特集 2020年12月3日

忙しい朝こそ!ホット野菜ジュースにひと味加えて濃厚スープを楽しむ

毎朝、野菜ジュースを朝食代わりに飲んでいる。美味しいし手早く飲めるからだ。

冬の朝は冷蔵庫から出したばかりの野菜ジュースを電子レンジで温めて飲む。

これがスープともジュースとも思える、脳が戸惑う味なのだ。

長年この戸惑いを朝の余裕のなさにかまけて放っていたのだが、今年こそは野菜ジュースのスープとしてのポテンシャルに向き合いたい。料理とはいえないレベルのひと手間を加えるだけで、まごうことなきスープへ昇華する予感がする。

そんな期待感を胸に、2週間さまざまな「ひと味」を加えたホット野菜ジュースを試してみた。

平成元年生まれ。令和から原始まで、古いものと新しいものが好き。

前の記事:1975年頃の新宿喫茶店マップを作り、300店の「いま」を調べた

> 個人サイト 畳の夢

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私事で恐縮だが、とにかく朝に弱い。料理なんてもってのほかだ。野菜ジュースを知るまでは朝食抜きがほとんどだった。

そんな自分も今は野菜ジュースのおかげでなんとか朝食生活を続けられており、毎月12本入りを箱買いしてる。

ちなみにホット野菜ジュースを知ったのはDPZライターの地主恵亮さんのこの記事から。シンプルながら目から鱗だった。冬の朝が変わった。10年近いDPZ読者歴の中で、もっとも生活に役立った事柄である。

素のホット野菜ジュースはうま味が向こうからやってくる

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無添加かつ野菜100%のカゴメ「野菜一日これ一杯」

数ある野菜ジュースの中で、カゴメのものが特に好きだ。ベースとなるトマトの風味が濃くて鮮やかなうえに、にんじんのまったりとした甘味・葉物野菜のほどよい苦味まで感じられる。こんなに複雑で濃厚なドリンクを気軽に飲めるのって、すごいことだと思う。

ではホット野菜ジュースになるとどうか。

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電子レンジで1分温めればもう完成だ

温めるだけでかなり印象が変化する。甘味よりも酸味が前に出て刺激的な味となるうえ、冷たい時はどこに隠れてたんだといううま味が急に引き立ってくる。スープになりかけているのだ。

だが、まだスープにはひと味かふた味足りない気もする。何が足りないのか。

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独断と偏見でレーダーチャートにしてみた。

うま味、甘味、酸味は振りきれている代わりに塩味、まろみ(まろやかさ、クリーミーさ)が足りていない。特にまろみが足りないことがらしくない原因だろう。酸味に押されて、スープを飲んだ時のあのほっと一息つく感じがないのだ。

酸味は煮込むことで飛ぶという。野菜ジュースも煮込めば単体でスープになるかもしれない。もしかしたら、このほっと一息つく感覚は、縄文土器以来のぐつぐつ煮て確かに火が通ったという原初的な安心感から来ているのかもしれない。 スープのレシピ本に「免疫力up」的な健康志向の本をそこそこ見かけるが、これもその安心感ゆえだろうか。

すこし脱線したが、ホット野菜ジュースの場合はここを煮込まずにおぎなえるような調味料があれば化けるのではないか。

試せば試すほどに可能性が広がった「ひと味」の経過

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14日間ちょっと早起きして、料理とはいえないレベルの手間をかけ続けた。総括としては想像以上に味の振れ幅が大きくて楽しかった。記事の後半では美味しかったものの順位付けと、すべての味の感想をまとめている。

こうして始まった2週間だが、朝の貴重なエネルギー源なので失敗しても飲みほさないといけない。せっかくの栄養分を一滴たりとも逃したくない。

栄えある初日は大定番のこれだった。

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スープにならないはずはないだろう、と味の素の顆粒コンソメ。
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マグカップ一杯分なら1分30秒ほどでスープらしい温かさになる。
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電子レンジを開けた瞬間、スープの匂いがやってきた。

一口目がおもしろかった。見た目は野菜ジュースなのに、味は見知ったコンソメスープなのだ。文字にすると当たり前だが笑ってしまった。

ただ、これで完全に成功というわけでもなかった。

コンソメ味、酸味、甘味がまとまらず、再現ドラマの家族みたいなぎこちなさがある。コンソメは煮込まないとコンソメが過ぎるようだ。
ならばと、2日目以降は味を上書きするような調味料として柚子こしょうや生姜チューブを試すようにした。これは結構な当たりだった。

また、途中からスープの格好をさせればそれはスープなのだということに気づき、食器やテーブルクロスにも凝りだした。

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短冊ベーコン×オレガノ。アメリカの田舎町で世話焼きなおばさんが手作りしてくれるイメージ。
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その実、手でぶち込みレンチン。料理といえない料理。
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こちらはナンプラー×パクチー。ありあわせの東南アジア感。
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溶け切らなかったピーナッツバター。子供が泣く味。あと家にアイロンがない。

後半はあえて甘味を重ねてみたりした。

2週間を通して気づいたことは、朝のスープは心の余裕のあらわれだということだ。職場についてからも、朝から手作りスープを飲んできた男と、なんとか野菜ジュースを朝飯代わりにしてきた男では心持ちがまったく異なる。もはや職場の人生の諸先輩方にずけずけと食生活の心配をされる時代は終わった。

こうして有意義な2週間を終えたわけだが、ここからは5位から1位まで、どれもスープかどうかのレベルを超えてはっきりと美味しかったものを紹介したい。

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5位…まろやかさがガッチリはまった西京味噌

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西京味噌とは甘くてまろやかな白味噌のこと。1人暮らしではなかなか買わない調味料だ。

野菜×味噌なのでそこそこ合うんじゃないかと思っていたが、想像以上だった。まろみと深みと適度な塩味を添えて、どこまでも馴染んでいる。角がとれて野菜ジュースの良い面だけが強調されている。

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自分で入れなければ馴染みすぎて味噌だと気づかないと思う。溶けるのに時間がかかるのがちょっとした難点。
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だし入り味噌はより味噌汁感がでたが、魚介系の風味が野菜ジュースの華やかさと微妙にすれ違う。和食の店に香水の匂いを振りまく女性が入ってきたような感じだ。

同率5位…複雑な湯(タン)、創味シャンタン×豆板醤

これもぜひ紹介したいだけのインパクトがあった。

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そら豆と唐辛子を発酵させた豆板醤と、中華万能調味料の創味シャンタン。途中からひと味もふた味も手間はあまり変わらないことに気づきコラボさせてみた。
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ほんの少量で劇的に変化する

野菜ジュース自体も複雑な味だが、そこに辛みと発酵食品の複雑な風味が足されて先が見えぬ味。中華調味料の奥の深さを垣間見た。今回はたまたまこの二つを選んだが、中国料理に詳しい方ならいくらでもバージョンアップできそうだ。

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中国の田舎で地元の古老から無造作に出されたら、ここに中華料理の重大な核心が秘められている気になりそうだ。

4位…ほっと一息、柚子こしょう

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エスビー食品のチューブ柚子こしょう。量は1cmくらいで十分だ。

ホット野菜ジュースの刺激をさらなる刺激で上書きしようと選んだ柚子こしょう。

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野菜ジュースのイメージからなるべく遠ざかろうと試行錯誤するうちに行き当たった「間違った日本」感。器はダイソーで買った焼酎用のぐい呑み。
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一口飲んで両手でそっと置く。温泉に入ってるような匂いがして、気持ちがふわっとする。

ほっと一息つけるという意味ではこれが一番だった。ゆずの爽やかな風味とピリッとした辛味が野菜ジュースの濃厚さを残しつつ酸味をうまく上書きしてくれる。このまま間違った日本料理として海外で人気が出てもおかしくないレベルの味だ。

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3位…王道の味、バター×オレガノ

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ざっくりヨーロピアン。

そりゃ美味しいだろうという想像を超えて美味しかった。刺激的な酸味は完全に中和され、バターのまろやかさと野菜ジュースのフレッシュさが際立つ。

塩味と甘味のバランスもちょうどよく、限りなくレーダーチャートの正五角形に近い味。そこにハーブの香りまで追加されているのだ。

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バターは5gの方が馴染むけど、10gの方がはっきりおいしい。
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きめ細やかに油分が溶けこみ、舌触りも最高。レストランで出されても違和感がない、というよりむしろ出して欲しい。

2位…スープを飛び越えていくエスビー食品のカレー粉

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1950年発売。日本のカレーの味を作ったといっても過言ではないエスビー食品の赤缶。

カレー粉の強さをあらためて感じた。大さじ1〜1.5ほど入れて温めるだけでしっかり赤茶色に変化しており、スープを飛び越えカレーといってよい仕上がりに。何かつけて食べる炭水化物が欲しくなる濃さ。

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さらにバターも溶かすともうカレー以外の何者でもない。しかもうまい方のカレーだ。
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もはや電子レンジにかけられない食器を使ってしまったが、こうして味の心象風景を胸に留めておくことが忙しい日常には必要なのだ。

素のホット野菜ジュースでは感じられなかったフルーティな爽やかさが生まれている。入ってないけど「りんごと蜂蜜」を連想させる味。

今回は一番基本的なエスビーの赤缶で作ったが、こちらもカレー好きな方ならいくらでもバージョンアップできそうだ。

14日間の頂点は…至福の味、りんごバター!

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青森県産紅玉を使用したりんごバター

スープの話なのに1位が甘いものってどうなの…と思いつつも、スーパーで見かけてピンと来たのだ。バターと野菜ジュースはもうベストマッチだと分かっているし、リンゴも野菜・果実ミックスジュースの定番なので合わないはずがない。

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入れすぎなくらい入れてしまいたい。
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甘酸っぱくて最高にクリーミー。至福の味がする。毎朝飲みたい。

まず、甘味+酸味=甘酸っぱいじゃないということが発見だった。野菜ジュースのままなら甘味と酸味が別々に主張していたのが、しっかりと手をつないで「甘酸っぱい」になっている。

そして予想外にスープだった。バターのまろやかさと野菜ジュースのとろみがポタージュ的なのだ。シナモンも合いそう。夢が広がる。

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ちゃんとりんごの果肉も入ってるところもよい。

その他の味もバラエティ豊かで面白い

5位以内には入らずとも、今後のアレンジ次第では化けそうなものもあった。何かの参考になればと感想をまとめてみた。

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2週間、14種類以上の味を試してきたが、まだまだホット野菜ジュースはズボラ飯界のブルーオーシャンだと思う。飲めば飲むほどに試したい味が増えていった。

読んでくれた皆さんも、もし気になったひと味を見つけたらぜひ試してみて欲しい。一緒にホット野菜ジュースの大海原へ出かけよう。電子レンジにかけるだけだから。

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