ミックスベジタブルについて考えたきっかけがある
料理コラムニスト・山本ゆりさんの『syunkon日記 おしゃべりな人見知り』というエッセイ集を読んでいた。やたらと饒舌なレシピ本『syunkonカフェごはん』シリーズが大人気で、ブログもいつも笑える山本ゆりさんの文章なので、当然面白かった。

その本の中に「ミックスベジタブルへの思い」という一篇があり、幼い頃から実家でよくミックスベジタブルを食べていたという山本さんのミックスベジタブル愛が、笑いも交えつつ綴られていた。
山本さんはこう書いている。
“そもそもどういうつもりで出した商品なのだろう。玉ねぎとピーマンとにんじんならまだわかるけど、にんじんとグリンピースとコーンがちょうど欲しかった! ってことあんまりなくない? ピラフぐらいしかなくない? ピラフのために作られた商品なん?”
山本さんもその存在を不思議がっている。一方、こうも書いている。
“毒々しいほど色鮮やかな3色。不自然に四角いにんじん。少しブヨッとした水っぽい食感。ミックスベジタブルの良さはこのチープさにこそあると私は思う。どんなに高級な牛肉でハンバーグを作っても、横にミックスベジタブルさえ添えれば突然ラフなTシャツで缶ビール片手にバクバク食べられそうな安っぽさを感じられる。(中略)心がバサついている時には、そういう適当なものをガシガシと食べたかったりするんです。”
「わーい!ミックスベジタブルだ!」と大はしゃぎする人はいないかもしれないが、誰かの役には確実に立っている。食事制限中にご飯の代わりに食べる人がいたり、ミックスベジタブルを離乳食に活用する人も多いと聞く。
あと、昨年スコットランドに旅行してきたという友人が「現地で食べた料理には必ずと言っていいほどミックスベジタブルが添えられていた」と教えてくれた。

冬がすごく寒いスコットランドでは野菜が育ちにくいため、とても貴重で、効率よく使えるミックスベジタブルは生活になくてはならないものだという。しかも友人いわく、どこで食べたミックスベジタブルもすごく美味しかったそう。
と、そんなきっかけがあって、私はミックスベジタブルに向き合ってみたくなったのだった。
近所のスーパーをめぐってみた
そもそもミックスベジタブルってどうやったら食べられるんだろう。ファミレスでハンバーグを注文すればいいのかもしれないが、もっと、それそのものを見てみたい。
スーパーに行ってみると、簡単に見つかった。普段私が冷凍野菜のコーナーに無関心だっただけで、大手のスーパーでは大抵販売されていた。「ローソンストア100」など、コンビニでも買うことができた。ただ、冷凍ほうれん草とか、冷凍ブロッコリーはよく見かける割に、ミックスベジタブルが置かれていないスーパーもちらほらあった。
とにかく、気軽に移動できる範囲で買い集めたのがこの8種類。

ちなみに、これを書いている今、ネットで検索したところ、私が今回手に入れられた商品以外にも同様のものが山ほどあることがわかった。たとえば業務スーパーオリジナルのミックスベジタブルもあるし、冷凍食品に力を入れているメーカー各社からたくさんの種類が出ているようだ。あくまで今回は個人的に、そんなに苦労せずに集められた範囲ということになる。
また、たとえばブロッコリーとカリフラワーとにんじんが入ったニチレイの「洋風野菜ミックス」という商品のように、たしかにミックスベジタブルで間違いはないのだが、ちょっと今回イメージしているものとは違うという場合は買わずにおいた。
商品は悪くないのだ。っていうじゃそれを言ったらもう、サラダだってミックスベジタブルと言えてしまうし、いや、そもそも「ミックスベジタブル」って誰が言い出したんだ!
よし、気を取り直そう。一つ一つの商品をよく見て、食べてみようではないか。
淡々とミックスベジタブルを食べる午後
商品ごとにどれほど味の違いがあるのかわからないが、しっかり味見していくため、味付けはシンプルに塩コショウだけで行くことにした。

こういう食べ比べみたいなことをしようとしておきつつ情けないだが、私は食が細いので、この小さな器に半分ぐらいの量を食べていこうと思う。

ちなみに、多くの商品では凍ったままフライパンで炒めるか(バターで炒めたらそれだけで美味しそう!)、沸騰したお湯で1分~2分ほどボイルして食べることがまず推奨されていて、電子レンジで加熱する場合は軽く水をふりかけた上で容器にラップをかけること、と書かれているものがほとんどだった。
今回の目的は味見なので、電子レンジ一択で、同じ容器で同じ時間(50秒)加熱して食べてみることにした。
順番に特に理由はなく、最初に選んだのはこちら。
・「ミックスベジタブル(ノースイ)」/140g


レンジでチンする際、水をかけるように説明している商品もあったが、調べてみると、ミックスベジタブルをレンジでそのまま加熱すると焦げたり、火花が出る場合もあるという。ここは必ず気をつけたいところ。
無事、加熱できた。


塩こしょうをふりかけ、スポーンですくって食べてみる。


味は想像の範疇だったが、しかし、思った以上に美味しい。食感がいいのだ。もっとぐにゃぐにゃしたものだった記憶があるのだが、コーンはシャキシャキしているし、グリンピースのはじけるような歯ごたえもいい。変に甘すぎたりしないのもいい。冷凍食品の加工技術が年々進化しているという話は聞くから、それもあるのかも。
一応、僭越ながら“評価”してみることにした。
・「ミックスベジタブル(ノースイ)」
シャキシャキ感:☆☆☆★★
甘み:☆★★★★
彩り:☆☆☆★★
ひとこと:今回買い集めたものの中で最も量が少ない分、価格も安かった。パッと使い切りたい時にいいかも
さて、2品目からはそれぞれの差が問題になってくるわけだ。ドキドキする。
・「元気畑のオーガニック ミックスベジタブル(ニチレイ)」/250g


レンジで加熱していると、ボコ!とたまに音がする。グリンピースが爆発しているのかも。


食べてみると……

いや、ざっくり食べてしまうとかなり同じなのだが、もっとちゃんと、気合を入れて味わってみる。すると、さっきよりも特ににんじんの香りが際立っている気がした。それでいて全体的に風味がまとまっている。これが“有機”の力なのかも。そして、色が少し鮮やかなような気がした。少しだが。
・「元気畑のオーガニック ミックスベジタブル(ニチレイ)」
シャキシャキ感:☆☆☆★★
甘み:☆★★★★
彩り:☆☆☆☆★
ひとこと:最初に食べたのと大きな違いは感じられなかったが、強いていえば野菜が持っている力が強いような気がした。
不安だが、次に進んでみよう。
・「彩り鮮やかミックスベジタブル(ニチレイ)」/250g


同じニチレイの”有機”か”有機じゃないか”を自分が見分けられる気はしないが、食べてみる。


あれ、シャキシャキ感がさっきより強い気がする!(とはいえ、ひょっとして商品ごとに加熱している量が微妙に違ってそれが食感に影響したりしていたらどうしよう)風味はさっきとそれほど変わらないような。でも彩りはさっきの“有機”の方がよかったかも。
・「彩り鮮やかミックスベジタブル(ニチレイ)」
シャキシャキ感:☆☆☆☆★
甘み:☆★★★★
彩り:☆☆☆★★
ひとこと:素材の粒が小さい感じもしたけど、その分、歯ごたえがいい気がした