特集 2012年12月14日

浮かれ電飾・3都物語

失ってみて、初めて気づくありがたさ。
失ってみて、初めて気づくありがたさ。
クリスマスも近い。今年もこの季節がやってきた。「浮かれ電飾」のシーズンだ。

個人宅がクリスマス気分の余勢をかって繰り広げるイルミネーションのことを、羨望とやっかみとがない交ぜになった感情でそう呼んでいる。

もはや日本の各都市で見られるようになったこの風物詩。しかし、今年は少し状況が違うようだ…
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

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浮かれておくれよ

ぼくには毎年12月になると「浮かれ電飾」と呼ばれる一般住宅のクリスマスイルミネーションの実態に迫る記事を書く習慣がある。デイリーポータルZで記事を書くようになった初年から続いているライフワークだ。
つまり8年前から全国の「浮かれ電飾」を追い続けているわけだが、昨年からちょっと事情が複雑になってきている。首都圏は浮かれ気分じゃなくなってきているようなのだ。
浮かれていてしかるべきところが、まったく浮かれていない。
浮かれていてしかるべきところが、まったく浮かれていない。
前記の記事一覧で昨年2011年のライフワーク報告が2つあるのは、1つ目があまりにも浮かれていなかったからだ。たまらず福岡まで出向いて2つめの記事で浮かれを堪能してきたのだ。

なぜ東京周辺が浮かれていないのか。それは2011年3月11日の地震のせいだ。
例年なら「浮かれストリート」になっているはずのここも、かろうじて一軒だけ。
例年なら「浮かれストリート」になっているはずのここも、かろうじて一軒だけ。
おもわず「ありがとう」とつぶやいてしまった。そんな関係じゃなかったはずなのに。
おもわず「ありがとう」とつぶやいてしまった。そんな関係じゃなかったはずなのに。
深刻な電力事情と、浮かれている場合じゃないという自粛ムードと、長引く不況とがあいまって、2010年まで右肩上がりに盛り上がり続けた浮かれ電飾界が、一気に醒めてしまったのだ。
2009年のこの貫禄の浮かれっぷりも…
2009年のこの貫禄の浮かれっぷりも…
昨年2011年はこんなで…(2011年(その1)</a>のときの様子。工藤さんと安藤さんに同行いただいた)
昨年2011年はこんなで…(2011年(その1)のときの様子。工藤さんと安藤さんに同行いただいた)
今年はついにこんなだ。さびしい。もっと浮かれておくれよ!
今年はついにこんなだ。さびしい。もっと浮かれておくれよ!
上の写真たちは、舞浜の浮かれ電飾で有名な住宅街。毎年訪れているが、今年ほどの「浮かれなさっぷり」は初めてだ。

結婚もしていなければ、家も持っていないぼく。「なんだようー、浮かれちゃってさあー」なんて感じで見てきたが、こうなるとなんだか居心地が悪い。まっとうな幸せをつかんだ勝ち組には、ちゃんと浮かれていて欲しいのだ。ぼくらの立場ってもんがなくなる。

「浮かれて欲しい」なんて思う日が来るとは思わなかった。
ようやく出会えたいつもの浮かれっぷり!そうそう!これこれ!
ようやく出会えたいつもの浮かれっぷり!そうそう!これこれ!
呼び鈴を押して家主に「今年も変わらず浮かれてくれてありがとう!」って言いたくなった。
呼び鈴を押して家主に「今年も変わらず浮かれてくれてありがとう!」って言いたくなった。
地震から1年9ヶ月。そろそろ浮かれを取り戻したのではないかと思っていたが、どうも甘かったようだ。さくらいみかさんの先日の記事のように、もっと西へ行けば浮かれているのだろう。ぼくも昨年は福岡まで行って、正体不明の心の平穏を保ってきた。

今年も西へ行くか。いや、首都圏で生活する者として、自分たちの街で浮かれを見たい!逃げちゃダメだ!

いや、別に逃げとかじゃないんですけどね。

そう思って、千葉から、埼玉へ向かった。
舞浜駅前から見える盤石の浮かれ施設に感銘を受けつつ、埼玉へ。
舞浜駅前から見える盤石の浮かれ施設に感銘を受けつつ、埼玉へ。
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埼玉よ、お前もか

ようやく存分に浮かれた作品に出会って、浮かれるぼく。
ようやく存分に浮かれた作品に出会って、浮かれるぼく。
2007年に一度見に行って、その浮かれっぷりに「千葉も負けちゃいらんねえな」と思った(と言って、ぼくはなにもしませんが)埼玉の浮かれ電飾住宅地に向かった。状況が厳しい時には、実績を重んじるようになるものだ。
遠くから見つけた時は「やった!」って言っちゃった。
遠くから見つけた時は「やった!」って言っちゃった。
すばらしい浮かれ。やるな、埼玉。
すばらしい浮かれ。やるな、埼玉。
車庫の浮かれもぬかりない。そうそう、こういうところだいじ。
車庫の浮かれもぬかりない。そうそう、こういうところだいじ。
上は、その埼玉で再会した浮かれ作品。ありがとう埼玉。

しかし、これは希有な事例で、やはり全体的には自粛ムードであった。
うーん。
うーん。
ようやく見つけたものも…
ようやく見つけたものも…
時節柄控えめな浮かれ。大人の浮かれ。
時節柄控えめな浮かれ。大人の浮かれ。
必要最小限の浮かれで品良くまとめた作品。品とかいいからはっちゃけて欲しい!
必要最小限の浮かれで品良くまとめた作品。品とかいいからはっちゃけて欲しい!
「いちおう浮かれノルマは果たした」みたいな浮かれ。嫌いじゃないよ、そういうの。でもなあ…
「いちおう浮かれノルマは果たした」みたいな浮かれ。嫌いじゃないよ、そういうの。でもなあ…
うわー、もうなんだか上品。
うわー、もうなんだか上品。
電車とバスを乗り継いで行き着いた、寒空の中、弱気になっていることもあり、例年だったらさしてエキサイトしないこれぐらいの規模の浮かれに、おもわず涙ぐんだりする始末。
電車とバスを乗り継いで行き着いた、寒空の中、弱気になっていることもあり、例年だったらさしてエキサイトしないこれぐらいの規模の浮かれに、おもわず涙ぐんだりする始末。
もう、ここの住民が立候補したら迷わず投票しちゃう!
もう、ここの住民が立候補したら迷わず投票しちゃう!
こうして並べるとそれなりに浮かれているようにも見えるが、2時間ほど歩き回って、これぐらいである。ダメか、埼玉も。

LEDの普及と、電飾アイテムの進化により、年々規模と内容がエスカレートしてきたこともあり、「見慣れて」「麻痺」してしまった点はあるだろう。しかし、その点をさっ引いても、やはり物足りない。ぼくをやっかみ気分にさせてきたいままでの君らの浮かれ気分はそんなものか。

と思いつつ、見ていくと、この情勢下ならではのある傾向が見えてきた。
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脱・電力浮かれの時代

電飾ではなく、リボン。昼重視の新傾向。
電飾ではなく、リボン。昼重視の新傾向。
その傾向はなにかというと、電飾ではないクリスマス装飾へのシフトである。
イスの上に、リース。電力いらず。上品。ちょう上品。もう、なんか、負けたわ。
イスの上に、リース。電力いらず。上品。ちょう上品。もう、なんか、負けたわ。
既存の玄関照明を利用したドアアイテム+植え込みに電飾ではないモチーフを飾り付け。大人である。
既存の玄関照明を利用したドアアイテム+植え込みに電飾ではないモチーフを飾り付け。大人である。
もちろん、こういった電気を使わないモチーフはこれまでもあったが、それだけで済ませるケースはそれほど多くなかった。

今年すごく眼についたのは、上のような、樹木に付ける光らない飾りだ。昼間重視という方向転換なのだろう。いいのか、それで。いいのか、べつに。

ひとり勝ちの時代へ

埼玉の作品中、もっとも浮かれたもの。ただしこれは美容室。「浮かれ電飾は住宅に限る」という定義からは外れるが「店舗だし」というエクスキューズがあればこそここまで浮かれることが許される時代、ということを示す良い事例である。たぶん。きっと。
埼玉の作品中、もっとも浮かれたもの。ただしこれは美容室。「浮かれ電飾は住宅に限る」という定義からは外れるが「店舗だし」というエクスキューズがあればこそここまで浮かれることが許される時代、ということを示す良い事例である。たぶん。きっと。
もうひとつ見えてきた傾向としては「浮かれるところは浮かれる」というものだ。

なに言ってるんだぼくは。

いやつまり、これまでそこそこで浮かれていた方々は自粛し、大規模に浮かれていた方だけが引き続き浮かれ続けている、という印象だ。

浮かれニッパチの法則(2割の家が8割の浮かれを支配する)といったところか。いや違うな。
さきほどの作品も、お隣さんは平常心。例年だったら近所に伝播するはずなのだが。
さきほどの作品も、お隣さんは平常心。例年だったら近所に伝播するはずなのだが。
ともかく、これまで「一匹いたら十匹いると思え」という浮かれ電飾伝染の法則(一軒浮かれていたら、その周辺もつられて浮かれるという現象)が崩れ、限られた少数精鋭が強力に浮かれる「浮かれひとり勝ちの時代」へとシフトしたのである。
ここも一軒だけ。その勇気をたたえたい。
ここも一軒だけ。その勇気をたたえたい。
千葉の作品も、このように一軒だけが煌々と。時代である。
千葉の作品も、このように一軒だけが煌々と。時代である。
このご時世ならではの法則は見えた。しかし、そんなものを見たいわけではなかった。おもいっきり浮かれた作品を見たいのだ。

「浮かれ強者」は浮かれ続ける、という法則からすれば、そうだ!あそこはきっと今年も浮かれているに違いない!
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浮かれ電飾・3都物語

おおおお!やっぱり!
おおおお!やっぱり!
その頼みの綱は、神奈川県は鎌倉の有名物件。2010年に工藤さん、安藤さんと訪れた約束の地である。
千葉、埼玉から鎌倉へ。「いざ鎌倉」とは浮かれ電飾への言葉でもあるのだ。
千葉、埼玉から鎌倉へ。「いざ鎌倉」とは浮かれ電飾への言葉でもあるのだ。
SuicaもPASMOも使えず「遠くまで来てしまった…」という実感がひしひしと。
SuicaもPASMOも使えず「遠くまで来てしまった…」という実感がひしひしと。
大船から湘南モノレールに乗ってはるばると。つまり今回、千葉、埼玉、神奈川、と浮かれ電飾を見るために3つの県を股にかけたのである。浮かれ電飾を見るために。

浮かれ電飾を見るためにだ。
しかし、その甲斐はあった!
しかし、その甲斐はあった!
やっぱりこうでなくっちゃ!
やっぱりこうでなくっちゃ!
反対側もこんな!強者だ!浮かれ強者!
反対側もこんな!強者だ!浮かれ強者!
来た甲斐があった。ありがとう、鎌倉。来年もよろしく。

平穏とは浮かれることなのだ

羨望とやっかみで8年前に始めたこのシリーズ。まさかこのようなことになるとは思わなかった。とりあえず今は「来年はどうか浮かれまくってください」と祈ることにしよう。
鎌倉のもう一つの有名物件も、2010年はこんなだったが…
鎌倉のもう一つの有名物件も、2010年はこんなだったが…
今年は、こんな。来年は浮かれてください!
今年は、こんな。来年は浮かれてください!

【告知:今年もやります「ドボ年会」】

鎌倉のもう一つの有名物件も、2010年はこんなだったが…
鎌倉のもう一つの有名物件も、2010年はこんなだったが…
以前DPZ でも記事にしましたが、毎年やってる工場を見に行く忘年会を今年もやります。なんと宇部。宇部の工場かっこいいんだよー。ご興味ある方はこちら
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