特集 2012年12月10日

松ナリエに弟子入りしてイルミネーションを作る

「松ナリエ」という個人宅のイルミネーション
「松ナリエ」という個人宅のイルミネーション
そういえば、今年がもう終わってしまうらしい……という事実に戸惑いつつある今日この頃、例年通りイルミネーションを見かけるようになってきた。
……とは言え、私は今年、首都圏から故郷である島根県松江市に戻ったので、例年ほどは見ていない。

クリスマスの時期になるとすごい飾り付けをする民家が松江にもあって、「松ナリエ」と呼ばれてるらしい、という話は聞いたことがあったが、その時期に帰省することが今までなかったので、そんなによく知らなかった。

よし、今年は見に行ってみよう!
島根県生まれ。毛糸を自在に操れる人になりたい。地元に戻ったり上京したりを繰り返してるため、一体どこにいるのか分からないと言われることが多い。プログラマーっぽい仕事が本業。(動画インタビュー

前の記事:昔の工作本に載ってるヘルメットを作る

> 個人サイト それにつけてもおやつはきのこ

電飾見物初心者ですよ

「最近は一般の住宅でも本気すぎるイルミネーションが結構あるよね」 みたいな話はよく聞くし、当サイトでも大山さんが毎年「浮かれ電飾」をレポートしていたり「ちょっと見てきて」のコーナーにも写真が載っていたりするので、知ってはいる。

けど、そういえば今までそんなに実物を見たことはなかったんだった。
知った気になってた
知った気になってた
松ナリエの場所は親に聞いた。地元では有名なので、なんとなくどの辺りかっていうのは知ってたらしい。

目立つからすぐに分かるっていう話だったのに 全然見当たらなかったので、カーナビにだいたいの場所を入れて、探し回ること20分……
この辺のはずなんだけど……
この辺のはずなんだけど……
意外と分かりづらいのかな? と思いつつ、気が付いたら、カーナビを入力した場所に戻されてた。

そしてふと横の方を見ると……
あっ……!!
あっ……!!
よーく探すまでもなく、街灯も少ない真っ暗なところに一か所だけビカビカと光ってる家(?)が!!
間違いない! どう考えてもこれだ
間違いない! どう考えてもこれだ
国道沿いの目立つ場所にあるはずなのに、来る方向によって建物の死角になってて、ちょっと分かりづらかった。
こんなに目立つのに。

ルミナリエじゃなくて……

この家、「松ナリエ」と呼ばれてるだけなのかと思ってたけど……
お、おおお……!! 入口にドドーンと「松ナリエ」!
お、おおお……!! 入口にドドーンと「松ナリエ」!
こんな風に入口にハッキリと、殴り書かれたかのように「松ナリエ」……!!
入って見学するのはだれでも自由らしい。
「キレイ……!!」っていう言葉がスッと出てこず。えっ、すごい。
「キレイ……!!」っていう言葉がスッと出てこず。えっ、すごい。
人んちの庭なのに、見物客がウロウロしてて、ちょっとした公園っぽいような、いや……なんだろうこれ。
ハッピートンネルってなんだ
ハッピートンネルってなんだ
この中、くぐれるらしい
この中、くぐれるらしい
ベンチの横には……
ベンチの横には……
と、トーマスか!
と、トーマスか!
生たまごっていうのは、ローカル情報番組名
生たまごっていうのは、ローカル情報番組名
光らない部分は細かくテープで隠してある
光らない部分は細かくテープで隠してある
たしか島根県って観覧車が1個もなかったはず……と、これを見てふと思った
たしか島根県って観覧車が1個もなかったはず……と、これを見てふと思った
そして、家を真正面から見ると……
スカイツリーが!
スカイツリーが!
こうやって見えると、どこからどこまでが家なのかさっぱり分からない……!!

なぜまた個人宅でここまでのことになってしまったんだろう。家主の方に話を伺ってみることにした。
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なぜこんなことに??

こちらが松ナリエの家主・曽田興治さん(69)。個人宅がこんなことになった経緯を伺いつつ、昼間の庭の様子も見せてもらった。
あのイルミネーションの仕掛け人
あのイルミネーションの仕掛け人
――最初からこんなに飾られてたんですか?

「最初はほんのチラッと。生垣の外側にチラッと。それが16年前。」

――チラッとだったということは、いつ頃からこんなことに……?

「こんなことになったのは……もう10年ぐらい前になるかなぁ。畑はここ5年ほど。」
よーーく見ると、これ畑
よーーく見ると、これ畑
ほら、畑
ほら、畑
電飾、張り巡ってる
電飾、張り巡ってる
畑に植えてるのは、 大根やかぶ、ニンジンなど。今の時期もイルミネーションをかき分けて収穫してる、とのことだ。
昼間だと柿のほうが目立つ。というか、そんなことより夜と昼の印象が違いすぎにもほどがある。
昼間だと柿のほうが目立つ。というか、そんなことより夜と昼の印象が違いすぎにもほどがある。
柑橘系も豊富なようで
柑橘系も豊富なようで
レモンや
レモンや
こんなに大きな柚子
こんなに大きな柚子
これは種なしキンカン
これは種なしキンカン

準備や片付けについて訊いてみる

――作り始めるのは大体いつごろなんですか?

「だいたい9月の終わりごろ」

9月末から準備を始めて、12月は丸々1ヶ月間飾りっぱなし……っていうことは、1年の4分の1はクリスマス進行ってことか。

――これって片付けは年明けてからされるんですか?

「片付けは1日。うちはみんな片付け終わってから正月だけん。うちは旧正月が正月だ。」

ええー、新年早々、毎年こんな大掛かりな片付けを。想像しただけで疲れてくる。
竹を割って結わえつけて組み立てたというスカイツリーの昼間の姿
竹を割って結わえつけて組み立てたというスカイツリーの昼間の姿
――スカイツリーを作り始めたのもそのころなんですか?

「いや、あげなもん半日あればできるわ」

えっ、慣れてるとは言え、そんなにささっと出来るものか。

――今年のテーマみたいなものは、1年通して考えられるんですか?

「うん、1年終わったらもう今年はなにかなーって考える。あの地デジ化なんかは前の年から分かっとるけん、前の年の12月。過ぎてからやってもつまらんけん。」

イルミネーションの95%は曽田さん自身が1人で作られているが、地デジカは奥さんが作られたのだそう。
地デジ化の前年に作られた地デジカ
地デジ化の前年に作られた地デジカ
ついでに過去5年間は、「松江開府400年祭」というイベントがあったので、それにちなんで今のスカイツリーの場所にこの松江城があったのだとか。
国宝にしてくれと光で訴える
国宝にしてくれと光で訴える
――そういえば、松ナリエって誰が名付けたんですか?

「分からん。5~6年前に、うちの庭におったお嬢さんが電話口で

今、松ナリエにおる。

と言っとられーのを見て初めて、

あー、うちは松ナリエと呼ばれとるのか、と知った。」


ええっ、それは予想外の回答!
家主である曽田さんの知らないところで、もうすっかりその呼び名が浸透した後に知ったってことか。
やっぱりそういうのってネットで拡散された情報なのかなぁ。
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イルミネーションを作ることに

――こういうのって素人でもすぐに作れるもんなんですか?

「うん。こないだ来ちょった生たまご(ローカル番組取材)、あれも素人だ」

――これサイトのキャラクター(Zくん)なんですけれども、こういうのもすぐに作れるもんですか?

「あー、これぐらいのもんなら多分2時間ぐらいあれば……」

という話の流れから、一緒にZくんのイルミネーションを、教えてもらいつつ作ることになったのだ。
10本買ったけど、この色は目立たないから使えなくて、持て余してるという青色チューブライトがまず出てきた
10本買ったけど、この色は目立たないから使えなくて、持て余してるという青色チューブライトがまず出てきた
これのクリア(白色に発色するもの)が一番目立つそうだが、残念ながらもう青しかない。

倉庫に眠ってた使えそうな古いチューブライトをいくつか出してきてもらうが……
おっ、Zくんっぽい色!
おっ、Zくんっぽい色!
言われてみれば、間隔ちがう?
言われてみれば、間隔ちがう?
光の間隔がちょっとでも途切れ気味だと、暗いところではものすごく目立ってしまい、これだと使えないらしいのだ。まったくさっきから初めて聞く情報しかない。
だったら、この茂みに引っかかってるのを使おう! って、しかしどこからでも電飾出てくるなぁ……
だったら、この茂みに引っかかってるのを使おう! って、しかしどこからでも電飾出てくるなぁ……

Zくんのイルミネーション作り方

Zくんの顔のような単純な作りのものを描く場合は、チューブライトを使って一筆書きでZくんを描く。

……と言ったところでなにがなにやらなので、ざざっと見てもらおう。
この枠の中にZくんを収めたいので
この枠の中にZくんを収めたいので
この大きさの正円を描く
この大きさの正円を描く
下絵はきちっと描いたほうがいいらしい。まず輪郭までは描いてもらった。

あとは顔の中身を描いていく。
こんなもんかな。超笑顔のZくん!
こんなもんかな。超笑顔のZくん!
あっさり下絵が出来たので、次はもう電飾でなぞっていく作業だ。
結束バンドを用意して
結束バンドを用意して
なぞりつつ、留めていく
なぞりつつ、留めていく
結束バンドはとにかく強く、細かく留めていくのがコツらしい。
このままだと、よだれが垂れてるZくんになってしまうので
このままだと、よだれが垂れてるZくんになってしまうので
黒いテープで隠してしまえ
黒いテープで隠してしまえ
なぜ電気を付けた状態で作業してるかというと、冬場はチューブが硬くなってしまってるので、これでちょっと柔らかくした方が作業がしやすい、とのこと。
夏は何もしなくても柔らかいらしい。
余ったのは外枠にする
余ったのは外枠にする
発泡スチロールの板を2か所に設置
発泡スチロールの板を2か所に設置
次は文字を書きたいが、細かくてチューブでは表現しにくい。
とりあえず、書きたい文字を下書きして、
額の「Z」。上には「DPZ」
額の「Z」。上には「DPZ」
下書きになぞって穴をあけていく
下書きになぞって穴をあけていく
枠と穴が重ならないよう注意しつつあけていった
枠と穴が重ならないよう注意しつつあけていった
あけた穴に、今度は球タイプのライトをひとつずつ入れていく。
こんな風にひとつずつ
こんな風にひとつずつ
全工程でここが一番大変だったかも
全工程でここが一番大変だったかも
この作業を終えてからイルミネーションを見ると、全部すごく感じてきてしまう。

こんなに細かい穴あけ+ライトつっこみ作業からこの地デジカも出来てたのか……
そう思うと今までより50倍ぐらいすごく見えてきた
そう思うと今までより50倍ぐらいすごく見えてきた
そういえばこの地デジカは奥さんが作られたって話だった。
奥さんはほとんど手出しをしてない、旦那さんがやってるのをまたバカなことやってるわって言いつつ見てる、って聞いてたのに
まさかこんな根気の要る作業を……!
風が吹くと取れるので、テープで補強
風が吹くと取れるので、テープで補強
これで一通りの制作作業が終了!
設置してもらって、点灯の18時を待とう。
入口付近の目立つところに設置してもらった!
入口付近の目立つところに設置してもらった!
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Zくん、点灯!

しばらく待たせてもらい、18時になった。街灯も少ないので、辺りは結構暗い。点灯の時間が来ると庭の外にも待ってる人がチラホラ現れ始める。
バタバタし始める時間
バタバタし始める時間
電源がある倉庫へ移動!
電源がある倉庫へ移動!
スイッチ……オン!!
スイッチ……オン!!
お……!!
お……!!
おおお……!!!
おおお……!!!
Zくん!! 予想以上にくっきりと!!

入口付近でこんなにも目立たせてもらって!
ちょっと離れて見ても浮かび上がってる!
ちょっと離れて見ても浮かび上がってる!
「このウルトラマンがいいがねー」

と何度も言ってくれた曽田さん。
そういえばZくんという名を伝えそびれたので、ずっとウルトラマン呼ばわりされてたんだった。
こう見ると戸惑いの表情
こう見ると戸惑いの表情
文字のラインをじっくり見てみると、意外とちょっとの歪みが出るもんだなーと分かる。
下書きはしっかりして、と言われた理由がここで分かった
下書きはしっかりして、と言われた理由がここで分かった

確かにこれは楽しい

今回これだけ作るのに、約1時間半。思ったよりもあっという間に出来た。きつい体勢の作業でちょっと腰は痛くなったけど、こうやって自分が作ったものが光ってるのを見ると確かに楽しい。
こんなのも居たのか! 見落としてた
こんなのも居たのか! 見落としてた
最初なんとなく見てたものも、「ほんとよくこんなに上手くできるもんだなー」という作り手目線になったりして
既製品? だとしても感心しまくり
既製品? だとしても感心しまくり
これ一体どういうことだ。神業にしか見えない
これ一体どういうことだ。神業にしか見えない
終わった頃にはイルミネーションへの感心ポイントがガラリと変わってたのだった。

松ナリエは大みそかまで

1カ月で一万人ぐらいの人が訪れるらしいが、そんな一般の個人宅って他にもあるんだろうか。クリスマスの24~5日ごろがピークで、大みそかの夜9時ごろまでやってるとのこと。また様子を見に行ってみよう。
通りすがりの人に「DPZってなんだろうね」って言われてた
通りすがりの人に「DPZってなんだろうね」って言われてた

島根県松江市西浜佐陀町578番地
【期間】11月末~12月31日
【点灯時間】18:00~21:00 (雨天中止)
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