大人のしらべ学習はその世界に入るための準備
小学生のときは調べただけになってしまっていた「しらべ学習」。
でも大人がやってみたら、その世界に入りこみ、武士たちが城へかけていく姿や戦中の生活にまで思いをはせることができた。
合戦をこっそり見まもる町人A。自主的に役づくりを仕上げてきたエキストラとして、掛川を楽しむことができた。
さて、今度はお城のなかに入り、守る今川軍の立場を体感したい。
実は『戦国の勇者』を読んで1つ気になっていたことがある。城にいた指揮官の武将たちが、遠くから近づいてくる徳川の大軍を見ながら「ふふふ、来たか」などと話していたのだ。
でも、さすがにそれは見えなくない!?実際はどうなのだろうと思い、天守閣へとつづく急な階段をのぼると、
そこには掛川の街を一望できる景色がひろがっていた。
今は建物がたくさんあるので地上の人や車までは見えないが、もっと何もない当時なら、たしかに遠くまでよく見えそうだ。
そして、先ほど攻める側として通ってきたルートも見えた。
『氏真、寂たり』によれば、攻める徳川の軍勢は7000人。それがあの広場に。
よく音楽フェスの映像でステージ前にすごい数のお客さんがいるところを見るけど、あの全員が自分に対して敵意むきだしというような状態だ。怖い。
そんな中でもひるむことなく自軍を鼓舞する。戦国武将はその胆力もすごい。
最後に、もう1つ気になっていた場所に行ってみる。
『氏真、寂たり』によると、徳川軍は戦をはじめる前に、掛川城のまわりに16個もの砦(とりで)をつくったそうだ。
お城にいる側からしたら、まわりにどんどん砦が増えて見張られていたら気が気じゃないだろう。もし自分の家のまわりに急に16ヶ所も探偵事務所ができたら、何もしてなくても緊張してしまう。
その中の1つ、笠町砦の跡が近くにあったので行ってみることにした。
この小道の両サイドは岩がむき出しのところが多く、徳川の武士たちが切り開いたんだなという感じがビシビシ伝わってくる。
そしてその先には木々に囲まれた広場と神社があった。
徳川の砦だったことを知った目で見ると、このあたりに馬つないでたのかなとか、夜は真ん中でたき火してたんだろうなとか、武士たちの営みまで感じられる。
さて、この笠町砦で気になっていたのは、ここから掛川城は見えるのかということだ。
『氏真、寂たり』では、氏真がこの砦で戦っている最中に、ほかの場所がピンチということが城から赤い旗で知らされるシーンがある。
でもこれも、さすがに見えなくない!?だ。
お城が見えるところがないかさがしてみると、
1ヶ所だけ、木のすきまからギリギリお城が見える場所があった。たしかにこの感じなら、赤い旗も見えそうだ。
ただ、そのとき氏真は合戦中。
馬を走らせ、相手の攻撃を気にしたり味方に大声で指示したりしながら、遠くの赤旗の合図に気づいていたことになる。
戦国武将はその視野の広さと注意力もすごい。
さらにもう1ヶ所、家康が本陣をかまえたという天王山砦の跡にも行ってみると、
他の砦もきっとこんな感じなのだろう。まるでお部屋さがしの達人のように、希望条件にぴったりの物件ばかり見つけて砦をたてている。
不動産屋もインターネットもないのに、その情報収集力がすごい。
知識パンパンで掛川をめぐったら、戦国武士たちの超人っぷりを思い知ることができた。
小学生のときは調べただけになってしまっていた「しらべ学習」。
でも大人がやってみたら、その世界に入りこみ、武士たちが城へかけていく姿や戦中の生活にまで思いをはせることができた。
合戦をこっそり見まもる町人A。自主的に役づくりを仕上げてきたエキストラとして、掛川を楽しむことができた。
しらべ旅
事前に本で調べてから行く旅。知識で喜びを増やす旅です。
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