サンマリノ……聖人の名前が由来の国
サンマリノは周りをすべてイタリアに囲まれており、海に接しておらず、山岳地帯の中に存在しています。現存する世界最古の共和国と言われていますが、その広さは世田谷区ほどしかなく、人口は3万人ほどのミニ国家です。
崖の斜面にへばりつくように発達した町と世界遺産のティターノ山が気になりますが、国名のサンマリノは、聖マリヌスが由来です。

ローマ皇帝のキリスト教迫害に屈せず、ティターノ山に逃れ、教会を作りました。その教会を中心に国が作られ、現在のサンマリノ共和国となったわけです。

ラテン語の聖マリヌス(Saint Marinus)が、イタリア語ではサンマリノ(San Marino)となります。
マリヌスは、ラテン語のマレ(Mare=海)が語源です。
横浜マリノス、千葉ロッテマリーンズのマリノスやマリーンズといった名称は海を意味するこの言葉が由来でしょう。
サンマリノも、元々は海という意味をもつ名称ですが、残念ながら国は海に接していません。
セントルシア……目を皿に載せる聖人
カリブ海の島国、セントルシア。淡路島ほどの広さの島に約17万人の人が住んでいます。
セントルシアは、1814年以降はイギリスが領有し、西インド連邦を経て、1979年に独立しました。
国名のセントルシアは、聖ルチアが由来です。
これは、コロンブスがこの島を訪れた日が、聖ルチアの祝日(12月13日)だったということになっています。
聖ルチアに関してはあまり詳しい話が伝わっていないようです。
3〜4世紀ごろ、シシリア島のシラクサにに生まれたルチアは、母の病気が治ったことをきっかけに、生涯を神に捧げることを決意します。彼女に好意を寄せていた青年はそのことに怒り、彼女がキリスト教徒であることを知事にチクります。当時、キリスト教は禁教だったため、彼女は処刑されてしまいました。
そのさい、拷問として両目をえぐり出されたという話があり、彼女を描いた絵画は、皿の上に両目をのせていたり、両目が生えた若葉を持っているものが多くあります。

サンタルチアといえば、あの有名なナポリ民謡を思い出しますが、これはナポリにある港の名前です。聖ルチアはナポリの船乗りの守護聖人であったため、その名がつき、その場所を舞台にした歌が世界的に知られる民謡となりました。
ラテン語で光のことをルクス(lux)といいます。
目を失い、光を失った聖人の名前が「光」というのはよくできていますが、逆にルチアがルクスという言葉の語源となったという説もあり、よくわかりません。
鶏がさきか卵がさきかみたいな話になっていますが、いずれにせよ、聖ルチアは日本語に訳すと「光子」がふさわしいかもしれません。
※参考文献
梅田修『ヨーロッパ人名語源事典』大修館書店
辻原康夫『国旗と国名由来図典』出窓社
『羅和辞典 <改訂版> LEXICON LATINO-JAPONICUM Editio Emendata』研究社
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