ディストピア感のその先へ
最初に、記事のきっかけとなったラムネダイレクトについて触れておきたい。ラムネといえば、ぶどう糖の力で集中力アップの効果があるということで子どもだけでなく大人も食べるお菓子として近年注目が集まっているが、いわば大人向けの”終着点”的な商品がこのラムネダイレクトである。
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ぶどう糖を効率よく摂取することを考えた結果、この顆粒タイプに行き着いたのだろう。薬というのはその成分を効率よく体内に届けられれば良いので味わうものではないし、食感も考慮されていない。ラムネダイレクトも思想としては薬のそれと同じである。そこはかとないディストピア感が漂う。
でも美味しい。通常のラムネよりもスーッと感が高められていて、気分をリフレッシュさせる効果もある気がする。見た目が完全に薬なのに美味しいので笑ってしまう。大人の「おくすり飲めたね」か?
このラムネダイレクトの衝撃から、粉にしてダイレクトに摂取することの可能性を探ってみたくなったというわけだ。行こう、ディストピアのその先へ。
というわけで今回、粉にしたのはこちらの10種類。
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粉にする作業は設備の関係でアナログにすり鉢を使って行った。つまり家庭でも簡単に「粉化」できる必要があったので、そうなると水分がなくて砕きやすいお菓子系のラインナップに寄ってしまったが、逆にどう違いが出るのかが気になるところだ。
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なおラムネダイレクトに倣って、なるべく薬っぽく、ダイレクトに摂取している感じを出すために今回はチャック付き小袋に入れて食す。こうするだけで「食す」より「摂取する」が似合う不思議さよ。
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①うまい棒
まずは「うまい棒」からいってみよう。
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うまい棒といえば食べるときに必ずといっていいほどカスがこぼれる。開けるのをミスって個装袋に小さめの穴しか開かず、そこから無理やり取り出そうとしたら削られて、半ば粉になって出てくるということも時々ある。なので粉の状態には普段から割と馴染みのあるお菓子と言ってよい。
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粉にしたことでコーンポタージュの香りが棒の時よりも強くなっている。カップスープのコーンポタージュの粉末とほぼ同じ状態な気がするが、コーンポタージュそのものよりもコーンポタージュみが強い。誇張しすぎるモノマネ芸人みたいなことになっている。
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おお、これはちゃんとダイレクトに「粉」として喉に入ってくる。割と粉に馴染みのあるお菓子と書いたが、やはりまとめて摂取すると脇役(というか邪魔者)として接していた時とは違う印象になる。
しっかり主役をはれている、言うなれば「うまい棒」から「うまい粉」へと姿を変えている感じがする。名脇役であった松重豊が主演を務める『孤独のグルメ』を思わせる味わいだ。
とはいえ当たり前だが味は「うまい棒」のままだし、そもそも棒の時点で摂取しやすさもそれなりにあるので、まぁ続いてもシーズン2、落としどころとしてはテレビ東京でよくやっている「孤独のグルメを真似したドラマ」くらいが妥当なところだろうか。
粉にしやすさ:★★★★☆
粉にする意味:★★★☆☆
摂取しやすさ:★★★★☆
②ポテトチップス ③カラムーチョ
続いてうまい棒と同じスナック系の2商品を粉にしていく。粉にしやすいようにスティックタイプのものを選択した。
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このスリムタイプのスナックは小腹が空いたときに重宝する。仕事中も残業している時とかについつい食べてしまう。ただ食べるときに指が汚れてしまうため、拭きながら食べなくてはいけないのがちょっと面倒である。そんな時に粉だと手が汚れなくてよさそうだ。
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粉にする際に思った以上に油が染み出してきた。写真ではあまり伝わらないかもしれないが、けっこうウェッティな仕上がりである。砂場で遊んだ時のことを思い出してもらうと分かると思うが、水分があるとダマになってサラサラとした粉にするのは難しい。そんなわけでなかなか砕き切れず、少し大きめの粒も残ってしまい、見た目がかなり土っぽくなった。雰囲気だけで言うと南米の土だ。
実際に食べてみると、油分の多さ故か、口に入れた瞬間にひとつにまとまっていこうとする。先ほどのうまい棒が「粉」としてちゃんと摂取できたのに比べて、こちらの2種はいずれも粉のまま摂取させないぞ!という意思を感じる。イモが主張してくるのだ。それこそ中南米あたりにこういうイモ料理があるかもしれない。
あと中途半端な固形になるとむしろディストピア感が増す。ダイレクトに摂取している感じも薄まるし、かといって本来の食感も残っているわけではないので、何を食べているのか分からなくなる。この分からなさが、美味しさよりも効率を重視したような感じ=ディストピア感を醸し出すのだろうか。まだカラムーチョの方があとから辛さがやってきて味の起伏があったため情緒を感じることができた。
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粉にしやすさ:★★☆☆☆
粉にする意味:★★☆☆☆
摂取しやすさ:★★★☆☆