居酒屋でいきなり教わった「赤飯ベスト3」
ある日、大阪の居酒屋で酒を飲んでいた。居心地がよくて、何度も飲みに行ったことがある店だ。お会計をして「また来ます」と店主に挨拶して帰ろうとしたところ、その店のご常連さんに声をかけられた。私がスズキナオという名前でライターをしていることを店主から聞いて知っていたそうで、WEBに書いた記事もよく読んでくれているという。ありがたい。
そしてその人が「デイリーポータルZにお赤飯のこと書いていたでしょう?あのお赤飯、私も大好きです。本当に美味しい!」と言う。それは私がパリッコさんとのユニット酒の穴の記事、「徒歩で5時間「南極」を追いつめる旅」の中で触れた、四天王寺の縁日の屋台の赤飯のことである。
記事の中にも書いているのだが、私はその赤飯が大好きで、というか好きな赤飯ってそこのものぐらいしかない。赤飯といえばここ一択なのである。「ね!美味しいですよねー!なんでしょうね、あれは」と私が言うと、ご常連さんはさらに続けて「あそこは私が思う美味しい赤飯ベスト3の一つです」と言った。ベスト3……?そう聞くと気になってしまう。「あの、ちなみになんですけど、残りの2つはどこなんでしょうか?」と。
するとその方は、赤飯ベスト3の残りのふたつを教えてくれた。どちらも大阪市内にあるお店で、誰でも買うことができるらしかった。なんせ私が大好きな赤飯がその人のベスト3に入っているのである。ということはきっと残りの2軒のお店だって美味しいに違いない。「赤飯ベスト3か……なんか面白いな」と思った私は、その人のおすすめを鵜呑みにして、食べてみることにした。
教わった「赤飯ベスト3」の残りのふたつのうち、一軒は大阪市旭区の千林商店街にある「千林・力餅」の赤飯だという。
米のモチモチ具合がすごい「千林・力餅」の赤飯
千林商店街は、これまたパリッコさんとの記事「「ご自由にお持ちください」を見つけるまで家に帰れない1日」の中で訪れた場所。大阪でも有数の活気ある商店街で、歩くだけで楽しい。しかし、今まで赤飯を意識して歩いたことがなかったので、その「千林・力餅」のことも当然知らなかった。
とにかく、千林商店街に来てみた。
それにしても、いつ来てもテンションの上がる商店街である。
歩き始めてすぐ、キムチを売る「カドヤ」という店頭に「水キムチ」の文字を発見。
夏場でこそ大阪・鶴橋あたりでよく見かける水キムチだが、冬場はよっぽどの専門店にでも行かないと手に入らない。買うしかないな。
水キムチの入ったビニール袋を手に歩いていると、絶対よさそうな居酒屋があったり、「無人ホルモン直売所」なんてお店があったりして、全然赤飯に向かって進めない。商店街って最高だな。
寄り道したくなる気持ちをこらえてアーケード街を奥へ奥へと歩いていくと、やっと「千林・力餅」にたどりついた。
以前は「力餅食堂」という、大阪に同名の店が多く存在する食堂だったのだが、2021年以降は食堂を閉め、テイクアウト専門になったそう。店先に近づいてみると、あったあった、赤飯が。
赤飯(大)300グラムが通常なら480円のところ、特売デーとのことで440円になっていた。得した。
「北海道産の大納言を使っていますから、美味しいですよ。お好みでごま塩を振りかけてお召し上がりください」とお店の方に教えていただく。
ちなみに、「千林・力餅」の脇の路地を入っていくと、先述の「酒の穴」の記事の取材時に入った「ファミリー割烹 扇楽」があるのだった。つまり、その時にこの「千林・力餅」の前も確実に通っていたのだな。危うく美味しい赤飯の味を知らずに死んでしまうところだった。助かった。
商店街の誘惑に負けそうになりつつもなんとか家に帰ってきた。さあ、早速「千林・力餅」の赤飯を食べてみよう。
ごま塩を振らずにそのまま食べてみたのだが……。
まず、もち米のモチモチ具合がすごい。その食感が非常にいいところに、大粒の小豆のホクッとした歯ごたえが加わり、そしてその小豆の風味の濃さったらない。この赤飯、うまいなー!