全然違って見えた
箱根は高級温泉地のイメージだった。だが調べてから行くと、とんだてんやわんやの場所である。
大人が本気で意地を張り合って、結果として愛らしいものがたくさんできているリゾートだったのだ。
黒たまごで7年寿命が伸びることも納得だ。
専用道路を通れなくなった箱根登山はロープウェーを建設し、1959年に開通させてしまう。遮断機から3年である。早い。
早雲山駅でロープウェーと専用道路が両方見られる。
やることの大胆さとスピードが僕の知っている日本ではない。もちろんロープウェーにも乗ろう。
あっという間に気持ちは箱根登山側に変わっている。
この景色でロープウェーは人気を博した。ゲームチェンジャーだっただろう。
大涌谷の上を通るロープウェーにこんな物語があるとは知らなかった。
冒頭でも書いた通り両社は芦ノ湖で独自に遊覧船を就航させていた。箱根横断側の大型船に対抗して駿豆鉄道側は1959年に豪華な双胴船を就航させた。(船を横に2艘並べてその上に客室がある船)
駿豆鉄道、つまり西武グループの遊覧船事業はすでに富士急に売却されているが、いまでも船は双胴船である。
湖だからそんなに揺れないと思うが、そういうことではないのだろう。「箱根山」にもこんな記述がある。
対抗する箱根登山側も大型船を作るはずだと書いている。
この小説が書かれたのは1961年、獅子文六は水中翼船と書いているが、現実には1964年に箱根横断側が就航させたのは海賊船だった。
現実が創作を超えてきた。湖だから揺れないどころの話ではない。海賊船にしたのは発明である。
しかも海賊船はもはや存在を疑うこともないぐらい箱根になじんでいるのだ。
ちなみに写っているのはクイーン芦ノ湖号。寄木細工など日本の伝統文化を取り入れた、と案内のページに書いてあった。
ロマンスカー→登山鉄道→ケーブルカー→ロープウェー→海賊船、というゴールデンコースが完成した。ロマンスが最終的に海賊船になった。
だから芦ノ湖の観光船は、海賊船(箱根登山、小田急グループ)と双胴船(西武グループだったがいまは富士急グループ)の2種類がある。
海賊船は混んでいたので双胴船に乗ることにした。
芦ノ湖に双胴船のルートしか描いておらず、海賊船はないことになっている。こういうところはまだバチバチしていてわくわくする。
両社とも湖を南北に走るルートだが、湖の中央にある箱根園というリゾート施設は双胴船しか寄港しない。なぜなら西武グループが開発した場所だから。
神奈川県が共同の桟橋を作るように提案したが西武グループの堤康次郎が頑なに断った結果、別々になったという桟橋である。ふたつの桟橋ができるまで片方が許可のないまま桟橋を作り、県が強制撤去するなどのハードな展開があった。
その話を知っていたので、双胴船と海賊船が並んでいる姿を見ると、これがあの桟橋!と感慨もひとしおである。
箱根は高級温泉地のイメージだった。だが調べてから行くと、とんだてんやわんやの場所である。
大人が本気で意地を張り合って、結果として愛らしいものがたくさんできているリゾートだったのだ。
黒たまごで7年寿命が伸びることも納得だ。
まさに娯楽小説です
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