特集 2025年6月5日

卵黄卵白分解料理

ふだんは一緒に使うことが多い、玉子の黄身と白身。分解して料理してみたら、いろいろな発見がありました。

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

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絶品あんかけチャーハンをきっかけに

先日、とある中華料理屋さんで食べたチャーハンが、卵白を使ったあんのかかっているタイプだったんです。

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かに入りあんかけチャーハン

で、記憶にあるかぎり。今までほとんど食べたことのなかったこれが、とても美味しかったんですよね。

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パラパラチャーハンととろとろあんのハーモニー

僕は料理も好きなので、当然思います。これ、家でも作れないかな? と。同時に疑問もわいてきます。このタイプのあんかけチャーハンを作る場合、玉子の比率ってどうなるんだろう?

あんには黄身が入っていないから、普通に考えれば、いわゆるオーソドックスなチャーハンを作って、そこに白身だけを使ったあんを新たに作って、かけているんだろう。けれどもそんなぜいたく使いは、飲食店だからできること。それに、もしかしたら残った黄身は別の料理に使っているのかもしれない。家でそんなめんどうかつ、うっかり食材を無駄にしかねないことは、日常的には難しい。

玉子をふたつ使い、「白身1」と「白身1+黄身2」に分解してそれぞれをあんとチャーハンに使うのがいちばん自然なのかもしれない。けど、家でチャーハンを作るとき、使うのはいつも、玉子ひとつだしなぁ。となれば、玉子を黄身と白身に分けて、白身はあんに使い、黄身だけでチャーハンを作る? けどけど、黄身だけでチャーハンってできるものなのだろうか……?

長めの脳内再生失礼しました。つまり僕は、玉子の黄身だけで作ったチャーハンに、白身で作ったあんをかける、という料理を試作してみたくてどうしようもなくなってしまったんです。

さてやってみよう!

というところで、さらにこう思いました。そもそも玉子料理って、目玉焼きのようにそのまま焼くにしろ、オムレツのように混ぜてしまうにしろ、黄身と白身をセットで使うことが圧倒的に多いよなと。黄身と白身、あんなに性質が違うのに、よく考えてみれば不思議。ならば試しに、一般的な玉子料理を、黄身と白身別々に作ってみるのはどうか?

というわけで今回は、先述のあんかけチャーハンも含む「卵黄卵白分解料理」を作っていってみましょう。

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分解オムレツ

以前、僕は当サイトでこんな記事を書いたことがあります。

黄身なしゆでたまごを作って白身に感謝したい

この時、試行錯誤の末、白身だけのゆでたまごを作ることには、

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見事に
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成功したんです

その際、ついでに白身だけオムレツも作ってみたことがあって、白身だけのゆでたまごやオムレツが美味しいことは、実は知っているんですよね。

また以前、トルーさんがこんな記事も書かれていました。

白身だけのオムレツと黄身だけのオムレツを作る

が、僕は黄身だけのオムレツ未体験。

そこでまず、オムレツを作っていきましょう。

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今回の記事、すべてこの作業から始まります

玉子を黄身と白身に分けて、オムレツなのでそれぞれ、白身2個ぶんと黄身2個ぶんを使って、いつもどおりに作ってみましょう。

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まずは白身から

いつもと勝手が違うので、ちょっと作業が難しく、

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いきなりだいぶ不恰好

になってしまったんですが、これは単に僕の腕の問題だと思われます。

同様に、

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黄身オムレツも
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じゃーっと
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完成

なるほど、こりゃーいきなり、見たことのない料理ですね。その時点でかなり満足。特に、黄身だけオムレツの色の濃さがすごいです。

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醤油で食べてみる

うんうん、前に作った時にも思ったんですが、白身オムレツ、あっさりはしているけれどちゃんと風味があって、すごく美味しいです。ぜんぜん物足りなくない。

一方の黄身オムレツは、あっさり感を白身に残してきただけあって、かなり濃厚な味わい。焼いた香ばしさも強く感じます。こういう料理っていうか、おつまみが居酒屋ででてきたら、無性に感動してしまいそう。ただ、いつものオムレツのようなとろっとした食感はなく、そこは別ものですね。

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分解目玉焼き

続いては目玉焼き。

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大きめのフライパン全体に薄く油をひいて
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黄身と白身を別々に焼く

かつてあったでしょうか? こんな仕打ちを受けた玉子が。いつも仲良く一緒に焼かれ、だからこそ“目玉”焼きだったはずなのに、人間の都合で離れ離れにされてしまう。

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黄身の焼けかたが見たことない感じ
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完成

どうでしょう。一見すると「失敗しちゃったのかな?」とも思えるけれど、よく考えるとこんな失敗はありえない。こういう現代アートのよう。

なんだかかわいそうなので、

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こう

黄身と白身を別々に味わうことには変わらないものの、せめて形だけでも戻してあげてからにしました。

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醤油で食べてみる

特筆すべきはまず白身。いつもどおりに目玉焼きを作ったって、白身部分だけを食べれば同じ味なものの、あらためて白身のみで味わってみると、香ばしくてぷりぷりで、すごく美味しい。目玉焼きの本体は白身であるとさえ思えます。

対する黄身は、白身によるコーティングが一切ないので、同じくらいの焼き時間ながらいつもより硬め。僕は目玉焼きって、ぷつんと箸を刺して流れ出てくる黄身を白身にからめながら食べるのが好きなので、その醍醐味は感じられず。ただ、これはこれで美味しいので好みですかね。気になる方は作ってみて。

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分解たまごかけごはん

さて、チャーハンの前にもうひとつ、シンプルにたまごかけごはんも作ってみましょう。

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あつあつごはんに黄身だけをのせて
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よく混ぜる

おお、ごはんが輝いている! 試しにこの時点で小皿に少しとり、醤油ちょろりで味見をしてみると、特濃ですね〜。好きな人はかなり好きかも。

で、ここによ〜くかき混ぜた白身をかけてみましょう。あんかけチャーハンと同じ構成ですね。

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こう
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完成

黄身だけたまごかけごはんの白身がけ。

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いただきます

おお、これは、黄身だけ時の濃厚さはあまり損なわれず、けれどもするすると口に入ってきて新食感です。なんかこう、ベースはいつものたまごかけごはんなんだけど、そこに明確に“手間”が加わっているというか。

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では逆も作っていきます

白身だけたまごかけごはん。これが意外な美味しさ。食感はほぼいつものたまごかけごはんなんです。が、味は控えめなので、むしろごはんの甘さが際立つんですよね。

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で、こう
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卵黄ってずるいくらいフォトジェニックだよな〜
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完成

白身だけたまごかけごはんの黄身がけ。

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いただきます

えーーー! これ、めっちゃうまい! さっき伝えた、たまごかけごはんらしい食感と、ごはんの甘さ。さらに、黄身の濃厚さ。それぞれのいいところが、いつものたまごかけごはんよりも数倍強く感じられる。これはいいですよ。簡単だし、ぜひ一度試してみてほしい。

※念のため検索してみたら、似たレシピを作られている人はすでにたくさんいました。こんなにうまいんだからそりゃそうか。

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分解あんかけチャーハン

さて、いよいよ本題のチャーハンです。

具材は、ごはんと玉子オンリーもまた良しとは思いつつ、お店で食べたときのような彩りがちょっと欲しくて、あんにかにかまを、チャーハンには刻みねぎを加えてみます。

調べてみたところ、あんのベースは中華風スープに片栗粉でとろみをつけ、そこに白身を加えてよく混ぜるだけのようだったので、まずはスープを。

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味つけはごく簡単に「創味シャンタン」で

ではいざ、黄身だけチャーハンを作っていきましょう。

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この組み合わせを
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炒めていきます

感触はいつもよりもったりながら、そんなに違和感はないかも。ここにネギも加えて塩コショウで味つけしたら、とりあえず土台が完成。

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色が濃い

黄身だけチャーハン、パラパラ好きな方の好みとは違うかもしれないけれど、これまた濃厚でうまいです。ぜんぜんありなんだな、黄身だけで作っても。

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あんも作る

白身を使ったとろとろあん、うまくできるか不安だったのですが、めちゃ簡単にいい感じにできました。

こいつをさっきのチャーハンにかければ、

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完成

黄身だけチャーハンの白身あんがけ。

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いただきます

食べてみてびっくりしたんですが、これがめっっっちゃくちゃうまいんすよ!

シンプルながら濃厚なチャーハンにとろとろのあんが絡んで、とてもぜいたくな味わい。これ、本当に自分が作ったの? ってくらい。ごはん1膳と玉子1個と、ほんの少しの具材だけでこんな高級風中華料理が作れるなんて、衝撃体験だと言えましょう。

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最後までずっとうまい

さて、ラストは今の逆バージョン。

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白身だけチャーハンを作ります
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当然真っ白

味見してみると、第一印象はたんぱく質の味って感じ。そこに塩コショウと油の風味が加わり、なぜかうっすらとガーリックライスを思い出すような。

で、ここで気がつきました。このチャーハン、ねぎを入れ忘れてますね、僕。真っ当なライターさんならもう一度作り直すんでしょうが、残念なことに僕は真っ当ではないので、すいません。ねぎ、あんのほうに入れさせてください。そこまで大きな違いはないっしょ。

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完成

白身だけチャーハンの黄身あんがけ。

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いただきます

見た目の華やかさは白身あんよりこちらですかね。期待大。

で、食べてみると実際うまい。なんの文句もありません。強くおすすめしたい。が、なんていうんだろう、繊細な完成度の高さは、やっぱり中華料理の定番である、さっきの白身あんだったかもしれません。まぁ、好みかな。むしろ日替わりでどっちも作るのが楽しいと思う。

とにかく、卵黄卵白分解あんかけチャーハン。家料理としては最高峰と言えるくらいに美味しいです。いやぁ、発見だったな。


どれも美味しかったですが

というわけで、今回も非常に楽しい検証でした。

作ったなかで特に気に入ったのは「白身だけたまごかけごはんの黄身がけ」と「黄身だけチャーハンの白身あんがけ」のふたつ。ご参考まで〜。
 

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
チャーハンおいしそ~! この企画、文中にもありますが卵黄が圧倒的にビジュアル有利なんですよね。それでも味含めて互角の戦いを記事上に再現できているのはパリッコさんの食レポ力あってこそ。むしろ差がありそうな料理もしっかり両陣営にフォロー入れている配慮におかしみを感じました。配慮があるな…玉子に対して…と思って。(石川)

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