特集 2011年8月18日

大阪のまんなかで、夢の一寸法師体験

気分は一寸法師
気分は一寸法師
川が好きだ。できれば船で生活したい。
3年前にエコボートで日本橋をくぐったあの日から、私が変わらず持ち続けている夢、それが水上移動生活。
やや語弊があるが、船で寝泊りしながら世界中の港を旅するトム・ソーヤー的冒険譚を言っているのではない。あくまで日常の中で、水路都市トーキョーを生きる者として、「ちょっと買い物まで」と船ででかける生活が、したいのだ。
この夏、水都大阪で、その夢に一歩近づく体験ができた。
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

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2月、アクアスタジオさんの「水上さんぽ」に衝撃が走った

2月のある日、誰に教えてもらったのだったか、クルーズについて調べていたとき見つけたのだったか、大阪はアクアスタジオさんのこのホームページの写真に、川好きの集まる私のTwitterタイムラインにはざわめきが走った。
川を!ひとが!歩いている!なんだこれは!!
大阪のまんなかを流れる堂島川の橋脚の下、よく見れば、それぞれ笹かまぼこ型のボートに乗って、オールで漕いで進んでいるようだ。
そんな楽しそうなこと、やってみるしか、ないよな。ないよね。いつ行く?いつなら行ける?
7月、念願かなって、その写真の中のひととなる。(陸からの撮影:BOAT PEOPLE Association (http://boatpeopleassociation.org/) 山崎博史さん)
7月、念願かなって、その写真の中のひととなる。(陸からの撮影:BOAT PEOPLE Association 山崎博史さん)

水上歩行、その正体は、スタンドアップパドル(SUP)というボード

堂島川は東京でいうと、新宿(梅田)と原宿(心斎橋)の間をどーんと流れる大きな川で、その真ん中の中之島公園は代々木公園くらいメジャーな公園なので、大阪に住んでいるひとならもしかすると、この水の上を歩いているみたいに見える奇妙な集団を目撃したことがあるかもしれない。
その正体はこれ、スタンドアップパドル(SUP)といわれるボード。
その正体はこれ、スタンドアップパドル(SUP)といわれるボード。
スタンドアップパドルはその名の通り、ボードの上に立ってパドル(櫂)をつかって漕いですすむという、じつに一寸法師感覚の船。要はサーフィンの一種で、初心者でも簡単ということで数あるマリンスポーツの中でも最近人気があるらしい。あるらしいが、サーフィンだとおもうと気持ちが萎えるので、私の中ではあえて船ということにさせていただく。
大阪の中心地の波のない静かな河川で、このスタンドアップパドルの教室を開催しているのが、件のアクアスタジオさんというわけだ。
堂島川の船着場に集合する。天神祭の船が出る場所だそうだ。
堂島川の船着場に集合する。天神祭の船が出る場所だそうだ。
アクアスタジオさんの「水上さんぽ」のクラスは、1時間の教室がレッスン費、レンタル費込で初回3,000円、2回目からはレッスン費なしで2,000円、パドルボードを自前で持ち込めばなんと500円で参加できる。しかも毎日8時から20時まで毎時開催というからもう。さすが商人の町。
まずは陸地で、インストラクターさんによる丁寧な講習を受ける。
まずは陸地で、インストラクターさんによる丁寧な講習を受ける。
「曲がるときは櫂を大きく動かして…」
「曲がるときは櫂を大きく動かして…」
この日、朝8時のクラスに参加しているのは、インストラクターさんに「川研究チーム」と名づけられた、全員非大阪在住の川だいすきな5名である。
夏の週末、船に乗るために大阪にきた。気合いは十分。
夏の週末、船に乗るために大阪にきた。気合いは十分。
川研究チームは全員、このささかまボードのことをサーフィンではなく船としてみている。
というのも、大阪にはこの堂島川から、京セラドーム前を通る木津川を通って道頓堀川に入り、そのまま高速道路下の東横堀川を通ってもどってくる素敵な「水の回廊」があるのだが、堂島川で行われる「水上さんぽ」に3回参加すると、なんと「水の回廊一周コース」にパドルボードでチャレンジできるということなんだ。

より大きな地図で 大阪水の回廊 を表示
水の回廊とはこういうコース。
グリコの看板や、タイガース優勝時の飛び込みでも有名な、道頓堀川も通る。
「水の回廊コースは全長11km。運河に入れば波もないので、慣れてるひとなら4時間くらいあれば一周できますよ」
「水の回廊コースは全長11km。運河に入れば波もないので、慣れてるひとなら4時間くらいあれば一周できますよ」
ああ、いいなぁ。しかも、このパドルボードなら、普通の船では航行できない狭い場所や、水量の少ない河川だって行きたい放題。潮位だって気にしなくてもほとんどの橋がくぐれるじゃないか。なんとすばらしい。
皮算用はふくらむ一方だが、まず初回は、堂島川の素敵な橋脚ゾーンからだ。これはこれで大興奮。
皮算用はふくらむ一方だが、まず初回は、堂島川の素敵な橋脚ゾーンからだ。これはこれで大興奮。
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初心者でも安心、の言葉は真実、がしかし…

SUPはサーフィンボードのなかでも初心者に安心なボードだ。
しかしそんな言葉に騙されるほど私の運動音痴は甘くはない。
「いままで川に落ちた人はいない」とインストラクターさんはおっしゃるが、その「川に落ちた、初めてのひと」になる自信がけっこうある。自信がありすぎて、今回の撮影は水深10mまでOKな完全防水デジカメを持って挑んでいる。どれだけ沈む気か。
「しっかり引き寄せて…」
「しっかり引き寄せて…」
「乗ります」簡単そうにみえるけど、騙されないんだから…!
「乗ります」簡単そうにみえるけど、騙されないんだから…!
と、思っていたけど、あっさり乗れた。
と、思っていたけど、あっさり乗れた。
水面近い!橋脚近い! きゃー!
水面近い!橋脚近い! きゃー!
ボードの上は、思った以上に非常に安定していて、「お、落ちる…!」という感覚は一切ない。それよりも、水面が近い。橋脚がいっぱい。たのしすぎて我を忘れる。興奮のあまり、さっき陸で習った漕ぎ方、曲がり方を一気に忘れた。だがたのしい。
川チームもつぎつぎに乗船する。
川チームもつぎつぎに乗船する。
初回のコースでは、まずは立て膝の状態で高架下を進み、川を横切り、人道橋のばら園橋を目指す。
出発!橋脚ちか!
出発!橋脚ちか!
陸上からはこんな風。
陸上からはこんな風。
思い描いていたとおりのおかしな水上部族の姿がここに…!
思い描いていたとおりのおかしな水上部族の姿がここに…!
かっこいい、水上の男たち。
かっこいい、水上の男たち。
そして、わたし!
そして、わたし!
あっというまにみんなに遅れるわたし…! (ついてくれているのはばっちり2名体制のインストラクターさん、橋の上にいるのは陸上撮影班の山崎さん。)
あっというまにみんなに遅れるわたし…! (ついてくれているのはばっちり2名体制のインストラクターさん、橋の上にいるのは陸上撮影班の山崎さん。)
説明しよう。落ちる危険はぜんぜんなかった。しかし運動音痴にはべつの問題があった。
それは、いまみたいに川の流れに逆らって進むときは、左右の漕ぐバランスをうまくとりながら、けっこう本気で必死で漕がないといけない、ということだったのだ…!
かっこいい橋脚と男たち!
かっこいい橋脚と男たち!
かっこいい橋脚とわたし…!
かっこいい橋脚とわたし…!
というわけで、自慢の防水カメラで撮影する余裕など皆無だったため、ここまでの写真、水上からのものは、ほとんどが川チームのmechapandaさん(のすごい動画チャンネルはこちら)によるものである。持つべきものは撮影能力が確かな友人。
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大阪の水路クルーズがいかに素晴らしいかについて

私が必死で漕いでいるあいだ、べつの話をさせていただきたい。
2009年に、大阪府知事と市長がそろって川から頭を出す衝撃的なポスターで話題をさらったイベントがあったとおもうが、皆さん覚えているだろうか。「水都大阪2009」である。
このポスターね。
このポスターね。
堂島川に巨大なアヒルが出現したり、川や水路をフィーチャーしたイベントがたくさん行われたあの2009年以来、なんだか「水都大阪」は年々バージョンアップを続けている。特に橋のライトアップがすごい。
水晶橋。いや、こういういかにも歴史的な格好いい橋のライトアップは、わかる。東京もやってる。
水晶橋。いや、こういういかにも歴史的な格好いい橋のライトアップは、わかる。東京もやってる。
大阪のすごいところは、これだ。昼間は言っちゃなんだがこれと言って特に特徴のない橋、天満橋が、夜ともなればこのとおり。ライト自体で模様を描いてもはや新しい橋に…!
大阪のすごいところは、これだ。昼間は言っちゃなんだがこれと言って特に特徴のない橋、天満橋が、夜ともなればこのとおり。ライト自体で模様を描いてもはや新しい橋に…!
そしてさらに、東京の水路では悪者にされがちな橋脚や
そしてさらに、東京の水路では悪者にされがちな橋脚や
水門もしっかりライトアップ!ちょっとしたクリスマスかという勢い!
水門もしっかりライトアップ!ちょっとしたクリスマスかという勢い!
この橋脚&水門ライトアップ、私はてっきり2009年のイベント時だけだと思っていたのだが、「え?来年はやらないって誰か言った?」という感じで平然とそのままあるので、本当にびっくりした。
そしてこんなピカピカの水路を、いろんな種類の遊覧船がたくさん行き交っている。
そしてこんなピカピカの水路を、いろんな種類の遊覧船がたくさん行き交っている。
水陸両用バスさえも…!
水陸両用バスさえも…!
なによりも羨ましいのは、大阪にいくつも整備された船着場。申請すれば誰でも300円くらいで利用できるという。しかも、面倒な手続きを一元化する窓口まで作られたというから、うおお。
なによりも羨ましいのは、大阪にいくつも整備された船着場。申請すれば誰でも300円くらいで利用できるという。しかも、面倒な手続きを一元化する窓口まで作られたというから、うおお。
あまり一般的には川が使われていない東京では知らないひとも多い事実だが、川は道路と同じでふつうの船の航行に許可はいらない。エンジンつきの船なら免許が必要で、ゴムボートなら「車道でローラースケートで遊ばない」程度のマナーを守ればOK。問題は、船をつけられる場所が都心に非常に少ないってことなんだけど、大阪、それも解決しつつあるというわけだ。
道の駅ならぬ川の駅。水上バスの申込などのほか、船着場の使用申請もできちゃう。
道の駅ならぬ川の駅。水上バスの申込などのほか、船着場の使用申請もできちゃう。
ここまで一貫して言えるのは、大阪の街が、なんだかここ数年ですっかり水路に対して「明るく」なってるということだとおもう。物理的なライトアップもそうだし、川を使うことが、日常と切り離された観光ツアーじゃなくて、日常的なエンターテイメントのひとつとして受け容れられている、そんな感じがする。素敵な街だ。

私の夢を確認しよう。
東京の川を、かつてそうだったように、日常的な交通手段としてつかうこと。たとえば日本橋から水道橋まで、自前のボートで「ちょっと買い物に」行くことだ。
いま、その夢の第一歩を踏み出さんと、大阪でパドルボードの練習をしている、というわけだ。
書き忘れていたが、パドルボードには持ち運び可能タイプもあるのです。
前置きでこれだけ書くつもりだったがあまりにも長いので3ページめにもってきておいた。
練習のつづきにもどる。
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ひきつづき、とにかく楽しい水上体験

中之島公園のばら園橋下に到着。
中之島公園のばら園橋下に到着。
水の流れがほとんどないこの場所で、ついにボードの上に立つ練習をする。
これも一瞬にして全員成功。
これも一瞬にして全員成功。
ばら園橋の周りをまわって漕ぐ練習。
ばら園橋の周りをまわって漕ぐ練習。
いざ立ち上がってみると、むしろ座っているときよりも、全身をつかってパドルを動かせるので、ぐいぐいボードが進んでいく感覚がある。と得意げに書いているがここでもやはり私だけ、小回りがドへたくそだったりみんなのボードにぶつかっていったり、すごく迷惑をかけた気がする。
が、本人はどんどん楽しくなってどんどん余裕なのだから仕方ない。
ほらね、なんとなく、さまになってきたじゃないですか。はっはっは! (本当に余裕なのはこの写真を後ろ振り向いて撮ってるmechapandaさんのほうだ)
ほらね、なんとなく、さまになってきたじゃないですか。はっはっは! (本当に余裕なのはこの写真を後ろ振り向いて撮ってるmechapandaさんのほうだ)
帰りは堂島川の流れに乗るようにしていれば、あっというま。
帰りは堂島川の流れに乗るようにしていれば、あっというま。
水面からにょきにょきとのびる橋脚を
水面からにょきにょきとのびる橋脚を
うっとりと楽しんでいるあいだに
うっとりと楽しんでいるあいだに
本当にあっという間に、スタート地点へと戻ってきてしまったのだった。名残惜しいことこの上ない。
本当にあっという間に、スタート地点へと戻ってきてしまったのだった。名残惜しいことこの上ない。

アクアスタジオさんの「水上さんぽ」は毎日開催です。

たぶん私が大阪に住んでいれば、この夏毎日通ってすっかりパドルボードマスターになること間違いなしなのだが。関西在住のひとに先を越されるのが悔しいが、本当に親切で素敵な教室だったのでオススメする。
予約など詳細はこちらのホームページを:

アクアスタジオ
http://aquastudio.jp/

そして!夢の水上移動生活に向けて、東京でも動き出します。

今回、陸上撮影役を買って出てくれたのは、いつもクルーズ企画でお世話になっているBOAT PEOPLE Associationの山崎さんだ。「しかし山崎さん、練習もせず、余裕だな…」と思っていたらそれもそのはず、氏は既にこのパドルボードを所有しており(!)、関東の都市河川で同じようにパドルボードを楽しむクラブチームの結成をもくろんでいらっしゃるらしい。なにそれ私もまぜて!

というわけで。
「パドルボード、おれも持ってる。こんなふうに街中の川で楽しんでみたいナァ」と思ったアナタ。
あるいは、「都会の川がとにかくすごく好き!このパドルボードだったらふつうの船では行けない川も行けそうじゃん!もしかして!」と、気づいてしまった、アナタ。
こちらのメールアドレスで「オープニングメンバー」を募集します。

Air SUP都市河川クラブオープニングメンバー募集
i@boatpeopleassociation.org
お名前、メールアドレス、電話番号、簡単なプロフィールを書いて上記宛先まで。

まずはパドルボードをみんなで購入し、実際に都市河川で実施してみて楽しみかたを模索、各役所との調整もこなしてゆくゆくはみんなでパドルボードを楽しめる環境の整備!という、壮大な計画です。
本気と書いてマジの方のご連絡をお待ちしています。
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