酒と汁を飲むコンビ「酒の穴」
古賀
お二人は玉置さんの記事「しみったれた先輩におごられるツアー」で初登場していただきまして、そのあとしばらくしてライターとしてスカウトさせてもらったんですよね。
古賀
酒の穴というユニットとしても活動していて、チェアリングの記事「椅子さえあればどこでも酒場「チェアリング」とは!?」や酒を飲みながらぶらぶらする記事(!)「まだ見ぬ酒の穴を求めて ~干潟の街「谷津」はしっとりと濡れ~」を酒の穴名義でデイリーポータルZにも書いてもらっております。
古賀
さて……最近どうっすか。
パリッコ
飲んでますよ。記事の中でも私生活でも。
スズキ
私は今は、昨日の鍋の残り汁を温めて飲んでいます。
古賀
酒と汁を飲むコンビだ。
スズキ
担当があるとすれば私は汁担当です! パリッコさんは酒飲んでますよね。
古賀
バンドで酒担当と汁担当がいるのめちゃめちゃかっこいいですね。
パリッコ
ボーカル不在です。
スズキ
今のところ無音。鳴ったとしても「グビ」とか。「ジュルッ」とか。
パリッコ
きたないサウンドです。
スズキ
本当にいやなノイズバンドですね。
パリッコ
純粋な意味のノイズです。でも本当にそういうユニットなんですよ。
なにも起きなかったということを書く
古賀
そこがすごいところですよね。「酒飲みユニット」って、そんなユニットないですよ。勝手に名乗ったら、でもわりとみんな納得して受け入れてるのがお二人のすごいところで。
飲み友達よりは「緊張感がある」のが酒飲みユニットだと聞いています。
パリッコ
ふたりで飲んでいても、取材じゃなければ緊張感はないので、そういう時は普通の飲み友達なんだろうな。
古賀
ステージを降りれば普通の飲み友達なんだ。
パリッコ
そう! 記事にしなきゃいけないし……。でも、微々たる緊張感ですけどね。
スズキ
最初の一杯までは緊張がありますね。必要最低限の会話しかしないみたいな緊張感。
パリッコ
ははは! そうそう。
「今日何もおもしろいことおこらなかったらどうしよう……」って緊張してるんですよね。「記事になるかな……」って。
でも、飲んだらどうでもよくなるし、実際おもしろいことなんかあんま起こらないし。
スズキ
そうなんですよ! なかなかテレビみたいに面白いことは起きませんね。
パリッコ
だから、それをそのままただ書くというスタイルに落ち着きました。
古賀
酒の穴の記事は異常に静かなんですよね。ほんとうになにも起こらないんですよ。
スズキ
ははは。いいんですかね。
古賀
「静かな演劇」ってあるじゃないですか。「静かな酒」ですよね。
パリッコ
だんだん不安になってきました。そんなんでいいわけがない。
いますぐ試したくなる「酒蒸し法」
古賀
2月はそんなお二人それぞれに記事でバーンと活躍していただきました。
まずパリッコさんのこれ!
古賀
うまくいきすぎてタイトルからしてもう静かじゃない!
パリッコ
内容に100%の自信があるわけじゃなかったので、タイトルで無謀に言い切ったのが良かったのかな。
スズキ
「酒蒸し法」って。
古賀
タイトルでいきなりもう方法論として確立させた。
パリッコ
これ、確かに自分でもびっくりするほどの反応があって驚いています。
スズキ
本当に楽で美味しいですね。私はハムで試しました。
パリッコ
ハム! もう蒸されてるのに!
スズキ
あ、そうなの!? ハムしかなかったんです。
古賀
気持ちはわかります。いますぐ試したい記事だったんですよね。
スズキ
そうなんですよ!
古賀
内容、とんでもなくびしっとしてたと思ったんですが、自信なかったですか?
パリッコ
自分では美味しいし簡単だと思っていても「やってみたけど、普通~」というような感想が返ってくることばかり想像しちゃいますよね。
古賀
ああっ、なるほど…「もう知ってる」みたいな反響があったらどうしようとか……分かります………!
パリッコ
「アサリ以外も蒸すっしょ、普通」みたいな……。
酒蒸しにではなく、普段から何に対してもそんなに自信がないだけでした
古賀
分かります分かります。書き上げてさあ公開という直前って急に自信なくなるんですよね。
パリッコ
そんな「普通~」みたいな反響あったらすぐに記事の削除要請ですよ。
スズキ
いや、でもでも、パリッコさんの記事はパリッコさんが驚いて旨がっているところがすでに面白いんですよね。だからもうそれでぜんぜん良くって。全員すでにやっていることでも、面白いんじゃないでしょうか。
古賀
ナオさんが編集者として言わなくちゃいけないことを言ってくださって恐縮しております。つい一緒にびびってしまった。
パリッコ
はは! でも公開してみたら自分のツイートを引用しつつ「本当に簡単で美味しかった!」ってツイートしてくれる方とかも多くて。
古賀
ちゃんと本当に「革命」だったんですよね。
「水が旨い」でもいける
スズキ
パリッコさんが書くなら「改めて、水旨い」とかでも私は読みたいです。
パリッコ
……! 古賀さん、水の記事に挑戦してみてもいいでしょうか!?
古賀
えっ、水がうまい! って記事ですか!?
スズキ
「ちょっと待ってくださいよ、温めてみるとこれ、お湯じゃないですか!?」
パリッコ
「お湯だ!」水加熱法によるお湯の発見である。
スズキ
「平成最後の革命だ!」
パリッコ
「酒蒸しは最後じゃなかった!」
スズキ
世紀の発見ですよね。人類の時計が進むみたいな。
古賀
やべえ奴らなんでこれならもう誰も文句言わないですね。
酒をドボドボ入れることを赦した
スズキ
いや、でも冗談じゃなくて本当に酒蒸し法は美味しかったです。
普段なかなか酒をドボドボ入れるっていうのがないですよね。
パリッコ
そうそう、もったいなくてやらない。
酒で臭みがとれるとかいうじゃないですか。
でも、少々臭みあったっていいや~もったいないし、派でした。
スズキ
臭いぐらいならガマンするから酒は酒で別に飲もうってなってましたよね。
パリッコ
料理じゃなくて自分に入れても同じなんじゃないかって。
古賀
胃でまぜればって。
ああでもそうか、人々に「酒をどぼどぼ入れてよし」というゴーサインを送った記事でもあったんですね。確かに赦しを得た感じはありました。
スズキ
そうなんですよ!
居酒屋はおれたちの国会図書館
パリッコ
記事冒頭にも書いたんですけど、居酒屋で出会う知らない料理って、自分にとったらすごいアイデアの宝庫なんですよね。
今回なら「鶏の酒蒸し」というメニューが酒場にあって、頼んでみたらおいしかったので。それで、もったいないよりも「実験してみよう!」の気持ちが勝ったんです。
スズキ
酒蒸しってちゃんとなんなのか考えたことすらなかったですもんね。
古賀
なかったなかった! でもそれで試してほぼ全部勝利してるのはすごい。ソーセージだけいまいちだったとはいえ。
スズキ
あれ? ソーセージがいまいちってことはハムもいまいちなのかな!?
パリッコ
経験者としてどうでした?
スズキ
いや、美味しかったですよ! 一緒に、余ってたブロッコリーとしめじと酒蒸したんですけどそれらをハムで巻いたらすごかったです!
古賀
おお、工夫!
スズキ
なんでもハムで巻きたがるんです。
パリッコ
美味しかったのに、「ソーセージがいまいちということは……?」って自信がなくなるところがおもしろい。
古賀
ほんと、食べたでしょうがよ! って笑
スズキ
自分の旨いが本当の旨いなのか自信がないんですよ……。
古賀
いくつになったら私たちは自信にあふれた大人になれるんでしょうね……。
あ、そういえば、ハムでプチトマト巻いて焼くのも、あれも居酒屋が教えてくれた英知ですよね。
パリッコ
確かに。絶対に居酒屋で出会うメニュー。
古賀
居酒屋がアイディアの宝庫というのものすごい納得感です。
パリッコ
趣味と実益の場ですね。
スズキ
おれたちの国会図書館ですね。
後日、思わぬ昆布ボーナスが
古賀
ナオさんのこちらの記事も大人気でした。
パリッコ
良かった!
古賀
良かった、本当に良かった。良かったオブ良かった。
スズキ
ありがとうございます!
パリッコ
あの看板って、勝手に、古い内容しかないイメージで、新しいものが作られているなんて想像もしてなかったけど、そんなわけないんですよね、言われてみれば。
古賀
広告社の江田さんと職人の松井さんがバリバリの現役でいてくれたおかげで。
スズキ
そうですね! 江田さんのおうちに伺った時に家電量販店の鏡広告があってこれから設置しに行く前のものだと思うんですが、大きな会社でも出しているんだなーと思って。
古賀
需要があるんですよね。考えてみたらものすごく「見る」場所についてるもんなあ。凝視するくらい見る場所ですよ。
スズキ
テレビ画面の横にずっと出てるみたいなもんですもんね。
銭湯側がやる気で、そこに広告を出したい人がいれば成立するし。
スズキ
昨日、千鳥温泉さんから連絡があって残っていた数枚の広告を取り付けにきてくれたそうで記事のことを大変喜んで、「スズキさんにお土産の昆布をいただきましたよ!」と。
思わぬ昆布ボーナスまでいただいてしまい。
パリッコ
昆布ってのが絶妙。
古賀
事後展開まで最高ですね。
幽霊みたいな立場で見てました
パリッコ
ナオさんのインタビュー、特にご高齢の方々からの気に入られ力が神がかってるんで、みんな名言連発するんすよね。
職人の松井さんの「え!そういうのが流行ってんの!?えー!コンピューターの字じゃなくてか!?」からの「松井さんもやっぱりそう思ってはったんですね?」と返すと、「実はな、そう思っとったんや(笑)」の流れも最高だった。
スズキ
実は思っとったんですよね。なんせ習字の先生ですもん。
古賀
しかも1回200円で教えてるという。安すぎでこの記事全部夢かと思いました。
スズキ
でも、松井さんが、コンピューターの明朝体のフォントでも最初は誰かが書いてるはずやねん。だから少しはその人のクセがあるねん。みたいに言ってて。
古賀
長年のカンというか眼でどんな字にもそういうクセが見えるんでしょうね。
スズキ
今回は大阪の千鳥温泉という銭湯にそういう色々やってみよう精神があって、江田さんと松井さんがたまたまあのように面白くて色々話してくれたというだけで、自分はそれを後ろに立って聞いていただけのような感じです。
パリッコ
いや、それだけだったら昆布ボーナスまでは出ないですよ。
スズキ
昆布ボーナスが出たってことは…まあよかったのかな。
パリッコ
絶妙なスタンスで取材しつつ、取材先の人たちもそれを感じて話してくれてるのが、記事からわかりました。
古賀
偶然にしちゃちょっと奇跡的によすぎるので、人柄が人柄を呼んだみたいなことですよね。
スズキ
千鳥温泉の桂さんもすごく面白い人で三人のやり取りが面白かったので私は幽霊みたいな立場で見てました。
古賀
そうか、存在を消すと見えるもの多いですよね。素の様子が見られるから。
スズキ
今後も幽霊感をキープしてがんばりたいです。
パリッコ
「わ!いたのかよ。お前幽霊みたいなやつだな~」という特殊能力。
マンガ「スズキの取材」
パリッコ
「黒子のバスケ」って漫画がそんな内容だったかも。「スズキの取材」だ。
古賀
「スズキの取材」、漫画化しよう。
パリッコ
いろんな取材能力者を登場させたいですね。
「言わせの〇〇」何が何でも言わせたいことを引き出す能力。
古賀
「酒のパリッコ」
……いや、これ普通だ。
パリッコ
普段のおれですね。
スズキ
取材中、後ろで飲んでいるという。
古賀
ほんとだ、いつものただのパリッコさんだ。
パリッコ
企業取材なのに、自然に缶チューハイ持ってるっていう。
古賀
酒のパリッコ。特殊能力っちゃあ特殊能力ですね。
銭湯の広告をみて書店に人が来た
古賀
これ昆布ボーナス出たうえに広告として掲出されてデイリーポータルZに検索流入があるわけですから、もうどこまでありがてえんだという記事でした。
スズキ
あるんですかね!流入!
パリッコ
ネットじゃなくて、銭湯で初めてデイリーポータルZを知るおじいさんとかいたらいいですね!
スズキ
最初に千鳥温泉に鏡広告を出した、そういう意味では今回もすごくお世話になったミニコミ書店のシカクさんに聞いたら一人、銭湯で広告を見て店に来た人がいたんですって。
古賀
なんと! CTR(クリック率)が。
スズキ
体をゴシゴシ洗ってて、ほほー面白そうな本屋だな、いってみるかっていう、その人の行動力すばらしい。ですから広告見てデイリーポータルZって検索する人もいないとは言い切れないですね!
古賀
大阪からのアクセス増えないか見ておきます! 安心安定のとんち力を見にきてほしい!
あ、すでに検索してやってきてこれを読んでくださってる方がいたら、ありがとうございます!
スズキ
本当だ! ありがとうございます!
コピーは古賀さんが書いてくださったんですよね。すてきなコピーをありがとうございました。
古賀
めちゃめちゃ興奮しました。千鳥温泉に見に行きたいです。
スズキ
そうですね! でも現在、男湯にしか広告が出てないんです。なので開店前に見せてもらいましょう。
古賀
そうだった! 予算の都合で片方にしか出せなくて。おもいっきり男湯に全裸で入っていくところでした。開店前にもしお伺いできたらありがたいです~~!
古賀
パリッコさんとナオさんには今後もそれぞれ記事を書いてもらいつつ、酒の穴としても記事をお願いしているところです。どうぞおたのしみに~~!
パリッコ
よろしくお願いします!
スズキ
次の取材も楽しみです!何も起きないかもしれないですが……。よろしくお願いいたします!
古賀
なにも起きないふたりを見守るの楽しみにしてます!
(おわり)