ふだん何気なく食べてしまっていた卵の白身。手間はかかりますが、みなさんも年に一度くらい、白身だけのゆでたまごを作って味わう「敬白の日」を設けてみてはいかがでしょう? 「ていねいな暮らし」って、そういうことですよね?
ここからはおまけ。
これ、油を使うのでさらに風味が力強く、塩をふっただけでめちゃくちゃご飯が進みました! ゆでたまごがハードル高いというかたは、まずこちらからいかがでしょうか?
卵の黄身って美味しいですよね? 濃厚で、とろっとして、どんな料理でもあれがぽとんと載っているだけでちょっとスペシャルなものになる。
でも、そんなときの「白身」の気持ちをちゃんと考えたことってありますか? 「ある!」と断言できる人はあまり多くないと思います。僕もそう。
自戒の念もこめ、今日は徹底的に白身を敬おうと思います。
思いかえしてもみてください。みんな、ちょっと卵の「黄身」ばかりをありがたがりすぎじゃないですか?
超豪華な海鮮丼かなんかの天辺に、卵黄が乗っている。それをちょんと突きくずし、新鮮なお刺身なんかに絡んでいく様を「きゃ〜」なんて眺めたあとで、うっとりと食べる。
考えたことがありますか? そんなときの「白身」の気持ちを。卵黄を使ったレシピには、絶対に余るはずの卵白をどうするかが書いていないことさえある。一応気を使って「余った卵白は、お味噌汁にいれても美味しいよ」かなんか書いてあることもあるけど、え? 急に? お味噌汁も作らなきゃいけなかったの? さっきまでそんなこと言ってなかったじゃん! じゃあ書いてよ。お味噌汁のレシピもちゃんとさ。そう、思いません?
考えたことがありますか? メレンゲの気持ちを。世の中に卵の黄身がメインの料理は数々ある。だけど、白身がメインなことって唯一、「メレンゲ」くらいじゃないですか? メレンゲだって憤ってるはずなんですよ。「我が同胞、よその現場でも割といい仕事してるんだけどな……」って。
うん、僕もこれまでの人生で、そういう行為を何度もくり返してきました。だからね、責めてるわけじゃないんですよ。むしろこれは、僕とみなさんの問題。一緒に反省し、改善すべき点は改善していきましょうよ。と、そう思ったんですね。
そこで今日は、普段何気なく接しすぎてしまっていた白身に感謝し、敬う日、「敬白の日」にしませんか?
そこで白身をどう敬っていくかを考えたわけですが、そもそも卵をゆでただけの「ゆでたまご」っていう料理。あれの時点で、ちょっと黄身って、いい気になってる気がするんですよね。どーんと中心に鎮座して威張っているというか、どこか白身のことをSP的に考えているような節がある。
だけど思い出してもみてください。子供の頃って、ゆでたまごの白身のあの素直な味わいが、むしろ黄身より好きだったりしませんでした? それに、固ゆでたまごのあのパッサパサの黄身。あれだけがころんとお皿に乗せて出されたとして、喉に詰まって食べられたもんじゃないですよ。白身があるからこそ黄身が美味しい。え? 半熟にすればいいじゃんって? いやいや、けっこう難しいの。卵をちょうどいい半熟にゆでるのって。っていうかそもそも、「半熟」を辞書でひいてみるとこうありますよ。「食べ物が十分煮えたりゆだったりしていないこと。なま煮え」。ね? 「なま煮え」ですよ? 今まであなた、いや僕も、それをありがたがってたんですよ?
……すいません、なんか自分でもモチベーションがわからないんですが、ここまでですでに原稿用紙4枚分近くも黄身への苦言を書き連ねてしまいました。いや、そういうことが言いたいんじゃなかった。あくまで白身を敬いたいだけだった。
そこでですね、今日は「白身だけのゆでたまご」を作り、それをじっくりと味わうことによって、白身のありがたさを再確認しようと、そう思ったわけなんです。
というわけでスーパーへ行き、白身に感謝するのにおあつらえむきの卵を買ってきました。
こいつでなんとかして、白身オンリーゆでたまごを作ってやりましょう!
作りかた。といっても、そんなものは今まで一度も作ったことがないので、思いついた方法を試していってみます。
何はともあれ、まずは、
そこから黄身を取り除いてください。余った黄身? 好きにしてください。あ、お味噌汁にでも入れたらいいんじゃないかな?
で、それを、意味があるのかどうかはわからないけど、
実はですね、秘密兵器があるんです。こちら!
の、卵の形をしてるやつ。今回、どうやって白身だけのゆでたまごを作ろうかと考え、そういうものがもしあればと探してみたら、Amazonにありました。
はっきり言って、これが手に入った時点で、勝ちを確信してたんですけどね。
ここに卵の白身だけを流しこみ、大きめのフライパンでお湯をわかし、底にお皿をしいた上に乗せて、
なんとか固まったようです。
っていうか、もうできちゃってますよね? 白身だけのゆでたまご。あとはこれを型から外して重ね合わせればいいだけだ。
よ〜し、敬うぞ〜! と、思いきや、
大惨事。型にくっついちゃって、ぜんぜんきれいに外れてくれないっす。内側に油でも塗っておいたほうがよかったのかな……。
それでも慎重に慎重に、なるべくきれいに外すことを試みた結果がこちら。
って感じですね。
ちょっと自分の気持ちを敬うモードに持っていけない。
ただ、せっかくなので食べてみたところ、これが美味しい。何もつけてないのにほんのりとした塩味も感じるし、そもそもイメージよりぜんぜん「無味」じゃない。ぷりんとした心地よい食感。そして、これと黄身の風味のそれぞれがあってこその卵だよなっていう、淡いけれどもきちんと主張のある味や香りがする。
白味って、こんなに美味しかったんだなぁ。
さらにシリコン型で試行錯誤してもよかったんですが、油を塗って同じ結果になっても悲しいですし、ちょっと作戦を変更します。もう、卵の殻そのものを使っちゃうのはどうか? そう思いつきまして、殻から中身を取りだす方法ってのを検索。殻を使った工芸作品なんてのはよくあるし、すぐに見つかりました。
あとで白身を流しこみたいので、家にあったいちばん小さな「じょうご」がはまるくらいの大きさまで、慎重に広げました。
そしたら小さいほうの穴からぷうっと息を吹きこむと、つるんと中身が出てきます。うん、うまくいったぞ。
殻をよく洗い、ちょうどいい台座になりそうなおちょこがあったんでそこへ乗せ、じょうごを乗せる。
ここに少〜しずつ白身を流しこんでいきまして、
あまり沸騰させるのもこわいので、
「どうか機嫌をそこねないでくださいね」という気持ちで。もうこの時点で、今回の目的は完了してるような気がしてきましたよ。だって今まで、こんなに丁寧に扱ったことないもん。白身を。
加減がわからないので、くつくつくつくつ、40分くらいはゆでてたんじゃないかな? それでも割ってみるまでなかの様子はわからないんですが、
というところで火を止めました。
で、ふだんならわざわざそんなことしないんだけど、
おそるおそる殻を割ってみると……
結論から言ってしまうと、殻作戦はうまくいきました。ここからは、完成した白身ゆでたまごの美しさを堪能するとともに、あらためて白身を敬っていきましょう。
シリコンから路線変更してよかった。
そう、一見するとただのゆでたまごだけど、ここまでの経緯を考えれば、これは現代アートであるともいえる。
では満を侍して、このゆでたまごの中身が本当に白身だけなのかを確認していきたいと思います。あんまりきれいにできたもんで自分でも自信がなくなってしまい、何かの間違いで普通に黄身が入ってたらどうしようと不安にもなっていたのですが、
やったー! 大成功。
そして最大限の敬意と感謝をこめ、味わわせていただきました。
いつもありがとう、白身!
ちなみにぶっちゃけますと、余った黄身、本当は味噌汁に入れたわけではなく、
数が多すぎて細胞分裂みたいになってますが、しばらくは晩酌に朝ごはんにと大活躍。その味の濃厚さ、ありがたさが身に染みすぎたのも、あらためて白身とじっくり向き合ったおかげかもしれません。
ふだん何気なく食べてしまっていた卵の白身。手間はかかりますが、みなさんも年に一度くらい、白身だけのゆでたまごを作って味わう「敬白の日」を設けてみてはいかがでしょう? 「ていねいな暮らし」って、そういうことですよね?
ここからはおまけ。
これ、油を使うのでさらに風味が力強く、塩をふっただけでめちゃくちゃご飯が進みました! ゆでたまごがハードル高いというかたは、まずこちらからいかがでしょうか?
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