まとめ
都心だけをみて分かった気になってはいけなかった。「ヒカリエ化」していると以前書いたが、じつのところ全体の1割から2割くらいしかそうではなかった。やっぱり英語なのだ。
あと、地域の差もありそうだ。どうも愛知の施設は名前に凝りがちな気がする。ほんとかな。
渋谷ヒカリエの隣に「渋谷アクシュ」ができるという。ヒカリエ、ソラマチ、キラリナの流れはいまでも連綿と続いているのだろうか。
まもなく、渋谷ヒカリエの裏に渋谷アクシュという商業施設ができるらしい。
見に行ったところ外観は既にほとんどできていた。左上のほうにちょっと見えているのがヒカリエの外壁だ。まさに真隣にあることが分かる。
ぼくはこの「アクシュ」という名前にすっかり驚いてしまった。というのも、商業施設名として「ヒカリエ」とか「サカス」みたいに日本語をもとにしたものが増えている、という記事を10年前に書いたことがあるからだ。そのときはどこまで続く流れか分からなかった。
それは「商業施設名がヒカリエ化している」という記事だ。
当時、こんなふうに日本語をもとにした造語で、カタカナ4文字くらいの名前の商業施設が立て続けに作られていたのだ。
そこで商業施設名は時代ごとにどうだったのかをまとめた年表を作ったところ、こんなふうになった。
それによると、
・日本では当初は「ガーデンプレイス」みたいな分かりやすい英語が多かった
・最近はどうも日本語の時代のようだ
ということが分かった。
しかしそれがいつまで続くかは分からないし、一過性のものなんじゃないかとも思っていた。
ところが10年後になってまさにヒカリエの隣にアクシュが出来るのなら、まだ日本語化は当分健在なのではと驚いたのだ。
あれから10年、商業施設名の動向は実際のところどうだったんだろうか。改めてまとめてみることにした。
結論を言うと、日本語化していると書いた10年前の記事は実際には東京のような大都市の都心の施設に限定した話に過ぎなかったということが分かった。全体を見るとまた違う話だったのだ。
しかし、行きがかり上、まずはひきつづき都心の場合にこの10年どうだったのかを一回見てみることにする。
都心でいうと、「ヒカリエ」のような日本語化の流れは2014年でいったん落ち着いていた。
2015年からは「ガーデンテラス」とか「スクランブルスクエア」のような分かりやすい英語名の施設がまた登場するようになっていた。
英単語を2個並べる様子は以前の「ビッグボックス」や「サンプラザ」のようで、あ、普通に英語でいいんだよなということを思い出す感じだった。
もちろん、日本語化が途絶えたわけではなく、「ミライナタワー」とか「東京ミズマチ」といった施設がちょくちょく作られた。イトシアからキラリナまでの怒涛の流れが一段楽して、着実に根付いたという印象。
そして2019年からは、以前と変わらず我が道を行く「ミッドタウン」や、自由な「アクシュ」などが等しく入り混じり、これからどうなっていくのでしょう、という感じだ。
しかしさっき書いたようにそれは都心の場合であって、日本全体では事情が違った。
2014年からの動向を調べるために、次の資料にあたった。
・日本ショッピングセンター協会による、各年に開業したショッピングセンターの一覧表
https://www.jcsc.or.jp/sc_data/sc_open/sc_list
・wikipedia 内の「xxxx年開業の施設」のページ
例:2024年開業の施設
あらゆる施設が載っているので、基本的には複合商業施設を選んだ。
膨大なので年表の形にはならないのだが、まとめた表の一部を見せるとこんなふうだ。
こんな感じで、1年につき100個程度の施設を、20年分調べた。
知りたいのは施設名の由来だ。それをもとに、施設名が
・英語なのか
・フランス語やイタリア語のようなラテン系言語なのか
・「ヒカリエ」のように日本語をアレンジしたものか
・純粋な日本語なのか
といったことを調べた。
その結果をグラフにしたのがこれだ。
たとえば2014年は、日本語をアレンジした「ヒカリエ」的なものが1割くらいで、英語は8割くらい、イタリア語のようなラテン系も1割くらい、といったことが分かる。
すると2つのことが分かった。
1. 結局は英語(赤)が大多数である
2. 日本語アレンジ系(青)は、10年前から流行りも廃りもせず、一定の人気を得ている
まずは1番から。上の表にも「イオンモール」がいっぱいあるように、そういうやつにひっぱられて英語が多くなる、という面はある。年によっては2割くらいイオンだったりする。しかしそれを除いてもやっぱり英語が多いのだ。
ほら、だいたい英語でしょう。
2番について。ここでいう日本語アレンジ系は、単に日本語をカタカナやアルファベットにしたものでなくて、ちゃんとひとひねりしたものだ。
こんな感じのものが、どの年も1割から2割あるのだ。
そうするとやっぱり気になるのは、これはいつごろから始まった現象なのかということだ。なのでもっと遡って、34年前の2000年から日本語アレンジ系だけにしぼって調べてみた。
それをまとめたものの冒頭がこう。
2001年に目立つのは方言のパターンだ。青森のアウガ(=会うが)、香川のオルネ(=居るね)など、方言をもとにアレンジしたものがこの年だけで四つある。
それ以降も、方言のパターンは以下のように豊富だ。
・アオーレ長岡(会いましょう)
・モンデクール長浜(故郷に帰る)
・アバッセたかた(一緒に行きましょう)
・キャッセン大船渡(いらっしゃい)
初期の方言のパターンは、ヒカリエの流れの序章だったのかもしれない。
日本語アレンジパターンについて、いま思っている仮説はこうだ。
・最初は、ダジャレとして始まった。
・次に、地方に根ざした施設でむしろ方言を打ち出す形が広まった。
・東京で錦糸町オリナスが通ったことで、あ、これダジャレじゃなくてオシャレなのかも感が広まった
・有楽町イトシアが完全にオシャレだったので、よっしゃOKの流れになった
どうでしょう。ただ、2000年より前についても調べないとまだ分からないですね。
都心だけをみて分かった気になってはいけなかった。「ヒカリエ化」していると以前書いたが、じつのところ全体の1割から2割くらいしかそうではなかった。やっぱり英語なのだ。
あと、地域の差もありそうだ。どうも愛知の施設は名前に凝りがちな気がする。ほんとかな。
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