特集 2020年12月5日

古い喫茶店300店調査と、「山田」に似合う名前~山田窓さんインタビュー

月に1度、総集編として、先月人気だったライターへのインタビューと、人気記事のランキングをお送りしております。

この記事では、山田窓さんにインタビュー。
11月は「1975年頃の新宿喫茶店マップを作り、300店の「いま」を調べた」が大好評でした。

インタビュアーは編集部・石川です。

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1975年出版の本を読んでいたら、当時の新宿にあった喫茶店を網羅した記事を見つけた。昔の住宅地図と照らし合わせながらマッピングし、45年以上を経て今も残る喫茶店を巡ってみた。

文化系っぽい名前=山田

石川:
11月はこの記事が大人気でした。ライターは、先日のデイリーポータルZ新人賞でおもしろがり大賞を受賞した、山田窓さんです。

山田窓:
はじめまして、山田窓(やまだまど)と申します。初めての記事が沢山の方に読まれて浮足立った一か月でした。

石川:
山田さんは…窓さんの方がいいですかね?呼称は。なんで窓なんですか?

山田窓:
これ、まったく意味はないんです。ペンネームを考えた時に、文化系っぽいことがやりたかったので文化系っぽい苗字なら山田だろうと決めつけまして。

石川:
「山田」の文化系感!

山田窓:
それで、山田に合いそうな語感として窓になりました。

石川:
山田に合いそうな名前=窓!
いま、質問してから、本名だったらどうしようと思ってました。よかった。語感良いですね。

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今月の記事からの写真ですが、山田窓さんです。(忙しい朝こそ!ホット野菜ジュースにひと味加えて濃厚スープを楽しむより)

 

 

喫茶店では普通にスマホいじってます

石川:
記事の話に戻って、喫茶店はふだんからよく行きますか?

山田窓:
よく行きますね。

石川:
いろんなところをめぐる感じ?

山田窓:
いろんなとこを巡る時もあれば、よく行く店に落ち着くこともあります。都会で唯一落ち着ける空間なので。

石川:
なるほど、喫茶店では何するんですか?

山田窓:
珈琲を飲んで、スマホをいじってます。

石川:
あ、普通!

山田窓:
あとカメラが好きなので、写真を撮りますね。

石川:
写真撮るんだ。それはいいですね。記録にもなるし。

山田窓:
古くからある喫茶店って、非日常的な空間が多くて。撮りたくなるんです。

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東京の喫茶店、「らんぶる」店内

石川:
なるほどー。僕は岐阜出身なので、喫茶店のイメージってちょっと違って、モーニング食べに行くところなんですよね

山田窓:
ああ、文化として根付いてるんですね。東京だと、若い人が昭和レトロを求めて行く感じも強いですが

石川:
なのでこの記事見て、都会の喫茶店すご!と思いました。

山田窓:
内装や外観など豪華で凝ったお店が多いですよね!

石川:
そう、すごい凝ってるから。非日常って感じしますよね。でも喫茶店だからやっぱ日常なのかな

山田窓:
混ざってますね。昔からの常連客の年配の方と、ベレー帽なんかかぶっている若い人が。

石川:
なるほど。日常派と非日常派がいるんだ

年代的には文化財級

山田窓:
もはや文化財級だなって。文化財って50年たったものが指定の目安になるんですけど、新宿だと喫茶店も50年以上やってる店も多いですからね。

石川:
そうか、70年からやってるとだともう50年たちますもんね。

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1947年創業、おそらく新宿周辺で一番歴史ある「珈琲と洋菓子ローレル」

山田窓:
70年代創業のお店だと、個人経営ならもう店主が80代の方とかが多いみたいで、ほんとに貴重な存在だなって思います。

石川:
これ300店調べるの超大変だったと思うのですが、そのへんの苦労話とかありますか?

山田窓:
1975年前後の住宅地図を参考にして調べたんですが、住宅地図って手書きなううえに超細かいんですよ。だから、何時間もかけて目の疲れの格闘でした。

石川:
字が超小さいですもんね。

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この字の小ささ!

石川:
図書館で見られるんですか?

山田窓:
古い住宅地図って区立図書館の本館で館内閲覧のみとかであるんですが、調べた時はコロナで時間制限があったり、コピーできるのは見開きの半分だったりで時間かかっちゃいましたね。

石川:
何日くらいこもったんですか?

山田窓:
2日間は図書館で調べて、残りはコピーしたものを家で見てました。1週間くらい毎日やってましたね。

石川:
うおー、それはお疲れさまでした…!それからまた現地行って取材して…ですもんね。頭が下がります

山田窓:
初めての記事で、好きな題材で書かせていただいたので、はりきって書きました!

石川:
いやおかげで力作になりました。

山田窓:
あんなに読んでいただけるとは思わなかったので、めちゃくちゃ嬉しかったです!

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人柄で勝ち取った新人賞

石川:
窓さん自身の話もきければと思うのですが、まず新人賞の受賞作がこれ

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街路樹界の異端児、ソメイヨシノの"のたうち回り具合"を愛でる

石川:
この記事も良くて、最初いろんな桜を見て鑑賞して、そのあと何でこんなことになってるのか一回調べて、もう1回鑑賞してるんですよね。で、1回目と2回目で全然見えているものが違ってて。とてもおもしろかったです

山田窓:
これは桜っていう日本で一番ベタなものを新人賞の題材にする人はいないだろうと思って書いたんです。

石川:
あーなるほど、そんな作戦が。

山田窓:
それで桜ののたうち回り具合をネタにいているうちに、ネタにするだけじゃ桜に悪い気がしてきて、それで桜の言い分も聞いてみたいと真面目な本を調べてみることになりました

石川:
あはは、人の良さが出ましたね

山田窓:
調べるうちに街路樹の桜に対してごめん…!っていう気持ちも加速していきましたね(笑)

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この立体的な曲がりぶり

石川:
にじみ出た人柄で勝ち取った新人賞。路上観察やるたびに慈しみの気持ちが育っていきそうですね。万物に対する博愛が…

山田窓:
あんまり背景を知りすぎると「おもしろがれなく」なることも多いので、ほどほどな距離感が大事かもしれないですね

石川:
なんだろう、想像の余地がちょっとあった方が面白いのかな

山田窓:
ああ、そうかもしれないですね。おもしろがるには遊べるスペースが必要なのかも。

石川:
そこを超えてさらにたくさん知ると、こんどはまた研究の域に入ってきてまた自分の知らなさに気づく段階に入るのでしょうけど。ほどほど知った段階で陥りがちな「だいたいこんな感じかな…」感は大敵かも。

山田窓:
確かに、桜の樹形の話も調べれば調べるほどわからないことだらけで。 ちゃんとした知識って、おもしろがらなくてもおもしろかったりしますもんね。

石川:
そうですね。で、反面であんまり深入りすると自分は面白いけど読者がついてこれないみたいなこともあったりして…。キープオン素人みたいなところは要るんですけどね。

アマチュア時代の名作

石川:
あと、山田窓さんといえば、新人賞の前には記事投稿コーナーの自由ポータルZにも投稿いただいていて

山田窓:
はい、けっこう投稿していました…!

石川:
5回入選するとデイリーで原稿を書いてもらえるという制度があるのですが、3回まで行ってました。気に入ってる作品ありますか?

山田窓:
万世のダブルパコリタンを食べるだけの記事は、初めての入選だったので思い出深いです…!

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あの肉の万世秋葉原本店がオススメする噂の料理「ダブルパコリタン」を食す

石川:
ダブルパコリタン、林がすごい好きなんですよね。先週も編集会議で「山田さんあの記事よかったよね」みたいな話をしてて。

山田窓:
本当にただ食べているだけなんですが、じっくりねっとり書いてるところを評価いただいて。

石川:
そうそう、ねっとり。「食レポなのに電車の写真3枚くらい載っててさ」とか言ってて。林が。

山田窓:
え、覚えていただいて嬉しいです!もともと、もうちょっとお洒落な感じの記事を書く人になりたかったんですが笑、これが褒められて意識が変わりました

石川:
あはは、そうでしたか!これ喫茶店の記事と真逆なんですよね。めちゃくちゃ幅広く情報集めた記事と、1店の1メニューをめちゃくちゃねっとり書いた記事。ふり幅があって面白いなと思いました。両方生かせるといいですよね。

山田窓:
喫茶店の記事も、本当は2倍3倍の量書きたかったのですが、削って削ってあれぐらいに収まっています(笑)

石川:
そうそう、かなり削っていただいて。無理を言いましたがありがとうございました

山田窓:
また、ダブルパコリタンみたいなシンプルな記事も書けたらいいなって思っています

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ちなみにダブルパコリタンはこんなメニューです

 

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山田窓:
もう1本は小田急ロマンスカーの記事ですね。2回目に入選したやつです。

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小田急ロマンスカーの「後展望席」に乗って、日常へなだらかに帰還する

石川:
あーこれも良かったですね!どんなコメントしたっけと思っていま見返してたのですが、3人そろってガッツリ褒めてました

山田窓:
ありがとうございます!特別なことはしていないんですが、乗った当時に思ったことをスマホのメモに書き留めていて、それで臨場感が出たのかなと。

石川:
そうそう、臨場感あるんですよねこの記事。メモの大事さがわかる…

山田窓:
あとで思い出すと嘘っぽくなっちゃいますもんね

石川:
そうですね、なんか整合性取っちゃうというか。生の感想ってあんまり理屈になってないんですが、あとで考えると妙に辻褄合わせちゃうんですよね。

山田窓:
写真に合わせた言葉しか出てこなくなりがちだなと思います、写真の説明になっちゃうというか

石川:
あ、そうそう。結局写真だけを手掛かりに書くことになっちゃうので…。

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石川:
カーブで車体が傾いてるところの写真とかすごくいいですね

山田窓:
ロマンスカーは新幹線よりもちょっと揺れるので高速移動の臨場感があるんですよね、この写真でその感じがでてたなら嬉しいです…。

石川:
いやー臨場感ありますよ、これ。文章も相まって

山田窓:
いつか京都や大阪の喫茶店マップもつくれたらいいなと思っています。東京と同じくらいかっこいい店が多いので!

石川:
あーそれはぜひ!

山田窓:
大学時代は京都で過ごしたので、実は東京よりも京都の喫茶店の方が思い出深いんです

石川:
また1週間泊まり込みになりますね

山田窓:
図書館旅行になりそうです

石川:
泊まれる図書館が欲しいですね

山田窓:
泊まれる図書館、切望します

石川:
では来月くらいに京都に泊まれる図書館がオープンすることを祈りつつ、ぜひいつか京都編を!

山田窓:
はい!


総集編はまだつづきます

明日は11月の記事ランキング、来週は別のライターインタビューをお届けする予定です。合わせてお読みください…!

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