工房は富川さんそのものだった
ここが工房やね。
すごい。いまいきなり移動したみたいになってますが、富川さんのご自宅の2階です。
これは竹の曲がりを直す装置や。これも自分で作ったで。
すごい。尺八になるようなまっすぐな竹っていうのは珍しいんですね。
いい竹はな、業者から買うと6000円とか1万円とか、何万円もするやつもある。竹の他にもニスやら砥の粉やら、先生に聞くと高いことばっか言われるからな、そんなん作る人おらんくなるで。
ホームセンターとかで売ってる竹では作れないんですか。
わたしもそう思ってな、ホームセンターで買うてきた竹で作ったのがこれや。
これは尺八として演奏できるんですか。
もちろんできるよ。細いから図太い音は出んけど。
素人には立派な尺八の音にしか聴こえないです。尺八の絵とか飾りも富川さんが描いているんですか。
そうや。竜は縁起がええからな。でもこれ、尺八の先生には「あほか」言われたわ。「イノシシか」って。
先生ちょっと厳しすぎませんか。
尺八は伝統的にこういう絵は描かんのよ。「さび」ゆうてな、自然に竹に出た模様を生かして作る。でもそんな竹はなかなか見つからんから、わたしは硫酸かけたり火で焦がしたりして自分で模様をつけたり絵を描いたりしてるわけよ。
竜は掛け軸に描いてあったやつを真似して焼きゴテでなぞったった。
ということは元は誰かの絵なんですか?
そうや。雪舟とかな、権利関係こわいからな、名前まで正直にちゃんと彫るで「雪舟」て。
次のページではいよいよ「紀正」の特徴でもある「誰にでも吹ける」尺八の作り方を公開。