特集 2025年2月26日

みやげを買って、そこに行く旅

みやげを買ってからここにきました

旅先でその土地の産物などを買い求め、思い出を記録したり、知人友人に配って共有するのがおみやげである。しかし、みやげを先に手に入れてしまった場合、どうすればいいのか?そこに行けばいいのではないか。

厚木の古道具屋でふと買った湯原温泉のみやげのれんを見て岡山へと向かった。旅に出てみやげを買うのではなく、みやげを買ってそこを目指す旅である。

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

前の記事:鍋を見ながらジンギスカン、ジン鍋鑑賞ジンパ開催

> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー >ライターwiki

厚木で湯原のみやげを買う

厚木の実家に帰った時、ふらりと立ち寄った古道具屋でこれと目があった。

1枚200円、2色あったのでコンプリート。

昔、観光地のみやげ屋でよく見たご当地のれんである。どこをどう流れてやってきたのか、岡山県の北部、湯原温泉のものだった。

「湯原  湯の町 さぎりにぬれて 月の砂場の 灯がうるむ 湯原よいとこ 又おいで こんどくるときゃ二人連れ」誰かの詩作か、調べてもよくわからなかった。

湯原といえば「はんざき」と呼ばれるオオサンショウウオの生息地であり、奇祭「はんざき祭りが有名だ。当サイトでもがっつり取材されている。

ちょっと似てない気もするがかわいい。

そして古くから良質な温泉が湧き出す川沿いの露天風呂「砂湯」の上流に巨大な重力式コンクリートダム「湯原ダム」がそびえる特異な景観を持った温泉郷でもあるのだ。

大鳥居のようにそびえるダム。

温泉、ダム、はんざき、のれんに図示された3つのシンボルが頭の中でつながり、そのおもしろ味が濃縮されて流れ込んできた。もういっしょに行くしかない。のれんにとっては里帰りである。

湯けむりの向こうのダム

岡山駅まではすっと行けるがそこからのアクセスがなかなか大変で、在来線とバスの乗り継ぎでは週末の多くを移動で消費してしまう。少しでも滞在時間を稼ぐために夜行バスで岡山へ向かい、翌朝岡山からレンタカーで北上することにした。

21時30分から翌朝7時30までのバス旅!なげえ!
シートが鳥に見えるという記事を書いたことがあるが今回のシートはダイレクトに鳥。
翌朝、岡山駅に到着!朝日を受けて朱鷺色に染まる東横イン。

岡山駅からレンタカーで山陽自動車道や岡山自動車道など、錚々たる自動車道を乗り継ぎ、油断すると鳥取だよというぐらい北上すると、ほのかに雪のかかる山あいにこじんまりとした街並みが見えてくる。

右に行っても左に行っても温泉!どうしよう!(湯原温泉めざせよ)
いったん広告です
ここから温泉郷。すでに激寒なので温泉恋しい。

中国山地の南際、山間を流れる旭川沿いに点在する狭小な平地に温泉宿や飲食店、観光施設が立ち並び、コンパクトな温泉街を形成している。

巨大はんざきが見下ろすまち歩きマップ。
中心を流れる清流旭川。この上流に湯原ダムと露天風呂「砂湯」がある。
急斜面をじりじりと攻略しているかっこいい法面建築があった。
メインストリート「カランコロン大通り」

昭和から時が止まったような懐かしみのある街並みのいたるところで温泉が湧きほこり、もうひとつのシンボル、オオサンショウウオことはんざきさんが笑顔でこちらを見てくる。

こういうことですね。
足湯にホットコーヒー、スイーツ(ほわっふる)という冬の最強コンボではんざきさんとはす向かい。

川の上流に向かってぶらぶらしていくとやがて道は歩行者専用となり、有名な露天風呂「砂湯」の向こうに湯原ダムが見えてくる。

ここからは歩いて。
ゆかりが混雑しているよ。

ダムのふもとの露天風呂では2月の底冷えする空気をもろともせずに湯につかる人がちらほら。私にはちょっち開放感がありすぎたので入浴せずにダム近くへ向かう。

さぎり(秋の季語ですが)に濡れている感じ!

湯原ダムは高さ73.5m、てっぺんの幅は194m、ダム自体もでかいが背後に溜め込んだダム湖は中国地方で最大をほこる。

昭和27年に着工して同30年に竣工、この地にもう70年も鎮座している。っていうか3年でこれ作ったのか。

この存在感、そりゃのれんにも描かれるわ。私がのれんなら描きたまえと言う。

のれんとツーショット

実物と並べてみるとのれん絵は実によく描けているのがわかる。ダムの直下に描かれた小屋のようなものは発電所だろうか。

これね。
で、ここね。

 横に描かれた電柱と電線もまさに発電所を象徴しているのではないかと思われるが、少し屋根の作りが違って見える気もする。

地元の方の話では「あのあたりには昔、飯場(はんば)※があったと思うからひょっとしたらそれかもしれんね」とのことだった。

※工事現場の作業員用の寄宿舎

湯原温泉ミュージアムに展示されている竣工時の写真にはたしかに三角屋根の建物が!

はんざき様に会いにいく

ダムを詣でたら次の目標ははんざきである。といってもはんざきはいたるところで寝そべって笑ったりして、ちょっと歩けばむしろ人よりたくさん出くわす感じになっている。

カレル・チャペックの「サンショウウオ戦争」を思い出すなあとかいってたら図書館の目立つ所に置いてあってさすがだった。

 

川沿いの足湯にはんざきさん。何がいいっていろんなところで川を見ながら足湯できるんですよ。

地図上にはんざきさんがいてびっくり 

行ってみたがそこには何もなく、近くにはんざきモニュメントがいただけだった。

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