体の上で新しい顔がグルグル回る
大人だがアンパンマンの話をする。
アンパンマンは顔があんパンというエキセントリックなヒーローである。その奇抜さが最もよく現れるのが顔を取り替えるシーンだと思う。だいたいこんな流れである。
- 顔が濡れたり汚れたりしてアンパンマンの元気がなくなる
- 仲間が「新しい顔」を持って駆けつけ、投げる
- 投げた顔が古い顔にぶつかり、古い顔は弾かれる
- 体の上で新しい顔がグルグル回る
- 正面を向いて止まり、アンパンマンが元気を取り戻す
ここの4番である。「新しい顔」というパンが、顔としての機能を果たす直前の、パンでも顔でもない時間。体の上でグルグル回っているのだ。
ここにわけの分からない魅力が詰まっていると思った。僕も顔をパンにして回したい。
あんパンを顔の前で回す
しかし僕の顔は外れないので、顔をパンにして回っているように見える動画を撮ろう。こんな仕掛けでどうだろうか。




重さに耐えられるようにマイクスタンドを固定したり紐の長さを調整したり、地味な作業をたくさんやって40分ほど経った頃、顔がパンになった。


角度が付いていたため撮影中にカメラのモニターが見えて、自分の顔がパンになって回っているのが分かった。そして、それがすごく心地良かった。最高のフィット感。もう止まらないで欲しい。アンパンマンは顔が新しくなって元気を出すが、その前のパンが回転するというイベントそのものに元気があるなと思った。
パンの向こうの僕の顔が見えそうで見えないのも薄ら怖くて良い。顔にモザイクをかけたい時、前にパンを吊るして回してもいいのだ。