特集 2024年4月17日

雨も爆破も熱湯風呂も全部やる「特殊効果」の会社でビリビリ椅子を受けてきた

ドラマのワンシーンで雨を降らせ、バラエティ番組で爆破をし、ライブ会場で銀テープを放つ。

これらはすべて「特殊効果」という職業の方々が行っているのをご存じだろうか。略して「特効」である。

今回、その特殊効果に半世紀以上携わる会社を取材し、ビリビリ椅子を受けてきました。

1975年宮城県生まれ。元SEでフリーライターというインドア経歴だが、人前でしゃべる場面で緊張しない生態を持つ。主な賞罰はケータイ大喜利レジェンド。路線図が好き。(動画インタビュー)

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特殊効果の歴史はバラエティの歴史

訪れたのは新橋に本社を置く有限会社 東京特殊効果。設立は1966年で、社長の福島さんは三代目。特殊効果という仕事は「うちの会社が日本で元祖なんじゃないですか」という。

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代表取締役社長の福島正勝さんにお話をうかがいます。

福島さん 最初は先先代が1人で特撮映画の仕事をしていて。怪獣が歩くと砂煙が立つとか、電柱を倒したら火花が散るとか、そういう自然現象を担当していたんですね。で、「テレビ局ができるぞ」という話が来たみたいで。

テレビは音楽番組もあるし時代劇もあるし、いろいろ必要だから手伝ってよとお願いされ、「それなら」と会社を作った。東京特殊効果の誕生である。

福島さん そこからテレビが伸びて、うちの会社も大きくなり、独立した人たちが会社を起こして……と、枝分かれしていったんですね。

今は「特殊効果」というと、ライブやコンサートの演出をする会社がほとんどだという。

キラキラしたテープがキャノン砲でバシューン!と打ち出されたり、ステージ上で花火がシュー!っと噴き出したりするアレである。ライブを盛り上げるのに欠かせない存在だ。

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熱くない花火「スパークラー」。火薬ではなく、加熱したチタン合金粉末を放出しているので熱くない。熱くない花火って本当にあるんだ。「※特殊な訓練を受けています」みたいなものかと思ってた(写真提供:東京特殊効果)

ただ、東京特殊効果は基本的にテレビの仕事中心にやってきた。たとえば歌番組だと『夜のヒットスタジオ』もそう。

福島さん 当時、スモークは全部ドライアイスでやってたんです。鉄の箱に水をはって、ヒーターでお湯にして、そこにドカドカ入れて。リハーサルを含めると1日1~2トンは使ってたみたいですよ。あまりに煙が多くて、歌手が見えなくなったりしてましたね(笑)

テレビが新しいことをどんどん始めるたび、特殊効果の仕事もどんどん増えていった。そのひとつがバラエティ番組だ。

東京特殊効果はフジテレビやテレビ朝日に常駐していたので、『ひょうきん族』も『ごっつええ感じ』も『ロンドンハーツ』も『トリビアの泉』も、みんなやってたんですって……!

福島さん 爆破も、炭ガスも、巨大風船も、バズーカも、ローションも全部うちなんですよ。会議で「これ面白いけど誰がやるんだ……?」ってなると、大体みんなこっちを見る(笑)。しょうがないから、「わかりました」って全部やっちゃうんですけどね。

東京特殊効果の紹介ムービー。ホントに全部やっている。

いろんな仕事の枠からはみ出したものが、「特殊効果」という箱に集まってきちゃう。それを全部やってのけちゃうから、また新しいことを頼まれちゃう。それもできちゃう。

つまり、特殊効果の歴史は、テレビバラエティの歴史でもあるのだった。

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あのビリビリ椅子は本当に痛い

さて、ここまでお話を聞いてきたわけですが、このときの僕の状況をご覧ください。

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僕の椅子だけ毛布が敷かれていますよね。

実はこれ、『ラヴィット!』などでお馴染みの「ビリビリ椅子」が仕込まれているのです……!

取材を依頼したとき「体験できませんか……?」とダメ元で頼んでみたら快くOKしてくださり、当日は「セッティングに時間がかかるので仕込んでおきました」と、準備万端で迎えていただきました。ありがとうございます。

さて……。やっぱりお尻が気になって取材に集中できないので、この辺で一発お願いできますでしょうか……?

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「じゃぁ3、2,1でいきますね」と、福島さんがスイッチに手をかける。怖いなぁ怖いなぁ……。「行きますよ。3、2、1……」。
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痛っっっっっっっっっった!!!!!!!!!
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痛っっっっっっってぇぇぇぇぇぇぇ……!!

 

痛い! めちゃくちゃ痛い……!

お尻の下でバチバチと火花がスパークしたような、雷様が太鼓のバチでお尻を連打したような、そんな痛みが一瞬でビビビビ!ってくる!無理!

しかも、しばらく痛さの余韻がジーンと残るのだ。ちょっと、ホントに痛いじゃないですか……!

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でも、ちょっと嬉しい。まだ笑える痛さ。

思わず立ち上がってしまう痛さだが、福島さんは「この痛さにしたのも歴史があるんですよ」という。

福島さん 昔、クイズ番組の罰ゲームで使ったとき、スタッフから「ベテラン俳優さんは弱くしてもらえますか」って頼まれて、ちょっと弱く電流を出せるようにしたんですね。そうしたら本番で「電流来なかったけど」ってなっちゃって……。

でも他の人が座ると「いや来てますよ!」とビリビリを感じちゃう。それぞれ衣装の厚みが違うので、ビリビリの感じ方が変わってしまったのだ。

福島さん なので全員が立ち上がるくらい、逆に強くしました(笑)

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取材に同行していた橋田さん、「わたし耐えるから」と挑むも、やっぱり思わず立ち上がってしまう。システマを体得しないと耐えるのは無理……!

このビリビリ椅子、毛布をめくってみるとこうなっている。

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仕組みはシンプル。たったこれだけ。右側にある機械は椅子の下に隠しておく。

銅の電極が2本、椅子にテープで固定されており、その先に電流を流す本体と、無線の受信機がつながっている。

あとは発信器のスイッチを押せば、遠隔で電流を流せる仕組みだ。なんて恐ろしい機械だろう。

福島さん もともとは、機械いじりが好きな社員が「ビリってくるものができないかな」と頼まれて、自分で研究して作ったんですよ。そのときはまだ有線でしたね。

福島さんが「うちの看板商品」という通り、ビリビリ椅子は東京キー局をすべて制覇しているという(NHKも『チコちゃんに叱られる!』で使用)。

最近は『ラヴィット!』がほぼ毎朝使うようになり、ビリビリ椅子の知名度も向上したのだとか。

福島さん 『ラヴィット!』へは、ADさんに使い方を教えて貸し出しています。さすがに毎朝TBSには行けないので(笑)。昨年末は特番で60台ほどビリビリ椅子を使ってましたし、面白い企画をいろいろ考えてくだってますよね。

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