しらべ旅 2023年5月26日

網走で本物のカヤックを見学する~しらべ旅

カヤックという小型の舟がある。平べったくて細長くて先が尖っていて、上部には一人か二人がすっぽり入り込むための穴があいている。大雑把にいえばそういう舟である。

これはもともとイヌイトなど、寒冷な地域の人々の舟だ。

そのオリジナルのカヤックが見られる貴重な場所が、網走にあるのだ。

海外旅行とピクニック、あとビールが好き。なで肩が過ぎるので、サラリーマンのくせに側頭部と肩で受話器をホールドするやつができない。

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北の叡智、大集合

その場所を北海道立北方民族博物館という。

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本記事では以降、展示物の写真はすべて北方民族博物館の収蔵品です

北方民族というのは読んで字のごとく、地球の北の方に住んでいる人たちのこと。イヌイト、サミ、アイヌなど世界中におよそ数十くらいの民族がいるとされている。

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どこからが「北方」なのか厳密な定義はないけど、だいたい北緯45度くらいからとされ、日本でいえば北海道の最北端あたりをかすめる

言うまでもなく、彼らの住む場所は寒い。めちゃくちゃに寒い。場所によるけど樹木もあまり生えないので、よそでは“当たり前”の資源に乏しい。例えば暖をとる薪がない、冬に備えて穀物を蓄えておくこともできない、というような事態である。

それでも北方民族は、土地ごとで手に入る資源を使えるだけ使い倒し、まさしく創意工夫を持って、豊かな文化を築いてきた。そうした叡智をあますところなく、丁寧に展示しているのが北方民族博物館なのである。

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衣。綿がなければ当然、毛皮でまかなうことになる
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食。温かいものを調理するときの燃料には海獣の脂が使われたり
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住。イヌイトの冬用住居。対流を利用して室内では裸で過ごせるほど温かかったとか

この博物館、人生でも5本の指に入るほどどっぷりハマった。北方民族の創意工夫がすごすぎて、そんなの思いつくか!?の連続なのである。

展示品のすべてを舐めるようにじっくり観察したあと、シームレスに2周目に入るくらいには素晴らしい博物館であった。お近くにお立ち寄りの際…がもしあればそれはもう、必ず訪ねてみてほしい。

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網走、お住まいのところによっては遠いかも知れませんが。ちなみに札幌からは特急で5時間半
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網走駅前から博物館へはバスで20分くらい。始発ではそれなりに混んでたのに、途中の網走監獄(博物館)でホントに全員降りちゃった。みんな、この先にもすごい博物館あるんだよ!
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世界最高峰の小舟

話は冒頭に戻りまして。北方民族の叡智のなかでも、個人的にもっとも惹きつけられるのがカヤックである。

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特にアラスカ、グリーンランド、アリューシャン列島などで猟や移動に使われていたカヤック。写真は現代のレジャー用カヤック

以前、自前のカヤック(厳密にはファルトボートというやつ)を所有して、週末ごとに湖や川にツーリングに出かけていた時期があった。

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水面と目線が近く、すーっと滑るように水上を進む感覚はほかの乗り物では味わいがたい。引っ越しがあって手放しちゃったけど

驚いたことに、現代のカヤックにはアルミや合成繊維といった素材が使われてこそいるものの、その形状はまさに北方民族が使っていた頃のものとほとんど変わらないのだという。しかもそれがいまでは北から南から、世界中の水路で使われているのだ。

ということは、一人もしくは二人乗りの小舟のデファクトスタンダードを、はるか昔に北方民族が築いたということではないか。その原型が見られるなんて。

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これ以上ない参考図書。北方民族博物館で、かつて小舟だけをフィーチャーした企画展を開催したときの図録だ
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30年近く前の企画展だが、個人でやっているインターネット古書店で入手できた。ありがたいことである

⏩ カヤックもフード付きパーカーも北方民族由来

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