昔のガイドブック
本屋さんに行くといろいろなガイドブックが売られている。多くは毎年更新され、ページをめくれば最新の情報が記されている。どこかに旅に出ようと思った時、ガイドブックは旅の相棒となる。
最新のガイドブックがあるということは、最新ではなくなったガイドブックもあるということだ。多くの場合、そこに記される情報は過去のものとなり、価値を持たない。しかし、当時を知るという意味での新たな価値が生まれる。
上記のガイドブックは1989年に出版された「西ドイツ」のガイドブックだ。ドイツは1990年に再統一されるので、1989年はまだ東西に分かれていた。ページをめくると、そこにはベルリンの壁があり、東西それぞれの入国方法が記されている。
上記はガイドブックとは少し異なる。世界の国々について知ろう的な内容の本だ。1966年に出版された。やっぱりドイツが東西に分かれていた頃の本だ。結論を書いてしまえば、今は見ることができない景色が載っている。
この2冊の本を持って今のベルリンを歩いてみたいと思い、2022年の秋、私はベルリンを訪れた。どのくらい変わったのだろうか。最新のガイドブックではわからない旅ができるはずだ。
ブランデンブルク門
まず訪れたのは「ブランデンブルク門」。東ベルリン領内にあり、ベルリン分断の象徴になっていた。ただ門自体は18世紀に造られ、この門をナポレオンやナチス突撃隊が行進した。当時の写真を見ると壁が築かれていることがわかる。
壁には落書きがある。1966年の世界文化シリーズの同じ場所の壁には落書きがないので、その間に落書きが生まれたのだろう。ただイメージなのか、ベルリンの壁にはそのようなものがあるのが普通な気がする。
有名なグラフィックもある。「兄弟のキス」。もちろん再統一された1990年に描かれたものだけれど(※編集部注:現存するものは2009年にイーストサイドギャラリーに復元されたもの。)。
ブランデンブルク門の近くは賑わっていた。誰もが訪れるベルリンの観光地なのだ。今はここに壁があったことなんてわからない。もちろんそのような説明の看板はあるのだけれど、自由に行き来できる。当時はできなかったのだ。
昔から観光地にはなっていたようだ。見物用のデッキが確認できる。西側から東側を見ているのだ。その少し高くなったデッキからは東側がどのように見えていたのだろうか。今はそんな壁はないので、よく東側が見える。
上記は「ベルリン(西)」の紹介ページに載っている写真だ。ページをめくって行くと「ベルリン(東)」のページに行き着く。そこにもブランデンブルク門が載っている。同じものが別のことが書かれたページを挟み、裏と表で載っていることに歴史を感じる。
本では東ドイツの国旗が風で揺れていた。しかし、今はもちろんそんなものはない。何の旗も揺れていなかった。曇り空の寒い中を多くの観光客が訪れ写真を撮っていた。私もそんな観光客の一人だった。