知識でコメダ珈琲の見えかたが変わる
今回僕が読んだ本は『氏真、寂たり』(うじざね、じゃくたり) というもの。
桶狭間の戦いで織田信長に負けた今川義元の息子で、今川氏最後の当主となった今川氏真(いまがわ うじざね)の生涯を描いた歴史小説だ。
本屋でパラパラっと見たところ、掛川城を舞台に氏真と徳川家康が戦う場面があったので、これで掛川を予習することにした。
本によると、掛川城での戦いはこのような経緯で起こったそうだ。
三河を拠点としていた家康が、勢力をひろげる第一歩だったということを知ったところで、新幹線は掛川駅に到着。
掛川駅にはコメダ珈琲があった。
駅にカフェがあるのはまったく珍しいことではなく、普段ならとおりすぎるところ。でも知識をつめこんだばかりの僕には、このコメダがこう見える。
愛知県発祥のコメダ珈琲。それがあらゆるカフェチェーンを押しのけて掛川駅に入っているのが、三河から攻めてきた家康みたいに思えたのだ。
思わず写真を撮っちゃうほど、知識で景色の見えかたが変わる。なるほどこれが「しらべ旅」のおもしろさか。
城を落とすという無理難題
翌日、駅から10分ほど歩くと、掛川城が登場した。
そこにあるとは分かっているけど、やっぱり目の前にあらわれると「わっ、あった!」と体温があがる。観光地ならではの気持ちの高まりだ。
そしてここには、お城に行きやすいように堀をわたる橋がかかっていた。でも僕は知っている。この橋が昔はなかったことを。
昔描かれたお城の絵が近くにあったので見てみたら、やっぱりそうだ。
昨日仕入れたばかりの知識だし、なんなら1週間前まで掛川にお城があることすら知らなかったのに図々しいが、インプットしてきたことが本当にそうだと分かるのはクイズに正解したみたいでうれしい。
今はここからすぐお城にむかうこともできるが、『戦国の勇者』で徳川軍は、すこし東にある大手門からの突破を試みていた。
ここは城を攻める武士を追いかけて、そのルートにそってお城に近づいていきたい。
そして大手門を突破した徳川軍は橋をわたり、
威勢よく声をあげながらこの道を進んだ。
『戦国の勇者』ではそんな武士たちの姿がたくさん描かれていたので、ここを勇ましく駆けていったのかと思うと、自分もそこにいるかのような臨場感がある。
その熱気は、想像できる範囲でいえば、岸和田のだんじり祭りをやっているような感じだろうか。
しかしこの道、当時は両サイドが城壁になっていて、そこから飛んでくる弓や鉄砲をかわしながら進まなければいけなかったようだ。
まるでときどきネット動画で見かける、誰かがつくっためちゃくちゃ難しいマリオのステージのよう。行けといわれてもかなり無理があるだろう。
それでも前に進まなければいけない、戦国の武士たちの精神力がすごすぎる。そしてそんな激戦をくぐり抜け、ようやく三の丸までたどり着いたとしても、
城を落とすということがどれだけ大変なのかも、知識のおかげで体感することができた。