特集 2018年8月6日

まだ見ぬ酒の穴を求めて ~干潟の街「谷津」はしっとりと濡れ~

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酒場に限らず、今ここで一杯やれたら、乾杯できたら、どんなに楽しく、嬉しく、気分がいいことだろう。
日常の中にぽっかりと現われるそんな場所や状況を「酒の穴」と呼び、その可能性を追い求める飲酒ユニット「酒の穴」です。

我々、これまでの活動で確信したひとつの結論があります。
それは、「酒の穴はどこにでもある」ということ。

そこで今回は、パリッコ、スズキナオ、どちらの人生にもこれまで縁のなかった場所にあえて行ってみて、その街で「酒の穴散歩」をしてみようと思います。
題して「まだ見ぬ酒の穴を求めて」。

今回は、ただなんとなく気になった街、千葉県習志野市「谷津」が舞台です。
日常的な生活の中にぽっかりと現れる「今ここで乾杯できたらどんなに幸せだろう」と思うような場を探求するユニット。なんでもない空き地とか、川沿いの原っぱとか、公園の売店だとか、そういったところに極上の酒の場があるのではないかと活動中。

前の記事:椅子さえあればどこでも酒場「チェアリング」とは!?


沼がだめなら……あ、干潟!

パリ:なんかこないだ、急に千葉の「印旛沼」が気になったんですよ。理由は忘れました。

ナオ:忘れたんですね。

パリ:なんとなく千葉あたりの地図を見ていて、名前は聞いたことあるけど、「沼、沼かぁ……」とか思って。

ナオ:印旛沼、聞いたことはあります。

パリ:それで担当の古賀さんに「デイリーの記事で印旛沼に行ってみたいです。そこで何をするかとかはまだわからないんですけど……」みたいに、衝動的に連絡してしまって。その時点でおかしいですよね。

ナオ:相手によっては「沼? 勝手に行けば?」って言われますね。

パリ:普通ならね。ところがどっこい、そっこうで「いいですねー!」と返ってきて、どっちも狂ってた。

ナオ:いい相手を選んだ。

パリ:ただ印旛沼、さすがというか、デイリーポータルZにはけっこう登場してる沼だそうで。

ナオ:はは。そうなんですか!

パリ:「それだとなぁ……」って、またぼーっと地図を見ていたら、同じく千葉の、海からへっこんだ変な場所に、干潟があるのを見つけて。
パリ:「じゃあここだ!」って、もう、最初に何がしたかったんだか、前提がよくわからなくなっちゃってるんですが。

ナオ:でもまあ最初から、目的は何もなかったですもんね。

パリ:そうだった。で、「ナオさん誘えば何かになるんじゃないかな?」 って。「谷津」「干潟」どっちも何も知らないけど。

ナオ:確かに。干潟ってなんだ。ムツゴロウがいるような?

パリ:そのくらいのイメージでもう、とりあえず行ってみたら、駅にある看板の、谷津干潟の上に「ラムサール条約登録地」って書いてあって、その条約も知らない。
知らないところで結ばれていた条約
知らないところで結ばれていた条約
ナオ:ますますわからないことだらけでしたね。登っていこうにも手をかける場所がないツルツル状態という。

パリ:そんな感じで、探索を始めたんですよね。

※ラムサール条約:湿地の保存に関する国際条約。詳しくは各自お調べください。

信じられないかもしれませんが、ここからは、谷津を散歩した日のことをただふりかえります

ナオ:とりあえず電車に揺られてぼーっとしたまま谷津駅に降り立って。

パリ:うん。で、まずは干潟があるのとは反対側の北口に降りてみた。

ナオ:そしたらいきなりいい広場があった。

パリ:太陽の広場「谷津サンプラザ」ですね。一瞬で心つかまれました。「谷津、いい街」って。
谷津北口駅前
谷津北口駅前
ベンチやテーブルがたくさん
ベンチやテーブルがたくさん
ナオ:「え! もうここで飲めますよ!」と盛り上がりましたね。

パリ:「第一酒の穴発見!」

ナオ:駅から5秒で。

パリ:ただ、コンビニがなくてね。酒を入手するために周囲をうろついてみることに。

ナオ:北口はぐっと標高が高いんですよね。線路を挟んで南口側の、干潟のある方向を見下ろす感じの場所で。
線路の向こう側には商店街が見える
線路の向こう側には商店街が見える
パリ:あんまりお店も多くない、静かなエリアでした。

ナオ:四角い草っ原にベンチがありましたね。

パリ:あそこ良かった。ただ、気持ちのいい空間なのに、酒はまだ入手できてない。

ナオ:酒がないんだよなー。誰かがそこで飲んだ空き缶が捨ててあって。「あ、先人がいましたよ!」と。

パリ:ストロングチューハイの500mlの空き缶がね。先人、マナー悪い。

ナオ:そう。尊敬できない先人。
公園ともいえない、ただベンチのあるスペース
公園ともいえない、ただベンチのあるスペース
酒があればな
酒があればな
パリ:で、そのあたりをひとまわりして、「茶茶」という、駅前のでっかい海苔屋さんに入ってみたら、これがまぁ!
 「茶茶」さん
「茶茶」さん
ナオ:バラのアイスクリームが食べられるようなことが外に書いてあって、休憩所もあるらしいし、なんかおもしろそうだからと入ったんでしたね。なんなら缶ビールくらい飲めるのでは? と淡い期待もあってね。そしたら、酒はないんだけど、冷たいお茶を出してくれて。

パリ:お茶、2人に3杯出てきましたからね。

ナオ:はは。怖い話みたいな。

パリ:「うしろの方にもぜひ」

ナオ:「うしろの方も暑かったでしょうー! どうぞどうぞ」

パリ:「うしろの方などいない!」っつってね。
「よかったらお茶どうぞ!」
「よかったらお茶どうぞ!」
「はいこちらもどうぞ!」
「はいこちらもどうぞ!」
パリ:そしたら驚きました。お店の方々がとにかく親切だし、店長さん、谷津の全てを知るような事情通で、いろいろな役員もやられているような方で、バンバン紙資料が出てきて、「谷津のことでわからないことがあったらなんでも聞いてね」って。

ナオ:そうでした!

パリ:「あれ? これって『たんけんぼくのまち』かな?」って思いましたよ。仕込みかっていう。

ナオ:確かにできすぎた流れだった。

パリ:「やぁ酒の穴のふたり、よく来たね」

ナオ:ははは。名前知ってるのね。でもそういう感じだった。金子さんという、地域に深く関わっている人で、「こことここがいいですよ」みたいな。

パリ:とにかくいろいろ教えてくれて、最終的に「谷津についての原稿ができたら、私のfacebookに確認メールしてくれたらいいから」って。

ナオ:話が早い! バラのアイスクリームも食べさせてもらってね。テレビのロケみたいだった。

パリ:ほんとほんと。
「谷津のことが知りたければ、こことこことここへ行ってごらん」
「谷津のことが知りたければ、こことこことここへ行ってごらん」
「谷津バラ園」にちなんだ「バラのアイスクリーム」は、絶妙に上品な香り
「谷津バラ園」にちなんだ「バラのアイスクリーム」は、絶妙に上品な香り
「茶茶」のみなさん、ありがとうございました!
「茶茶」のみなさん、ありがとうございました!
パリ:運が良かったし、逆に言えば、もっと手探りになる想定だったのが、いきなりすごい量の情報を得ちゃった。

ナオ:知り過ぎた男たちです。でもそのヒントを踏まえて実際に体験していくというのが楽しかったです。

パリ:TV番組っぽいし、ゲームっぽくもあった。

ナオ:それで背中を押されるように「よし! いよいよ! 行くぞ(酒飲みに)」と歩き出しました。

パリ:ふらふら~っと。
駅前の広場に貼られていた習字たち
駅前の広場に貼られていた習字たち
パリ:南口は、規模は大きくないながらもにぎやかな商店街でしたね。すごく良かった。

ナオ:雰囲気よかったです! 「谷津遊路(やつゆうろ)」っていう商店街。
「谷津遊路」
「谷津遊路」
パリ:やたらとそこらに、ベンチとかテーブルがありましたね。「ここでも飲める! ここでも飲める!」って。

ナオ:そう。商店街のいたるところに「酒の穴」見つかり放題のボーナス面。

パリ:その感じもまた、仕込みみたいでおもしろかった。「あいつらが好きそうなシチュエーション、用意しとくか」みたいな。
ここもいいし
ここもいいし
こっちもいい
こっちもいい
グニャグニャ水道
グニャグニャ水道
ナオ:今回は新参者なので控えましたが、実際、町の方らしき人が缶チューハイ飲んでたりしましたよね。

パリ:そうそう。うちらも、次に行った時はすごいですからね、もう。

ナオ:次は容赦しないです。いきなり常連ヅラで「うっす! 金子さーん!」しかもコンビニで酒買って外で飲んでるだけ。町への貢献度ゼロですからね。

パリ:帰れ!

谷津遊路~バラ園へ

ナオ:いや、でもなんか「寛大な町」という感じがしました。腰を落ち着ける場所があちこちにある。

パリ:ぶっちゃけ、もはや住みたいですよね。

ナオ:うん。のんびりしてて、でも活気もあって。あれ、商店街を眺めながら飲んだら楽しいでしょうね。「あ、さっきのおじさんがまた通った。あ、ネギ買って帰ってきた!」みたいな。

パリ:1日飽きない。

ナオ:ね!「ドキュメント谷津」。で、その谷津遊路を歩きながら、酒とつまみを調達しました

パリ:コンビニで缶チューハイと、「ぬれ煎餅」。

ナオ:そうそう! 駅前のコンビニで銚子電鉄のぬれせんが売られててね。
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パリ:あ、あと、その前の「茶茶」で、海苔やらピーナッツも。

ナオ:そうだった。

パリ:期せずして、千葉の名産品がぐんぐん集まる。それと、商店街を抜けたところにあった、持ち帰りの焼鳥とお惣菜のお店で、手羽先とスペアリブも。

ナオ:うん。

パリ:これは、ただ美味しそうで買っただけですが、強いて言えば「谷津名物」。

ナオ:千葉名物と谷津名物を色々手に入れて。
谷津名物を手に入れたお店
谷津名物を手に入れたお店
パリ:そんなものを買い込んで、谷津干潟の手前にある「谷津バラ園」前までたどりつき、そこにあったベンチで乾杯しました。

ナオ:少し喉が渇いてましたからね。

パリ:「ただいま40%咲いています」という看板を見ながら「ほ~、40%咲いてるか」とか思いながら。
記念すべき谷津初酒
記念すべき谷津初酒
どっちも美味しすぎ
どっちも美味しすぎ
ナオ:パリッコさんがマイチェアを持ってきていて。

パリ:小さなチェアを念のため持っていました。

ナオ:ベンチにつまみを置いて、自分はあくまでベンチに座らないっていう。

パリ:要するにテーブルとして使ったというわけですが、ああいうのって、滑稽なんですよね。

ナオ:遠くから見ると変でした。
「え? どうなってるのその状況」
「え? どうなってるのその状況」
ナオ:あと、ぬれせんって私は大好きなんですが、パリッコさん、ひょっとして嫌いかなと思ってたんですよ。「うわー濡れている……いやだな」と思ってるんじゃないかと。だけど安心しました。

パリ:大好物です! そもそも僕は「しけった菓子が好き」とカミングアウトしてる側の人間なので。最上級にしけったせんべいと考えると、ぬれせんは大変なごちそうですよ。

ナオ:あーそうか。「しけり菓子」を食べる飲み会、今度やりましょう! プリッツが曲がるぐらいしけらせたい! 重力に逆らえないぐらいに!

パリ:やりたいですね。小洒落た居酒屋で「炙りシメサバ」を作る時、お客の目の前でバーナーで炙るじゃないですか。

ナオ:はい。

パリ:ああいう感じで、一瞬で食材をしけらせられる器具はないかな。

ナオ:はは。すごい霧吹きみたいなのでね。

パリ:「シュー!」プリッツ、グニャ~。

ナオ:「あの、普通にやめてもらえます?」っていう、余計なことする大将のいる店。

パリ:ははは、そういう居酒屋。

ナオ:濡らし屋。

パリ:「ぬらしや」

ナオ:いいっすね。東十条の名店「ぬらしや」。

パリ:「さて、今日やって来たのは、東京唯一のしけり料理専門店『ぬらしや』。古い味わいのある木の壁も、触れてみるとしっとり濡れている」

ナオ:いやだー! 「メニューを手にとる。当然ながら、濡れている」。

パリ:名物「しけりシメサバ」。

ナオ:やばいっすね。衛生面が怖いメニュー。

パリ:おっと、ぬれせんのくだりで盛り上がってる場合じゃなかった。

ナオ:先を急ぎましょう。

パリ:はい。ぬれせんとチューハイを慌てて喉の奥に押し込み、バラ園へかけこみました。
庭園のようでもあり
庭園のようでもあり
どこか南国ムードも漂う「谷津バラ園」
どこか南国ムードも漂う「谷津バラ園」
ナオ:正直、バラ園への興味がそんなにあったほうではないんですよ。

パリ:ですね。そもそも昔、ここには「谷津遊園」っていう小さな遊園地があったそうで、その一部だったらしいですね。おもしろい空間で。

ナオ:遊園だった時代もちょっと見てみたいけど。でも入ってみると、色鮮やかでゆったりした空気が流れていて気に入りました。それにバラと一緒に写真撮ると問答無用にいい写真になりますよ。
問答無用の写真
問答無用の写真
パリ:普通じゃない。

ナオ:何か起きてる感じですもんね。

パリ:ニュース映像で事件を起こした人のプロフィール写真に使われてそうでもあり。

ナオ:「ああ、こいつは逮捕されても仕方ないな」っていう感じがある。なんか色々ややこしそうで。

パリ:「スズキナオ容疑者(39)」

ナオ:はは。

パリ:こっちの写真なんかも、すごくいいんですよ。
バラの手入れをする方々
バラの手入れをする方々
パリ:絵画でしょこれもう。

ナオ:いいですね! 貴婦人たちが。

パリ:「バラの園の女たち」

ナオ:名画の風格です。バラがあるだけで名画度があがりますね。
加工してみました
加工してみました
ナオ:あら、名画。僕のさっきの写真も名画になりますか?

パリ:やってみましょう。
なりました
なりました
ナオ:なりましたね! Tシャツの「酒」ってまだわかる。

パリ:「バラの園の酒男」

ナオ:珍名画。

パリ:たまったら珍名画展をやりましょう。

谷津干潟

ナオ:バラ園から谷津干潟まではすぐでしたね。

パリ:干潟が見えた時、感動した。

ナオ:そうそう。
「うおー!! 干潟だー!」
「うおー!! 干潟だー!」
パリ:「……で、干潟って、なんだっけ?」

ナオ:確かに、知らないで感動してた。

パリ:今、調べてみることにします。

干潟(ひがた、英語:mudflat)とは、海岸部に発達する砂や泥により形成された低湿地が、ある程度以上の面積で維持されている、朔望平均満潮面と朔望平均干潮面との潮間帯。 潮汐による海水面の上下変動があるので、時間によって陸地と海面下になることを繰り返す地形である

パリ:そう、漠然と「濡れ陸地」ってイメージがあったんですが、今回見た谷津干潟は、湖なんかとかわんないイメージでした。

ナオ:あ! そこにも「ぬらしや」?

パリ:大将が干潟をぬらしすぎた時間帯に行ってしまったのかもですね。

ナオ:きっと早朝はまた違うんですよね。1日の干満差があるわけですよ。

パリ:見てみたいなぁ。
「あっちまでぜ~んぶ、干潟?」
「あっちまでぜ~んぶ、干潟?」
ナオ:私たちがたどり着いたのはもう16時ぐらいだったのかな。海からの水がグイグイ干潟の方に流れ込んできているのが見えましたよね。

パリ:けっこうな流れだった。飲める流れだった。

ナオ:見てるだけで飲めるぐらい勢いよかったです。
飲める水流
飲める水流
ディティールをよくよく見ると海っぽい
ディティールをよくよく見ると海っぽい
ナオ:周囲がずーっと緑道になっていて、歩いて一周すると結構かかるんですよね。

パリ:対岸に「谷津干潟自然観察センター」があって、表示を見ながら、こっちが近かろうと反時計回りに歩き始めたら、距離がどんどん増えていって、けっきょく遠回りだったため、最終的に1周。

ナオ:あの表示のワナは、怖かった。

パリ:あれ、いまだによくわかんないんですよ。

ナオ:そう。ほとんど怖い話なんですよ。都市伝説みたいな。
問題の表示
問題の表示
パリ:そもそも、矢印の向きがよくわからないでしょ。これで、右のほうが距離が短いので、右のほうへ進んでいくと、緑色の数値がどんどん増えていく。

ナオ:なんで左向きの矢印が右にあるんだ?

パリ:これ、単純に白文字と緑文字を書く面を入れ替えればわかりやすいってことなのかな。現場では、混乱しててよくわからなかった。

ナオ:これと同じことですよ。
ややこしい向き
ややこしい向き
パリ:わはは!
こっちで頼むよ
こっちで頼むよ
パリ:と。

ナオ:はは。そうそう「ハンズ式」で頼むよ! ところが「いなかっぺ大将式」だったので、読みとけずかなり遠回りした。

パリ:干潟沿いを歩いて自然観察センターへ行く人は気をつけてほしいですね。

ナオ:気をつけてください! 近そうなほうの逆をいってください!

パリ:そんなアドバイスってあります? が、とりあえず、風が急に気持ちよくて、良い散歩になったので。

ナオ:実際、干潟を通ってきた風だからか涼しく感じました、たくさんの人が散歩したりジョギングしたりしてましたよね。

パリ:干潟の近くに住むという選択肢、ありだなと。

ナオ:ありです。

パリ:渋いっすよね。

ナオ:周りのおうちがうらやましかった。すごい環境良いですよ。
近隣の散歩の方と、スズキナオがちょうど並んだ瞬間
近隣の散歩の方と、スズキナオがちょうど並んだ瞬間
とにかくずっと良い道
とにかくずっと良い道
パリ:あれかな。潮干狩りみたいなこともできるのかな。玉置さんに聞きゃー知ってるんだろうけど。

ナオ:干潟といえば玉置さんですからね。

パリ:ていうか、もしかして玉置さんからしたら、「せっかく谷津干潟に行ったのに何をぼーっと散歩だけして帰ってきてるんだ!」ということになるのかもしれない。ディズニーランドに入場だけしてそのまま帰ってきたようなもんだ」みたいな。

ナオ:「オニサカサガニがとれるのにもったいない!」とかね。

パリ:サカサガニ!

ナオ:野鳥も食べますし。

パリ:こわい!
食べちゃだめです
食べちゃだめです
ナオ:しかし今回、私たちはそこまで踏み込まずに普通に干潟の周りを歩いて自然観察センターを目指した。

パリ:着いたのが閉館30分前くらいだったのかな? ところがこれが、めちゃくちゃ楽しめた!

ナオ:自然観察センターは干潟沿いに立つ施設で、入館料を払って中に入ると、双眼鏡とか、双眼鏡じゃない片方の目で見るやつ、単眼鏡でいいのかな、そういうものが自由に使えるんですよね。

パリ:それで、干潟に集まる多種多様な水鳥たちを観察することができる。
入館料:大人370円
入館料:大人370円
非の打ち所のない施設
非の打ち所のない施設
パリ:うちら、バラに続いて、バードウォッチングにもこれっぽっちも興味なかったじゃないですか。

ナオ:本当にそうなんです。

パリ:それが、一度双眼鏡を覗き込んで、鳥を眺めた時の感動!
「え? こんなに拡大されるの!」
「え? こんなに拡大されるの!」
「待って、今話しかけないで!」
「待って、今話しかけないで!」
ナオ:扉が開きましたね。「なーんだ! 言ってよ! こんな楽しいの!?」って思いました。

パリ:新しい世界が開けた感覚がすごかったっす。

ナオ:対岸の遠い木の先に止まっている鳥が鮮明に見えるんですよね。

パリ:これからの人生、もしも「私、バードウォッチングが趣味でして」という人と出会ったら、「あ~、はいはい、楽しいですよね」と言える。

ナオ:それだけで行く価値ありました。

パリ:あの鮮明さにはまじで驚きました。

ナオ:そもそも遠くのものが大きく見えるっていうだけでもう楽しいです。

パリ:それがまずあって、さらに鳥の躍動感。

ナオ:そいつが羽をこうパタパタ動かしたりする様が楽しくて楽しくて。

パリ:望遠鏡の覗くところにカメラのレンズをあてて撮ってみた写真があるんですが、実際に見ている映像はこんなもんじゃない。もう、図鑑みたいに詳細なんですよね、質感が。

ナオ:そう。3Dのように見えました。
肉眼だとこんな感じ
肉眼だとこんな感じ
双眼鏡の覗くところにカメラのレンズをあてて撮った写真
双眼鏡の覗くところにカメラのレンズをあてて撮った写真
実際の鮮明度はこんなもんじゃないんです!
実際の鮮明度はこんなもんじゃないんです!
パリ:夢中になっていろんな鳥見て、「これ、オレ双眼鏡買いますわ」とか言ってたら、すぐそばにパンフレットがあってね。「今使ってたやつが、16万円」みたいな。

ナオ:ドヒャー! って、壁を感じた。

パリ:でも、もう少し安いのもあるみたいですし。
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ナオ:あと、あのセンターがいいのは、空調も快適な中で座って見られるっていう。ただ、残念ながらっていうか、当然なんだろうけど、館内は飲酒禁止で。

パリ:当然だ。

ナオ:もしあれが飲酒OKだったらずっといてしまう。だからダメですね。

パリ:でも逆に考えると、自然の中だったら禁酒ということはないですよね。

ナオ:そうなんですよ!

パリ:つまり、気候の良い時期に、アウトドア用の椅子と双眼鏡でも持って森や湖に出向けば。

ナオ:そうなんです! 飲酒OKのバードウォッチングチームってないのかな。あれば仲間に入れて欲しい!

パリ:本当ですよね。

ナオ:実際この時もそういう話になって、それで検索した「バードウォッチング 飲酒」というタブがまだスマホのブラウザに残ってます。

パリ:ははは。冒涜感がすごい。

ナオ:自然への冒涜。グーグルが怒る検索ワード。

パリ:「その検索は禁止されています」

ナオ:Siriが怒りそう。「ヘイ! Siri! 酒飲めるバードウォッチングクラブ探して!」

パリ:「すみません あなたにはついていけません」

ナオ:Siriが帰っちゃう。

パリ:「Siriがスマホから帰っちゃったよ~」

ナオ:でも鉄道の世界に「呑み鉄」がいるんだから「呑み鳥」がいてもおかしくない。

パリ:猿のノミ取りみたいな語感になっちゃいますね

ナオ:じゃあ「ドリンク鳥」かな。

パリ:「ドリ鳥」。

ナオ:「ドリドリ」か。ぜひやりたい!

パリ:シーンがないなら勝手に名乗ってやりたいですね。

ナオ:野鳥に詳しい方をなんとか説得して。

パリ:あ「鳥見酒」は? 急に風流です。
ナオ:あら、本当だ。大物芸能人の優雅な趣味みたいな。

パリ:おっと、今「鳥見酒」で検索してみたら、鳥好きで、ブログに「正月は大抵、庭にやって来る小鳥たちを眺めながらグダグダと酒を飲むのが恒例行事になっているのだ」って記事書いてる人いましたよ!

ナオ:ちょっとー! 会いたいんですけど!

パリ:「シジュウカラはナッツ類に目が無い」そうなのかー! 興奮してきた。

ナオ:庭先かー! その手があったんですね。そこなら誰にも迷惑をかけず、整った空調の中でトイレもすぐそば。鳥、見放題。庭欲しくなってきた。

パリ:自宅の庭じゃなくても山の中のコテージとか。観光地には目もくれず、宿で鳥を見ながら飲む旅。

ナオ:いいですねー!

パリ:何人かでコテージ借りてね。みんなで鳥を見ながら飲む。最高。

ナオ:今までの自分だったら「今度コテージ借りて、鳥を見ながら飲むんだけどどう?」って言われても「うーん」でしたね。

パリ:「行くけど、俺は鳥はいいから、河原でバーベキューしてていい?」。それが今やですよ。

ナオ:最も誘われたいやつ。

パリ:最も誘われたく、そして、最も誰も誘ってこないやつ。

ナオ:はは。でもほんと、可能性を感じました。
自然観察センターは、それだけでなく楽しめる要素がもりだくさん
自然観察センターは、それだけでなく楽しめる要素がもりだくさん
残念ながら営業時間外 & 酒類の販売はなさそうでしたが、干潟隣接のカフェまで
残念ながら営業時間外 & 酒類の販売はなさそうでしたが、干潟隣接のカフェまで

バードウォッチングのあとは、いよいよ干潟飲み

パリ:バードウォッチングを堪能し、RPGでいえばレベルアップした状態で、また干潟の周りを歩き始めました。

ナオ:そして良さそうなベンチで、一杯飲みながら、「茶茶」で買った海苔を食べ。

パリ:どちらも千葉の海で採れた、最高級の海苔と、少しだけリーズナブルだけど店長おすすめの海苔、2種類をね。「干潟を見ながら海苔をつまみに飲む」って、行為だけだととんでもない風流人ですよね。写真で見るとただの変なやつらだけど。

ナオ:写真だとバレる。黒い紙食ってるみたいな。
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パリ:海苔、どっちも美味しかったけど、おすすめの少しお手頃な海苔の、シャリっとよい食感なんだけど、口溶けがよくて、ほんのりとねばりのあるような感じ、感動しちゃいました。「これが海苔屋の海苔かー!」って。

ナオ:うん! 風味が濃いんですよ! 谷津干潟の沖の海で獲った海苔だと言ってましたね。あと、あのゆで落花生も旨かったなー。

パリ:そういえば落花生も濡れていた。
「ゆで落花生 郷の香」
「ゆで落花生 郷の香」
ナオ:はは。今回は「濡れ」が裏テーマでしたね。

パリ:全体的にしっとりとした行程でした。

ナオ:そういえばほら、途中、ひまわりだと思って近づいていったらそれが造花で、ミストが出てましたよね。顔を近づけたら結構濡れました。

パリ:濡れたー。
「きれいなひまわりが咲いてるな~……あれ? なんか冷た!」
「きれいなひまわりが咲いてるな~……あれ? なんか冷た!」
「造花かい!」
「造花かい!」
パリ:いやしかし、濡れはすれども、本当に良かった。全然知らない、想像すらできない街、干潟、それが、思い入れのある場所になるあの感じ、たまらないですね。
自然観察センターでそれぞれに買い込んだ、谷津干潟グッズの数々
自然観察センターでそれぞれに買い込んだ、谷津干潟グッズの数々

地ビールと地ラーメン

ナオ:そして最後は商店街に戻って、「もう一杯飲んで帰りましょう」と。

パリ:「むぎのいえ」というお店に寄りましたね。実はこれも、「茶茶」さんで教えてもらってた。

ナオ:「店内でクラフトビールを作っているお店があるんですよ」って。

パリ:最近そういうお店、増えてますが、うちら普段、あまり入らないほうじゃないですか。

ナオ:そうっすね! ちょっと気おくれしちゃってね。

パリ:お洒落だし。だからついついもっと怪しげなとこ選んじゃうんだけど。話を聞いてたから入ってみたら、もう最高! でしたね。
「むぎのいえ」
「むぎのいえ」
オリジナルクラフトビールのラインナップ
オリジナルクラフトビールのラインナップ
ナオ:たくさん種類があるビールの中から「谷津ブラック」っていう黒ビールと「むぎのくら」という銘柄を頼んだのかな。

パリ:あと、ここで最後の課題だった名物料理「習志野ソーセージ」にもありつけた。これも、そういう地域の名産品があることは「茶茶」さんで聞いてたんですが。

ナオ:「食べたいなー」なんて言ってたので最高の流れでした。そんでもう、「うまい」しか言えない。

パリ:うまううまい!

ナオ:ビールも。

パリ:ビールもうまい!
地域ぐるみで開発したご当地グルメ「習志野ソーセージ」。しっかりした肉質でボリュームたっぷり
地域ぐるみで開発したご当地グルメ「習志野ソーセージ」。しっかりした肉質でボリュームたっぷり
大切に作られていることがわかるクラフトビール
大切に作られていることがわかるクラフトビール
ナオ:うまいって何回も言うしかないです。「うまいうまいうまいうまい」みたいに。数を増やすしかない。

パリ:バカなのでね。手作りのロフト席の居心地も良かったし、店員さんの雰囲気含め、本当に良いお店でした

ナオ:谷津ブラックは、黒ビールなんだけど飲み口がライトで、歩き疲れたところにスーッと入りました。

パリ:まろやかでしたね。「むぎのくら」もスーと入るんだけど、これが度数7.8%でけっこう効く。

ナオ:お店の方にお話を聞いたら習志野周辺でお店を探しててこの商店街の雰囲気がすごく気に入ってお店を出したって言ってましたね。

パリ:わかるなー。
ロフト席の居心地も
ロフト席の居心地も
黒ビールも最高……
黒ビールも最高……
人生で一番うまいビール更新っすわ
人生で一番うまいビール更新っすわ
パリ:谷津の街、居酒屋なんかもちらほらと開き始める時間帯でしたが、今回は街の探索がメインで、昼間っから飲んでたしで、早めに引き上げましたね。が、最後に、どうしても気になる店が。

ナオ:そう。

パリ:「谷津ラーメン」ですよ。

ナオ:「谷津ラーメン」ね。
「谷津ラーメン」
「谷津ラーメン」
パリ:聞いたことない。

ナオ:ね。初めて名乗った店かもしれない。

パリ:シーンとはしてないですよね? 「博多ラーメン」とか「喜多方ラーメン」みたいに。

ナオ:はい。その今までなかった「谷津ラーメン」がつい最近生まれたっていう。

パリ:そもそも、例えば僕が、地元の石神井公園でラーメン屋を始めるとして「石神井ラーメン」ってつけないですよ。

ナオ:確かに。ちょっと気が引けますよね。

パリ:プラス、もうちょっと捻りたい欲みたいなのも出てしまう。「麺屋 パリッ亭」とかにしたくなっちゃう。

ナオ:うんうん。

パリ:その、そこはかとない天然っぽさに好感を抱いてしまったのと、外に張り出してあったメニュー「ネギ丼」(¥280)がどんなものかどうしても確かめたくて、「ナオさん、ここはいっときましょう!」と。

ナオ:「締めの一杯だ!」と入って、谷津ラーメンとネギ丼と餃子をもらいました。もちろん瓶ビールも。

パリ: 「手作り焼き餃子」、皮から手作りしてるらしくて、うまかったですね。

ナオ:うん。すごく美味しかったですよ。
なんと200円
なんと200円
パリ:ラーメンも美味しかった。ラーメンには僕よりナオさんの方が詳しいと思うんですが、解説するとどんなラーメンということになりますか?

ナオ:なんだろう、濃厚な魚介だしのスープで、麺も美味しかったですね。風味がよくてツルッとしたストレート麺で。

パリ:ちょっと太め、中太くらい? ツルツルしてました。
性格の良さが顔にあらわれているラーメン
性格の良さが顔にあらわれているラーメン
ズズズッ……
ズズズッ……
「うん……」
「うん……」
「うまいな、谷津ラーメン」
「うまいな、谷津ラーメン」
ナオ:で、海苔が乗っていて。なんかこの海苔がうまいなーと思ったら……。

パリ:案の定!

ナオ:「茶茶」さんの海苔で。それで「谷津ラーメン」なのかー! と。 だからもう結局ずっと金子さんの手のひらの上の1日でしたよね。

パリ:もっといえば金子さんの海苔の上の1日。

ナオ:海苔の上でしっとり濡れた1日。
パリッコが気になっていた「ネギ丼」
パリッコが気になっていた「ネギ丼」
パリ:ネギ丼、もっとよくわからないものなのかなと思ったら、普通に「ネギチャーシューどんぶり」といった感じで、これも素直においしかった。

ナオ:だし、安いんですよ全体に。お店の方も気さくでね。
中国出身だが、日本のラーメンが好きすぎてこのお店を開いてしまってしまったという店主さん
中国出身だが、日本のラーメンが好きすぎてこのお店を開いてしまってしまったという店主さん
パリ:また行きたい。今度は夜の谷津も堪能したいですね。

ナオ:いいですねー! 飲み屋さん中心の谷津の旅。

パリ:しっとりとした夜の谷津。昼もしっとりしてたけど。

ナオ:そして飲み過ぎて終電逃して明け方の干潟の様子を見たい。
というわけで、谷津のベスト酒の穴は……
というわけで、谷津のベスト酒の穴は……
「谷津干潟のほとり」に決定!
「谷津干潟のほとり」に決定!

パリ:そういえば、自然観察センターで買った谷津干潟のDVD(2枚組 500円)見ました?

ナオ:見ましたよ! 最高でした。

パリ:僕も夜、飲みながらぼーっと見てたんですけど、カットアップされた環境映像ビデオみたいでやばいですね。別に干潟のきれいな映像集とかではなくて。

ナオ:そう。谷津干潟の自然環境を守る取り組みとか。干潟で行われた催しの模様を収録してますね。会議の模様とか。

パリ:そんな中で急に、深い意味はないんだろうけど意味深な、
このシーン
このシーン
パリ:が印象に残りました。

ナオ:はは、村上先生。いろいろと、「それはそれで貴重」っていう映像集ですよ。

パリ:めちゃくちゃ長くてまだぜんぜん見終わってないし、今夜も続きを見ながら飲むか。

ナオ:そうしましょう!
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