2週間、14種類以上の味を試してきたが、まだまだホット野菜ジュースはズボラ飯界のブルーオーシャンだと思う。飲めば飲むほどに試したい味が増えていった。
読んでくれた皆さんも、もし気になったひと味を見つけたらぜひ試してみて欲しい。一緒にホット野菜ジュースの大海原へ出かけよう。電子レンジにかけるだけだから。
毎朝、野菜ジュースを朝食代わりに飲んでいる。美味しいし手早く飲めるからだ。
冬の朝は冷蔵庫から出したばかりの野菜ジュースを電子レンジで温めて飲む。
これがスープともジュースとも思える、脳が戸惑う味なのだ。
長年この戸惑いを朝の余裕のなさにかまけて放っていたのだが、今年こそは野菜ジュースのスープとしてのポテンシャルに向き合いたい。料理とはいえないレベルのひと手間を加えるだけで、まごうことなきスープへ昇華する予感がする。
そんな期待感を胸に、2週間さまざまな「ひと味」を加えたホット野菜ジュースを試してみた。
私事で恐縮だが、とにかく朝に弱い。料理なんてもってのほかだ。野菜ジュースを知るまでは朝食抜きがほとんどだった。
そんな自分も今は野菜ジュースのおかげでなんとか朝食生活を続けられており、毎月12本入りを箱買いしてる。
ちなみにホット野菜ジュースを知ったのはDPZライターの地主恵亮さんのこの記事から。シンプルながら目から鱗だった。冬の朝が変わった。10年近いDPZ読者歴の中で、もっとも生活に役立った事柄である。
数ある野菜ジュースの中で、カゴメのものが特に好きだ。ベースとなるトマトの風味が濃くて鮮やかなうえに、にんじんのまったりとした甘味・葉物野菜のほどよい苦味まで感じられる。こんなに複雑で濃厚なドリンクを気軽に飲めるのって、すごいことだと思う。
ではホット野菜ジュースになるとどうか。
温めるだけでかなり印象が変化する。甘味よりも酸味が前に出て刺激的な味となるうえ、冷たい時はどこに隠れてたんだといううま味が急に引き立ってくる。スープになりかけているのだ。
だが、まだスープにはひと味かふた味足りない気もする。何が足りないのか。
うま味、甘味、酸味は振りきれている代わりに塩味、まろみ(まろやかさ、クリーミーさ)が足りていない。特にまろみが足りないことがらしくない原因だろう。酸味に押されて、スープを飲んだ時のあのほっと一息つく感じがないのだ。
酸味は煮込むことで飛ぶという。野菜ジュースも煮込めば単体でスープになるかもしれない。もしかしたら、このほっと一息つく感覚は、縄文土器以来のぐつぐつ煮て確かに火が通ったという原初的な安心感から来ているのかもしれない。 スープのレシピ本に「免疫力up」的な健康志向の本をそこそこ見かけるが、これもその安心感ゆえだろうか。
すこし脱線したが、ホット野菜ジュースの場合はここを煮込まずにおぎなえるような調味料があれば化けるのではないか。
こうして始まった2週間だが、朝の貴重なエネルギー源なので失敗しても飲みほさないといけない。せっかくの栄養分を一滴たりとも逃したくない。
栄えある初日は大定番のこれだった。
一口目がおもしろかった。見た目は野菜ジュースなのに、味は見知ったコンソメスープなのだ。文字にすると当たり前だが笑ってしまった。
ただ、これで完全に成功というわけでもなかった。
コンソメ味、酸味、甘味がまとまらず、再現ドラマの家族みたいなぎこちなさがある。コンソメは煮込まないとコンソメが過ぎるようだ。
ならばと、2日目以降は味を上書きするような調味料として柚子こしょうや生姜チューブを試すようにした。これは結構な当たりだった。
また、途中からスープの格好をさせればそれはスープなのだということに気づき、食器やテーブルクロスにも凝りだした。
後半はあえて甘味を重ねてみたりした。
2週間を通して気づいたことは、朝のスープは心の余裕のあらわれだということだ。職場についてからも、朝から手作りスープを飲んできた男と、なんとか野菜ジュースを朝飯代わりにしてきた男では心持ちがまったく異なる。もはや職場の人生の諸先輩方にずけずけと食生活の心配をされる時代は終わった。
こうして有意義な2週間を終えたわけだが、ここからは5位から1位まで、どれもスープかどうかのレベルを超えてはっきりと美味しかったものを紹介したい。
野菜×味噌なのでそこそこ合うんじゃないかと思っていたが、想像以上だった。まろみと深みと適度な塩味を添えて、どこまでも馴染んでいる。角がとれて野菜ジュースの良い面だけが強調されている。
これもぜひ紹介したいだけのインパクトがあった。
野菜ジュース自体も複雑な味だが、そこに辛みと発酵食品の複雑な風味が足されて先が見えぬ味。中華調味料の奥の深さを垣間見た。今回はたまたまこの二つを選んだが、中国料理に詳しい方ならいくらでもバージョンアップできそうだ。
ホット野菜ジュースの刺激をさらなる刺激で上書きしようと選んだ柚子こしょう。
ほっと一息つけるという意味ではこれが一番だった。ゆずの爽やかな風味とピリッとした辛味が野菜ジュースの濃厚さを残しつつ酸味をうまく上書きしてくれる。このまま間違った日本料理として海外で人気が出てもおかしくないレベルの味だ。
そりゃ美味しいだろうという想像を超えて美味しかった。刺激的な酸味は完全に中和され、バターのまろやかさと野菜ジュースのフレッシュさが際立つ。
塩味と甘味のバランスもちょうどよく、限りなくレーダーチャートの正五角形に近い味。そこにハーブの香りまで追加されているのだ。
カレー粉の強さをあらためて感じた。大さじ1〜1.5ほど入れて温めるだけでしっかり赤茶色に変化しており、スープを飛び越えカレーといってよい仕上がりに。何かつけて食べる炭水化物が欲しくなる濃さ。
素のホット野菜ジュースでは感じられなかったフルーティな爽やかさが生まれている。入ってないけど「りんごと蜂蜜」を連想させる味。
今回は一番基本的なエスビーの赤缶で作ったが、こちらもカレー好きな方ならいくらでもバージョンアップできそうだ。
スープの話なのに1位が甘いものってどうなの…と思いつつも、スーパーで見かけてピンと来たのだ。バターと野菜ジュースはもうベストマッチだと分かっているし、リンゴも野菜・果実ミックスジュースの定番なので合わないはずがない。
まず、甘味+酸味=甘酸っぱいじゃないということが発見だった。野菜ジュースのままなら甘味と酸味が別々に主張していたのが、しっかりと手をつないで「甘酸っぱい」になっている。
そして予想外にスープだった。バターのまろやかさと野菜ジュースのとろみがポタージュ的なのだ。シナモンも合いそう。夢が広がる。
5位以内には入らずとも、今後のアレンジ次第では化けそうなものもあった。何かの参考になればと感想をまとめてみた。
2週間、14種類以上の味を試してきたが、まだまだホット野菜ジュースはズボラ飯界のブルーオーシャンだと思う。飲めば飲むほどに試したい味が増えていった。
読んでくれた皆さんも、もし気になったひと味を見つけたらぜひ試してみて欲しい。一緒にホット野菜ジュースの大海原へ出かけよう。電子レンジにかけるだけだから。
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