北の叡智、大集合
その場所を北海道立北方民族博物館という。
北方民族というのは読んで字のごとく、地球の北の方に住んでいる人たちのこと。イヌイト、サミ、アイヌなど世界中におよそ数十くらいの民族がいるとされている。
言うまでもなく、彼らの住む場所は寒い。めちゃくちゃに寒い。場所によるけど樹木もあまり生えないので、よそでは“当たり前”の資源に乏しい。例えば暖をとる薪がない、冬に備えて穀物を蓄えておくこともできない、というような事態である。
それでも北方民族は、土地ごとで手に入る資源を使えるだけ使い倒し、まさしく創意工夫を持って、豊かな文化を築いてきた。そうした叡智をあますところなく、丁寧に展示しているのが北方民族博物館なのである。
この博物館、人生でも5本の指に入るほどどっぷりハマった。北方民族の創意工夫がすごすぎて、そんなの思いつくか!?の連続なのである。
展示品のすべてを舐めるようにじっくり観察したあと、シームレスに2周目に入るくらいには素晴らしい博物館であった。お近くにお立ち寄りの際…がもしあればそれはもう、必ず訪ねてみてほしい。
世界最高峰の小舟
話は冒頭に戻りまして。北方民族の叡智のなかでも、個人的にもっとも惹きつけられるのがカヤックである。
以前、自前のカヤック(厳密にはファルトボートというやつ)を所有して、週末ごとに湖や川にツーリングに出かけていた時期があった。
驚いたことに、現代のカヤックにはアルミや合成繊維といった素材が使われてこそいるものの、その形状はまさに北方民族が使っていた頃のものとほとんど変わらないのだという。しかもそれがいまでは北から南から、世界中の水路で使われているのだ。
ということは、一人もしくは二人乗りの小舟のデファクトスタンダードを、はるか昔に北方民族が築いたということではないか。その原型が見られるなんて。