台湾ラーメン「アメリカン」には優しさがある
台湾ラーメン「アメリカン」は単に薄いだけじゃなく、優しさで辛さが包み込まれていた。とはいっても通常のより辛くないってだけで、やっぱり辛いのでご注意ください。
名古屋に行くと食べたくなるメニューがいくつかあるが、中でも台湾ラーメンには中毒性があると思う。
鶏ガラスープの辛くて熱い台湾ラーメン、ああ(食べたくなっています)。
そんな名古屋名物台湾ラーメンにアメリカンが存在すると聞いて食べてきました。名古屋で台湾でアメリカですよ!
名古屋に行くと食べたくなるメニューがいくつもある。
「名古屋めし」という言葉が一般的になったのは最近のことではないだろうか。
僕が愛知に住んでいた30年前にはそんな言葉はなくて、積極的に他県にアピールするのではなく、単に好きだから味の濃いものを食べていただけだったように思う。
ラーメンに関してもそうで、今でこそ全国的にも名が知られるようになった「味仙」の台湾ラーメンだって、僕が子どもの頃にはまだなかった。
当時はベトコンラーメンという謎のラーメンが流行っていた気がする(ベトコンラーメンはライター江ノ島くんが来週記事にすると思いますのでそちらをご期待ください)。
辛くて美味い台湾ラーメンが有名な中華料理屋さん、味仙。
ちなみに台湾ラーメンというのは台湾スタイルのラーメンではなく、愛知で独自に進化した、ニンニクと唐辛子を効かせたひき肉の入った鶏ガラスープのラーメンのことです。
味仙は愛知を中心にいくつかの店舗が存在するが、おもしろいのは店舗によって味もメニューも少しずつ違うところ。今回は矢場にある「矢場味仙」にやってきた。
この矢場味仙には台湾ラーメンの「アメリカン」があるというのだ。
名古屋名物の台湾ラーメンのさらにアメリカンである。もはや国籍不明の極みと言っていい。
しばらく並んで入店(といっても回転が速いのですぐですが)。メニューを見るとちゃんとアメリカンの文字があった。
アメリカンといえばなんといってもコーヒーだろう。
日本的にいうとレギュラーよりもちょっと薄めのコーヒー、それがアメリカンではないか。
台湾ラーメンのアメリカンも同じ原理で、通常よりも辛さがマイルドなのだとか。
レギュラーの台湾ラーメンは中毒性があってたまにどうしても食べたくなるのだけれど、いざ食べると辛すぎて途中から味がわからなくなるのだ。アメリカンがあるのならばそれはぜひ食べてみたい。
夜の時間帯の店内は満席で、お店の外まで行列ができていた。オーダーを通すアナウンスと厨房の熱気が客席にまで伝わってくる。この雰囲気だけで元気が出て白飯が食べられそうである。
台湾ラーメンの前にニンニクチャーハンで胃をガードしておくことにした。
ニンニクチャーハンを食べ終えてラーメンを待っていると、隣の席に座った男性から「チャーハン部の安藤さんですよね」と声をかけていただいた。そうです、ありがとうございます。
その頃にはすでにチャーハンは食べ終えていたので(あれ安藤、チャーハン食べないのかよ)と思われたかもしれないなと不安になり、ちゃんと最初に食べたぞということをここに書いておきます。
というわけで台湾ラーメンアメリカンである。一目見て、これはオーダー間違えたんではないかと思った。
通常の台湾ラーメンと見た目がずいぶん違うのだ。
味仙の台湾ラーメンを普段から食べ慣れている皆さんにはわかってもらえると思うが、通常の味仙とはぜんぜん違う。何が違うって、まずスープが赤くない。
ちょっと理解できないままに、スープを一口飲んでみて驚いた。
スープを飲んでもむせないという点からして違うのだけれど、これはなんというか、台湾ラーメンのアメリカンである。それ以外に言いようがない。
鶏出汁の美味しさはそのままに、辛さだけを和らげてある印象だ。辛くない分、美味さを舌でちゃんと感じることができる。もちろん全身で辛さを受け止めたい時には通常の台湾ラーメンを頼むべきなのだろう。でもたまに人って悩むじゃん、元気なくなるじゃん、そういうときはさ、優しさに身を委ねてもいいんじゃないだろうか。
僕はそもそも味仙の台湾ラーメンが好きで、愛知に帰るたびに一度は食べていると思うのだけれど、いつも後半は汗がすごくて味を感じられていなかったのだ。短距離走を走ったあとみたいな気分でお店を出ることになる。
その点「アメリカン」は違う。最後まで、本当に最後の最後まで美味しかった。これは台湾ラーメン初心者にというよりも、むしろ辛い台湾ラーメンに慣れ切ってしまった上級者にこそ食べてほしいラーメンなのかもしれない。
台湾ラーメン「アメリカン」は単に薄いだけじゃなく、優しさで辛さが包み込まれていた。とはいっても通常のより辛くないってだけで、やっぱり辛いのでご注意ください。
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