ふだん見ている世界があからさまになる衝撃
そんなことを思ったのは、GPS地上絵でもよく知られている石川初さんのスライドを見たからだ。
自分が地上で移動した軌跡は、GPSログというもので記録できる。それをまずふつうに地図に落としこむとこうなる。
石川初さんから頂いた画像。時速で色が変わってたりしてて凝ってる。
ここに見えているのは石川さんの10年以上の移動の軌跡なんだけど、衝撃を受けたのは描き方を逆転した次の図だ。
(c)石川初。自分が本当に見ている世界
GPSログの軌跡の周辺だけを残し、他を消したもの。
ここで黒くなってる場所は10年以上本当に「見えてない」場所だってことだ。ぼくたちは街の一部しか見ていないってことを、こんなに衝撃的に示す図は初めて見た。
これは「スリバチナイト2」というイベントで石川さんが発表していたものなんだけど、この瞬間に会場がどよめいたのを覚えている。
(c)石川初。調布駅のあたりを拡大して文字を追加。
たとえばこれは石川さんの最寄りの調布駅のあたり。北口はあちこち歩いてほとんど見ているのに、南口は特定の道沿いをのぞいてほとんど見えてないってことが分かる。
これも石川さんから頂いた画像。深大寺付近。
これが作りたい
これはすごい。これを作りたいと思った。こういう図が、石川さんだけじゃなくて誰でも自分の街について作れる仕組みを作りたい。
それで思い出したのは、昔のドラクエみたいなロールプレイングゲームだ。暗い洞窟を歩くと、歩いた部分がだんだん地図になっていく仕組み。
それを自分の街でやりたい。最初は真っ暗で、歩くとだんだん街の地図が出来ていくようにしたい。
スマホでできるようにした
というわけで、スマホのグーグルマップでそういうことができる仕組みをつくった。
実際に東京の渋谷で使ってみようと思います。
渋谷のスクランブル交差点に来た
スマホの画面は最初は真っ暗だけど、そのうち自分の周辺の衛星写真だけが表示される。
こんな感じ
スマホの画面。スクランブル交差点ぽい。
一部すぎて分かりづらいけど、スクランブル交差点ぽい衛星写真の地図が確かに表示されてる。ではここから渋谷ヒカリエ方面に行ってみよう。
ヒカリエ方面へ
ヒカリエ手前の交差点についた。地図はどうなってるだろうか。
なんかそれっぽくなってる
スクランブル交差点からヒカリエまでの道筋だけが浮かび上がっている。なかなかいい感じ。
次はこのスマホを持って渋谷をあちこち移動してみよう。
知ってるけど入ったことはない109とか、
東急本店などを通り過ぎる。
そうやって何時間か渋谷で移動してみた結果の地図がこちら。
グーグルマップに落とし込んであるので、ふつうに動かしたり拡大縮小できます。
ここに見えているのは、ぼくの渋谷でのこれまでの行動範囲とほとんど同じだ。ほんとに一部しか見えてないんだなあということを実感する。
※なお、グーグルマップにSVGでマスクをかけるという仕組みとコードの一部は、清水正行さんによるこちらのページを参考にしています(「
【D3.js】Google Mapにsvgを使ってマスクをかける」)。
地上絵で遊んでみる
GPSログで地上に絵を描くGPS地上絵という遊びがある。本サイトでもライターの大山さんがたびたび取り上げている。
例:
体長2.5kmの馬の絵を描く
地上に描かれた馬。上記の記事より。
これも、このスマホをもって歩けば、歩くはしから軌跡が浮かび上がって面白いかもしれない。大山さんの設計した「
雑司ヶ谷ガチョウ」をもとに、歩いたらこうなるというシミュレートをしてみよう。
頭を描き始めたところ
歩くはしからガチョウの頭がうかびあがる。全体図はこんな感じだ。
かわいいじゃありませんか。地図上にGPSの軌跡を乗せるというよりも、歩くことによって絵を浮かび上がらせるという感覚になって面白いんじゃないかなと思う。上の図はじつは歩いたらこうなるというシミュレーションなんだけど、後日ほんとに歩いてみたいなーと思う。
近所でやってみる
最後に、近所でやってみよう。ぼくは東京の巣鴨というところに住んでいる。この道は通ったことあるなと思うところを、同じ手法で浮かび上がらせてみた。
住宅地のたんなる道なので、住んでない人にとってはなんじゃらほいという感じかもしれない。でも個人的には、確かに見えてる世界はこんな感じだなーということを実感する。
これは近所でやると面白いですよ。
おわり
おもしろい地図ができた
知ってると思う街でも、じつは大通りの景色しか知らなかったりすることがある。そういうことがこの地図で少しでも可視化できたらおもしろい。
なお、この記事で作った仕組みを試験的に公開しています。次のURLにスマホでアクセスし、説明をよくお読みのうえ、よければ試してみて下さい。
http://mitsuchi.net/gps/