「超ウルトラマウスピース」とは
尺八はな、そもそも初心者には吹きにくいものなんや。
リコーダーみたいに誰が吹いても鳴るってものではなさそうですもんね。
口に当てる部分を「歌口(うたぐち)」ゆうんやけど、くちびるの位置がブレて鳴りが定まらんのよ。あんたにこれあげるから吹いてみ。
え!もらっちゃっていいんですか。
いい、もってけ。ついでにこれももってけ(2本もらいました)。
これは富川さん、確かに音出ないですね。
出ないやろ、出ないんや。そこで私が開発した歌口がこれや。
これはずいぶんと複雑な形状をしていますね。
複雑に見えるけどな、これだと吹くときにくちびるがぴたりと入るから誰が吹いても吹けるんや。
たしかにこれはすごい!口の形状にぴったり合いますね。
やろ。これだとくちびるが固定されるから誰にでも吹けるんや。いままでの尺八ではここは誰も触らんかった。でも本当はこれが大切だったのよ。これがわたしが発明した「超ウルトラマウスピース」。
すごい名前だ。
だったら「紀正削り」でもええわ。
名前が定まっていないんですね。
あとはな、尺八は両手で穴を押さえるやろ。それが押さえやすいような角度で穴開けてあるんよ。ほいでドレミの音階で吹けるようにした。これが「外観形状調律」、これもわたしのオリジナルやで。
誰にでも吹けるように進化した尺八、それが「紀正」なんですね。
そうや。楽器はまず誰にでも音が出せること、それから楽譜を見ながら吹けること、そうじゃないと世界で通用しいひんのや。
富川さんは本当に世界を見据えているんですね。
これもって世界に行きたいんよ。ソ連の片田舎の子どもたちでもな、その土地の民謡が吹けるようでないと世界には広まらん。
「紀正」ならいけると。
そうや。大量に安く作って世界中に配ったったらいいねん。