特集 2020年11月4日

川の上に浮かんで過ごすだけ!水上ピクニックでまどろむ

天気がいい日、私はよく川を見にいく。川を見ながら缶チューハイを飲んでいると気持ちが安らぐのだ。

絶え間なく複雑な形を作りだす水面をぼーっと眺め、「水の上に浮かんでゴロ寝したら気持ちよさそうだな」と思ったりする。

そんな夢想が突然、現実になった。円形のボートの上でくつろぐ「水上ピクニック」というものがこの世にあることを知ったのだ。

大阪在住のフリーライター。酒場めぐりと平日昼間の散歩が趣味。1,000円以内で楽しめることはだいたい大好きです。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーとしても活動しています。(動画インタビュー)

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川が好きだから川の上に浮かびたい

先日、「定員10人以下のクルーズ船「御舟かもめ」の最近とこれから」という記事を書いた。

私が家の近所を流れる「大川」という大阪の川を眺めていて、そこでいつも見かける小舟のことが気になり、取材させていただくことになったのだった。

その「御舟かもめ」のスタッフ・中野弘巳さんとお話をしていた時に「この近くで日本シティサップ協会さんがやっている『水上ピクニック』っていうのも面白いですよ!」と教えてもらった。言われてみれば少し前にこんなチラシを手に取り、「これはなんだ!?」と思っていたのだ。

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なんだこの楽しそうなチラシは!

中野さんに改めて教えていただいたのも何かの縁と思い、大阪の天満橋近くで「水上ピクニック」というサービスを提供している「日本シティサップ協会」に連絡を取り、体験取材をさせていただけることになった。

いつもぼーっと眺めていた川を「御舟かもめ」の船で間近に味わい、ついにはその川の上でピクニックをすることになろうとは!なんでもぼーっと眺めてみるものだ。

取材当日、大阪市中央区天満橋の川沿いにある「川の駅はちけんや」にやってきた。川べりに日本シティサップ協会の受付ブースが出ている。

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ここで受け付けを済ませた後、事前の説明を受けることになる

こちらが日本シティサップ協会の主宰・奥谷崇さんである。

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今日はお世話になります!

奥谷さんに水上ピクニックのことについて色々伺おうと思ったのだが、「まずは体験してみますか!」とおっしゃるのでそうすることに。まずはピクニック、話はその後だ!

必要書類に記入を済ませ、水上ピクニックのレンタルグッズについて説明を受けた。水上ピクニックはこのような「シティサップボート」という名の円形のボートの上で行われる。

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この状態に色々なグッズを足していくことができる

チラシに掲載された以下のイメージ写真のように、ラグ、テーブル、テント、パラソル、チェアーなどのグッズが用意されており、希望にあわせて貸し出してもらえるのだ。

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組み合わせ方は利用者のお好みで

今回、私はシンプルにラグとテーブルのみをレンタルしてのぞむことにした。安全のためにライフジャケットを装着したら準備完了!ちなみに料金は一人30分2,000円から。最大4名まで乗ることができ、複数名で利用した方が一人あたりの料金がお得になるシステムだ。

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早速ピクニックに行ってきます!

川の上で発泡酒を飲み、川の上でおでんを食べる

早速、船着き場に横づけされたシティサップボートに乗り込む。

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いよいよ水上へ!

私を乗せたシティサップボートを奥谷さんが「シティサップバイク」という名の水上自転車で岸から離れた場所まで運んでくれる。

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どこかへさらわれていくような感じの写真になった

奥谷さんが岸から少し離れた地点の川底に落としてある重りのそばまで私を運び、その重りからのびるケーブルとシティサップボートとをつないでくれる。

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奥谷さんの頼もしい背中

私の乗ったボートは重りにつながれているので、水の流れによってある程度動きはするが、ケーブルの長さ以上は移動していくことなく一定のエリアに留まることになる。

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ボートを重りにつなぎ終えると「じゃあ」と奥谷さんが去っていった

さて、いよいよ水の上に一人だ。とはいえ、岸はすぐそこ。今回、友人に同行してもらって船着き場側から写真を撮ってもらったのだが、その友人と「写真撮れてますかー!」「大丈夫でーす!」と声をかけあえるぐらいの距離である。

船着き場から近い距離にボートを係留し、スタッフの方が岸から常に安全を確認しているからこうしてのんびり気ままに水上ピクニックをすることが可能なのである。

さて、私の目の前にはさっきコンビニで買ってきた発泡酒、缶チューハイ、おでんがある。

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これさえあれば何もいらない

水上ピクニックは飲食の持ち込みが自由となっていて、節度を守った範囲であればお酒を楽しんでもいいのである。最高!

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早速いただいております

発泡酒をグビグビ飲んだ後、おでんの汁をズルズルとすする。その部分だけとれば私が家でよくやっている行為なのだが、なんとここは水上。

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背景だけカポッと差し替えたような現実

やっていることは部屋と一緒でも、開放感は格別だ。このボートの直径は約2.5メートル。私がおでんの大根を食べているそのちょっと先は水。

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すぐそこが川であるという不思議
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ケーブルの先は川底の重りにつながっている

気分的には「海に浮かんだ自分だけの島」という感じなのだが、前述の通り、船着き場は目と鼻の先である。ちょうどお昼時、天気がいいこともあって船着き場の脇の広場ではたくさんの人がお弁当を食べたりくつろいだりしている。

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私から見た陸側の光景

水に浮かんでしばらくの間は視線を感じる気がしてちょっと恥ずかしくもあったが、すぐに慣れてきた。そもそも誰もこっちなど見てないだろう、自意識過剰。と思ったのだが、カメラマン役として陸側から写真を撮ってくれた友人によれば、若い女性グループが私の方を眺めて「何あれ!」「……罰ゲームちゃう?」という会話を交わしていたとのことである。

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ほら、笑っているでしょう?罰ゲームじゃないんですよ

もし罰ゲームに見えたとしたらそれは私から漂う雰囲気のせいであり、水上ピクニックにに罪はないことを断っておきたい。

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水の上に一人、浮かんで眠る

さて、おでんも食べ終えたことだし、奥谷さんが「寝転がるのがおすすめですよ」と言っていたから横になろうと思う。いや、言われなくても横になっていたと思う。

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机をたたんで脇におき、よいしょと
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はい、最高!

水の上に直接浮かんでいる感覚。空気で膨らませたボートを海やプールに浮かべて寝転んだことがあるけど、あれの“どっしりと安定しているバージョン”という感じだ。

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川の上でごろ寝する私が見えますか

揺れに身を任せて空を見上げるうち、ウトウトと眠くなってきた。このまま眠ったらいつもとは違う夢が見れそうである。

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目が覚めてこれだったらびっくりする
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究極の昼寝だ
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秋の空が綺麗だなぁー

奥谷さんに水上インタビュー

今回私は30分間のコースを利用したのだが、あっという間に時間が過ぎ、奥谷さんが陸かから迎えにきてくれた。せっかくなのでそのままボートの上でお話を伺うことに。

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水上でインタビューさせていただきます

――この水上ピクニックはいつからやっているものなんですか?

「今年(2020年)の7月1日からです。もともとこのシティサップボートを使って大阪の川を移動するツアーをやっていて、そっちはずっと続けているんですが、水上ピクニックというサービス自体はこの7月からなんです」

――なるほど。本来、このボートは移動するためのものなんですもんね。

「そうです。もともとはサーフボードのような細長い形をしたものがベースにあります。そっちは『シティサップボード』と呼んでいます。『ボート』じゃなくて『ボード』です。ちょっと紛らわしいんですけど」

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サーフボードに似た形状の「シティサップボード」(過去にこれに近いタイプのボードに乗った記事があった。慣れるまで少し大変そう)
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実際に近くで見てみるとかなり大きい

「ただ、シティサップボードはバランスが重要なので乗れる人と乗れない人がいるんです。ここは都市河川ですし、『川に絶対に落ちたくない』っていう人もいらっしゃいますし。僕らはそれが当たり前だと思っていて、向いている人と向いていない人がいると思い込んでいたんですね。でもどこかでそれは違うんじゃないかとも感じていました。『人を選ぶなんて何様やねん』と。シティサップボードに乗れない人にも乗ってもらえるものができるんじゃないかと。そう考えだして市販のものも色々試したんですが、しっくりこなくて。それでオリジナルのものを自分たちで作ろうということになりました」

――そうやってできあがったのがこの今私が乗っている円形のものなんですか

「はい!ボードの長さには法律上の制限があるんです。これ以上長くはできないんで、さらに安定させようと思ったら横に広がる。で、結果的に丸くなる。船とかボードとか、細い形をしているものって横波に弱いんです。だからバランスを取る必要があるんですけど、この円形のシティサップボートには横というものがないんです。どこから波が来ても安定している」

――確かに。波で揺れても安心感がありました

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船が横を通るときに波が起きても平然と酒を飲んでいられた

「これが自然の海だったら一定方向から波が来るんですけど、こういう都市河川だと波が護岸にあたって跳ね返ってくるんです。ありとあらゆるところから波がくるんですね」

――そうか。ということはシティサップボードの方だとやはり少しコツがいるんでしょうね

「向こうから波がきたらそっちに先端を向けて、今度反対からきたら反対に向けて、とやる必要があるんです。その点、シティサップボートならまったく関係なしなので、それこそ、子ども連れの方でも乗っていただけるようになりました」

――こういうものをオリジナルで作っていくのは大変だったんですか?

「しっかりとした安全基準をクリアしたいという思いがありまして、このシティサップボートは空気を入れて膨らませるんですけど、底面に空気の入る部分が一気室あって、周囲のオレンジの部分は4つの空気室に分かれているんです。全部で5気室ですね。どれか一つに何らかの拍子で穴が開いても他の部分に空気が入っているので安全性が保たれます。こうやって空気室を増やすのはその分だけ工程が増えるしお金もかかるんです。そこはオリジナルだからこそこだわったところです。4年前から開発を始めて改良しつつ。これが3代目ですね」

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水上ピクニックはどうして生まれたか

――移動用であるこのボートをピクニックに使うという発想にたどり着くのには何かきっかけがあったんですか?

「僕らの中ではあくまで移動用のものなので、こんな風にプカプカ浮かべてるだけなんて、サービスとして考えたこともなかったんです。ただ、こういうこと自体は実は昔からやってたんですよ。僕らスタッフだけはやっていて、朝、コンビニで買ってきたご飯をこの上で食べるとか、コーヒーを飲んだりとか」

――スタッフの方だけの活用法ということですね。飲食店でいう「まかない飯」みたいな

「そう!まさにまかないやったんです。今年はコロナの影響で自粛期間もあったし結構落ち込んでいたんですけど、5月頃からやっと動き出せるようになって、こんな時やからこそできることないかなって色々考えたんです。スタッフで色々アイデアを出して試してたんですけど、その一つで、『大潮』って言いまして、満潮と干潮の差が大きな日があるんですけど、その大潮の日の満潮の時にボートを浮かべて何もせえへんで流されてみようって思ったんですよ。スタッフだけ乗ってぼーっとしたまま流されていって、2時間かけて中之島の端っこまで流されていったんです」

――ただただ流されてみたんですね。楽しそう!

「いつもなら漕いだり色々するんですけど本当に何にもせえへん。『楽やわー!これええやん!』と(笑)これ提案してみようかって盛り上がったんですよ。でも考えてみたら、漂流していくボートをそのままさよならって見送るわけにはいかない(笑)安全上、スタッフをつける必要があります。でも、一つのボートに一人のスタッフがずっと2時間つきっきりというのは、これはちょっと無理やなと。ほなどうしようかーとなった時に『そんなに流されんでもええんちゃう?浮かんでるだけでもええんちゃう?』っていう意見が出て」

――おお、この水上ピクニックの原型ですね

「そうです。重りだけ落としてそこにボートをつないでやってみたんですよ。これならすぐ近くでスタッフが見ていられますから安全上問題ないし、2艇3艇と増やせるかなって。
ただ、『それ、おもろいか?』って(笑)僕らはまかないとして食べてるけど、まかないの旨さはわからないわけですね。『まあ、とにかくやってみようか』って6月末ぐらいからテストして、そしたらテストに参加してくれた人がみんな絶賛してくれて、『もしかしたらいけるかもしれんな』って、7月からスタートしたという経緯なんです」

――当初は「まさかこんなサービスが成り立つとは!」みたいな感じだったわけですね

「これも、コロナのことがあったからですね。ああいう風にじっくりと見直す時間がなかったら100%やってないことですね、これは。最近はもう逆にこのボートで移動するっていう概念の方が薄れてきて、『え、移動すんの?』みたいになってきて(笑)」

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シティサップボートを使って移動する方のツアーも引き続きやってます

都会の中でもやり方次第で自然は感じられる

――どんな人が水上ピクニックを利用していますか?

「最初の頃は、参加してくれる人の中には仕事が在宅になったりして家にずっといたという人が多かったです。ここでのんびり広々と過ごしてもらって。そしたら口コミでここら辺の近所の人にどんどん広がったみたいで『〇〇さんから聞いて来ましたー!』って、全然僕らは知らんのやけど(笑)とにかく徐々に知ってもらえているみたいです」

――川に浮かんでなんかやってるぞ!って目について広がっていくのもありそうです

「それもありますね。あと、女子会に使う人も多くて、ウクレレ持ち寄ってきて、前半はご飯を食べて、後半はウクレレをペロペローって弾いて。1時間ぐらいで利用する方が多いですね。初回は30分で利用する方が多いんですけど、結構あっという間だったでしょう?リピーターの方は1時間が多いですね。長い人で2時間ぐらい。そんなにすることあるんかなと心配になる(笑)」

――みなさん思い思いに楽しまれてるんですか?

「はい。ここで本読む人もいるんですよ。酔わないか?っていう(笑)パソコン出して仕事する人もいますし、みんな水の上にいることを忘れてしまうみたいです」

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優雅な水上インタビューの光景

――私はもう、お酒を飲んでおつまみ食べてっていうだけで最高です。たまに横になって

「そうやって楽しんでもらえるのもいいです。水の上なのでお酒については一応節度は守っていただくようにはお願いしてるんですけど、安全上問題ない範囲では自由に川を楽しんで欲しいと思っています。たとえば雨が降った時でも、こちらの方から中止にするということはしてないんですね。もちろん警報が出たり雷が鳴ったら別ですし、お客様の方から雨なのでキャンセルしたいというのは当然可能なんですけど、僕自身は多少の雨やったらむしろ楽しいんじゃないかと思います」

――テントも貸し出してもらえますもんね。多少の雨はよけられそう

「そうです。子ども心で考えたら、雨の中でテントを出すって最高にワクワクするじゃないですか。傘をさしてピクニックしてもいいと思うんですよ。雨音をじっくり聞いたり。こういう都会の中の川でも色々な形で自然を感じられるということも知ってもらえたら嬉しいです」

――季節によって周りの景色が変わっていくのも堪能できそうですね

「川沿いの桜並木がこれから少しずつ紅葉していきますのでこれからはいいですよ。12月からはコタツを出します。寒い季節でもコタツに入ったら全然大丈夫。むしろ寒いぐらいが気持ちいいんですよ」

――コタツもいいなー!またやりに来ます!今日はありがとうございました。

現在、水上ピクニックは木曜と金曜、土・日・祝日の10:00~17:00に開催されている。木曜と金曜はWEBでの事前予約が必要で、土・日・祝も事前予約が優先なのだが、空いている時間があれば飛び込みでの利用も可能だという。

詳しくは日本シティサップ協会の公式サイトをチェックしてみて欲しい。


川を眺めながらぼーっとするのが好きな私にとって、究極の形がこの水上ピクニックではないかと思った。

水の上を漂う浮遊感と、陸との距離はそんなに遠くないのに日常と切り離されたような感覚が味わえた。これはクセになりそうだ。

船着き場のすぐ近くには天満橋駅の駅ビルがあり、様々な食べ物、飲み物を簡単に調達することができる。みんなでこれぞと思うおつまみを持ち寄って水上飲み会をするのも絶対に楽しそうだなー!

日本シティサップ協会
大阪府大阪市中央区北浜東1-2 川の駅はちけんや
https://www.citysup.jp/

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