一度見たら忘れられない『ナニワ金融道』の絵柄
漫画家さんの中で、一番アクの強い絵柄を持っている人は誰か?
……まあ、色々な意見があると思いますが、すさまじくアクが強いにも関わらずメチャクチャ売れた漫画家、という縛りだったら文句ナシでこの人が挙がることでしょう。
『ナニワ金融道』の青木雄二!
立体感があるんだかないんだかよく分からない、妙に平べったくて味わい深い人物。スクリーントーンも使わずに、執拗なまでに描き込まれたコクのある背景(と、変なネーミングの看板)。
さらに、雲や、壁の汚れを表現するのに、他の漫画では見たことのないような独特すぎる記号を使用していたり……。とにかく個性&アクの塊のような絵柄です。
青木先生亡き後、お弟子さんたちが似たような絵柄で別の漫画を描いているんですが、絵を見るだけで反射的に「闇金の漫画だ!」と思っちゃいますもん。
……というわけで今回は、『ナニワ金融道』風の絵柄で描けば、どんな名作もエグイ金融漫画に見えてくるのでは? という検証をしてみたいと思います。
まあ、例のごとく、ただ単に青木雄二風の絵を描きたいだけという企画です!
青木雄二風『走れメロス』
まずは、太宰治の感動の名作『走れメロス』を『ナニワ金融道』風に!
メロスが勝手に王様に逆らった挙げ句、でも妹の結婚式に出たいからと、身代わりにセリヌンティウスを置いていくあたり、結構ヒドイ話だなぁ~と思ってましたが、「連帯保証人」だと考えると納得。
コレ、絶対にメロスが帰ってこないパターンだ!
青木雄二風『一杯のかけそば』
つづいて、1989年に日本中を涙の渦に巻き込んだ感動の名作『一杯のかけそば』を『ナニワ金融道』風に。
原作では当然、美談として書かれていますが、実際に3人で1杯しか頼まない客が来たら……まあまあ迷惑がられても仕方ないですよね。『ナニワ金融道』だったら、地上げ屋とかが絡んできそうな感じ。
ちなみに『一杯のかけそば』の原作者さんはその後、色々あって、わりとリアル『ナニワ金融道』っぽいことになっているようです(詳しくは各自ググろう!)。
青木雄二風『蜘蛛の糸』
ここまで、『ナニワ金融道』風の絵柄にすることによって名作の感動を台無しにしてきましたが、最後は『ナニワ金融道』風にしてもあまり印象が変わらない名作を……。
特徴がありすぎて難しい!
見るからに特徴の塊なので、それらしく描くのは比較的カンタンそうに思える青木雄二先生の絵柄ですが、特徴がありすぎるが故に、ちょっとそこからズレるとただ単にヘタクソな絵になってしまうという、なかなかマネするのにはハードルが高い絵柄でした。
そう考えると、青木先生亡き後も、ほぼ絵柄完コピで連載を続けている青木雄二プロダクションのスタッフさんたちは素晴らしいですよね!