冷やし肉そばとげそ天
山形県にはこれまで2回くらい行ったことがあるが、げそ天が有名というのは知らなかった。しかも海が近い酒田や鶴岡などの庄内地方ではなく村上地方や最上地方などの内陸でよく食べられているらしい。
海が近いわけじゃないのになんでげそ天?と思ってしまうが、ウィキペディアいわく生のイカが簡単に手に入らなかった時代にスルメのげそを水で戻して天ぷらにして食べていたことがルーツなようだ(諸説あり)。そうか、海から遠いからこそのげそ天なのか。
さて、げそ天にパラメーターを振りまくったスーパーも気になるところだが、まずは普通にそば屋でげそ天を食べておきたい。
山形駅に到着し、げそ天で調べるとたくさんのそば屋がヒットする。本当にどこのそば屋でもげそ天を出しているんだと実感するととともに、そもそものそば屋の多さにも驚く。たぶん人口は全然違うのに東京の神田くらいあるぞ。(神田もそば屋が多い)
このお店をチョイスしたのは、そば自体が名物である山形の中でも特に山形スタイルとして有名な冷やし肉そばを食べてみたかったからだ。
真冬で極寒の山形ではあるが、やはり冷やし肉そばを食べなければ山形のそばは語れない。いや、今回のメインはげそ天ではあるが。
さすがそばの消費量日本一の山形県だけあって、そばがすごく美味しい。そばの太さとコシが絶妙で食べ応えと食べやすさのバランスがちょうどいいのだ。冷やしなのでそばが柔らかくならずコシが維持されるのも嬉しいポイントである。都内だと冷やしのそばを提供しているお店はあまりないが、これがあったら夏は中学三年生の塾の夏期講習くらい通っちゃうだろう。
で、本題のげそ天だが、こちらももちろん美味しい。いわゆるトッピングではなく、ちゃんと一品としてメニュー化されており、山形県内でげそ天が市民権を得ていることが実感できる。
都内の立ち食いそばだとげそを細かくきったものを揚げているパターンも多いが、山形ではしっかり足のかたちを残したままげそ天に仕上げるパターンが一般的なようだ。
この方がよりげその存在感を感じられて個人的には好きだ。それにげそへの愛を感じる。生のイカはないけれど、スルメをわざわざ水で戻してげそ天を作った先人たちのげそ愛が受け継がれている気がする。
出汁につけて食べるという意味では温かいそばの方があっている気もしたが、あっさりした冷やし肉そばのアクセントとしてはげそ天がすごくいい味を出していた。そばとげそ天のコンビネーションの良さから考えるに、山形の「形」はげそ(开)とそば(彡)が合わさった漢字である可能性があるな。