子どもたちの夢、それは運転士
パイロット、宇宙飛行士、電車の運転士、F1ドライバー。こうやって並べてみると、子どもたちの夢というのはほぼ運転士だということに気づく。特に電車の運転士というのは、こどものみならず、誰しもが一度は夢見る職業なのだ(異論をいっさい聞かず言い切ってやりました)。
今回、あこがれの電車の運転体験ができると聞いて、福島県伊達市にやってきた。
福島県~宮城県を走る阿武隈急行が車掌体験と運転士体験のできるプランを考えているのだという。今回はトライアルとして実際に運転体験してみませんか、とお声がけいただいたのだ。
い・い・ん・で・す・か!!!
冒頭にも書いたように、全人類の夢と言っても過言ではない(だからそれは過言だと)電車の運転士。いよいよその夢がかなうのだ。長生きするもんである。
まずは通常の阿武隈急行の列車に乗ってみた。運転士さんの仕事について予習しておきたい。
電車の運転士さんの仕事ぶりは、見れば見るほど忙しそうだった。ただ、その働く背中は無条件にかっこいい。まったく予習にはならなかったが、憧れの気持ちだけは大きく膨らんだ。
まずは列車の切り離し作業見学から
今回の体験は今後のプラン策定のためのトライアルということで、いったんすべての工程を見せてもらえることになった。
どのくらいまで「すべて」なのかと思っていたら列車の切り離し作業から見学が始まったので、本気ですべて見せるつもりだぞとわかり震えた。
連結部の切り離し作業なんて見たところでどうなんだ、と思うだろう。
でもこれがF1のピット作業なみの手際の良さで、込み合った配線を抜き差ししたり連結部のじゃばらを外して畳んだりと、素直に見惚れるのだ。手際のいい人がちゃきちゃき作業する様子というのはそれだけでずっと見ていられる。
見学を終えたら、切り離された車両に乗り込んで今回の体験会の会場へと移動した。
体験は座学からはじまる
体験といっても当然ながら安全第一である。運転の前にまずは座学からはじまる。
座学は、すでに運転士としての経験が長い社員さんが担当。法規から安全に対する心得、阿武隈急行の歴史など、基本的なことを広範囲に教えてくれる。
座学が終わると5分で車掌
座学が終わるとすぐに車掌体験がはじまる。
本当ならば学科試験を受けて研修を積んで、実際に乗車するまで半年くらいかかるらしいところを、今日はとくべつにすぐ乗務員になれるのだ。そんなワープ並みの飛び級、いいんだろうか。
躊躇している暇もなく車掌体験が始まった。いいんですね!なりますよ、車掌に!
使い込まれたマイクは、構えるだけで様になるようにできているかのようだった。
「本日は、阿武隈急行をご利用いただきありがとうございます。この列車は、福島発槻木行き普通列車でございます。」
原稿に沿って、実際に車掌さんが話す内容をフルバージョンでアナウンスさせてもらった。自分の声が車両を満たしているのがわかる。なんだこの感覚は。夢がかなう瞬間というのは、けっこう自然な流れの中で訪れるのかもしれない。
やることが多すぎて車掌体験が始まって2分で頭があふれた。このあと車内を巡回して改札しないといけないらしい。どうなってるのか、超人しか車掌になれないんじゃないのか。