天変地異は約款に書いてある
林:
約款に天変地異の場合は支払わないって書いてあるんですよね?
古川:
天変地異は書いてあります、保険金の支払いというページです
田中:
戦争変乱みたいなワードが
林:
「戦争その他の変乱、地震、噴火または津波」ですね。
田中:
これは医療保険。「被保険者が戦争その他の変乱、地震、噴火または津波により」入院給付金の支払事由に該当した場合。あまり対象の人の数が多すぎて保険会社が辛くなっちゃうときは、入院給付金を削減して支払うか、または入院給付金を支払わないことがありますと書いてあります。
林:
でも「戦争その他の変乱」は会社ごとに違うんですか?
古川:
基本的にはほぼ同じです。保険制度ができた当初からある商品は、もうこれがほぼ決まりのフレーズ
林:
これって日本で適用されたことってあるんですか
田中:
私の知る戦後の話としては、地震とか津波とかで、この規定を保険会社が適用したことはないはずです
死亡保険は地震も支払対象になる
田中:
これは定期死亡保険の免責の規定なんですけれども、よく見ると免責の中身に地震は書いてないですよね。死亡保険って地震で亡くなった場合も保険金が必ず支払われるんですよ。

林:
あ、違う。こういう保険のベースになってる生命表(注)には地震も入っているんですか?
注)生命保険を作るときの計算のもとになる表。年齢性別毎に平均余命が書いてある。
田中:
一応入れてますよ。ただ入ってるって言っても、死亡率みたいなものを作るためのデータって、たかだか100年とかのデータまでしか事実上ないわけですよ。
でも、大きな地震っていうのは本当に何十年に1回とかで、しかも起きるエリアも全然まちまちで、場所によってお亡くなりになる人の数は全然違います。
我々が持ってる死亡率は基本的には過去のデータを元にしてますけれども、未来に起こる地震が起きた時に死亡率みたいなのがどのぐらい影響を受けるか、それを踏まえて我々の会社がそういう支払いに耐えられるのかどうかは当然考えながら保険料を決めてます。
危険な職業に従事している人は保険に入れないって本当?
林:
危険な職業の人は入れないって噂で聞きますが本当ですか
田中:
本当の話です。
古川:
保険契約の基準は各社まちまちなので、入れる保険会社もあります
林:
それっていつ断るんですか?
古川:
申し込みの前の重要事項説明の他に、保険には引き受けの審査がありますっていう説明ページがあります。
古川:
プランが決まって3つの書類を読んで、この保険に入ろうと決めたら、審査のための質問書に答えるっていうパートが始まります。
林:
そこには具体的にだめな職業って書いてあるんですか?
田中:
職業を聞いてますね
古川:
いわゆる引受審査のルールってのは絶対に口外してはいけないんですよ。なぜかというと犯罪組織に有利な手口を世の中にばらすのと等しいからです。どんな嘘をつけば入れるかが全部分かるから。
田中:
引受基準の開示をした時に起きる悪いシナリオとしては、例えば、ある会社はどんな危険な職業の人でも受け入れていたとして、会社としてはリスクが高い職業の人が100人に1人ぐらいいても全体への影響も小さいし、耐えられるかなと思っていたのに、危険な職業の人達が引受基準を見て集まってきちゃう。
それで物凄い支払いが増えちゃったな、みたいな。これ、引受基準を開示せずにこっそりそういった人たちを受け入れているだけなら起こりませんよね。
林:
この職業の人が引き受けられないって判断するうえで統計データがあったりするんですか。
古川:
金融庁から生命保険業の認可を受けるときに、事業方法書っていうのを見てもらわなくちゃいけないので、そこに何を引き受けの基準に使うかも書くんです。
林:
そこには書くんですね
古川:
職業や健康状態などが当社の定める基準の範囲内に収まるかどうかとか、何を考慮するかみたいなことも書いています。当然そこには根拠のない不適切な差別に繋がるような基準はだめなので、基本的には根拠は明確に示す必要がある。
田中:
根拠のレベル感の濃淡は当然あって、この職業の人はこのくらい危ないみたいなデータが細かくあるとも限らないので、そこは一定の判断は入ってくるところではあります。
林:
デイリーポータルZに以前書いてたライターが毒の生き物に噛まれる動画をYouTubeにアップしてるんですけど、彼はだめですか
古川:
最も基本的な概念としては、保険と言いつつも、民法の基本的な原則が適用されるので、お互いの合意があって初めて成り立つっていう大原則があるんですよね。
なので、例えば、極めて不審な行動をする、保険給付に直結するような危険な行動を繰り返す人物がいた場合、断ることが契約自由の原則上によって許されてるっていうことです。ただ、それが差別的な選択ではないかっていうところには、社会的な説明責任は求められる。
林:
難しいのかな……。
保険商品は簡単にまねできる
林:
死亡保険で、想定した死亡率よりも下回った場合(加入者が想定よりも亡くならなかった場合)の保険料は利益になるんですか?
田中:
基本的には利益になって、そこを部分的に返してるタイプの保険もあります。※ライフネット生命の商品に配当金はありません
古川:
保険会社の収益の基本は3つあって、①予想よりも支払いが少ない②予想よりも事業費が少ない③予想よりも運用が良かった(注)、です。
最も安定的な収益構造の基盤になるのは、①支払いと予想の差分によるものです。死差益と呼ばれます。でもここがあまりにもジャブジャブだと良くない。
注)保険会社は預かった保険料を債券、株式、不動産などに投資しています
田中:
利益を多くしようとすると、保険料が高くなるんですよ。
すると、よその会社が同じ保障内容でもっと安いので出すわけですよ。
保険には特許とかは何もないから、保険っていうのは簡単に真似できるんですよ。
林:
保険って真似できちゃうんですね
田中:
真似はですね、簡単ですね。
古川:
だってここに約款があるから(笑)
田中:
何の計算もしてなくても、亡くなったら1000万円払う保険をあの会社が1000円で売っているから、うちはじゃあ950円で売るとか。
田中:
儲けすぎはある程度、市場の原理によって是正される。でも儲からなさ過ぎるとやばいので、ダンピングした値段をつけないように、金融庁は商品認可の時に、保険料の計算はこういうデータに基づいて妥当な値付けをしてますよっていう説明を求めてます。


