すでに乙幡さんがやっていた
めでたくバジルシードドリンクのツブツブは、やっぱりカエルの卵ではなかったことが証明された。では逆に、カエルの卵でバジルシード風ドリンクを作れないだろうかとも思ったが、それは来来来世の課題にしよう。
こうして記事を書いてから、念のためにデイリーポータルZのサイト内検索をしたら、2007年に乙幡さんが「バジルシードで目の掃除?」という記事で、バジルの種を食べていた。ぎゃふん。
数年前に黒いツブツブが入った東南アジアの飲み物「バジルシードドリンク」と出逢ってから、ずっと気になっていた。あれって本当にバジルの種なのだろうか。
もしかしてカエルの卵だったらどうしようと、バジルを育てて種を採取したら、新感覚ハーブティーが誕生した。
バジルシードドリンクの存在を知らない方も多いだろうし、飲んだことがあっても凝視したことはないと思うので、まずは貴方と共通認識を持つために、市販品をじっくり確認してみよう。
先に断っておくが、カエルの卵みたいなヴィジュアルが苦手な方は、別の楽しい記事を読みましょう。ちなみにカエルの卵自体は出てこないので安心してほしい。
ジュースの中をフワフワと浮かぶ黒いゴマ粒みたいなもの。これがバジルシード、バジルの種なのだろう。
いやでもメロンパンみたいに見た目から付けられたネーミングという可能性もある。バジルシードに見える粒、それがやっぱりカエルの卵だという可能性も捨てきれない。
だが原材料名を確認すると、しっかり「バジルシード」と書かれている。やっぱりバジルの種が入っているようだ。
となると、イタリア料理などでよく使われる、あの美味しいハーブの種ということだろうか。
でもまてよ。バジルの種ではなく「柿の種」みたいに「バジルシード」という名前の別の食品という可能性も捨てきれない。年を取ると疑い深くなるのである。
ライチ味のバジルシードドリンクから種部分を取り出してみると、黒い種をゼリー状の物質が保護している。まさにカエルの卵である。具体的なカエルの種類まではわからないが、私が抱いているカエルの卵という概念そのままの形だ。
植物の種ではなく、両生類の卵にしか見えない。早く飲まないとオタマジャクシが生まれるぞ。
とりあえずライチ味を飲んでみると、わかりやすく甘いジュースの中に、なにやらドロリとした感触があり、粒を噛んでみようとしても歯が噛み合う前にヌルっと逃げていく。がんばってどうにか噛んでも、特に味はないようだ。
なんだろう、「つぶつぶオレンジ」の異文化版といったところだろうか。和名を付けるなら「ぬめぬめライチ」とか。このヌメっとした喉越しとヴィジュアルインパクトが好きな人にはたまらないのだろう。
それではバジルシードドリンクが本当にバジルの種入りジュースなのかを検証していこう。
そのための方法は二つ、このジュースに入った粒を植えて育ててみるか、バジルの種でこのジュースを再現するかだ。
普通に考えるとジュースになっている種は発芽しないので(腐らないように加熱などがされているはず)、後者を試してみるしかない。
購入したバジルの種をジュースに入れて試せば話は早いのだが、種子として販売されているものは、基本的に食用ではない。防虫剤などなんらかの薬剤で処理されている場合があるからだ。
だがこの種は色がついている訳でもなく、無農薬栽培とまで書かれている。食べてもまったく問題がないような気もするが、わざわざ食用にするなと書いてあるので、どうにも食べるのは気が引ける。
ならば土に撒いて種子を取り、それで実験しようじゃないか。そうすれば気持ちよく種を食べられるし、バジルの葉も食べられて一石二鳥だ。
種を撒くいてからは順調だった。芽が出て、葉を広げ、花を咲かせ、いつのまにか種が実った。
虫にやられることもなかったし、調理方法もいろいろあるし、欲しいときにちょっとずつ使えるし、とても育てやすくて役に立つハーブだ。バジル大好き。
種ができたかだろうかと確認すると、全部の花にという訳ではなかったが、それなりの数が実っていた。ちょっと種蒔きの時期が遅く、バジルの成長も遅かったので、開花が遅れたものは昆虫が受粉をしてくれなかったのだろう。
こうして無事に実ったバジルの種でドリンクを作る前に、ゴミの中から種だけを集めなくてはならない。
ザルでふるったり、団扇であおったり、人力で選んだり、なんやかんややって種だけにする。前にゴマを育てたときのノウハウ(こちらの記事)があるので作業に迷いはない。やっぱり面倒だけどね。
こうして小さじに収まる程度の種が、どうにか集まったのである。
例のドリンク一本分にも満たないだろうが、大切なのはカロリーよりも経験だ。
ようやく、ようやくここから実験の本番である。なんとも助走が長すぎたが、この種でバジルシードドリンクは本当にできるのだろうか。
いきなりジュースにするのではなく、とりあえずは水を吸わせて、例のカエルの卵になるかを確かめてみよう。
種を水に入れてみると、プカプカと浮いた。すぐに変化があるという訳ではないようだ。まあそうか。
あのプルプルの状態になるには、やっぱり一晩くらい吸水させないとダメなのかなーと思っていたら、ほんの1~2分で変化が現れた。
すぐに水を吸って沈みだし、例の膜のようなものを発生させたのだ。そして一時間もすれば、見覚えのあるプルンプルンのカエルの卵状態である。
やっぱりバジルシードドリンクはバジルの種なんだ!なんて感動しつつも、市販のドリンクが本当にスイートバジルの種なのかまでは判断できないんだけどね。とにかくバジルの一種であることは間違いなさそうだ。
このツブツブをそのまま食べてみると、市販品よりもプチプチ感が強く噛み応えがあり、ちゃんとバジルの爽やかな味がするではないか。購入したドリンクではまったく感じられなかった、バジルの風味がしっかりするのだ。さすが無添加、非加熱、作り立て。
このフレッシュな風味、これぞ手作りの醍醐味だろう。まさかバジルシードドリンクを自作することに、味の面でも意味があったとは。
そうとわかれば、甘いジュースに入れてバジルシードの風味を消してしまうのはもったいない。せっかくだから生かさねば。
そこで麦茶に入れてバジルシードティーにしたところ、あのヌメヌメ感がプラスされた、噛むと爽やかな新感覚ハーブティーが完成したのだった。見た目の沼感がすごいけど。
この食材は見た目やヌメヌメだけでなく、バジルシードの味を含めて楽しみたい。日本では甘いドリンクに入っているくらいでしか見掛けないが、もしかしたら本場では、フレッシュなバジルシードを使った驚きの料理があるのかもしれない。
今年はもっとたくさん育てて、バジルシードを軍艦巻きにしてみようかな。白イクラという名前でどうだろう。芽葱の寿司が流行ったのだから、味も意外といける気がする。
めでたくバジルシードドリンクのツブツブは、やっぱりカエルの卵ではなかったことが証明された。では逆に、カエルの卵でバジルシード風ドリンクを作れないだろうかとも思ったが、それは来来来世の課題にしよう。
こうして記事を書いてから、念のためにデイリーポータルZのサイト内検索をしたら、2007年に乙幡さんが「バジルシードで目の掃除?」という記事で、バジルの種を食べていた。ぎゃふん。
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