特集 2022年8月1日

「シウマイ弁当」を手食、カレー、チャーハンにして食べる

説明不要の名駅弁、崎陽軒の「シウマイ弁当」。その絶妙なごはんとおかずのバランスゆえ、「どう食べすすめるか」には人それぞれにこだわりがあり、専門の書籍まで発売されるほど。

僕にももちろん好みの食べかたはあるのですが、今日はそんな既成概念からあえて逸脱し、もっと自由にシウマイ弁当を食べてみようと思います!

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:「もやしのカレー風味炒め」を炒めつづけると「カレー」になる


「シウマイ弁当」に対するこだわりから解放される

崎陽軒の「シウマイ弁当」に関する説明は、もはや不要ですよね。神奈川県横浜駅の駅弁で、ごはんのもっちり感とシウマイをはじめとしたおかずの美味しさから、これを“ナンバーワン駅弁”と推す方も多い名駅弁。

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「シウマイ弁当」(860円)

また、ごはんとおかずのバランス感覚が絶妙で、ゆえに「どう食べすすめるか」に人それぞれのこだわりが生まれがちであり、そこを語る楽しさもまた、このお弁当の魅力になっています。

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駅弁としての完成形

もちろん僕にも好みの食べかたはあって、まずはシウマイを半個と、俵形のごはんの半分、大好物の「筍煮」をひとかけ口に入れもぐもぐもぐ。合間合間にからあげ、鮪の漬け焼、かまぼこ、玉子焼きを挟んだり、切り昆布&紅しょうがでリズムを作りつつ。最大の論点である「あんず」に関しては、真っ先に食べてしまうのでも、最後にデザートとして食べるのでもなく、中間あたりにアクセントとして食べて……って、しまった! いつものクセで、シウマイ弁当の食べかたについて語りだしてしまいましたが、今回はそうじゃないんです。

そういったこだわりはもちろん楽しい。いつまでだって語れる。だけどもいったん既成概念をとっぱらい、もっとマクロな視点で、もっと俯瞰して、あえて無茶な食べかたをしてみたら、新しい発見があるんじゃないだろうか? というようなことを思い立ち、やってみたところ、見事にたくさん発見があった、というお話を、今日はさせてください。

「手食」してみる

どういうことか。

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たとえばこのように

インド製のステンレス皿に、まずはごはんを移し替えます。

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続いておかずも全部

さらには醤油を、シウマイを狙ってというよりはもう全体にかけてしまい、

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からしをちょんちょんとシウマイにのせてやる

これをですね、東南アジア、南アジア、中近東、アフリカ、オセアニアなどの地域では主流で、世界的に見ると実は、箸食やフォーク・スプーン食よりも主流である「手食」で食べてみようというわけなんです。

もう、おかずを食べる順番とかにはとらわれない。南インドの定食「ミールス」のように、徐々に全体を混ぜながら、その混沌を味わってみたい。シウマイ弁当でそれをやると、はたしてどうなのか?

「使うのは、人差し指、中指、親指の3本の第2関節まで」という作法もあるようですが、そこは宗教や文化の違いによってまちまちだそうなので、あまり深くは気にしすぎず。ただし、不浄とされる左手では直接食べものは触らず、使うのは右手のみ(食器などは左手で持ってもいい)。というアバウトな感じで、さっそく食べてみましょう!

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いただきま〜す!

以前インドカレーなどで試してみて気づいたことですが、手食というのは味覚や嗅覚、食感に加え、「触感」というもうひとつの感覚が加わる食べかたで、料理に対する解像度がひとつ上がるような楽しさ、美味しさがあります。

つまり、シウマイ弁当のシウマイの

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固さ、柔らかさを
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まずは手で味わえる

これが、割り箸でひょいっと持ち上げてパクッとほおばってしまうのとは違い、へ〜、頼もしいみっしり感だなと、今までにない感覚を味わえて楽しいんですね。

で、それを直接口へ運ぶちょっとした違和感と、安定の美味しさ。

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同様に玉子焼きや
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筍煮の触感も楽しみつつ
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このように持って、親指で口に押しこむように

間違いなくいつもと同じ味なのに、全く別のものを食べているような感覚。食材に触れるごとにある新発見。

たとえば、シウマイ弁当に入ってる「鮪の漬け焼」って、これまで、若干パサパサ、カチカチのイメージがあったんです。そのぎゅぎゅっと圧縮された感じを楽しむおかずというか。ところが、指で挟んでぐっと力を入れてみると、

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想像以上に簡単にほぐれる

なるほど、こうやって圧をかけると繊維に沿ってほぐれるんだな〜というのも発見なら、そのまぐろの、今までになかったほろほろ食感の美味しさも発見。こんどからまぐろは、いったんほぐしてから食べようと心に誓いました。

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全体の境界があいまいになってゆく

また、シウマイ弁当における最大の「いつ食べるか?」論争ポイントである「あんず」。これだってもう、

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シウマイと一緒に食べちゃってもいい

わけで、甘酸っぱくてシャキッとしたあんずと、しょっぱくてもちっとしたシウマイが合わさり、これまた斬新な美味しさ!

そして、最後にちょっと感動してしまったのですが、こんな無茶な食べすすめかたをしたにもかかわらず、

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最後までおかずとごはんのバランスが崩れない

ところに、あらためてこのお弁当の完成度の高さを思い知りました。

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「カレー」にしてみる

こんな調子であと2パターンほどいってみましょう。

続いてはもっと無茶に、せっかく完成されているシウマイ弁当に、なにもかもを飲みこんでしまう味こと「カレー」をプラスし、「シウマイカレー」にしてみようと思います。ザ・冒涜のグルメ!

いきなりの冒涜ポイントとして、冷めたままでも美味しいシウマイ弁当をお皿に移してレンチンし、

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まずはごはんをカレー皿へ移植
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そこにカレーをぶっかけ
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おかずも盛りつけなおしたら

「シウマイ弁当カレー」完成!

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大迫力
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まずは蒸したごはんとカレーの純粋な相性から

まぁ、そりゃあ間違いない。ちなみにかけたのは普通のレトルトカレーなんですが、ごはんが美味しいからいつもより美味しく感じるくらい。

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シウマイとの相性は?

続いてはカレーライスとシウマイを一緒に口へ。すると、先ほどカレーのことを「なにもかもを飲みこんでしまう味」なんて評しましたが、それにぜんぜん負けないくらい力強く、肉の旨味がぎゅっと凝縮されたシウマイの美味しさを再発見! さすが王道駅弁のメインおかず、強いな〜!

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甘みとシャキシャキ感が加わる「たけのこカレー」ゾーンも美味
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ほぐしまぐろは肉みたいな感覚に

と、違和感なく普通に美味しいシウマイカレーだったのですが、唯一、福神漬け感覚で食べた

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「切り昆布&紅しょうが」ゾーン

が、強烈に「お〜い、忘れないでくれ〜! おれがシウマイ弁当だったってことを〜!」と主張してきて、その不思議な感覚も楽しい一食でした。

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シウマイ×筍煮×カレーゾーンこそ真骨頂

「チャーハン」にしてみる

最後は究極の渾然一体こと「チャーハン」。「どのおかずから食べよう?」という概念が完全にふっとんでしまうはずですが、はたして……。

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まずはおかずを刻み
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ごはんに油をかけ

弱火で炒めながら崩していきます。ごはんの結束力が強いので、ここがいちばんの苦労ポイントかも

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じっくりじっくり
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おおよそほぐれたらおかずを加え
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溶き玉子2個ぶんを加え
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これまたゆっくりと炒めていく

ちなみにこの、自宅で失敗しないチャーハンの作りかたは、当サイトの「チャーハンの作り方知ってる10種類全部試す」という記事を参考に、独自アレンジも加えていきついたものをベースにしています。外部サイトになりますが、ご興味あれば僕の書いたこちらもご覧ください。

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最後に付属の醤油を
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鍋肌で焦がしつつ加えれば
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「シウマイ弁当チャーハン」完成!

余談ですが、このチャーハンがのっているお皿と、そのお皿がのっているテーブル。閉店してしまった地元の中華屋「龍正軒」から譲り受けたものなので、

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絵面がガチ

というわけで、

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いただきま〜す!

もぐもぐもぐ……うわ〜! ははは……これは今までで一番おもしろい。

よく考えたら当然と言えば当然なんですが、たとえば鶏ガラだしなど中華的な味を一切加えていないので、こんなにも見た目がチャーハンなのに、味は完全にシウマイ弁当! なんだこの「チャーハン形のシウマイ弁当」としか表現できないおもしろい食べものは!

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中間くらいであんずを食べるのもいつもどおり

と、いつもならおかずを食べる順番、配合にちまちま気を使いながら食べていた「シウマイ弁当」を自由に食べてみたところ、どれも美味しいし楽しかった。しかしながら、順番、配合にちまちま気を使いながら食べるいつものシウマイ弁当こそが最高に美味しいし楽しいということにも気づかされた検証でした。

そういえば以前、

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シウマイ弁当をホットサンドメーカーで焼き固めてみた時も、まったく同じ感想だったような……。

 

やっぱりシウマイ弁当は偉大!

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