サイゼリヤの西洋絵画が気になる
イタリアンのリーズナブルな料理を提供してくれているサイゼリヤですが、店舗内にある西洋絵画が気になってしょうがないです。
最近できた比較的新しい店舗だと、こういった絵画が無い店舗も多いのですが、昔からある店舗だと壁にドーンといくつも絵画が描かれています。
ちょっと気になったので、サイゼリヤに行ったとき、絵の写真を撮影しておき、何の絵なのかを調べてまとめていたらいつの間にか3年ぐらい経ってしまいました。
ダラダラと能書きを書いても仕方がないので、とりあえず、調査結果だけ、まずはご覧ください。
わたしの調査によると、サイゼリヤの壁にある絵画は、16種類〜19種類(幅がある理由は後でいいます)。ほとんどが15世紀〜16世紀のイタリア周辺で描かれた絵画です。例外的に18世紀のフランスの近代絵画が2点まざっています。
イタリア料理ですから、イタリアルネサンスの絵画というわけでしょう。
この中で、特に有名なものといえば、ボッティチェリの『春』と『ヴィーナスの誕生』、それからミケランジェロの『アダムの創造』でしょうか。
この三作品については、みなさんタイトルも作者もご存知だと思います。
いずれも、うちの近所のサイゼリヤで採取したものです。この3作品はかなり出現率が高いです。
絵画のある店舗ならば、最低でもこのうちのどれかひとつはあります。
とりあえず、この三作品は「サイゼ三羽烏」と勝手に呼ぶことにします。
どうやって調べたのか
さて、このサイゼリヤの西洋絵画ですが、どうやって調べたのか?
サイゼリヤの全店舗を巡って、一個ずつ確認できれば確実なんですが、さすがにそれをやっている暇もお金もありません。お金がないですからね。
まずは、先行研究がないか調べてみました。が、これの調査を始めた2022年ごろには、サイゼリヤ店内にある絵画について、数点の絵画の由来などを解説しているブログばかりで、トータルで何種類あるのか、みたいな情報はありませんでした。
もはや自分で調べるしかありません。
まずは、近所のサイゼリヤを数件まわって絵画の種類をかぞえたところ、10件の絵画が見つかりました。
最初に見つけた10種の絵画、イニシャル・テンはこちらです。
① 『受胎告知』フラ・アンジェリコ
② 『受胎告知』レオナルド・ダ・ヴィンチ
③ 『春』ボッティチェリ
④ 『ヴーナスの誕生』ボッティチェリ
⑤ 『聖体の論議』ラファエロ
⑥ 『アダムの創造』ミケランジェロ
⑦ 『ガラテイアの勝利』ラファエロ
⑧ 『システィーナの聖母』ラファエロ
⑨ 『リュートを弾く天使』ロッソ・フィオレンティーノ
⑩ 『アムールとプシュケー、子供たち』ウィリアム・ブグロー
この十種のうち、『ガラテイアの勝利』、『システィーナの聖母』、『聖体の論議』、『アムールとプシュケー、子供たち』に関しては、一部がトリミングされて使われています。
とくに『聖体の論議』については、最初はどの絵画の一部なのかがわかりませんでした。
元ネタは、バチカンの使徒宮殿にあるラファエロの『聖体の論議』でした。天使が持っている本はそれぞれ左からマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる福音書です。それぞれの福音書の書き出し部分が、ラテン語で書いてあります。
この絵は、キリストや使徒、歴代の神学者らが大集結した、いわばキリスト教オールスターズの絵です。同じ部屋の向かいには、古代ギリシャの哲学者たちを一堂に集めた『アテネの学堂』があり、対をなしています。
しかし、サイゼリヤはそのへん(キリストや使徒など)には目もくれず、天使の部分だけをトリミングしています。
サイゼリヤはどうやら、西洋の絵画作品の中で、キューピッドや天使が描かれているものを中心に絵を選んでいるようで、特に絵画の一部分にキューピッドや天使が描かれたものは、トリミングして使っていることが多いようです。
で、ここでひとつ断っておきたいのは、キューピッドと天使が別物だという話です。
ギリシャ・ローマ神話に登場する子供に羽根が生えたような姿のものは、エロスとかキューピッドとかクピドとか呼ばれている「愛の神」です。ギリシャ神話に登場するエロスが、ローマ神話ではキューピッドと呼ばれています。
一方、天使とかエンジェルと呼ばれているのは「神様の使い」です。キューピッドではありません。天使はキリスト教の説話を題材にした絵画に出てきます。例えば、受胎告知に描かれているのは、大天使ガブリエルです。
受胎告知のガブリエルぐらい大人の姿をしていれば「あぁ、これは天使かな」ってわかるわけですが、システィーナの聖母の天使は、うっかりすると、キューピッドと間違えてしまう可能性大です。
キューピッド、天使(エンジェル)、どちらも、見た目は羽根の生えた子供のような姿ですが、まったく別物です。弓と矢を持っているのはキューピッドであって、天使ではありません。
『フランダースの犬』で空からネロを迎えにきたのは天使ですが、『キューピー人形』はキューピッドであって、天使ではありません。ちなみに、ぎょう虫検査に描いてあったのは天使なのかキューピッドなのか、ただの羽根の生えた子供なのか、よくわかっていません。
サイゼリヤの絵画の選定基準のひとつとして、おそらく「背中に羽根が生えている者たちを描いた絵」というものもあったと思われます。
今わかっている19種類の絵画のなかで、なぜか2点だけ近代フランス絵画が含まれていますが、いずれも羽根の生えた者たちが描かれています。
カパネルの『ヴーナスの誕生』、そして、ブグローの『アムールとプシュケー、子供たち』です。
特にブグローの『ヴィーナスの誕生』の方をよく見ると、サイゼリヤの絵画は、横たわるヴーナスの体が巧妙に消されています。
おそらく、この位置でトリミングするのであれば、右下にヴィーナスの腕が見えるはずですが、ありません。ヴィーナスが、粛清されて、スターリンの写真から消えたエジョフみたいなことになっています。
フランス近代絵画の絵が2つ入り込んでいるのは、この「羽根の生えた子供の絵」という基準で選ばれたものではないでしょうか?
そして、カパネル『ヴィーナスの誕生』、ブグロー『アムールとプシュケー、子供たち』、ラファエロ『システィーナの聖母』、ラファエロ『聖体の論議』の、天使やキューピッドを切り取った4つの絵も、かなりの確率でサイゼリヤにあります。これは、勝手に『トリミング四天王』と呼ぶことにします。
さて、絵画の種類ですが、10種類までは発見できたのですが、まだないのか。ということで、さらにうちの近所からすこし離れたサイゼリヤまで巡ると追加でいくつか発見しました。
⑪ 『最後の晩餐』ギルランダイオ
⑫ 『アテネの学堂』ラファエロ
⑬ 『ヴィーナスの誕生』カパネル
追加で13作品まで見つけました。
『最後の晩餐』は、あの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの作品ではなく、なぜかギルランダイオの『最後の晩餐』です。
レストランですから、みんなで集まって食事をする。最後の晩餐ということでしょうか? ギルランダイオの『最後の晩餐』は、よく見ると、ユダが背中を向けている構図のものです。
「最後の晩餐」の画題の描き方としては、むしろこちらの方が伝統的な描きかたでした。しかし、ダ・ヴィンチは、登場人物を横一列に配した大胆な構図で、この主題に新たな傑作を生み出したわけです。
確かに、ダ・ヴィンチの方が絵としてかっこいい。登場人物全員に動きがあってまるで動画をみているような気にもなります。
サイゼリヤの絵としては、ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』はぴったりだと思うんです。本物は修道院の食堂(だったところ、ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会)に描かれているわけですし。
しかしながら、ダ・ヴィンチの最後の晩餐があるというサイゼリヤの情報は今のところありません。

