やってみてください
みなさん今回もたくさんの投稿をありがとうございました。
この企画、集まった投稿をひとつずつ地図にプロットして、どうやって効率的に回るのかを考える時間がすごく面白い。
投稿頼りの旅は取材じゃなくてもぜひやってみてもらいたいです。本当に意外な発見があって面白いですから。
みなさんからの投稿だけを頼りに旅をする企画、今回は三重県です。
たくさんの投稿をありがとうございました(こちらで募集していました)。
伊勢神宮、鈴鹿サーキット、四日市の工場夜景など。よく知っているけど行ったことはない、なんとなくそんな印象があった三重県ですが、投稿を頼りに行ってみたらイメージがひっくり返りました。ちょう面白いから、三重。
※これまでいろいろな場所で取材をした記事を読めば誰もが知ったかぶりできるはず。「知ったかぶり47」は、デイリーポータルZと地元のしごとに詳しいイーアイデムとのコラボ企画です。
※姉妹企画「地元の人頼りの旅」もよろしく。
みなさんからの投稿だけを頼りに旅をする企画。道を調べる以外はガイドブックもネットでの評判もまったく下調べなしでいきます。
まずはこちら
鞍馬サンドは鈴鹿サーキットへ向かう途中にあるおしゃれなサンドイッチ屋さん。おしゃれすぎてお店がわからず、何度も前を通り過ぎてしまった。
お店に着いたのは平日の10時ごろだったのだけれど、店内のイートインスペースはすでに半分以上が埋まっていた。しばらく東海地方を離れていたので忘れていたが、このあたりでは喫茶店が生活に根差しているのだ。
これはおしゃれカフェの流れをくむサードウェーブとかそういう方向とはまったく違う進化をたどった、東海地方独特の喫茶店文化である。
たとえば家族で今日は外食しよう、となるとする。いつもよりちょっといい服を着て、父は週末なのにネクタイなんか締めてみたりして、みんなで車に乗り込んで目当てのレストランへ行く、その前に喫茶店に寄ってコーヒーを飲むのだ。
もしかしたらそれは愛知の僕の家(とその周辺)だけなのかもしれないけれど、東海地方でいうところの喫茶店というものは、完全に市民の日常の一部としてなじんでいる。週末の朝は喫茶店にモーニング食べに行くだろう。無料のゆで卵をむきながらコーヒーお替りするだろう。喫茶店がなくなったら、われわれはもうやることがないのだ。
ここ鞍馬コーヒーも、おしゃれであるという点でいわゆる「町の喫茶店」とは一線を画して見えるが、コーヒーカップが巨大なわりにお替り自由だったり、サービスでヨーグルトつけてみたりと、東海地方の喫茶店の基本は押さえているように思う。だから地元の人たちも朝からこぞってやってくるのだろう。
さて納豆コーヒーゼリーサンドである。断面を見るとクラッシュしたコーヒーゼリーと生クリームがふかふかのパンで挟まれているのがわかる。パンは角がピンと立っていていかにも美味しそうだ。
しかし持ち上げると糸を引くのである。なぜなら納豆が入っているから。
こんな色物サンドイッチ、美味しいはずがあるだろうか。
興味本位で食べてみる。
なんとこれが美味しいのだ。
またまたー、とお思いだろう。確かに恐る恐る食べた後だから驚きが2割増しということもあるかもしれないが、それをしょっぴいてもこれは美味しい。
恐れていた納豆の味と香りは皆無である。ほろ苦いコーヒーゼリーと生クリームがタッグを組んで、納豆の主張を押さえこんでいるのだ。集中して食べると遠くの方から納豆菌が呼んでいる声が聞こえなくもないが、まさかここに彼らがいるとも思わないだろう。後味にほのかに残る納豆の香ばしさと食感が、トータルとしてサンドに高級感をもたらしているようにすら思う。
こうなってくると他のサンドイッチも食べたくなるが、なにしろあの種類の多さである。こればかりは近くに住んでいないと無理だ。引っ越すか。
鞍馬サンドは正直かなり気に入ったので翌日も来ようか迷ったのだけれど、まだたくさん投稿いただいているので先に進みたい。次は三重県の北部、四日市市に向かう。
国道23号線を北上していき、蒸気を上げる煙突がいくつも見えてくると四日市である。
投稿いただいた新味覚は、四日市市の中心部からほど近い場所にある「ザ・街の中華屋さん」といった見た目のお店だった。ただ、入店するとその名の通り一味違う。
開店の10分前くらいに着いたのだけれど、すでに行列ができていた。みんな今日が平日だってこと忘れていないか。
開店と同時に入店。店内はカウンターのみで20席くらいだろうか、暗黙のうちに左から順に詰めて埋まっていく。BGMはサザンオールスターズが流れていた。
まず目を引くのはカウンターテーブルだろう。ガラスの下に本物のマージャン牌が埋め込まれている。僕はあまり詳しくないのだけれど、これっていわゆる役の順に並んでいるのだろうか。
メニューは餃子以外にない。席に着くとお水と餃子のたれがすっとカウンターに置かれる。これが合戦の始まりを告げる合図である。
まずは投稿でおすすめしてもらった牛乳を注文する。注文を聞きながらも店員さんは腹をすかせたお客たちに見守られながら無駄のない動きで餃子を焼いていく。
餃子は着席した順、つまりカウンターの端から配膳されていく。いよいよ次は僕の番だ。
このお店、なんとライスすら置いていないのだ。店員さんは入ってくるお客に「餃子しかないけどいいですか」と何度も聞いていたが、もちろんそれで帰ってしまうお客はいなかった。
餃子が冷めてしまう前にいただきたいと思います。
新味覚の餃子はもちもちの皮の味と香りがちゃんとする。餡がわりとあっさりしているのだ。そのまま食べてももちろんいいが、据え置き型のニンニクラー油を一滴入れるとうまみが飛び出してくる。おそらくこれを完成形として作られているのだろう。
しかしやはりニンニクである。食べると胃のあたりがぼうっと熱くなってくる、そしてなにより少しにおう。
そこで牛乳なのだ。あつあつの餃子にニンニクたれをたっぷりつけて口に放り込み、冷え冷えの牛乳を瓶でくっと流し込むと
これが合うんだ。
餃子といえばビール!みたいに反射的に注文してしまう人がいるかもしれない。もちろん新味覚にもビールは置いてあるが、一回あつあつの餃子を牛乳で食べてみてほしい、合うから。もしかしたらこれは新味覚の餃子に限る話なのだろうか、答えは風に吹かれている。
一皿目を食べ終えたところでこのお店ならではのシステムが発動する。空いたお皿をカウンターに乗せると、何も言わなくてもおかわりがやってくるのだ。
このお店はメニューが餃子と飲み物だけなので、会計が非常に明朗である。たとえば今回の僕の注文の場合、餃子二皿と牛乳。となるとカウンターにはこのような状態が展開される。
店員さんはこれを見て電卓をたたく。今回は注文しなかったが、ウーロン茶(瓶)やコーヒー牛乳を頼んでも同じようにキャップと点棒で判定していくのだろう。潔いメニューに確かな美味さ。その迷いのなさが、心地よいお店だった。
餃子を食べたら次は山へ向かおうと思う。
餃子の新味覚から車で30分ほどで御在所ロープウェイ乗り場に着く。餃子の新味覚はどちらかというと海に近い場所にあったのだけれど、三重は南北に長く東西には細いので、海側からでも少し行けば山にあたるのだ。
御在所岳には子供のころに親に連れてこられて来たのを覚えている。
うちの親は慎重なタイプで、一度行ってよかった観光地には次の年も行った。ここ御在所岳もその一つだったんだろうと思う。僕が小学生の頃には何度か来たような気がする。
父は若いころに痛めたというひざを、雨のなんかには顔をしかめてひきずっていた。足を痛める前はよく地方の山に登りに行ったりもしていたらしい。足を痛めて好きな山に登ることができなくなって悔しかったのではないか。
そこで御在所岳である。ここならばロープウェイとリフトを乗り継いで山頂まで行くことができる。
訪れたのがちょうど紅葉が始まった時期だったので、赤と緑のコントラストの中にゴンドラが突っ込んでいく感じがしてすごく気持ちよかった。
しかしこのロープウェイ、油断していると途中から急激に高度を上げているから注意だ。
前を見ている分には大丈夫なのだけれど、ふと後ろを振り返るとその高さにおののく。
僕はいわゆる絶叫マシーンはなんともないのに、じわじわと登っていく観覧車とかこういうロープウェイみたいな乗り物はどうも苦手なのだ。最悪の事態を想像する時間が長いからかもしれない。もちろんロープウェイは安全だし、景色は絶景なのだけれど、それでも怖い。
小学校の頃に来た時ももちろんロープウェイに乗ったんだろう。覚えていないが、あまり怖かった記憶もないので、もしかしたら大人になってからこういうところが苦手になってきたのかもしれない。
ロープウェイは片道約15分。ガラス越しにも外の空気が冷たくなってきたことがわかるくらい上昇すると、もうすぐで終点である。
ロープウェイを降りると売店と食堂がある。あれ、来たことあるぞここ。
御在所岳の山頂まではさらにリフトを乗り継いでいくことができる。これは低くて遅くてそのため怖くなく、むしろ楽しい。
リフトは約8分で山頂に到着。ふもとからまったく歩くことなく山頂まで来られました。
ところでこの前インフルエンザの予防接種を受けた。問診でこれまでに予防接種を受けたことがあるかと聞かれたので、子どもの頃にあります、と答えたのだけれど、それじゃあ初めてと同じですね、と言われたのだ。
なにが言いたいかというと、ここ御在所岳も、子どもの頃に来たきりなのである。そうなるとこれはもう初めて来たのと同じ状態なのだ。
こんな場所から富士山が見えます、みたいな場所が日本各地にあるように(なんとここからも見えるらしいです)、西日本では意外な場所から琵琶湖が見えるというのがアトラクションなのかもしれない。
子どもの頃に御在所岳に来た記憶は、ロープウェイ駅の食堂以外まったくよみがえってこなかったのだけれど、帰りがけになにげなく拾った石を見て、当時母によく「石を持って帰っちゃだめ」と言われていたことを思い出した。僕はいろいろな場所の石を集めるのが好きだったのだが、母に言わせると石にはその場所の念みたいなものが入っているから勝手に動かしちゃだめらしいのだ。
山頂には平成元年に埋めたというタイムカプセルがあった。
平成元年に埋められたタイムカプセルは、30年後に掘り起こされる予定だと書いてあった。なんと来年である。そうか、平成が始まってから30年も経ったのか。
古い思い出のある場所に行くのはうれしさ以外に怖さみたいなもやもやした感情を伴うことがある。僕にとって御在所岳は少しそういう場所だった。忘れていたことを思い出しちゃうかもしれない、それがいい思い出でも、いやな思い出でも、それを受け入れるのがちょっとしんどいことはないだろうか。これがきっと怖さという感情につながっているんだろう。
でも今回、投稿にすすめられて御在所岳に来てみてよかったと思う。こんなに近いんだから父と母を連れてきたらよかったのかもしれない。タイムカプセルを開けるときにでも誘ってみようか。
三重県総合博物館「MieMu」にやってきた。ミエム、いい名前だと思う。観光案内所でも「ミエム」という名前で通っていた。ちなみに津市のスポーツ施設は「サオリーナ」である。三重県はこういうかわいい名前を付けるのが得意なのかもしれない。
ミエムは一部有料の展示もあるが、ほとんどの場所が無料で楽しめる。
投稿ですすめられた通り、巨大な象「ミエゾウ」の化石は圧倒的な迫力だった。このサイズの生き物がかつてこのへんに暮らしていたなんて信じられるだろうか。アメリカとかに行くと宗教的な観点から恐竜の存在を否定している人がたくさんいるというけれど、このサイズの骨を見ると、実感としてこれが動いて生きていたとは素直に想像できない。
化石だけでなく、博物館の展示はじっくり時間をかけて見たいものばかりだった。
なかでも目を見張るのが三重県に生息する生き物の標本展示コーナーである。ここのクオリティがちょっとやばいぞ。
生きものの標本ってちょっと不気味な印象がないだろうか。学校の理科室で黄ばんだガラス瓶にびっくりしたような苦しいような表情で閉じ込められている寂しげな生き物、そんなイメージ。
しかしここの標本たちからはそういうネガティブな感じが一切ない。むしろ堂々と、胸を張って展示されているようにすら見える。
中には触っていい骨格標本もある。
こんなの子どもの頃に近所にあったら毎日来てると思う。実際この日も学校帰りの子どもたちが館内でふつうに宿題やったり遊びまわったりしていた。うらやましい環境だ。
ミエムでは売店の横にある休憩スペースも見逃してはいけない。ここにはオオサンショウウオのさんちゃんがいる。
オオサンショウウオのさんちゃんはこの巨大さにもかかわらずすごく活動的だった。広い(といってもさんちゃんにとっては狭いのかもしれないけれど)水槽の中を縦横無尽に動き回っている。
さんちゃんは最初こそでかすぎてちょっと引くが、休憩所でコーヒーでも飲みながら眺めていると徐々にかわいく見えてくる。なんだろう、動きがかわいいのかもしれない。
こういう地元の博物館って住んでいるとわざわざ行かなかったりするけれど、行ってみると確実に面白いのでおすすめである。地元のことを好きになるきっかけになりますよ。
はずかしながら天むすといえば名古屋の名物だと思っていた。投稿によるとここ三重が発祥らしい。そしてその元祖が津にある「千寿」というお店なのだとか。
営業時間ぎりぎりだったが行ってみた。
見た目の上質さにビビっていたのだけれど、天むす食べたさに飛び込ませてもらった。閉店時間ぎりぎりだったこともあって店内はすでに落ち着いていたが、それでも僕を含め持ち帰りの天むす待ちのお客が3名待っていた。天むすは店内でいただくこともできる。
千寿では注文を受けてから揚げたてのエビ天で天むすを握ってくれる。渡された天むすはパッケージの外からでもほんのりと温かさが伝わってきた。
ホテルに帰ってさっそくいただく。
木の皮風の包み紙を本物の木の皮で作った帯でとめてあった。ほどきやすいように結ばれた帯はお行儀よく横で束ねられていて、すでにほどよく伝統芸感がにじみ出ている。
中はアルミホイルで包まれていて、小ぶりの天むすが5つ入っていた。千寿の天むすの基本単位は5個のようだ。
ちょうど二口で食べられるサイズの天むすは、薄っすらと塩をきかせたおにぎりに揚げたてのエビ天が絶妙に馴染んでいる。ばっちり手作り感が残っているんだけど、歴史が長くてそれが標準化されて普通名詞になっている、そんな感じ。
夢中で5つ食べてしまった。正直食事としてはちょっと物足りないので、飲んだ帰りとかおやつくらいにちょうどいいと思います。ああまた食べたい。
三重というと鳥羽水族館が有名だけれど、今回は投稿を頼りにここ伊勢シーパラダイスにやってきた。
伊勢シーパラダイスはちょっとひなびた地方の水族館、といった感じで、展示にも手作り感があって非常になごむ。
プールではイルカがボールを使って自主練をしていた。
人が来るとボールを投げてくるので、取って投げ返すとそこからキャッチボールが始まる。
ここは天気の悪い日に子ども連れてどこに行こう、となった時なんかにちょうどいいと思う。大きな水族館みたいな派手さはないが、代わりにしっかりとした親密さがある。
そんな伊勢シーパラダイスの売りは、投稿にもあった通り、なんといってもセイウチのお散歩だろう。
時間になると海獣広場にはシートが広げられる。
言われた通り白線の外で待つ。
前にミスタータスクという映画を見たことがある。博士が人をセイウチに変えようとする話だ。何を言ってるのかわからないと思うので流してくれていいが、本当にそういう話なのだ。その映画のせいで僕の中ではちょっとセイウチには怖いイメージがある。
イメージはともかくとして、セイウチって気軽に散歩しているような生き物ではないと思うのだ。だってでかいし、牙生えてるし、まずいだろう。
それがいまからここにやってくるのだ。やはり逃げるべきか!
お姉さんの掛け声とともに扉が開き、それに合わせて暗闇でセイウチが一声いななく。
「ぶっふぉーーーん!!」
本当に出てきた。すごい迫力である。質量、雰囲気、声、どこをとっても規格外だ。
この子は「ひまわりちゃん」、体重680キロの女の子だ。何度も言うが近づいてくると圧がすごい。
このひまわりちゃん、見た目によらず(失礼)ものすごく芸達者なのだ。起き上がったり手をたたいたりと、離れてみている分にはうっかり(かわいい)と思ってしまう。しかしなにしろ近いので、その迫力がかわいさを凌駕する。ひまわりちゃんが手をたたくと、それによって生じた衝撃波が場の空気を切り裂く。
さらにもう一頭でてきた。こちらも女の子、タンポポちゃんは630キロである。
ひまわりちゃんとタンポポちゃんがそろい踏みすると迫力は倍ではなく2乗になる。
このあと2頭はお客のすぐ近くを歩いて回ってくれた。なるほど、これは散歩だ。
動作はいちいちかわいい、ただ、でかい。
僕の近くにも来てくれたので触らせてもらうと、表面は意外と毛だった。
600キロというと軽トラ一台分くらいの重さである。そんな生き物が猫みたいにごろごろ転がりながらなでてなでてと近寄ってくるのだ。一方には立派な牙も生えている。これは子どもにとってはちょっとした恐怖体験ではないのか。
お客の目が2頭のセイウチに慣れてきたところで、MCのお姉さんが次なる提案をする。
「それではここで、ひまわりちゃんが厄払いをしてくれまーす。どなたか、厄を落としたい方はいませんかー!」
お客さんの中から一人の男性が中心へと連れてこられた。彼女と東京から来たらしい。
そんなシティボーイに、背後からひまわりちゃんが鼻息荒くひた迫る。
ではいきますよ!
やっていることはいわゆる闘魂注入である。セイウチのひまわりちゃんが厄払いと称してお客の背中を叩く。
すごいものを見た。猪木とたたかうべくはアリではなくセイウチだったのではないか。
このあとひまわりちゃんとツーショット写真が撮れるというので並んだ。よくアイドルと握手会、みたいなイベントがあると思うが、正直女の子目当てで並ぶのは初めての経験である。
海獣を十分に堪能したあとは、近くの海に夫婦岩があるのでこちらも見ておくといいです。
言わずと知れた伊勢の名物赤福もち。三重県内の観光地をまわっていると、いたるところに赤福の販売店があるのだけれど、冬場は限定で「赤福ぜんざい」なるものが食べられるという(夏はかき氷)。
赤福は名古屋駅なんかでもばんばん売られていて、正直伊勢というよりも東海地方の有名お菓子、というくらいの認識だった。もちろん子供の頃から大好きでよく食べた。でもぜんざいは食べたことがない。
ここはさっき訪れた夫婦岩近くの赤福売り場に併設されたお茶屋さん。注文を受けてから餅を焼くのでしばらく時間がかかります、とのことだった。そういう時間ならば歓迎である。
見た目でノックダウンである。
あつあつのぜんざいにちょっと苦めのお茶、そして口直しの「かり梅」と「塩昆布」が付く。パーフェクトな布陣である。これだけで冬を越したい。
いただきます。
赤福ぜんざいは小豆のつぶがぷりぷりしていて、その歯ごたえだけで体中の力が抜けていく。僕は甘いものがあまり得意ではないのだけれど、こういう優しい甘さは好き嫌い関係ないんだなと思った。
赤福餅を筆頭に、三重にはお伊勢参りに行く人向けに、お餅を売っているお店が多いのだとか。昔は長い距離を歩いて参拝したので、途中でエネルギー補給できる餅は重要だったのだ。
赤福餅なんかもその中から生まれたスターだと思うのだけれど、この辺りでは「へんば餅」というのも有名らしい。
じっさい今回募集した投稿の中でもお餅に関する投稿が群を抜いて多く、全部回ると三重県の餅マップができそうだった。それはそれで価値がありそうだけれど、今回は他も行きたかったので我慢した。いつか個人的にやります。
たくさんある餅を代表して、今回は投稿ですすめてもらったへんば餅を食べてみることにした。
伊勢神宮へと向かう道の入口あたりにあるこのお店で、昔の人もここまでの疲れを癒したのかもしれない。この日もこれから参拝に向かうと思われるグループが何組か店内で餅を食べながら休んでいた。
へんば餅はやわらかい餅の中にあっさりとした甘さの餡がたっぷりと包まれていて何個でも食べられそうだった。でも実際は2個食べたらおなか一杯になった。餅ってそんなもんですよね。
投稿にある通り、伊勢神宮へと続く参道の途中にある「おかげ横丁」と呼ばれるストリートが素晴らしいので、伊勢神宮に行く人は必ず寄った方がいい。
僕はこのおかげ横丁でカキの佃煮とあとで書くけど伊勢うどんを食べました。もうおなかいっぱい。
全国の伊勢うどんファンのみなさん、お待たせしました。おかげ横丁で食べた本場の伊勢うどんを紹介したいと思います。
伊勢うどんは前に都内で食べたことがあるのだけれど、僕はどちらかというと角がピンと立ったこしの強いうどんが好きなので、あのふわふわした伊勢うどんはちょっとどうなのかなと思っていたのだ。
本場伊勢で食べるとまた違うのかもしれない。
結論からすると、伊勢うどんは本場で食べてもやはりふわふわでどうかなと思った。
でもこれは結局餅から続くやさしい食べ物のひとつなんだろうなと思う。コシの強いうどんって美味しいけど思った以上に消化にパワーを使うだろう。伊勢神宮に参拝に行く人が手軽に食べられてすぐに力になる食べ物となると、コシが強くてあごが疲れるうどんではなく、ふわふわで甘いしょうゆのかかった伊勢うどんがたぶん正解なのだ。
いずれにせよ、伊勢うどんを伊勢で食べているな!という感動はあった。名物というのは買って帰るんじゃなく、その場で食べてこそなんだと思う。
これも伊勢神宮へと続く参道に面したお店、ひげ天。
ひげ天は乱暴に説明すると練り物を揚げて串に刺した食べ物である。そんなの絶対美味いし、串に刺さっているので食べ歩きだってできる。栄養もあるぞ。これもきっと伊勢神宮へ向かう途中で食べる用にチューニングされた結果生まれた名物なんだろう。
投稿でこのお店をおすすめされたとお店の人に伝えると「あらー、まる店さんの方じゃなくて?うち?うれしいわねー」と。ライバル店があるんですか。
ライバル店があると聞いたからには食べ比べねばならないだろう。この企画は公平公正がモットーである、今決めたけど。
「ひげ天」で聞いた「まる天」。お店構えからしておそらくはこちらの方が歴史が長そうである。投稿にだけ頼っているので細かいことは知らない。食べてみて判断したい。
こちらでも同じように練り物をあつあつに揚げて串にさしている。形はひげ天が直方体、まる天がその名の通り円柱形なのだけれど、手にしたときに熱々でずしっとくる感じとかは一緒である。
結論としてはどちらも美味しいのでどっちで買ってもいいと思います。
ぜんぜん参考にならないレポートで申し訳ないが、どっちも同じく美味いから仕方がない。気になる人は両方で買ってもらいたいけれど、これ2本食べると正直おなかが一杯になるから注意。さっきのおかげ横丁含め、伊勢神宮へと続く参道には美味しいものを売っているお店がひしめき合っているので、どこで何を食べるのか、計画的に食べ進めないと神宮へ着くまでに動けなくなるだろう。
【投稿】回転焼肉一升びんは体験してもらいたい。
回転寿司みたいに肉が回っているという焼肉「一升びん」。
回転焼肉ってどこか他でも見たような気がしていたんだけど、どうも三重のなかでもこの宮町店だけなのだとか。なんだろうこの既視感は、前世の記憶だろうか。
入り口ではハイテンションの顔ハメが出迎えてくれる。
お店に入るとなるほど、流れているのが肉であること以外は回転寿司屋である。回るのが不要な人は通常のテーブル席もあるので安心してください。
僕はもちろん回る方を選択。
ブースには焼き網とIHヒーターが設置されているが、それ以外はやはり回転寿司と同じだった。
回転焼肉のルールはこうだ。
食べたい肉が流れてきたら目の前にある赤いボタンを押す。すると5秒間だけレーンと座席とを隔てたアクリルの扉が開くので、その隙に肉を取る。
アクリル板は5秒経つと容赦なく閉まるので躊躇している余裕はない。
寿司のようにダイレクトに皿を取れるわけではないので初めは少し戸惑う。アクリルの扉があるのはきっと衛生面を考えてのことだろう。なにせ回っているのは生肉なのだから。
チェーン展開しているなかで、ここ宮町店だけなぜ回転しているのだろう。理由は謎だが、開店と同時に回るブースはほぼ満席になっていたところを見ると、地元の人からも受け入れられているのだろう。これを見ている回転寿司屋さんは、次のビジネスとして焼肉を考えてもいいかもしれないですよ。
そうそう、焼肉なので肉の話もちょっとだけ。
流れてきた肉を焼いて食べるときは、シンプルに塩コショウか、甘めのみそだれを選ぶことができる。どちらでもいいが、個人的にみそだれをおすすめしたい。このたれ自体のうまみがすごいので、いい肉にはもったいないって言われるかもしれないが、美味しいものは美味しいんだからしようがない。
しかしこの方式、面白いんだけど、美味そうな肉が流れてくるとついボタンを押すのを忘れて手を伸ばしてしまう。で、「ゴン」とアクリルに当たって思い出す。それから慌ててボタンを押してももう肉は流れて行ってしまっているのだ。
これはある程度の反射神経がないとリズムよく食べたいものを食べるのが難しいと思う。楽しいには違いないけど。
もちろん回転寿司と同じで、なかなか回ってこない肉や取り損ねた皿は直接注文することもできる。松阪牛の高級な部位なんかはやはり回ってはこなかったので注文すべきなのだろう。
一人で焼肉食べに来ること自体初めてだったのだけれど、これはアリだなと思った。もちろん回転焼肉だとブースで仕切られているので一人で行くハードルが下がるし、たとえ回転でなくても焼肉って一人で食べると自由に好きな肉を自分のペースで食べられて最高である。
かなり普通のことを発見したところで終わりにしたいと思います。以上三重からお届けしました。
みなさん今回もたくさんの投稿をありがとうございました。
この企画、集まった投稿をひとつずつ地図にプロットして、どうやって効率的に回るのかを考える時間がすごく面白い。
投稿頼りの旅は取材じゃなくてもぜひやってみてもらいたいです。本当に意外な発見があって面白いですから。
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