しらべ旅 2023年5月17日

箱根山戦争の跡を訪ねる~しらべ旅

止められた箱根登山チームは空に活路を見出す

専用道路を通れなくなった箱根登山はロープウェーを建設し、1959年に開通させてしまう。遮断機から3年である。早い。

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黄色い専用道路を使わないと箱根登山バスは芦ノ湖に行くことができない
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そこで専用道路の上にロープウェーを建設

早雲山駅でロープウェーと専用道路が両方見られる。

西武グループ堤康次郎の気分でロープウェーを見上げる。忸怩たる思いじゃ。

やることの大胆さとスピードが僕の知っている日本ではない。もちろんロープウェーにも乗ろう。 

わははは、これで専用道路を使わないですむぞ

あっという間に気持ちは箱根登山側に変わっている。 

ロープウェーから専用道路が見える。わはははは。
大涌谷を越える

この景色でロープウェーは人気を博した。ゲームチェンジャーだっただろう。
大涌谷の上を通るロープウェーにこんな物語があるとは知らなかった。

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海賊船登場

冒頭でも書いた通り両社は芦ノ湖で独自に遊覧船を就航させていた。箱根横断側の大型船に対抗して駿豆鉄道側は1959年に豪華な双胴船を就航させた。(船を横に2艘並べてその上に客室がある船)

駿豆鉄道、つまり西武グループの遊覧船事業はすでに富士急に売却されているが、いまでも船は双胴船である。

船を2艘横に並べた作りになっている。揺れないのが特徴

湖だからそんなに揺れないと思うが、そういうことではないのだろう。「箱根山」にもこんな記述がある。

双胴の広いスペースを利用して、船室の外に、パーティーのできるホールをつくり、輸送船であるばかりでなく、遊楽船としての新味を出そうという。
獅子文六. 箱根山 (ちくま文庫) (p.243). 筑摩書房. Kindle 版.

 対抗する箱根登山側も大型船を作るはずだと書いている。

すでに横浜の造船所で、建造にかかってることは、明らかでも、どんな船体で、どのくらい大きいか、まったく、見当がつかない。(中略)一方が双胴船であるから、それ以上に新式な、水中翼船を走らせるらしいと、見てきたようなことを、いってる。
獅子文六.箱根山(ちくま文庫)(pp.243-244).筑摩書房.Kindle版.

この小説が書かれたのは1961年、獅子文六は水中翼船と書いているが、現実には1964年に箱根横断側が就航させたのは海賊船だった。 

なぜ海賊

現実が創作を超えてきた。湖だから揺れないどころの話ではない。海賊船にしたのは発明である。
しかも海賊船はもはや存在を疑うこともないぐらい箱根になじんでいるのだ。

ちなみに写っているのはクイーン芦ノ湖号。寄木細工など日本の伝統文化を取り入れた、と案内のページに書いてあった。

ロープウェーを降りるとすぐに海賊船乗り場がある。箱根登山側のすきのない誘導

ロマンスカー→登山鉄道→ケーブルカー→ロープウェー→海賊船、というゴールデンコースが完成した。ロマンスが最終的に海賊船になった。

海賊船に乗るための行列をエヴァンゲリオンが見ていた。箱根という場所自体がだんだん愛おしくなってくる

だから芦ノ湖の観光船は、海賊船(箱根登山、小田急グループ)と双胴船(西武グループだったがいまは富士急グループ)の2種類がある。

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湖には今も戦いの跡が残る

海賊船は混んでいたので双胴船に乗ることにした。

双胴船のほうの乗船場にあった案内図。

芦ノ湖に双胴船のルートしか描いておらず、海賊船はないことになっている。こういうところはまだバチバチしていてわくわくする。 

自社のロープウェーはしっかり模様まで描いてあるが
他社のはパワポの図形

両社とも湖を南北に走るルートだが、湖の中央にある箱根園というリゾート施設は双胴船しか寄港しない。なぜなら西武グループが開発した場所だから。

どっちも似たルートだけど箱根園は双胴船しか就航していない
箱根園を通り過ぎる海賊船
南端にある元箱根には両社とも寄港するが、桟橋は別

神奈川県が共同の桟橋を作るように提案したが西武グループの堤康次郎が頑なに断った結果、別々になったという桟橋である。ふたつの桟橋ができるまで片方が許可のないまま桟橋を作り、県が強制撤去するなどのハードな展開があった。

その話を知っていたので、双胴船と海賊船が並んでいる姿を見ると、これがあの桟橋!と感慨もひとしおである。

そこに今おれは立っている…!とジーンとしてるところ

全然違って見えた

箱根は高級温泉地のイメージだった。だが調べてから行くと、とんだてんやわんやの場所である。
大人が本気で意地を張り合って、結果として愛らしいものがたくさんできているリゾートだったのだ。

黒たまごで7年寿命が伸びることも納得だ。

黒たまごは鳥インフルエンザの影響で数が減っていた

まさに娯楽小説です

箱根山 (ちくま文庫)

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