耐震補強をしているらしいのだ。上から見るとカタカナの「コ」みたいな形の内部を塗りつぶしたようなイメージ。それは強くなりそうだ。
これはかっこいい!
毎日この景色を見て暮らせるならちょっと住みたい
また、ほかの団地でも特徴的な耐震補強を行っているところを見つけたので、さっそく見に行ってきた。
どういう構造かお分かりだろうか
反対側にも同じような構造物がある
そう、この団地、両端にブックエンドのような形の壁を立てて、揺れから建物を守っているのである。鉄骨や鉄パイプで組まれた補強構造も良いけれど、この構造もがんばって踏ん張っている感じがして、とても良い。
団地界、きっとまだ見ぬ耐震補強があるだろう。見て回ってみたい。
この補強の中も部屋にしてしまえばいいのに、って無理か
県庁舎は耐震補強の見本市
最後に、今回調べた中でもっとも大規模な耐震補強物件をご紹介して終わりにしたい。それは埼玉県庁舎である。耐震補強マニアの間では以前から話題になっていた有名物件らしい。
浦和駅で降り、数分歩くと県庁の本庁舎が見えてきた。
見えるだろうか、白いジャングルジムが
なんとこの手前のジャングルジム部分がすべて補強らしい
横に回ってみると、本庁舎は長く伸びていて、それぞれの端の方に補強が入っていた。
真ん中は大丈夫なのだろうか
さらに本庁舎に隣接して建っている周囲の庁舎も、軒並み耐震補強が入っていた。
ほぼ全面が鉄骨のジャングルジムと化しているさいたま地裁
プロジェクションマッピングでインベーダーをやってほしい第三庁舎
金属性のエイリアンに侵略されかけてるようにも見える
そして、本庁舎の裏に建つ第二庁舎が見えてきた瞬間、僕は息を呑んだ。
うおぉぉぉ…
まるで鳥かごのように細かい網目で覆われた第二庁舎。しかし後で調べたところ、これはもともとのデザインだそう。よく見ると内部の窓枠部分にたくさんの補強材が入っている!
さらによく見ると、鳥かごの内側に鉄骨のフレームが入って建物を押さえている!
埼玉県庁舎、建物によっていろいろな耐震補強が施されていて、まるで耐震補強の見本市のようだった。
古い建物を立て替えることなく、現在の耐震基準に適合させる耐震補強。きっとこれからも多くの建物に施されると思うし、新しい工法も出てくると思うので、これからも注目してみたい。
ちなみにツイッターでも集めているので、もしすごい耐震補強の建物を見つけたら「
#この耐震補強がすごい2017」というハッシュタグで投稿してください。
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