特集 2026年7月22日

約款、読まなきゃだめですか?~生命保険の聞きにくいことを聞く

ライフネット生命さんとは長い付き合いである。ハトが選んだ生命保険からなのでもう17年になる。
だが、保険の話をしたことがない。

そもそも保険がよく分かってないので話すとぼろを出すからという理由もある。
でも聞いてみたいこともある。
長い付き合いに甘えて素人質問をぶつけてみた。ぼろ出すぞ。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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質問に答えてくれるのはライフネット生命 田中さんと古川さんだ。田中さんは保険商品をつくるアクチュアリーと言われる専門家、古川さんはライフネット生命の開業時に約款を担当したことがある生命保険のプロフェッショナルである。

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左からライフネット生命 田中さん  古川さん

そのプロに聞く最初の質問はこちら。

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約款、きちんと読んでませんでした

林:
生命保険の約款って、読むの大変ですよね。やっぱり読まなきゃだめですか。

田中:
保険の約款というもの、はっきり言って一人で読み切ったとしても理解するのは相当難しいですよ、大きな声では言えないですけれども。
契約なので「読んでなかった」で通用しないという現実はありつつも、隅から隅まで読まなくても重要な事項が伝わるようにする工夫として、「ご契約のしおり」「契約概要」と「注意喚起情報」があります。
約款の中でも特に重要なそのエッセンスみたいなものが書かれてる。
そもそも保険の契約を結ぶのに約款を隅から隅まで読まないとお客さんがものすごい不利益を被る社会っていうのが、いい社会であるはずがない。

林:
他社さんもしおりがありますね。

田中:
これは事実上マストです。絶対にあるといっても過言ではない。

林:
それは法律ではなくて、業界の慣習としてですか。

古川:
基本的にご契約のしおりは、ガイドラインですね。

林:
そんなにじっくり読まなくてもいいってことですか?

田中:
そこはさすがにイエスとは言えませんが、我が国で売られてる個人保険は金融庁の認可を必要としています。
認可のいちばん大事な柱は「保険契約者の保護」というものがあって、ぼんやり入った人がとんでもない不利益を受けないようにしなさいっていうことは、認可の流れの中ですごく注意して見られるポイントではあります。

林:
心強い

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しおりのどこを読めば良い?

田中:
ただ一方で、大して必要もないのにわざわざ保険に入って保険料を払い続けてしまったら、それはやっぱりある意味で不利益を被ってしまいます。
なのでしおりに加えて「契約概要」と「注意喚起情報」に、契約にあたって知っていただきたい事項をお客さまが理解できるようにエッセンスが入っています。でも、契約概要だけでも結構きついです。だって長いじゃないですか、これ。
やっぱ私も商品開発をする立場として、他社の商品をそれなりに研究をするわけですよ。
で、そのときに真っ先に読む資料のひとつが、しおりなわけですよ。でもこれね、読んでるの辛いと思うんですよ。普段接する文章からしたら、なげえし、よくわかんねえし、みたいな。

「なげえし、よくわかんねえし、みたいな。」

林:
そうそう。大事なポイントはどこですか?

田中:
やっぱりいちばん大事なのはどういう事由で保険金、給付金が支払われるか。で、どういうときに払われないのか。で、あといくら払われるのか。
ここはやっぱり相当気を付けて見る必要があって、例えば入院したら1日当たり1万円払いますっていう医療保険があっても、それって病気とか怪我の治療のためと書かれてるんですよ。
例えば子どもを産むという時に入院されますよね。でも、帝王切開などを伴わないお産では保険会社は給付金を払わないんですよ。妊娠、出産は病気や怪我とは別のものとされているので、1日当たり1万円払う医療保険の支払いの対象ではないということです。
何なら払われるのか、払われないのか、いくら払われるのか。自分が求めてる保障とイメージが揃ってるのか、ちゃんと認識をした方がいいですね。

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契約するときに読むのは約款ではなかった

古川:
約款としおりだけでなく、申し込もうとすると3つご提示するものがあるんですよ、実は。さっきから登場している「契約概要」と「注意喚起情報」に加えて「意向確認書」です。
ご契約のしおり・約款はいつでも自由に誰でも見られるのですが、募集では3つの説明をしたうえで契約後もご自身で確認しやすいように最後にお渡しすることが多いです。

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イラストにしました

林:
約款だけ気にしていましたが、申込時に確認すべきものは他にもあるということなんですね。むしろ約款はあとで確認する用。

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昔に比べてめちゃくちゃまともになってます

古川:
もともと意向確認というのが、そんな保険に入ったつもりはなかったとか、そういうことのないようにできたんです。

古川:
例えば海外では意向を聞かないと商品説明しちゃいけないので、いきなり保険会社に行って商品のパンフレットくれって言われても、まず聞かないと提案ができない。それが日本にも持ち込まれてきた。

田中:
意向を聞くってのは、要するにそのお客さん、どんな保障が欲しいんですかみたいな話をお伺いする。あるいは、当社だと直接お伺いすることはできないから、ちゃんとそういうことを考えられた上でこの保険選ばれてますよねっていうところを確認するプロセスになっています。

古川:
日本の場合、知り合いを通じて、あなたが売っている保険なら、(保障は正直よくわかんないけど)入ってもいいかもみたいな世界が長く続いていたこともあって、それでもなんとかなっていたっていうのもあるんですけど。
だんだんそういう昔ながらのコミュニティが希薄になっていって、きちんと提案しなきゃいけなくなった。

林:
昔みたいに、大きな会社の新入社員はお付き合いで系列の生命保険に入る、というのはないんですね。

古川:
私もそうでしたが、「半ば強制」みたいな空気の募集は、今はやっちゃいけないんです。意向確認はもう義務としても明記されているので。めちゃくちゃまともになってます。

林:
そうなんだ!

古川:
意向を正確に聞いて、意向に沿った商品を提案しなきゃいけないっていうのがまず大前提にあって。で、意向に沿った商品を説明するときに、分かりやすい契約の概要を示した契約概要がある。

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読む気力が失せないレベル、文字の級数が決まっている

古川:
どんな商品でどんな時に給付金が支払われるかとかを主に説明する紙を、少なくともA3、読む気力が失われないレベルのってガイドラインがあるんですよ。文字のポイント数は、最低でも8ポイント。
それで、こういうときに払えますよってメリットだけじゃなくて、デメリットも同レベルで説明する義務になっているのが、この「特に重要な事項のお知らせ(注意喚起情報)」。
「特に重要な事項のお知らせ」は、知らずに契約するとそんなつもりじゃなかったと思われそうなものだけを抜粋した説明書。
これを使って説明することが義務付けられてる。

林:
じゃあ、約款を読まなくてもこの3点で分散して読んだことになっているといっても過言ではない。

古川:
約款を読んだことにはなりません

林:
ならない!

「約款を読んだことにはなりません」

古川:
いまは保険の話ですけど、今はどんな物品でも、例えばマンション購入でも携帯でも、重要事項説明をさせてくださいみたいな流れになっているので、それと同じですよね。これを経てはじめてしおり・約款にたどり着く。

林:
約款はホームページで自由に見られますね。

⏩ 天変地異は約款に書いてある

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