デジタルリマスター 2023年10月16日

古墳を空から見てみたい(デジタルリマスター)

古いものが好きだ。休日はたいてい、神社仏閣やら、古い町並みやらといった、文化財を見学しに行くことに時間を費やしている。じいさん趣味とは自覚してるが、それでも古いものの前で過ごす満ち足りた時間は、この上無い幸せだ。

ところがだ。奮然勇んで見に行っても、少々、不完全燃焼というか、十分満足できずに帰らざるを得ない類の文化財がある。それは古墳だ。特に、前方後円墳とか、デカいやつ。

古墳鑑賞の不満点とは何か、その不満を解消する為にはどうすれば良いのか。それらを考えてみると、どうもこれは、空を飛ぶしかないらしい。

2009年8月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

前の記事:大阪、北浜の古いビル巡り(デジタルリマスター)

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我が憧れの、大仙陵古墳

一般的に前方後円墳と聞いて、まずイメージするのはおそらく大仙陵古墳(仁徳天皇陵)ではないだろうか。歴史の教科書でおなじみの、地図の上にぽっかり空いた、鍵穴のようなアレ。

大仙陵古墳はエジプトのクフ王ピラミッド、中国の始皇帝陵と並んで世界三大墳墓に名を連ねており、特に面積では世界一の大きさを誇る、第一級の文化財である。

その大仙陵古墳があるのは大阪府堺市。周囲に点在する古墳らと共に、百舌鳥(もず)古墳群と呼ばれている。

大仙陵古墳でおなじみ、百舌鳥古墳群

また、堺市の東10kmぐらいに位置する羽曳野市やその周辺には、大仙陵古墳の次に巨大な前方後円墳である誉田御廟山古墳(応神天皇陵)を含む、古市古墳群が存在する。まぁとにかく、大阪には巨大な前方後円墳がボコボコとあるのだ。

こちらは二番目にでかい誉田御廟山古墳のある古市古墳群

しかしながら、数ある古墳の中でも大仙陵古墳はやはり特別な存在だ。一番でかくて、しかもあの綺麗な鍵穴形。地図でその姿を眺めているだけで、思わずにやけてしまう。ぜひとも見学しに行きたいものだ。

そして先日、いよいよついに大仙陵古墳を訪れる機会に恵まれた。さてはて、世界一巨大な墳墓とはいかなるものかと、胸を躍らせ訪ねてみると……

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拝所から見えたのは、緑が茂るこんもりとした丘陵と、鳥居のみ

いやはや何と言うか、拝所から見る大仙陵古墳は非常に厳かで、聖域という雰囲気がひしひしと感じられるものの、期待していた通りのものが見られたかと言われれば、残念ながら首を横に振らざるを得ない。

ご覧の通り、この拝所からでは古墳がどんな形であるかも分からないし、墳丘(被葬者が埋葬されている部分)の周囲を巡っているはずの内濠を認めることすら叶わない。私の目前に広がるものは、ただ青々と茂る木々のみである。

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古墳の外堀を辿ってみても、実感は湧かない
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ジャングルのように、木々がうっそうと茂るだけだ

この古墳の様子を見て、なぜ私が前方後円墳の見学に満足できないか、お分かりになられたのではないだろうか。

そう、巨大すぎるのだ。あまりに大きすぎて、あの特徴的な鍵穴の形を確かめることができない。故に前方後円墳を見たという達成感が少なく、素直に感動することができないのである。

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大仙陵古墳の北にある田出井山古墳(反正天皇陵)もまた、鳥居と森が見えるだけ
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前述の、古市にある二番目に大きな前方後円墳、誉田御廟山古墳もやはりこの通り

1500年前という大昔。精密な測量機器など無い中で、よくぞここまで巨大な土木構造物を築いたものだ。それには脱帽。頭の下がる思いである。しかし、悔しいじゃないか。古墳の全容を確認することができないなんて。何か重大な古代の秘密を、隠されたままであるような気がして。

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このくらいの規模の円墳なら、まだ形を把握できるのだが
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どうでもいいが、濠で釣堀を営業している古墳もあった
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堺市役所の21階展望ロビーから、古墳を見る

もっと上のアングルから俯瞰できる、少しでも前方後円墳を鍵穴型に見ることができる、そんな場所は無いだろうか。

ちょうど大仙陵古墳の前に、観光案内に励むボランティアガイドのおじさんがいたのでその旨を尋ねてみると、堺市役所の展望ロビーから百舌鳥古墳群一帯を眺めることができるという話を聞かせてくれた。

なるほど、展望台。そういうのもあるのか。

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南海電鉄、堺東駅の近くにある堺市役所

早速、その堺市役所にまで足を伸ばしてみる事にした。大仙陵古墳から歩いて30分くらいだっただろうか。堺市役所の市庁舎は非常に立派な高層ビル。展望ロビーはその最上階、21階にあるという。

エレベータで一気に上へと上がり、全面ガラス張りの展望ロビーに到着した。そこからは、なるほど、確かに大阪湾から生駒山地まで、広く南河内の平野を見渡せる。

目的の大仙陵古墳はと探してみると、それはすぐに見つけることができた。しかし――

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堺市役所から見る百舌鳥古墳群。中央左よりが大仙陵古墳

あぁ、こんなものか。やはり、こんなものか。

古墳から堺市役所まで結構な距離があったことからも薄々気づいていたが、やはりこの堺市役所展望ロビーからの眺めもまた、満足できるものではなかった。あまりに、遠すぎる。

一応、地上から見るより古墳の起伏を確認することはできるものの、古墳をぐるりと囲む濠も見えないし、なによりやはり、例の鍵穴型が分からない。もし、あれはただの丘ですなどと言われたら、はいそうですかと易々信じてしまうことだろう。

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大仙陵古墳のみをズームで撮影。鍵穴の形には……見えない
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こちらは田出井山古墳。まだ多少は鍵穴に見える……か?

ダメだ。こんなものではダメだ。鍵穴だ。もっと、完全な形の鍵穴を見てみたい。あぁ、私の鍵穴見たい欲はたぎるばかり。見たい。大仙陵古墳の鍵穴が見たい。

しかし、地上からはダメ、展望台もダメとなると、一体これから私はどうすれば良いのだろう。これはもう、鳥のようにぴょーんと空でも飛んでみるしかないのではないだろうか。

はて、空を……飛ぶ?

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