デジタルリマスター 2023年10月5日

大阪、北浜の古いビル巡り(デジタルリマスター)

大阪府中央区北浜。現在、大阪の金融街として知られるこの街は、古くから商業が盛んであったところ。

江戸時代の初め頃から各種問屋が集まり、船で運び込んだ米などの物資を取引していたらしい。また薬問屋も多く、今でもこの周辺には武田薬品やシオノギ製薬の本社があったりと、薬関係の会社がとても多い。

歴史ある街には歴史ある建物がある。そう、この北浜もまた、そういった古くて、そしてカッコ良い建物が多い街なのだ。今回、そんな北浜の古い建物、特に洋風のビル建築を紹介したいと思う。

2009年7月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

前の記事:くしゃみが出るカップ焼きそば選手権――優勝はペヤング!

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まずは北浜駅の目の前、大阪証券取引所旧市場館

大阪市営地下鉄堺筋線の北浜駅から地上に出ると、いきなり目の前に巨大な円柱状の建物がどどんと現れる。

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駅を出てすぐのところに、一際目立つ巨大な白い建物が

この円筒形の建物は、証券街北浜のシンボル、大阪証券取引所の旧市場館。昭和10(1935)年に建てられた、地上6階、地下2階の鉄筋コンクリート建築。

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迫力と貫禄のある建物だ

前面に古代ギリシャの建築を思わせるような巨大な柱が並んでいたりと、新古典主義をちょっと取り入れた感じのモダンな建物。鉄筋コンクリートではあるけど、表面に張られた石の質感が良い感じ。

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窓にはめられている格子のデザイン、凝っている
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窓ガラスもステンドグラスみたいだ

ただ、残念なことに2004年に高層ビルに建て替えられ、現在は玄関ホールと外側のみを残した、頭と皮だけの剥製のような状態になってしまっているが、まぁ、それでも外観はそのままなので、完全に解体されるよりかはマシか。

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レンガ造りのかわいらしい建物、旧桂隆産業ビル

大阪証券取引所旧市場館を眺めながら東に少し行くと、左にも何か古い建物があるのが分かる。これはイギリス式の洋館、旧桂隆産業ビル。

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周囲を現代のビルに囲まれぽつんと鎮座する旧桂隆産業ビル

こちらの建物は、時代がぐっとさかのぼって明治45(1912)年、株の商人によって建てられたレンガ造りの建物だ。今回紹介する建物の中で最も古いビルでもある。

戦後には建設資材の商社である桂隆産業の社屋として使われていたそうだが、それも平成9年に倒産。今では北浜レトロビルヂングと名を変え英式の喫茶店として営業している。

左右はなんとも味気のない現代のビルだけれど、そのことがよりこの建物のかわいらしさを際立てているような気がする。そう思いませんかね。

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古い建物なのに明るい雰囲気がある
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窓の装飾やその下のエンブレムがチャームポイント
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堺筋通りのレトロな建物、新井ビル

大阪証券取引所の前を南北に走る大通りが堺筋。今でこそ大阪のメインロードは御堂筋であるけれど、かつてはこの堺筋が大阪のメインロードだったそうだ。今でも堺筋沿いには、明治から昭和初期にかけての古い建物が多く残っている。

その堺筋を南へ行くと、まず右手に見えてくるのが旧報徳銀行大阪支店の新井ビル。大正11(1922)年に建てられた洋風の鉄筋コンクリートビルだ。地上4階、地下1階で、1階は洋菓子店として使われている。

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大正期の建物だからか先ほどより規模が大きい
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1階は石積み風の仕上げ、2階以上はタイル張り
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鋲の打たれた扉とか、雰囲気がいちいちカッコ良い
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どうよこの階段
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ここまで良い階段もそうそう無い

いかがだろう。個人的にはこの新井ビル、なかなか気に入っているビルだ。外装もさながら、内部の、特に階段ホールの雰囲気がとても良いのがその理由。

掲載する写真の枚数が増えたのも、良いビルを見ることができて私がノッてきた証拠である。さぁ、次々行こうじゃないか。

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新古典主義の本格派、旧三井銀行大阪支店

こちらは新井ビルから少し進んだところにある、旧三井銀行大阪支店。

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なんとも強そうな外観だ

先ほどの大阪証券取引所旧市場館があくまで新古典主義"風"なのに対し、こちらはガチの新古典主義建築。まぁ、より古代ギリシャっぽいっていうか。

建てられたのは昭和11(1936)年。鉄筋コンクリートの地上3階、地下1階建て。現在は三井住友銀行の大阪中央支店となっており、絶賛営業中。

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古典主義ならではのどでかい柱(イオニア式)
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入口の上を飾るペディメント(飾り屋根)

このようなタイプの建築は昭和初期あたりに結構多く建てられているらしく、ここ以外でも東京の日本橋にある三井本館とか、丸の内にある明治生命館とか、そのあたりで見ることができたりする。

まぁ、そんな様式うんぬんの話はもういいか。

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意外と個性的な、高麗橋野村ビルディング

さて、この旧三井銀行大阪支店の向かいにも、なかなか良い感じの古いビルが建っている。昭和2(1927)年に建てられた、鉄筋コンクリート造り7階建の高麗橋野村ビルディングだ。

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ででんと高麗橋野村ビルディング

一見すると古ぼけただけの普通のビルのように見えるが、近づいて細部を良く見てみると、なかなか細部にまでこだわった、赴きある作りを見ることができる。

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遠目ではそれほど特別な感じはしないが……
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近づいてみると、普通じゃないことが分かる
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正面玄関周りには、どことなくアラビア風な装飾も
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こういう脇玄関もかわいらしい

どうだろうか。なかなか個性のあるビルではないだろうか。

直線を使わず、曲線やギザギザをあしらってみたり、玄関の両脇にはなぜか月とか飾っちゃったりしてる。スペイン南部的な感じというか、ヨーロッパとイスラム文化が混ざったような、なんかそんな感じ。私は嫌いじゃぁない。

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なんか凄い、生駒ビル

外観といえば、もう一つ、この近くになかなか凄いビルがある。高麗橋野村ビルディングから堺筋をさらに南に下ったところにある、生駒ビルだ。

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この辺のシンボル的なビルになっているっぽい

このビル、既になんか、只者ではないオーラが外観からも漂ってきている。もともと生駒時計店という時計屋さんの建物だっただけに、時計台があったりするし。

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しかしこのビルの凄いところは……
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窓にケモノがいる!ワシャー

まさかの石像登場だ。ケモノの石像が、道行く人々を見守っている。凄い。なんか凄い。そして羨ましい。だって、石像だよ。ケモノの石像。本棚の上とかに飾っておきたい。

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ケモノ以外にも丸窓や出窓など、高ポイントの点が多い
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こういうビルは裏口の雰囲気も良いね

さて、ここまでいくつか古いビルを見て気づくのは、やはりその装飾性の高さだろう。どのビルも、手間隙かけてこさえた、手作り感のある建築ばかりだ。やっぱりコレですよ、古い建築の魅力は。特に石像とか、石像とか、石像とか。ケモノとか。

あと、鉄筋コンクリートの建築であっても、外装には石材やタイルを用いたり、内装には木材を用いていたりするのも良いところ。やっぱり私はガラスやアルミよりも、このような石や木の方が好きだなぁ。ツルツルよりもザラザラ、ピカピカよりもツヤツヤ、というような。

⏩ 次ページに続きます

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