一次審査突破作品を全紹介
今日ご紹介するバラエティ豊かすぎる123本は、すべて一次審査を突破した作品たち。
3/9に行われた公開審査会では、これらを一挙上映、審査員が生でコメントしながら、公開審査が行われました。
審査会の様子
このページでは、ほんとにいろいろありすぎる作品を無理やり15のジャンルにわけて、石川からの若干の解説と、それから審査会当日の審査員のコメントとともにご紹介します。(繰り返し設定がされていない作品があるので、動かない画像があったらページをリロードしたり(IE)、画像を右クリック(Firefox)してみてください。)
イラスト系1
イラスト系は2ページに分かれています。区別は曖昧ですが、ストーリーや展開で見せる作品は1、絵自体の味わいがぐっとくる作品は2ページ目に入れています。
moco「化粧中なの改良版」
化粧テーマの作品が二点ありました。
「怖い顔のあと、一回元の顔に戻るのがいいですね(八谷)」
こっちむいたときダルマみたいになる髪型も独特です。
ろくむ「化粧は恐ろしい」
もう一点はこちら。作者は別の方ですが、化粧しながら怖い顔をする人と、化粧が落ちて怖い顔になる人。対比がおもしろい二作でした。
「めちゃくちゃメッセージ性がある(天久)」
「何かあったんですかね(八谷)」
ぶしこ「どうだ明るくなったろう。」
教科書に載ってるあの風刺画のアニメ化!それだけかと思いきや、最後は火が消えちゃうオチも用意されています。
東雲刹那「もぐらたたき」
「ちっちゃいのが一回反抗するんだよね(天久)」
「でもめげないで叩き続ける(八谷)」
無表情で叩き続ける人にも、それはそれで若干のホラーを感じます。
戸松義幸「百鬼1/100」
戸松義幸「百鬼2/100」
ドット絵っぽいけどドットじゃない、カクカクしたイラストがかわいい連作です。絵柄のオブラートに包まれつつ、内容は怖い。こんなにポップな血しぶきははじめて見ました。
「これほんとに100個あったらすごいよね(八谷)」
「ロードなみの先行き感(川田)」
戸松義幸「ふうせんねずみのラビィ 3」
更に同じ方の作品。こちらもかわいい絵柄ですが、無表情で正拳突きする猫がひどい。
RYOCK「魚の悲劇」
「困惑なムードで食べられる魚。複雑スギル世の中で暮らしているね。生命が可哀想だから大切に美味しく食べたいなぁ(作者コメント)」
歌詞のようなコメントと作品。この組み合わせに審査員一同思わず興奮状態となりました。
RYOCK「宝石鳥」
同じ方の作品がこちら。
「これさっきの魚と同じ人?(林)」
「ずいぶん素敵なことになりましたね。心境の変化があったんですかね(川田)」
サントス3104「ビリビリ!!」
アニメで定番の表現をそこだけGIF化。アニメでは一瞬で終わっちゃうビリビリのシーンだけいつまででも見続けられる、いいとこどりの作品です。
ダ・ヴィンチ・恐山「泣く」
線はアンチエイリアスもかかってない野性的な線&女の子のイラストも動かないのに、涙が目から落ちるところや地面に落ちたところのしずくの動きはすごくよく描かれています。一点豪華アニメ。
水色ことり「ゼロ・グラヴィティ」
ゼロ・グラヴィティっていうのはマイケル・ジャクソンのダンスです。重力を無視したように前にぐーって前傾します。
水色ことり「神頼み」
同じ方の、今度はストーリー作品。前回のGIFアニメアワードにも応募していただいたのですが、やわらかい画風が独特で、印象的です。
らしか「訓練」
アニメはシンプルながら、微笑ましい気分になる作品です。
「いつか成功するんじゃないかと思ってずっと見ちゃう(天久)」
あぼかどワサビ醤油「くじらのおもちゃ」
ループのつなぎ目がきれいでよくできています。ずっと見てるとだんだんかわいそうになってくる。
harepp「宇宙誕生」
最後は抽象的なこちらの作品で。
「絵の質感がいいですね(林)」
「ビッグバンをサラッとやる、というのが新しい(天久)」
イラスト系1まとめ
シンプルで短いストーリーでも、自分で書いた味わい深いイラストでアニメーションすると、急に魅力的になってきます。先日、
絵をうまく見せるにはGIFにせよという記事を書きましたが、ストーリーをよく見せるにもやっぱりGIFですよ。
イラスト系2
イラストカテゴリ、後半はもう絵柄だけで味がにじみ出てきている作品たちをご紹介しますよ。
ジュウビーゼット「tomato」
「これは柔らかいトマトです。(作者コメント)」
嬉しそうに飛び跳ねる様子から、突然柔和な顔になる瞬間も。
「こういうのつい評価しちゃうんですよ(林)」
がみ「ロールケーキ?」
「ロールケーキから生まれたロールパンダです。(作者コメント)」
カタツムリみたいな頭が出てきたのかと思ったら、パンダの体でした。脱力度ではたれパンダとタメ張ります。
moco「愛しいおなら」
こういう「ミニGIF」というのも一勢力としてある気がします。
「原寸で見るとかわいいですね。おならしたあとちょっと笑うのがかわいい(林)」
フジワラカイ「ぽんぽこ くまぽん」
ミニもういっこ。もともと画像がちっちゃいのに、さらに余白が多くて真ん中で小さく動いてるのがちんまり感を強調してて愛おしい。
フジワラカイ「うさぽん」
もはや何の生物かもよくわかんないんだけど、かわいさ一点突破。
「かわいいじゃないですか(天久)」
「サイズも含めてちょうどいい感じ(川田)」
かぷりはどこに?「チワワが立った!!」
今回最大の問題作。
「いつも四足歩行なチワワが二足歩行に憧れて立ち上がるというものです。(作者コメント)」
絵のテンションの割に妙に説明的で冷静なコメントが更にじわじわきます。
トリニクカラアゲ「アメーバGIF」
手書きの味を追及し、ついにノートの切れ端に。岐阜出身の筆者としては応援したくなる作品です。岐阜県にこんなに集中線ついてるのはじめて見た。
キリコ「petin」
これは誰なのか、なんでこんな髪型なのか、毛は一本しかないのか、左手はどうなっているのか。
「本人がいたらききたいことがいっぱいある。(八谷)」
退屈そうな表情も更に滋味深い。
ぶしこ「こたつ」
触手というショッキングな展開も、このタッチにかかれば脱力の渦の中。
「最後ちょっと油断しちゃって背景がちっちゃくなるところがいい。こたつってそういうもんですからね(川田)」
イラスト系2まとめ
個人的にはこのカテゴリだけのアワードを開催したいくらい好きなジャンルです。そうなるともはや何を手がかりにして審査していいか全くわからないですが。
オールドスクール
90年代感あふれる、白黒2色のパラパラマンガのカテゴリです。
一見ラフに見えますが、絵の華やかさや被写体のインパクトに頼れない、完全ネタ勝負のシビアな世界でもあります。
gobori「スマホにふりまわされてる人」
審査序盤に登場し、審査員に「盛り上がってきたね」と言わせた作品。
「最小限の動きで効率的に笑わせてる(天久)」
「風刺になってるし(川田)」
カマタアニ「かっこいい?」
二度目のうぃーん、ガシーンで変形が急展開します。
「すごい端折りましたね(天久)」
「急なところがおもしろい(川田)」
カマタアニ「なんちゃって。」
同じ方の作品。意外なところで急に終わります。これも急シリーズか。
ハヤシ「千本ノック」
変な浮遊感のあるボールの動きが見どころ。
「クラスのおもしろい奴がノートの端に書いたパラパラマンガみたいな感じですごくいい(林)」
ぽこあぽこ「みちみち」
最終コマから冒頭に戻るつなぎ目がすごくきれいなループ作品。抽象的な世界がエンドレスで広がります。
東雲刹那「大根」
「収穫されたくないから逃げます(作者コメント)」
よいしょ、って感じで出てくるシーンがかわいい。
sawashi「なかないで」
細かいドット絵に丁寧な仕事を感じます。2色カテゴリに入れましたが、実はワンシーンだけ黄色とグレーが使われてて、効果的な演出になってます。
狐火チゲ鍋「UFOフィーバー」
「サタデーナイトな感じで(作者コメント)」
「これは呼んでるんですかね(八谷)」
「いかようにも解釈できる(天久)」
オールドスクールまとめ
「GIFアニメって思ったまま作るところがいい。作り直さない感じ。一筆書きみたい。(林)」
「絵コンテとか描いてなさそう(天久)」
「疲れたら、いいかこのへんで、みたいな(八谷)」
「自由!(天久)」
白黒の世界は一見ストイックなようでいて、意外とGIFの自由さが猛威をふるうジャンルなのです。
キャラ立ち系
人物を被写体にした作品のうち、特にキャラが濃い人たちを集めてみました。
小堀友樹/茗荷恭平「鼻からエノキ」
2年連続での投稿。去年はアスパラガスでした。
「きますね。表情が。上を見る瞬間とか。(天久)」
来年は何を鼻から出してくれるんでしょうか。
おぎす「あれ、これ白米だよな」
食事ネタだとループを生かしてモリモリ食べたりしがちなGIFですが、あえて「迷い」という微妙な感情を表現。
「これはいいなー(林)」
「アニメーション云々の前に、そもそも顔がいいですね(川田)」
桃尻マサシ「流行」
衣装までビシッと決めて撮影に挑む姿勢はすばらしい!髪形も整えるだけじゃなくて、ちゃんと崩す動作があってループになっているところが芸が細かいです。
本塁MAX「ふわふわ安藤」
この浮遊感。
「『マンボNo.5』を流しながら見るとより面白いです。(作者コメント)」
宇宙ステーション住人のダイエットはこんな感じかも。
ちるこっこ「かおントダウン」
完全に顔のインパクトだけで攻めた作品。一切小細工なし、潔さを感じます。もうGIFアニメじゃなくて顔のJPG画像でいいんじゃないかという気すらしてきました。
植木 駿「haraharatime」
この枠、唯一の女性の登場です。ビューンって滑っていく忍者タートルズみたいな奴、いい動きです。
ちるこっこ「あこがれのロックスター」
アニメの味わいもさることながら、写真が異常にきれい。(GIFって256色しかでないから荒れがちなんです。)
「この綺麗な感じ、女性の写真っぽいですよね。でもうつってるのがおっさん(林)」
「味写っぽい(天久)」
キャラ立ち系まとめ
前回は女性の出ている作品が多く「GIF女子」なんてジャンルもできてたくらいなのですが、どうですか今回、このおっさん率の高さ。GIFも大人の趣味として市民権を得てきたということでしょうか(超前向きな解釈)
しじま「歩行者用信号はこうすればいいのに。」
昨年の審査会では「報告系」という作品ジャンルが発見されましたが、この作品の登場を受け、今年は「提案系」が提唱されました。しかし作品数が集まらず、独立ページ獲得はならず。
mizno7「信号機」
同じく歩行者用信号でぶつけてきた作品。
「これは怖い。よくできてますね(川田)」
「よく見るとナンバ歩きだ(天久)」
ダ・ヴィンチ・恐山「tokuho」
動きはシンプルですがエフェクトが作り出す躍動感がすごい。あのマーク、覚醒後だったんだ。(何が覚醒したかは不明。健康?)
mizno7「dust bin」
去年の受賞作しかり、サイン系はなぜ猟奇趣味に走るのか。
mizno7「water」
「よく見るとおしっこ以外のモノも出てますね(八谷)」
そのうえ最終的に戻っていく。
mizno7「doar(ドア)」
電車やエレベーターの指はさみ注意です。これもホラー系。よく見ると一部が欠けます。
狐火チゲ鍋「くるくる」
そしてかわいいドット絵でもサイン系。
「グラフィック綺麗ですよね(川田)」
「ドアの横のガラスブロックのところがいい(林)」
サイン・マーク系まとめ
公共の場にあってみんなが知ってるモチーフですし、人が描かれてることが多いのでついつい動かしたくなりますね。まだまだ手つかずのサインやピクトグラムはたくさんありますので、根絶やしにする勢いでどんどんGIF化していきましょう。
ハイクオリティ
「ハイクオリティ」って雑なくくりではありますが、とにかくちょっとこれは素人の仕業ではないぞ、という作品を集めてみました。
ささみ「退屈仏」
アニメーションというとついついグリグリ動かしがちですが、これは完全な「静」の表現です。
「静かだ(八谷)」
「イラストのクオリティも高い。線が黒じゃなくて茶色になってるところとか(林)」
zozi「八極演武」
一方でもちろんグリグリ動くのも気持ちいいわけです。なびく服の布地の動きまで表現されてます。緻密。
「3Dモデル作ってやってるんですよね。すごくクオリティ高い(八谷)」
ダイノ サトウ「アヒルループ」
もはやGIFアニメの域を超え、普通にアニメーションとして完成度の高い作品です。
「これは芸術作品ですね。作家性がすごい。(川田)」
「アヒルの顔がないのが不穏。(八谷)」
moco「さくらんぼちゃん」
プロっぽさも極まるとこんな審査コメントも飛び出しました。
「ちょっとお金のにおいがしますよね。(天久)」
「野心を感じます(八谷)」
「どこかの地下街のイメージキャラクターにいてもおかしくない(林)」
ハイクオリティまとめ
こういうめちゃくちゃハイクオリティな作品と、イラスト系2で紹介したみたいなもはや味わいだけの作品、両方入り混じって同じ土俵に並んでるのがこのアワードの奇妙さであり、一番の良さだと思います。
モノ系
GIFを作り始めると最初にたいていやるのが、身の回りのモノを使ったコマ撮り。ここではそんな初期衝動あふれるコマ撮り作品をご紹介します。
よんぱち「使えない」
「社内のいちばん綺麗なトイレで撮りました。(作者コメント)」
「業務中に作ったってことですね(八谷)」
「こうしている間にも給料が出ているんですよ(石川)」
志賀コウヘイ「iPadこの野郎」
シンプルなコマ撮り作品と見せかけつつ、実はタブレットにシェアを食われるPCの怒り、という風刺要素が効いています。
佐藤 玲 / R SATO「新着メール / New message」
手元にあるモノを使うので、必然的にデスクトップやパソコン周りの作品が多いです。中でも異彩を放っていたのがこの作品。写ってるモノは全部現代のモノなのに、近未来っぽい。
mai0217kashi「無限ティッシュ」
逆にもっともプリミティブな衝撃にあふれていたのがこちら。
「充電ケーブルとか出しっぱなしなのが雑でいい(林)」
画像の縦横も変。(エントリーされた状態のまま掲載しています)
からす川「石」
凝ってる作品を3つ続けてご紹介します。まずは他のモノ系が「動」で攻めるのにたいして、完全な「静」で対抗したこの一枚。
「僕好きですこういうの(八谷)」
「アンビエントだね(天久)」
こじゃこじゃこじゃ「圧縮と展開」
マトリョーシカの特性をうまく生かした作品。こうきたかー、と審査員一同、感嘆。
山本わかめ「月光の街」
モノはモノでも自作の装置です。
「トレンディドラマのオープニングみたいな。石田純一とかがこんな感じで歩く(天久)」
「オリジナルラブがかかるんですよ(林)」
遅れて来た脇役「マウス」
止め絵で一コマずつ見たくなるくらいいい表情。意味ありげなタイトルが気になります。
たまごいろ「みずから鑑別」
前回、ゴールデンキャノン賞を獲得した方の作品。ひよこが群れとしてじゃなくて、一匹一匹それぞれ意志を持って動いてみえる、丁寧なアニメ作りは健在です。雌雄鑑定に絡めたネタもうまい。
dentrok「体が硬い(2)」
うって変わってプリミティブ。
「手直ししても良いことがなかったのでそのままお送りします。(作者コメント)」
「理由がいいね(天久)」
「GIFはこういう投げやりな態度が似合います(石川)」
ぺんぎんトラップ「くま登山」
ぬいぐるみシリーズ。
「顔は変わらないのにドヤ顔感でてますね。下のアングルから見上げたとき特に(川田)」
あららぎるるる★「カエル.」
こちらも素朴。
「飲んでるとこ描写しないってのが新しい(天久)」
からす川「ショベル6」
「人間っぽいというか、命が吹き込まれた感。見ただけで働いた気になれる(天久)」
よく見ると後ろの人がチョコチョコ動いてるのもかわいい。
宮内 秀哲「仲の良い椅子」
ハイタッチのシーンです。
「これも。無機物をこう動かすと、生き物感が出る(天久)」
戦ってるようにも見えますね。
神門太郎「水を得た風船」
「しおれた風船に水をあげたら元気に浴槽を泳ぎはじめました。(作者コメント)」
生き物っぽさと風船っぽさ、両方兼ね備えた不思議な動きです。
taizo「切り株」
「1回目は変身しないんだね(天久)」
「油断させといて(八谷)」
「別にびっくりしないけどね(天久)」
しかしそのゆるさがいい。
桝田道也「昭和八八年東京(1)」
ゴゴゴゴゴゴ。コマ撮りではなくカメラが動くことで動を演出。
「昭和八八年に撮影された御台場大師像の様子(作者コメント)」
モノ系まとめ
十把一絡げに大きく括ってしまいましたが、被写体も手法もバラエティに富んでいた、モノ系。顔の変わらないぬいぐるみや、顔のないオフィス用品さえ、動かしてみるとずいぶん表情豊かに見えてくるのが不思議。八百万の神の存在を感じます。(いま急に話飛びましたね)
技巧派
特撮系以上に技巧に磨きをかけた作品をこちらに集めました。マンガからコマ撮りまで、思わずウームとうなる作品を取りそろえております。
しーなねこ「食べるの取り消し」
「食べるのを取り消して何回も食べたい。そうすれば働かずにすむから。(作者コメント)」
「コメント超いいですね。キレキレ。(川田)」
コメントだけじゃなくもちろん作品も高評価です。
「よくできてますね。ARっぽい(川田)」
ひっさー「連携プレー」
モニタと連携する系ではこんなのもありました。
「これはよくできてる。細かいところまでこだわってて(八谷)」
「容量を減らそうっていう努力の跡も見られる(川田)」
ボールに力がかかるところでちゃんと変形したりと、アイデアもすごければアニメの出来も傑作。
神門太郎「時をかける俺」
「せっかく手に入れた「時間を操作できるリモコン」でしたが動作が不安定で困っています。(作者コメント)」
突然の爆発オチは衝撃的。加工もきれいだし、時間止めた時に一瞬シネマグラフっぽくなるのもいい。
いとう あらた「踏み外した男」
似たアングルで始まりますがこちらは沈みます。
「水の表現がいいね(川田)」
「赤いズボンの色が意図的でいいよね。差し色(八谷)」
h.takec「ろうそく」
減っていくろうそくの動きを生かした作品。するする減っていくのが気持ちいいです。
「さいご火が消えて暗くなるのがいいですね(川田)」
kani「うさぎさん」
うってかわってイラストもの。表情しか動いてないのにこの表現力。
「ひくわ、のところだけ微妙にまつげが出てくるところとかすごい(八谷)」
「何言われたか想像しちゃう。感情の緩急がここまでついてる作品はなかった。こういうのいいです(川田)」
まさし「おとなになった日」
イラスト系で続けますが、マンガ作品。オチだけアニメーションする新しい見せ方。
「こういうのありですね(林)」
「意外になかった表現ですよ(川田)」
ダ・ヴィンチ・恐山「カーソル」
カーソルのパーツだけで構成されたストーリー。ただのカーソルなのにちゃんとそれぞれキャラ立ってます。最後「?」っていいながら去っていくカーソルがかわいい。
升谷 光里「リサイクル」」
こちらはホワイトボードを使った作品。平面でやってるのに奥に行くと物が小さくなって、ちゃんと3Dに見える。奥のセロハンテープ(?)の質感とか、細かいところにこだわりを感じます。
パテ下まさる「ティッシュの海1」
パテ下まさる「ティッシュの海5」
2作品続けて。身近な素材なのに独特の雰囲気が出ています。
「戦前のアニメみたいな質感になってるよね(天久)」
「いいですよね、世界観が(川田)」
技巧派まとめ
以上、正直どれも入賞してもおかしくないくらい、力作揃いの11作品でした。毎年たくさんのGIF作品を見せてもらっていますが、こういう作品を見ると、まだまだやるべきことがあるぞ…という気分になります。
作家系
ひとりで複数の作品をエントリーしてくれた方々。なかでも、並べてみると面白かった3名の方をフィーチャーしてみたいと思います。
まずはモチーフを限定した作品群で、濃厚な作家性を打ち出してきたこの方。
元町二十四軒「ハト」
しばらく良く見ててください。最後、一斉に振り向きます。
「おー(一同)」
「ハトって元々フレーム数少ない感じがしますね。歩く動きとか(林)」
元町二十四軒「手稲山」
「私は自動販売機と手稲山(ていねやま)の写真を毎日撮っているのですが、その二つの素材を使ってパニック巨編を作ってみました。(作者コメント)」
「すごいパニック感あるね(天久)」
「大パニックですよ。重力とか遠近感とかいろんなことわかんなくなってる(川田)」
元町二十四軒「妖精」
仕事に疲れたときにやってきて、お金入れてボタンまで押して…、ドリンクは渡さずそのまま帰っていく妖精。
「今コカコーラの自販機を拡張する仕事をしてるのですが、今度コカコーラの人に見せてみます(川田)」
元町二十四軒「机鳩」
手前の子に気を持っていかれがちですが、奥のハトもかわいい。
以上4作品。少ない作品点数の中で完全に世界観が確立されてます。
「もうなんか登場人物が。すでに皆さんおなじみの感が出てきてますね。(川田)」
「ハトと山と自販機の人で、作風が固まってますね(八谷)」
「この短時間で、もう次が見たくなりました(川田)」
次に、作品を追うごとに技術的に成長していく様子に審査員一同が完全に応援体制に入った、この方。
マルヒ「3D毘沙門天」
こちらがデビュー作。
「こういう手法があるんです。ちょっとずらして撮って3Dに見える。(石川)」
「それで何を選ぶかのセンスだよね。毘沙門天(天久)」
マルヒ「どらごん」
次がこちら。
「さっきのより細かくなってますね。(天久)」
「ブラー効果を覚えた。他のも見てみましょうか(川田)」
マルヒ「雪国」
続いて。プルプル3D写真に戻ってきました。
「一緒だ(笑)(林)」
マルヒ「エンジン」
最後がこちら。
「集大成ですよ。雪も、ブラーも全部はいってる(川田)」
「うまくなってるのがわかるのがいい(林)」
「北の国からというか、毘沙門天とかドラゴンとかちょっと見に行って帰ってきて実家がいちばん、みたいなところに落ち着いたのかも、と思うとすごくいい(川田)」
4枚の間に審査員一同がぐいぐい引き込まれていく様子がおかしかったです。
そして最後にこの人。同じ人とは思えない作風の落差が驚きを呼びました。
東京御自負倶楽部「face」
「おもしろいね(林)」
「首のところが肌色一色なのがギリギリ感(八谷)」
「実際に浮いてるところが見たいですね(天久)」
「アニメGIFのローテクな感じがしないですね。いいソフト使ってそう(林)」
一作目はその技術力に驚嘆する審査員一同ですが…
東京御自負倶楽部「エンドレス・ポテト」
「一気にローテクになった(笑)(林)」
「鼻血がついてますね。(八谷)」
2作目で一気に脱力。
作家系まとめ
一本一本も面白い作品たちですが、こうやって作り手の顔が見えてくるとなおさらです。来年もまたよろしくお願いします。
人生系
たった2枚ですが、人生の悲哀を感じずにはいられない作品たち。僕もこうして特設ページを作らずにはいられませんでした。
星和也「夜の街へ」
「会社をクビになってしまい、時間を持て余したのでとりあえず習作として1本作ってみました。(作者コメント)」
「重くないですかメッセージが(川田)」
「違う意味に見えてきますね。飛び込むなよ…って。コメント読まずに見たときとは全く違う作品に見える(八谷)」
「エレカシ流したい(川田)」
鈴木鬼子「活きのいい煮干し」
「妻が今年の初めに家を出ていってしまい寂しかったので、つまみの煮干しを動かしてみました。(作者コメント)」
「袋から出そうでまた戻っていく煮干が、妻に戻ってきてほしいという気持ちとオーバーラップしているのか。人は辛いことがあるとGIFアニメを作るのかも(八谷)」
人生系まとめ
背景を知ってから見ると、穏やかな作風の中に静かな胸騒ぎを感じずにはいられない2枚。その真実を知らせてくれる作者コメントですが、しかしどちらも多くを語ることはなく、訥々と言葉少なに事実だけを並べているのが印象的でした。泣いた。
動物系
動物を被写体とした作品たち。普通に撮って普通に再生すれば、動画感覚で自然なGIFが作れるはずなのですが、なぜかエクストリームな風が吹き寄せてきます。
ゆきまお「かまってほしい犬」
動きで表現とかまどろっこしいことするんじゃなくて、もう字で書いちゃえ、という開き直り&画面を埋め尽くす物量作戦。
「これはうざいですねー(天久)」
ゆきまお「お花見のだんごを食べる犬」
同じ作者による作品です。この高速アニメーションはもはや作風。右脳が鍛えられそう。
にっき水「高速ふみふみ」
こちらは別の方の作品ですが、作家を超えて高速化の波が。脇目もふらぬ一心不乱な揉み方は、もはや腕のいい職人のよう。
うし子「おやつ頂戴・大回転」
もう、暗黙のルールみたいになってきました。動物は高速にしなきゃいけないっていう。
「狂犬だ(天久)」
動物系まとめ
これ、速いのだけ選んだんじゃないですよ。動物モノ選んだら全部速かったんです。最初は「なんで早くしたんだろう」って深読みしながら見てたのですが、これだけ並ぶともう、こうなるのが自然の摂理のような気がしてきました。あらがわず従うのが吉、です。
特撮系
写真をうまく合成したり、コマ撮りであり得ない映像を作ったりと、特殊効果を狙った作品を集めてみました。
ほほほ「しゃくとり虫のマネ」
もっとも初期衝動にあふれた特撮作品。
「コマ撮りでまずやってみることだよね。空中浮遊と尺取り虫は(天久)」
マール「収穫」
尺取り虫の次くらいにこういうのがやりたくなります。途中でトマトがヘタだけ/半分だけ出てるコマがあったりと、何気に手がかかってます。
しじま「このくらい派手に」
「スカイツリーの夜間照明が、コジャレていて、しゃらくさいです。このくらい派手にしろよと思います。(作者コメント)」
周辺住民の猛反対に遭いそうです。
「ここまできたら爆発もほしいですね(八谷)」
マツモさん「洗濯中」
回転の遅さが話題となった一枚。手の合成だけでその下の全身を想像させるのはうまい。
こじゃこじゃこじゃ「吾輩は蠅が嫌いである。」
紙の境界を越えて飛んでいくハエの動きが気持ちのいい作品。食べたあとにちょっとアップになって瞳孔開いちゃうのがおかしい。
野田「乾いちゃう」
写真とイラストを組み合わせた作品。粗いコマ数なのに動きがかわいい。
「微妙にピタゴラスイッチ感がある(八谷)」
「スポッとはまらないところが来るね(天久)」
あぼかどワサビ醤油「手間いらず」
こちらも写真とイラストの組み合わせですが、手にシャドウがついてるのが2.5次元という感じで不思議な雰囲気です。
蜜町祥子(ミツマチヨシコ)「オーロラ姫」
いままでなかった新機軸、コラージュ。後ろの姫(?)のインパクトがすごい上に、更に光らせていて夢に出そう。
特撮系まとめ
単純なコマ撮りから、写真とイラストの組み合わせ、コラージュなど、今回もいろんな手法が模索された特撮系。実はGIFの未来を切り開いていくのは貪欲に試行錯誤を重ねるこのジャンルなのではないかと、胸が熱くなる思いでおります。
謎系
GIFにもいろんな魅力の作品があるわけですが、それが理屈で説明できるものばかりとは限りません。このページでは、謎が謎を呼び審査員の頭を悩ませた作品たちをご紹介します。
こじゃぷちゅかっち「スマホ社会への警鐘と挑戦」
「下ばかり向いて毎日を過ごす現代人への警鐘およびそれに立ち向かう勇者の物語。(作者コメント)」
さいごにちっちゃいのが出てきます。
「さいご出てきたのが勇者なんですかね(川田)」
「ストーリーがわかんない。現代社会ってこんな感じなのかな(天久)」
しかし謎度で言えばまだまだ序の口でした。
ヨシダプロ「青空」
当サイトライターのヨシダプロの作品。…と知ってる人にとってはいつもどおりのヨシダテイストですが、審査員の間では混乱と戸惑いを呼びました。
ミドリコ「weight」
謎度で言えば今回最高峰。
「これはすごい(川田)」
「3人の関係が全然わからない(天久)」
「謎な上にかっこつけてる(林)」
製作意図、状況、登場人物、とにかくすべてが謎。ちなみに1回しか動きませんので、とまってる場合はブラウザをリロードしてみてください。
マギ子。「リスかわいいね」
イラストはきれいなんだけどとにかく意味がわからない。
「でたらめ感すごいね-。何なんだろう。これを延々見せられる地獄とか作れそう。(天久)」
「生前でたらめなことをした人が落ちるんでしょうね(川田)」
「女の子が影だったりするのも悪夢っぽさがあってね。テリーギリアム的な(林)」
煌峰「リソース」
逆にイラストは素人っぽいこういう作品も、やっぱり意味がわからない。
「速い!展開が。ハートのとこもうちょっとみたいよね。すぐ消えちゃう(天久)」
「犬って書いてあるし(八谷)」
「Windowsペイントコンテストを開催したくなる絵(林)」
「最初にソースかけるときブラーかかってるんですよ。ここだけ凝ってる(川田)」
もすこ「すしエクセル」
EXCELってこんな機能があるのか、と実用面の気づきを与えてくれつつ、作品としてはあくまで謎、という稀有な作品。なぜおすしなのか。しかもお寿司でなく、おすし。
にっき水「エクトプラズム」
製作意図と外れて結果的に謎くなってしまう作品も。
「急須がエクトプラズムを吐いて、さらにエクトプラズムがエクトプラズムを吐くという、身も毛もよだつシーンです。(作者コメント)」
「意図とは別な感じになってるのはいいですね(八谷)」
「全然怖くない(天久)」
rdrd「てへ」
ちなみに別の方から、もう一作エクトプラズム系(本当にエクトプラズムかは不明)。このエクトプラズム、顔はかわいいけど実害があるだけこっちのほうが凶悪(でもプリンを食べちゃう程度)
「口から出て欲しかったね(天久)」
秋芽「うさぎもどき」
背景は完全に謎ながらスピード感だけはある作品。本当にうさぎなわけではないようで、また謎を呼びます。
謎系まとめ
意味はわからないながらも不思議な引力を持つ作品たち。作者に会えたらききたいことは山ほどありますが、残念ながらこの記事に答え合わせはありません。謎は謎のまま、お楽しみください。
年賀系
国際GIFアニメアワードは既発表の作品もエントリーできるとあって、昔作ったという作品も多く送られてきます。その中でもなぜか多いのは、「正月用に作りました」というもの。ここでまとめてごらんいただきます。
山本わかめ「おけおめペーパー」
トイレからあけましておめでとう、礼儀正しいんだか正しくないんだかよくわからないご挨拶。
岩井澤健治「兎丸」
既発表なのでずいぶん昔のも届きます。さいごの卯年は2011年。
「キャラがすごくいい。足を伸ばしたときの形とか(天久)」
「浮遊感もいい(川田)」
柴田浩幸「ヘビとロボットとアヒル」
こちらは今年、巳年ですが、日本昔話を彷彿とさせる構図はどこか辰っぽくも。
植木 駿「年賀gif」
すごくきっちりデザインされてると高評価でした。このまま年賀状にして送りたい。葉書の上でも動けばいいのに!
ダメリーマン「happy_birthday」
こちらは年賀ではありませんが同じ記念日系ということで。クイズかと思いきや…。今まで見たことないタイプのフェイントです。
年賀系まとめ
「自由にGIF作って」っていわれても何作っていいかわかんなくなっちゃいますが、毎年やってくる年賀GIFはある意味テーマ部門みたいなものかもしれません。そういえば小学校の頃は、年賀状に面白いこと書いたら勝ち!みたいな風潮ありましたよね。あれをGIFで再び。
報告系
昨年、審査員のAR三兄弟・川田さんにより命名された「報告系」。エントリーコメントが何かの報告になっている作品たちを総称して呼んでいます。コメントと一緒にお楽しみください。
ykpaco「たこパ!」
コメントは「たこ焼きパーティです」
コメントが報告ならGIFの内容も報告。日記系報告はまさに王道パターン。
本塁MAX「ピース山手線」
コメントは「山手線の全駅で自画撮りをしてきました。恥を捨てるのがコツです」。
うって変わって手の込んだ報告系。こういうチャレンジ系報告は今回の新機軸です。に王道パターン。
ゆきまお「高速日食」
コメントは「高速で満ち欠けする日食のようすです。」
「たまたま写真フォルダにあったのをアニメにした感じ(八谷)」
ということで、日常から生まれるGIFは報告系の基本です。
あぼかどワサビ醤油「みかん」
コメントは「一発でむけます。」
報告系にも超能力の波が。
「こういう身近な素材はついアニメ作りたくなる(川田)」
ただこの作品には続編がありまして、
あぼかどワサビ醤油「みかんの剥き方」
こちらは同じ作者から締切り直前に届いた作品。超能力が進歩したように見えますが
「さいご結局、指使うんですね。一手間増えてますよ。(川田)」
マツモさん「デスクトップ折り紙」
コメントは「ブロックメモがあればたくさん折り紙ができます。」
日常の報告を超えて客観的事実の報告へ。報告系の可能性はどんどん広がっていきます。
報告系まとめ
作品主体の他のカテゴリと違い、コメントで分類するという一見雑な分類方法に思える報告系。しかしこうして並べてみると牧歌的なテイストはどこか共通しており、その根底には作品とコメント両方ににじみ出る、作者の人間性があるのではと思われます。
まずは事前のWeb投票で決まりましたこちらの賞から。投票は接戦となり、一次投票では2作品が同点となったため、急遽決勝投票を行いました。そこでみごと勝利したのが、こちらの作品。
ささみ「退屈仏」
そして続いての会場投票賞は、審査会当日の全作品上映後に、会場に来ていたお客さんに投票してもらったものです。一位になったのは…
ダ・ヴィンチ・恐山「tokuho」
実はWeb投票の決勝で惜しくも敗れた作品こそ、こちらの「tokuho」でした。仲良くひとつずつ賞を分け合う結果となり、よかった!
こちらは特別審査員として当日参加してくれた、ヤフー株式会社の「飛んで火にいるかぶとむし」チームより贈呈される賞です。
写真右端が、メンバーの爲房さん
頭につけているのが「吹至多三十六景」というデバイス。面白いものを見て噴き出したとき、口元のファンで風速を測定して、その瞬間と吹いた強さを記録してくれる装置です(この装置については後日、別途記事になる予定!)
この装置を使って選んだ、爲房さんがもっとも噴いた作品はこちら!
おぎす「あれ、これ白米だよな」
「短いインパクトのある作品で、動画とは違うおもしろさがあり、たくさん吹き出させていただきました。(爲房)」
ハヤシ「千本ノック」
「作り直さないというか、作りっぱなしな感じがいいなと。そういう初期衝動みたいな作品がいい。いまネットのコンテンツって難しいのが多いので、こういう作品が生まれてくるのがGIFのいいところだと思います。(林)」
ダイノ サトウ「アヒルループ」
「少し怖い、独特の作風。来年もやるかもしれないってことを考えると、こういうちゃんと頑張って作り込んでる人にも賞をあげたかった。おめでとうございます。(八谷)」
煌峰「リソース」
「個人の趣味というか、好みですよね。いろんな気持ちにさせられました。(天久)」
kani「うさぎさん」
「GIFってもう何回目かのブームですが、時代時代でテイストが変わっていきくし、スマホで作れるようになったり技術的にもどんどん簡単にできるようになっているのに、簡単じゃないモノをちゃんと作ってる感じがしてよかった。隣にいるのを想像させたりとか、あんまりなかったなと。(川田)」
そしていよいよ、大賞にあたるゴールデン・キャノン賞。受賞作は、この作品です。
マギ子。 さん「リスかわいいね」
リスはなぜ走らされてるのか、順路って何の順路なのか、一切触れられていないハシビロコウの立場は?などなど、とにかく審査員一同を謎で包み込んでしまったこちらの作品が受賞しました。この結果について、天久さんからは「大賞がリスかわいいねになったのが今回の大会で象徴的だった。」との一言も。
受賞おめでとうございます!!
来年もやりたい!
これでGIFアニメーションアワードは第2回目となりますが、1回目以上にバラエティに富んだ作品が集まり、審査ももう何を基準に選んでいいやら、と悩んでしまうほどでした。今年エントリーしてくれた方は、ぜひこれからも。そしてもしこの記事を見て「おもしろそうだな」と思った人がいたら、ぜひ自分でも作ってみてください。過去には
こんな作り方の記事もありますよ。
国際GIFアニメーションアワードは、来年も…たぶんやります!