たぶん店内における水面の割合が日本一多いカフェ
釣った魚がその場で食べられる店といえば、生簀でタイやアジが釣れる居酒屋、ニジマスを塩焼きにできる渓流やプールの釣り堀、あるいは先日台湾で体験したエビ釣り堀(
こちらの記事)といったところか。
では『つりぼりカフェ Catch and Eat』がどのタイプかというと、どれともちょっと違うものだった。
2016年11月25日にオープンしたばかりのお店です。
店内には大きな丸い水槽がドーン。
そしてそれを囲うように設置されたテーブルとイス。なんだこの空間は。
クイズ番組か中華料理屋、あるいは国際首脳会議のテーブルっぽい。
店の一角がこうなっているという訳ではなく、ここから見える範囲が店のすべて。
全部の客席が水槽に面しているのである。よって店の広さに対して座席数が極端に少ないのだ。
別角度から。左奥に見えるカウンター席については後ほど説明します。
水槽で泳いでるのは、食用として養殖されたホンモロコという、ワカサギに似た淡水魚。
関東ではあまり馴染みのない魚だが、関西ではけっこうメジャーな高級魚らしい。ライターの平坂さんが琵琶湖で釣っていたあいつか(
こちらの記事)。
このホンモロコを釣って、キャッチアンドイートするらしい。
巨大な濾過器のスペースだけでも、普通のカフェなら2席分くらいありそうだ。
1時間千円で20匹まで食べられる
この店を経営しているのは、以前に取材したとしまえんのプールを使った釣り堀(
こちらの記事)をやっている会社だったりする。
カフェの経営者が釣り堀を設置してみたのではなく、釣り堀をやっている会社がカフェをやったから、ここまで水槽が大きいのだろう。
店長の齋藤さん。ここは元々フィッシュホーンという釣具屋だったそうです。
釣りの料金は1時間千円で、釣ったホンモロコは20匹まで天麩羅か唐揚げにしてくれるというシステム。調理費はサービス。
※現在は1時間10匹までに変更になったようです。詳しくは店舗にご確認ください。
釣るだけなら制限時間内で何匹釣ってもよく、最高記録は1時間で67匹。とりあえずの目標としては、釣り好きなら20匹、釣りをやったことがない人で10匹とのこと。ちなみに1匹も釣れなかった人は、まだいないらしい。
ホンモロコの天麩羅が20匹で千円なら安いくらいだ。ただ釣らないと食べられないけどな。
カフェなのでドリンクやフードも当然あるのだが、メニューを見た感じでは、カフェというよりも缶詰バーみたいなラインナップ。
店側の力の入れ具合が、『釣り堀8:カフェ2』くらいだろうか。カフェといいつつホットコーヒーすらないぞ。いいけど。
ドリンクは300円から。カフェだけどパンケーキとかロコモコ丼はないよ。
釣れたら揚げたての天麩羅で、釣れなかったら缶詰で飲めということか。
別に釣りをしなくてもいい
釣りをすることは強制ではなく、ダーツバーで飲んでるだけの人がいるように、スナックでカラオケを歌わない人がいるように、釣り人を眺めながらドリンクを飲むという遊び方もOK。
釣りをするプロ登山家と、キーボードを叩くビジネスマン。
ただ、お金を払えば釣らなくても天麩羅を注文できるかというと、それは断固拒否するらしい。
「それをやったらただの天麩羅屋だから」と、あくまでキャッチアンドイートというスタイルにこだわっているのだ。
飲食店としてのニーズよりも、釣り人としてのこだわりが優先されているカフェなのである。
今なら開店記念で贈られたうまい棒が食べ放題ですよ。
ホンモロコの釣り方
システムが理解できたところで、1時間の釣りとコーラの代金を支払ってスタート。しめて1300円也。
釣り道具のレンタルやエサは料金に含まれており、持ち込みは禁止となっている。
釣り方がまったくわからないので、まずはスタッフの方に教わりました。
釣りの仕掛けはちょっと変わっていて、オモリが糸の先に付いていて、その少し上から横にハリがピョコンと出ているスタイル。
狙う魚が小さいので、使うハリも極小だ。
横に飛び出たハリが一つの胴付き仕掛け。そしてウキは使わない。
コーラと竿とつまみ、ではなくて釣りのエサ。
エサは養殖用の飼料を加工したもの。ついつい食べそうになるが我慢。
エサの中央にハリを刺し、先っぽをちょっとだけ出す。
私は釣り歴がけっこう長いため、釣れて当然だろうということで、初心者代表としてほとんど釣りをしたことのない友人にも来ていただいた。
彼女達でも釣れるのならば、きっと誰でも釣れるはず。
「アタリがあったら竿を上げてください」と説明するスタッフに、「アタリってなんですか?ハズレもあるの?」と返すレベルの友人達。
なかなか難しい釣りです
水槽にそっとエサを入れると、お腹を空かせたホンモロコ達がグワーっと集まってきて、エサの奪い合いが始まった。まるで生肉が放り込まれたアマゾン川のピラニアのようだ。でも釣れない。
エサがなくなったとわかると、サッといなくなるホンモロコ達。なんだかスーパーの試食コーナーで働いている気分だ。ちょっと、買ってって―!
この釣りはワカサギ釣りの繊細さと、カワハギ釣りの難しさを足したような釣りとの話だが、なるほどこういうことか。
一回やってみるとわかるのだが、食べたり飲んだりしながらのんびりとやる釣りではなく、もぐら叩きのように集中しっぱなしの釣り。
手元が忙しすぎて、ゆっくり飲み食いできないカフェってすごいな。
なかなか釣れねー!
しばらくはエサがとられるばっかりで全然釣れなかったが、なんとなくアタリの取り方やアワセのタイミングがわかってくると、ボチボチと釣れるようになってきた。
プルプルっときたらヒュッでイエーイといった感じ。エサをある程度上下させておいたほうが、ハリに掛かりやすいかな。
これがホンモロコか。こんな小さな口によく刺さったな。
釣れたら網に入れておこう。
自分で釣らないと天麩羅を食べられないため、全員が無言になって竿を握る。
ちなみに私はハングリー精神を高めるために昼飯を抜いてきた。
ビビビッという手ごたえが楽しいんですよ。
手に入れた獲物に目を輝かせる友人A。
釣れた魚に名前をつけそうになる友人B。
釣れたと思ったら落とした友人C。
そんなこんなで釣果は5~15匹といったところ。なるほど、これは釣り好きでも楽しめて、初心者でもどうにかなる絶妙な難易度だ。
次に来たら、きっと20匹は達成できそうな気がする。
ホンモロコが釣れる決定的瞬間が撮れたのでどうぞ。
ホンモロコの天麩羅、うまい
釣ったホンモロコの調理は、唐揚げか天麩羅の二択。今回は釣れた量が少ないので、衣でボリュームが増える天麩羅をオーダーした。
サクサクに揚げてもらったホンモロコの天麩羅。
こうして揚げたての天麩羅にありつけたのだが、ホンモロコが関西では高級魚だというのも納得の味。
小骨がまったく気にならず、口の中でホロホロと崩れていく。小さいながらも意外と旨味が強く、ほんのりとほろ苦いところも加点対象。
はい、120点!
サックサクでうまい!もっとたくさん釣ればよかった!
「家が近所の人ずるい!」「楽しくて食べられるなんて主婦も大満足よ!」「あんましゃべらんでもええから初デートにええんちゃいます?」
釣りたての揚げたてをいただくという贅沢。
テナガエビの釣り堀もあるよ
この店で釣れるのはホンモロコだけではない。なんと私が台湾でハマったテナガエビも釣れるのだ。個人的にはこっちが本命だったりする。
店長の齋藤さんによると、もともとは台湾やタイで流行っているテナガエビ釣り堀が楽しいので、新事業としてやろうとしたものの、あの大きなテナガエビを養殖しているところが日本にはまだまだ少ない。
一番肝心である生体の安定供給という壁にぶつかり、じゃあ暫定措置として別の魚をメインでやってみるかとなり、食べて美味しく、水温の変化にも強く、釣りやすい魚ということで、このホンモロコになったそうだ。都合のいい魚、ホンモロコ(涙)。
これがタイや台湾の釣り堀で人気のオニテナガエビ。
もちろんテナガエビの釣り堀を諦めている訳ではなく、エビの安定的な確保ができればすぐにでもリニューアルしたいそうで、なんなら良い場所さえあれば自社で養殖してやろうという勢いらしい。その気持ちはよくわかる。あの釣りは楽しいよね。
いやでもホンモロコ君にとってはせっかく回ってきたチャンスなんだから、このまま一軍定着を目指してがんばっていただきたい。って何目線の発言だこれ。
テナガエビはサイドの水槽にこっそり放たれている。
水が透明なので、テナガエビが丸見えだ。
許可をもらって水中撮影した様子。相変わらずハサミが青いな。
テナガエビはウキを使った釣りで、料金はこちらも1時間千円。
エサはホンモロコと同じだが、たくさん付けるのがポイントだそうです。
ここの水槽は台湾の釣り堀とは違って、水が透明ですべてが丸見えとなっている。
同じ水槽に放たれているホンモロコの攻撃をかわしながら、テナガエビの少し前にエサを落とすと、そそくさと寄ってきてエサを挟み、隠れ家にもっていって食べる。あわせるのはこの時だ。
という一連の流れが全部見えるのである。そりゃ興奮しますって。
ホンモロコのエサ取り攻撃がイラッとしておもしろいんですよ。
これだけ丸見えなんだから簡単に釣れるだろうと思ったが、なかなかどうして難易度が高い。さっきまで大好きだったホンモロコがここでは憎い。人って勝手ですね。
それでも3匹を釣り上げることに成功し、ビビビンというエビ独特の堪らない引きを堪能。まさか日本でこいつを釣ることができるとはなあ。
小さなハサミでも挟まれると微妙に痛いよ。でもうれしい。
大きいテナガだと猛烈に痛いそうなので、ハリはスタッフに外してもらいましょう。
テナガエビは唐揚げでいただく
テナガエビは生体の入手が難しいため、釣れてもすぐ水槽に戻すのだが、代わりに冷蔵庫から出したエビを釣果に応じて1時間あたり2匹まで唐揚げにしてくれる。
このオニテナガエビは台湾で塩焼きをたくさん食べたが、唐揚げにしてもまたうまかった。しっかりと身が詰まっているエビなんですよ。釣らないと食べられないけどね。
釣ったやつよりだいぶ立派なエビが揚げられて出てきたよ。
今回は取材ということで一応お酒はやめておいたのだが、次回はまずコーラでも飲みながらホンモロコを20匹以上釣って、その天麩羅をツマミにしてビールを飲みながらのテナガエビ釣りに決定。帰りにひょうたん(立ち飲みタイ料理屋)へ寄ったら完璧。
家からちょっと遠いけど、タイや台湾に比べれば全然近いので、またすぐに来ると思う。いっそバイトしたいくらいだ。
テナガエビうめー。
小学生の頃、網で捕まえてきたクチボソ(モツゴ)という魚をビニールプールに入れて、年下の子たちに釣らせる釣り堀ごっこをやったことがあるけれど、この店はまさにそれの事業化。
ここでエビ釣りの腕を磨いたら、今度はタイのエビ釣り堀に行こうと思う。「エビでタイを釣る」ならぬ「タイでエビを釣る」って言いたいから。
窓の外から覗いている人が多かったけど、そりゃ気になるよね。
家庭用製麺機のマニュアル本を出したので体験会やります
趣味にしている家庭用製麺機の真面目なマニュアル本として、『
家庭用製麺機 USER GUIDE』を作ってみました。どこに需要があるのかは謎ですが。
つきましては1月15日(日)に水道橋のカフェバーで、中華麺を作ってラーメンを食べる製麺機体験会をやりますので、よろしければご参加ください。
詳しくはこちら。