かなり合理的ラバーダック・デバッグ
ある日、仲良しの四谷くんと養老の瀧を見に行く途中、「ラバーダック・デバッグ」というものがあると教えてくれました。
どう控えめに言ったとしても、アヒルちゃんはプログラミングの知識がありそうには見えません。
そんなアヒルちゃんに向かって、「こういう構造になっていて、こんな処理をしているんだよ~」と、「専門知識がない相手にもわかるように説明する」と思考が整理され、バグを直すのに役立つらしいのです。
しかも、無味乾燥なデスクに黄色いゴムのアヒルがいれば、肩の力も抜けるってもんですよね。
3か月後に提出しないといけない論文の存在を見て見ぬふりして養老鉄道に揺られていた私ですが、「これは文系の論文を書くときにもいい方法なんじゃないかな?」とひらめいたのです。
こーだいさんのヒヨコちゃん
さて、時は流れて論文提出しめきり1か月半前、なんとか第一稿ができあがりました。
一見、なにかを論じている風の文章にはなっていますが、中身はグズグズで目も当てられません。
そこでお迎えしたのが、
DPZのライターのこーだいさんがご自身で作られたという剥製のヒヨコちゃん。愛らしいです。フワフッワです。
もともとは爬虫類の冷凍餌として売られていたヒヨコだそうで、こーだいさんは剥製をつくる練習用に重宝されているとか。(そんな世界があるとは知りませんでした。)
ラバーダック・デバッグは、自分のお気に入りのぬいぐるみでやる人も多いようです。私は「やっぱちゃんと鳥に見てもらいたいなあ(?)」と思い、こーだいさんに連絡しました。
さっそくパソコンの近くに来てもらいます。
かわいいけれども、鳥に見られているという感じがします。ほどよい緊張感。さあ長い修正のはじまりです。
ずっと一緒にいてくれる
私の論文のテーマは、「立石鐵臣(たていしてつおみ)の画業」です。
立石は、日本が植民地支配していた時代の台湾に渡って活躍した日本人洋画家です。当時は多くの日本人画家が東アジアに旅行しており、その文脈から彼の活動を考える論文を書こうと思いました。
「立石鐵臣・・・、美術史では有名な人なのかな?」と思われたでしょうが、正直美術史でもそんなに有名ではありません。研究室に立石鐵臣や、その周辺を研究している人もいません。つまり私は孤独です。
仏像や江戸の絵画を研究している研究室メンバーにはなかなかじっくり相談しづらいところがあります。
しかし
ヒヨコちゃんはいつでも話を聞いてくれるのです。
こんな、専門外の人に言ったら「は、はあ・・・」となりそうなめちゃくちゃ狭い分野の話も、ヒヨコちゃんなら気軽にすることができます。
他人に相談するときの「人の時間を奪っている・・・アワワ」という焦りを感じなくてもいいのです。ヒヨコちゃんがわかってるかどうかは別問題ですが、ゆっくりと自分の書きたいことを整理できます。
持ち運びがむずかしくても
ラバーダック・デバッグの始祖であるプログラマーは、アヒルちゃんを持ち運び、いつでもどこでもデバッグを助けてもらっていたそうです。
しかし、今回手伝ってもらったヒヨコちゃんは繊細なので、学校に持っていくことはできません(あと、研究室でヒヨコの剥製に語りかけるには様々なハードルがある)。
仕方なく1人で家を出て研究室で論文の修正をしているとき、
こんな重要な存在になっていたなんて・・・と自分でも驚きました。ただ話を聞いてくれるヒヨコではなく、ずっとそばにいてくれる友人になっていたのです。
傷ついたら困るから・・・とアヒルちゃんたちを持ち運べない人にぴったりの、「Quack Overflow」というアバターがあります。
Quack Overflow より引用
画面上のアヒルちゃんがこちらの話をしっかり聞いてくれた上で「クワッ」と鳴いてくれます(鳴くだけです)。アヒルちゃんの「わかってない感」に癒されますのでぜひ。