まるで星座
これがGPSロガー。いわば持って歩くカーナビみたいなものですね
ぼくはこのGPS地上絵という遊びがたいそう気に入っている。だから新作を描いては何度でも記事にしちゃうのだ。みんなもやるといいと思う。いまはスマホにもGPSロガーアプリがあるから、誰でもやろうと思えばできる。
まず暇があれば地図をじっと見つめ、道の形が何かに見えてくるまで待つ。北を上にしていてはダメだ。方向をぐるぐる変えてあの手この手で道路に意味を探すのだ。
結果、だいたい動物に見えてくる。幾何学的なものはちょっと曲がっただけでアラが目立つし、人間の描写も少しの線の乱れが気になるものなので難しいからだ。
ぼくが初めて描いたのはこのブタ(地図の都合上逆さまになってます)。2006年のことだ。(
大きな地図で表示)
関東平野上空を東から鳥瞰するとこんな。とりたてて意味はないが向こうに富士山を入れてみたかったのです(GPSログをGoogle earthで表示したものをキャプチャ、加筆)
道がちゃんとしてると描けない
実は東京周辺だけでなく、大阪でも描いた実績がある。
大阪の平野に赤い点が2つあるのが見えるだろうか。(GPSログをGoogle earthで表示したものをキャプチャ、加筆)
大阪は野田のあたりに眠っている犬、岸里に走る子ゾウを描いた。どちらもとても苦労した。(GPSログをGoogle earthで表示したものをキャプチャ、加筆)
眠っている犬を描いたログを再生したもの。2チームに分かれて描いた。
こちらは子ゾウ。かわいい。こうして見ると行ったり来たりが激しい。一筆書きだからなー。
眠っている犬を描いた様子は→
こちら、子ゾウは→
こちら。
大阪の方々から「こっちでもやってほしい」と強い要望をいただき、ぼくも東京以外の地に絵を描きたかったのでがんばった。が、大阪はほんとうに難しかった。すごーく楽しかったけど。また大阪でやりたいな。
なぜ難しいかというと、道がきれいに整っているからだ。地上絵設計のきっかけは、特徴的に曲がっている道路が何かに見えるところから始まる。が、大阪中心部はそういう不整形な道路が少ないのだ。
これは、地上絵オールスターを地形図に乗せてみるとよく分かる。
動物たちは崖が好き
地上絵オールスターズを地形図に乗せると、多くが崖っきわにいることが判明。(「
東京地形地図」をGoogle earthで表示したものにログを乗せキャプチャ、加筆)
これはつまり、絵のきっかけとなる動物的な曲線を見せる道路の多くが、地形由来だということだ。
たとえばもっともダイナミックな地形だった横浜の「踊場サムアップ熊」
何かを成し遂げたのか、親指をぐっと立てて去っていく後ろ姿。かわいいりりしい。(「
東京地形地図」をGoogle earthで表示したものにログを乗せキャプチャ、加筆)
ログを再生した様子。この時も2チームに分かれた。(「
東京地形地図」をGoogle earthで表示したものにログを乗せキャプチャ、加筆)
地形に沿っている線はなめらかで、台地と谷とを横断している線はガタガタなのが分かるだろう。この場合、それが功を奏して背中の毛の感じが出ているのだが。
やっぱり!ととても面白かったのが、この熊の最大の特徴である親指。
親指はまるごとぼっこり凹んだ調節池だったのだ!
このとおり、調節池をぐるっと回る道筋が親指だった。
さらに、右の耳も。
ピンととんがった耳の先がここ。そこに至る道は…
半島状に突き出た台地であった。
動物の特徴的な部分が、地形の特徴的な部分に一致する、というのがとても興味深い。
さて、今回このオールスターに新人登場だ(といっても描いたのはもう昨年のことなんですが)。
豊島区の雑司ヶ谷にガチョウがいたのだよ!
背中組とお腹組に分かれて描きました(GPSログをGoogle earthで表示したものをキャプチャ)
かわいい。体長1kmあまりの巨大ガチョウがいたとは地元住民でもしるまい。
地図で見ると、こんな感じ。
実はこれ、描画の最中にいろいろと困難があり、元の設計とは微妙に細部が異なる出来となった。設計図はこんなだった。
上の実際描き上げたものと見比べると、背中から尻尾にかけての部分と首の前のあたりに切れ込みのようなものができちゃってるのが分かる(
大きな地図で表示 )
要所要所うまくいかなかった部分がどんなだったか説明しよう。
それにしてもこうやって並べると、GPS地上絵の徒労感というか諸行無常を感じる。だって、「描いた」といっても現地には当然何も残っておらず、残っているのはこのデータだけ。それは机上で設計したデータと基本的には何も変わらない。
いや、「データだけ」じゃないな。思い出も残ってるぞ!お、良いこと言ったぞいま!
さあ、その思い出をご覧いただこう。
今回も多くのもの好き達が集まりました。
前出の動画でも分かりますが、クチバシの先からスタート。目までは2チーム48名でぞろぞろと一緒に描き、その後背中組とお腹組に分かれる。
目を描き終わったところで、二手に。お尻当たりで会おうぜ!
通常の意味での「目的地」があるわけでもなく、散歩と違って寄り道するわけにも行かず、常に道を間違わないように気をつけていなければならないという、なんの修行だかよくわからない移動だが、それでもやっぱりこんなことでもないと絶対歩かない知らない街を行くのは楽しい。
味のある名前と惹かれる路地(でもそっちには行けない)。
セオリー通り地形がダイナミック。
そうそう、今回はライター仲間の西村さんと三土さんが参加してくれた。そしてみんなで謎の線に興奮した。
学校ってやっかい
前ページの地図を見ていただくと分かるが、このあたりは学校がとても多い。こうなると設計がたいへんなのだ。広大な入れない敷地が通れる場所を制限してしまうから。
で、背中組には一箇所「ここは敷地内だな…でもどうにかならないかな…ええい!線を引いてしまえ!」と設計してしまった部分があった。不安だったのでぼくは背中組に参加した。
さて、案の定現場で立ち往生だ。
東京音大の敷地を突っ切れ、と言っている(ぼく自身が)。困った。
設計図の首の後ろのこの部分。下の道を迂回するとどうしても首の形がへんな風になる。だから突っ切れ、と設計図は言っている(ぼくのせいです)(
大きな画像で表示)
門の脇の守衛さんが睨んでいる。どうしよう。
どうしたかというと、通りかかったこの学校の学生さんに事情を話し、ロガーを預けて、キャンパス内を裏まで歩いてもらい、そこで受け取ったのだ。
「事情を話し」と言っても、路上でへんな団体に「GPS地上絵といいましてね…」って意味分からないよね。最後までご理解はいただけなかったが「まあ、とにかくこれ持って裏まで行けばいいんですね」と引き受けてくださった。とても素敵な女性だった。 ありがとう。
名前聞くのも怪しいよなー、と躊躇しているうちに行ってしまわれたのでそれっきりだが、もしこの記事をお読みでしたら、ぜひご連絡ください。菓子折でも持って行きますので!ありがとうございました!
さて、一難去ってまた一難。学校と並んでここらへんの地域にとても多いのが墓地だ。
首から尻尾にかけては墓地の中の道でした。
墓地で立ち往生。
墓地の中の道って、地図で見てもはっきりしない。航空写真で見ても樹が多すぎてよく見えない。ストリートビューもない。
で、危惧していたとおり、行き止まりになってしまった。
無理をすると怒られるだけでなく罰も当たりそうだったので、引き返して別の道を行くことにした。
でもまあ、結果としてはそれほどへんではなかったのでいいとしよう。みなさんも設計時には墓地に注意して欲しい。
さて、お腹組にも困難があったようだ。
いや、地図では行けることになってたんだよ!
なんとつい最近踏切が廃止されたようだった。なんと!
それが首の前の切れ込みのようになってしまった部分だ。ここは都電荒川線と道が交差するところ。地図では踏切があったのに!
こういうことあるんだねー。
学校と違って、こればっかりはどうしようもない。しょうがないので迂回だ。その結果が下。
とまあ、ほかにもいろいろありましたが、設計通りにはいかず現場でいかにアドリブを決めるかというのもGPS地上絵の醍醐味。
そんなこんなで、予想通りお尻で両チーム再開で完成とあいなりました。
このなんてことのない場所が感動のゴールになるのもGPS地上絵ならでは。
こうしてオールスターにガチョウが仲間入り。ほかのと比べると小さくていい出来だ(小さいほど設計が難しい)。
ご興味ある方はぜひ!
冒頭に書いたように、GPS地上絵はぼくのライフワークと決めている。今後も設計でき次第描きに行くので、ご一緒したい方はぜひ!
目下設計中の一つ。120度右に回転させると何かの恐竜か、アルマジロの赤ちゃんっぽいものに見えませんか。もうちょっとうまく整えて描きに行きたい(
大きな地図で表示)
【告知】2014年3月16日(日)カルカルで「空想地図」のイベントやります!
この記事でご紹介した、ぼくのGPS地上絵の師匠石川初さんと定期的にやっている「マッピングナイト」。毎回地図を使った知恵熱を出させる遊びを行っていますが、今回は過日タモリ倶楽部にも出演し、さきごろ空想地図の本も出した「地理人」こと今和泉隆行さんとイベント行います。これはぜったい面白いよ。
とりあえず地理人さんの「
空想地図」をじっくり見てみて!これ実在しない都市の地図なんだよ!すごくない?ぼくも今から楽しみです。
チケット・詳細は→
こちら