しらべ旅 2023年5月15日

掛川城で戦国武士のすごさを思い知る ~しらべ旅~

「この城を落とすぞ!」と言われましても…


小学生のころ、修学旅行にいく前に「しらべ学習」という時間があった。これから行く場所の中からどこか1つを選び、事前に資料で調べるのだ。

京都と奈良にいった僕は、調べたことなど忘れてしまって木刀を買ったりしていたが、これを大人がやってみたらどうだろうか。

ちょうど静岡県の掛川にはじめて行く予定があったので、本を読んで頭を知識パンパンにしていってみました。

1984年岐阜県生まれ。変な設定や工作を用意して、その中でみんなでふざけてもらえるような遊びを日々考えています。嫁が世界一周旅行中。

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知識でコメダ珈琲の見えかたが変わる

今回僕が読んだ本は『氏真、寂たり』(うじざね、じゃくたり) というもの。

桶狭間の戦いで織田信長に負けた今川義元の息子で、今川氏最後の当主となった今川氏真(いまがわ うじざね)の生涯を描いた歴史小説だ。

本屋でパラパラっと見たところ、掛川城を舞台に氏真と徳川家康が戦う場面があったので、これで掛川を予習することにした。

一夜づけでテストにのぞんだ学生時代のように、行きの新幹線で読みます。

本によると、掛川城での戦いはこのような経緯で起こったそうだ。 

甲斐の武田信玄に攻められて駿府城を追われた今川氏真は、掛川城に逃げこんだ。
そこへ、今川をはさみ撃ちしようと信玄と密約していた三河の徳川家康が攻めてきた(緊迫の戦国時代をマーブルチョコでおとどけしました)

三河を拠点としていた家康が、勢力をひろげる第一歩だったということを知ったところで、新幹線は掛川駅に到着。 

木造の駅舎がめずらしい

掛川駅にはコメダ珈琲があった。

駅にカフェがあるのはまったく珍しいことではなく、普段ならとおりすぎるところ。でも知識をつめこんだばかりの僕には、このコメダがこう見える。

家康じゃん!

愛知県発祥のコメダ珈琲。それがあらゆるカフェチェーンを押しのけて掛川駅に入っているのが、三河から攻めてきた家康みたいに思えたのだ。

思わず写真を撮っちゃうほど、知識で景色の見えかたが変わる。なるほどこれが「しらべ旅」のおもしろさか。

もう1冊『戦国の勇者 掛川城争奪戦!』という本も読んだのですが、史実では関係ない真田氏が城を守っていたりとフィクションでした。でも掛川城での手に汗にぎる攻防の様子はくわしく描かれていたので、「今川と徳川の戦いでもこうだったのかも」と解釈することにしました。
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城を落とすという無理難題

翌日、駅から10分ほど歩くと、掛川城が登場した。

そこにあるとは分かっているけど、やっぱり目の前にあらわれると「わっ、あった!」と体温があがる。観光地ならではの気持ちの高まりだ。

そしてここには、お城に行きやすいように堀をわたる橋がかかっていた。でも僕は知っている。この橋が昔はなかったことを。

ほら!

昔描かれたお城の絵が近くにあったので見てみたら、やっぱりそうだ。

昨日仕入れたばかりの知識だし、なんなら1週間前まで掛川にお城があることすら知らなかったのに図々しいが、インプットしてきたことが本当にそうだと分かるのはクイズに正解したみたいでうれしい。

掛川城_10.jpg

今はここからすぐお城にむかうこともできるが、『戦国の勇者』で徳川軍は、すこし東にある大手門からの突破を試みていた。

ここは城を攻める武士を追いかけて、そのルートにそってお城に近づいていきたい。

こちらがその大手門。門というよりほぼ壁。
戦いのときは当然扉が閉まっていたので、徳川軍はこの窓にはしごをかけて攻めこみ、
中に侵入できた兵士がこの階段をおりて内側から門をあけた。こういう「本で読んだあれが目の前のこれ!」と1つ1つ分かるのが楽しい。


そして大手門を突破した徳川軍は橋をわたり、

威勢よく声をあげながらこの道を進んだ。

『戦国の勇者』ではそんな武士たちの姿がたくさん描かれていたので、ここを勇ましく駆けていったのかと思うと、自分もそこにいるかのような臨場感がある。

その熱気は、想像できる範囲でいえば、岸和田のだんじり祭りをやっているような感じだろうか。

途中にあった、何かは分からないけど意味がありそうな石柱にも「何かだ!」と興奮した。
住所が「城下」なのもいい

 

しかしこの道、当時は両サイドが城壁になっていて、そこから飛んでくる弓や鉄砲をかわしながら進まなければいけなかったようだ。

掛川城_18.JPG
左右の建物とか木のかげに敵がびっしりいる感じか…

まるでときどきネット動画で見かける、誰かがつくっためちゃくちゃ難しいマリオのステージのよう。行けといわれてもかなり無理があるだろう。

それでも前に進まなければいけない、戦国の武士たちの精神力がすごすぎる。そしてそんな激戦をくぐり抜け、ようやく三の丸までたどり着いたとしても、

掛川城_19.JPG
広場でひといきと思いきや、
掛川城_20.JPG
まだまだこれが待っている。
掛川城_21.JPG
ムリっす…

城を落とすということがどれだけ大変なのかも、知識のおかげで体感することができた。

掛川城_22.JPG
途中、突然石垣のうえにあらわれた忍者(観光客むけのサービスです)に撃たれてしまった。なるほど、こうやってやられるのか。

⏩ 敵意むきだしの7000人が見える

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